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第1講義室  INDEX
1.失われていく「原風景」
2.過疎化が引き起こす諸問題
3.何が過疎化を引き起こしたのか?

4.過疎対策と公共事業
5.どんな過疎対策がとられてきたのか?
6.何のための過疎対策だったのか


.失われていく「原風景」

 誰でも心の中に、それぞれの「原風景」と呼べるものを持っていることと思います。でも、「日本の原風景」という場合、多くの人々がいわゆる「田舎の風景」をイメージするのではないでしょうか。そして、多くの人々がそのイメージに対して何らかの「安らぎ」を覚えるのではないでしょうか。なぜならこれこそが、我々日本人の心の原点、共通の「故郷」と呼べるものだからです。

 しかし現在、この共通の「故郷」が失われつつあります。過疎化によって激増した老人世帯は、いよいよ農作業にも支障をきたし始め、農村のあちらこちらに耕作放棄地が見られるようになりました。景観は一変し、かつての豊かな農村の風景も失われつつあるのが現状です。


 農村がここまで疲弊、衰退したのはなぜでしょうか?最も大きな理由は、かつての高度経済成長時代に多くの若者たちが都会に憧れ、さらには職を求めて農山村から都市へと流出したことにあります。また当時、そうした時流に流されず農山村に踏みとどまった若者たちも、今では60〜70歳代となり、徐々に現役を退く年齢となりました。でも、若者に世代交代しようにも、肝心の後継者がおらず、結果として集落そのものが自然消滅の危機に瀕しているのです。

 また、かつてはこうした就業・就学のために農村の若年層人口が都市に出ていくといった流出形態、すなわち「社会的減少」が主であったのに対し、現在では出生数そのものが減り、逆に死亡数が出生数を上回る「自然減少」の段階に至っています。農山村の過疎が都市の過密によってもたらされていたのは既に過去のことであって、今後はこの「自然減少」という過疎地域内部の要因により、過疎化が進行することになるでしょう。


.過疎化が引き起こす諸問題

 さて、一口に農村といっても、その土地利用形態によっていくつかのレベルに分けられ、その類型区分としては、@都市的地域、A平地農業地域、B中間農業地域、C山間農業地域の四分類があります(表1−1)。この区分にしたがって全国の3,221市町村を分類すると、都市的地域が713(22.1%)、平地農業地域が755(23.4%)、中間農業地域が1,020(31.7%)、山間農業地域が733(22.8%)となります(2000年現在)。


 このうち、中間農業地域と山間農業地域を合わせて「中山間地域」と呼んでいますが、この分類によれば、中山間地域に属する市町村数は1,753(54.4%)となり、実に全市町村数の過半数以上を占めることになります。そして現在、この中山間地域において、過疎化をはじめとした農村問題の今日的危機が集中的に現れているといわれているのです。

 特に、以下に挙げた4つの問題は、この地域における共通の課題となっており、早急かつ抜本的な対応が求められています。

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人口の自然減少
 A若者定住型就業機会の不足
 B集落の崩壊
 C耕作放棄と農地の荒廃


 まず、「人口の自然減少」ですが、先述したとおり、既に自然減少の段階を迎えるに至った市町村においては、今後、人口増加はおろか人口の維持すらも極めて困難な状態にあります。
 また、こうした自然減少をくい止めるために若年人口の流出を防ごうにも、多くの中山間地域では、農林業の他は土木建設業や誘致された零細製造業等しかなく、仕事はあるものの就きたい仕事がないという「労働力需給のミスマッチ」が深刻となっています。結果、若者達はこれら業種を敬遠し、都市部の第三次産業等に職を求めて社会的流出を繰り返してきました。このことが、中山間地域における若年層の空洞化現象を引き起こしたといえます。
 さらに、過疎化した町村を小さな集落単位で見ると、集落崩壊が目前に迫っていることがわかります。集落の構成要員の大多数を、単身老人や二人暮らし老人世帯が占め、さらには後継者となるべき18〜40歳層が現にいるか、あるいは将来Uターンする見込みがあるという世帯が、実に半分にも満たない状況となっているのです。
 また、これら要因によって、山間棚田をはじめとした耕作放棄地の増加や山林の不在地主化が進んでおり、農山村の自然環境や景観の悪化も進んでいます。このことは当該地域だけの問題ではなく、森林や水田の保水能力の低下となって下流の水害要因を拡大させていることから、国土全体にかかわる重要な問題と言っても過言ではありません。
 こうした問題が中山間地域で顕著に見られる理由としては、まず中山間地域そのものが持つ条件不利性があげられます。中山間地域はその性質上、他地域と比較して諸条件面が不利であることは否めません。基幹産業である農業だけ見ても、狭小で傾斜のきつい農地しかなかったり、消費地から遠いといった自然的・経済的条件の不利性が認められます。例えば2000年における農家一戸当たりの農業所得を見ますと、全国平均は1,147千円ですが、これを100とすると、都市的地域が1,503千円(131)、平地農業地域が1,184千円(103)、中間農業地域が1,052千円(92)、山間農業地域が648千円(56)となり、山間農業地域の農業所得は平地農業地域のおよそ半分にすぎないことがわかります。こうしたことから、中山間地域における農業は担い手不足が進行し、急速に崩壊しつつあるのです。


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