最新情報(2000年11月)
11月20日 食堂労災:死亡男性の妻の申請 控訴審で逆転勝訴に(大阪高裁)
  森永製菓塚口工場(兵庫県尼崎市)の従業員食堂の調理師だった男性(当時56歳)が、夜勤中に急性肺炎で死亡したのは労災にあたるとして、男性の妻が労災申請を認めなかった尼崎労基署の処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が21日、大阪高裁であった。根本真裁判長は「夜勤を代われなかったため肺炎が悪化して死亡した」と認め、業務との因果関係を否定した1審・神戸地裁判決を取り消す逆転勝訴の判決を言い渡した。

  判決によると、男性は1987年3月末ごろ、体調を崩し、4月13日、病院で急性気管支炎などと診断された。安静にするよう言われたが、翌14日午後9時半から15日午前6時までの夜勤に1人で就き、15日朝、男性がちゅう房で倒れて死んでいるのを同僚が見つけた。妻は尼崎労基署に労災申請したが認められず、兵庫労災補償保険審査官への審査請求も棄却されたため提訴した。

  1審は、夜勤は過重ではなかった▽交代を申し出ることもできた――として、妻の訴えを退けた。これに対し、根本裁判長は「職場は夜勤の交代を自由に申し出られる雰囲気でなく、交代は困難だった」と判断した。 


11月14日  <全日空>機長の意識不明で健康管理体制の改善指示 運輸省  毎日新聞ニュース速報

 全日本空輸の機長(当時53歳)が9月、佐賀空港への着陸時に意識不明になったトラブルで、運輸省航空局は14日、小脳出血が原因で、同社が乗員の身体検査基準の確認を徹底していなかったとする調査報告書をまとめた。機長は5〜7月に行なわれた血圧測定で基準値を超えていたが、同社は一過性の高血圧と判断し、通常の乗務をさせていた。航空局は同日、全日空に対して身体検査基準の確認の徹底と高血圧の乗員の健康管理体制の改善を指示。血圧管理の指針をまとめ、他の航空会社にも通知した。

 報告書によると、トラブルは9月11日午後5時ごろ、名古屋発佐賀行き559便(乗客・乗員16人)で発生した。同機は副操縦士(31)の操縦で飛行していたが、着陸時に高度約300メートルで、機長が意識不明になった。同機は約2分後、無事着陸した。機長は意識不明のまま入院、小脳出血のため8日後に死亡した。

 副操縦士によると、機長は出発前から気分が悪そうで、速度の読み上げなど一部の業務ができなかった。副操縦士が再三体調を尋ねたが、機長は「大丈夫だから通常通り着陸しろ」と指示していた。

 機長は5月に血圧測定をした際、身体検査基準値を超過していた。その後の精密な測定で基準値を下回ったため、医師の前では緊張して血圧が上がる一過性の「白衣高血圧」と診断され、通常の乗務に就いていた。6、7月の測定でも基準値を超えていた。

 航空局は、小脳出血と高血圧の関係は断定できないものの、機長が1992年12月から1年間、高血圧のため乗務を休止していたことを重視。全日空に対し、一過性の高血圧であることを確認する手順や、安静時に血圧を測定して健康管理することなどを指示した。


11月11日  <特報・労災隠し>10年間で58万件 患者自己負担分40億円
 仕事上の理由で負傷し治療するなどの際、本来は労災保険の適用を申請すべきなのに、健康保険扱いになっていたケースが、過去10年間に約58万件あることが11日、社会保険庁の調べで分かった。健康保険で支払われた医療費総額は約207億円、労災なら患者本人が支払う必要がないのに自己負担していた治療費(健保の2割)は約40億円にのぼる。同庁からの指摘を受けた患者は自己負担分の返還を受けることができるが、労災問題の専門家らは「実際の労災はもっと多い。労働者や事業主に労災手続きの徹底を図るべきだ」と訴えている。膨大な“労災隠し”の疑いが、数字で浮かび上がった。

 全国の社会保険事務所では、医療機関への支払い後に回ってくる年間約3億枚の診療報酬明細書(レセプト)の中から、平日に初診を受けたり頚椎(けいつい)損傷など労災の疑いのあるものをチェック。患者本人に照会し、労災の事実が確認されると、医療機関から診療報酬を回収。医療機関が労働基準監督署に診療報酬を請求し、患者の申請で労災認定されると、患者は、自己負担分の返還を労災保険から受ける。

 こうした事例を社会保険庁が1990年度から昨年度まで調査したところ、毎年約6万件あり、昨年度は過去10年で最高の約6万7000件にのぼった。

 労働省はこれらの原因を調査していないが、労働者本人が労災保険制度について知らないことのほか、▽仕事の受注資格に影響する無災害記録を無理に伸ばそうとする業者の存在▽元請けへの配慮▽資格外労働者の発覚を恐れる――などの理由で、事業主が労基署に労災を届けない例が多いためとみられる。社会保険庁は「制度が周知徹底されていれば、こうしたことが毎年6万件も起きないのではないか」と話している。

 労災保険を使わなかった場合、労働者は、労災による休職期間プラス30日間は解雇されないという身分保障がない▽障害が残った場合は労災で補償される分を受け取れない――などの不利益をこうむる。 【大島秀利、清水勝】

労働省は行政指導を

 井上浩・全国労働安全衛生センター連絡会議議長の話 労災事故を起こすと、元請け会社の入札資格が一定期間はく奪されたり、労災保険料が高くなることなどが労災隠しの背景にある。労働省は、実態をもっと調べて、さまざまな行政指導をするべきだ。

労災保険

 すべての事業主に加入が義務付けられている。業務上の理由や通勤中の負傷や病気などの場合に、労災保険から症状の程度に応じたさまざまな給付金が支払われる。事業主は賃金総額の一定割合の保険料を国に納める。事故に遭った労働者は、事業主が証明した給付請求書を医療機関や労基署に提出。労災と認定されれば、療養給付や休業給付、障害給付などを受けることができる。

労働省は及び腰  関係機関連携を

 膨大な「隠れ労災」を生む第一の要因は、労働者に労災保険制度が十分伝わらず、使い慣れた健康保険を使ってしまうことだ。

 第二に、事業主には「無事故記録」のノルマがあったり、労災事故で事業への入札資格を失ってしまうため、労災を隠したいという傾向がある。そのために、健康保険の自己負担分を肩代わりしたり、示談金を支払う場合もあるという。

 第三に、医療機関が患者である労働者に労災申請を勧めても、労災申請したために患者が解雇されるといった例もある。このため、医師は患者の言うがままに健保扱いにしてしまう。

 労働省の姿勢にも疑問はぬぐえない。社会保険庁の今回の「摘発」に対して、同省は本格的な追跡調査は「やったことがない」という。下請けや孫請けといった弱い立場であればあるほど、労災が隠されやすい。個人の努力や一部の労災申請支援組織に任されるのではなく、関係機関が連携して真剣に対策を考えるべきだろう。 【大島 秀利】

 ぎっしり積まれた健康保険のレセプト(診療報酬明細書)に、大量の労災が隠れていた。レセプトの中から社会保険庁が「労災扱いすべきだ」としたのは、10年間で58万件。だが、労働現場や医師からは「自宅でけがしたことにしてくれ、と会社に言われた」「労災を勧めると患者が姿を見せなくなった」など、労災隠しの横行を裏付ける証言が出る。労働省は「実態は分からない」と話すが、制度を知らずに仕事で傷ついた労働者は、泣き寝入りだ。

 全国の社会保険事務所に来るレセプトは年間約3億枚。「人海戦術による紙との格闘」(職員)で不審なものを見つけては本人に照会し、初めて労災と分かる。だが、「本格調査する人手もないし、本人が会社との悪化を恐れてうそを言えばどうしようもない」といい、実際の労災はもっと多いとみられる。

 大阪市内の建設会社に勤務する男性(37)。昨年夏、仕事で腰を痛め、健保で治療を受けた。しかし、腰痛が悪化して休職、「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」と診断された。会社に労災申請の相談に行くと、会社幹部は「元請けに迷惑がかかる。家でけがをしたことにしてくれ」と言い放った。

 家族の勧めもあり、男性は会社を説得して労働基準監督署に労災申請し認定され、健保扱いで支払った自己負担分数万円は療養給付として戻り、休業補償として給料の8割(健保は6割)を手にした。男性は会社に職場復帰を申し出ているが、会社は「別の仕事を探したらどうや」と解雇をちらつかせる。男性は「会社側は最初から労災の手続きを取ろうとしなかった。泣かされている従業員は多いと思う」と話す。

 大阪府内の建設会社の元現場監督は「無事故記録を続けている時に、下請け労働者が事故でけがをすると『やってくれたね』とか言うと、たいがい労災にはならない」と明かす。労災を隠すために「救急車を呼ぶな」という“鉄則”もあるという。

 労災問題に詳しい大阪のの整形外科医は「患者に労災を勧めると、『くびにされた』と言ってくることがある」と証言する。「健保扱いはおかしい」と指摘すると、姿を現さなくなる患者も。「だから、次第に言いづらくなる。労基署への通報は皆無でしょう」

 労働省は7年前に「いわゆる労災隠しの排除について」という通達を出したが、以後、特別の対策はなく「今は通達を徹底させるとしか言いようがない」(労働基準局)。同省が「労災隠し」と公式に認めているのは、労災のときに死傷病報告をしなかったために労働安全法違反で摘発したケースだけ。その数は年間約70件に過ぎない。 【大島秀利、清水勝】


11月9日  職場のいじめ電話相談 東京、大阪で開設
東京管理職ユニオンと管理職ユニオン・関西は、リストラなどに絡んだ職場のいじめが増えているため、十日から三日間、東京と大阪にホットラインの電話を開設、相談に応じる。
 東京管理職ユニオンによると、中高年だけでなく若い人にもリストラが広がっているのが最近の特徴。相談の事例では、仕事を取り上げられコピー取りや草むしり作業をさせられ、執拗(しつよう)に退職を迫られた三十代の女性研究職のようなケースが目立った。
 上司から繰り返し「退職願」を書くよう迫られて自律神経失調症になった二十代の事務職のケースなど病気、通院に追い込まれる人も増えているという。
 同ユニオンは「業績が悪くなるとすぐに解雇する企業が増えている。合併や分社化など企業再編による解雇も多く、働く者に過酷な状況が続いている」としている。

 

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