10/21第4回林眞須美さん支援会集会報告(死刑と人権bP43)


「林眞須美さんを支援する会」第4回集会

「林眞須美さんを支援する会」の第4回集会「和歌山カレー事件の謎に迫る市民の集い」が行われた。
眞須美さんへの一審、二審の死刑判決が
@「カレー鍋を覗き込んでいた」という女子高生の目撃証言は信用できる
Aカレーと林家から検出されたヒ素は同じ
B他に犯人の可能性のある者はいない――として行われており、眞須美さん無実を勝ち取るためにはそれをくつがえしていく必要がある。この日の集りはその事に焦点を当てたものだった。

★三浦和義さんの発言 

◆都合の悪い証拠を隠す検察
「スジ」のおかしい事件には、共通するものがある。それをこの事件でも、当初から報道で感じた。
自分の場合も、まさに「スジの悪い事件」だった。
1985年に逮捕され、15年間近く鉄格子の中に閉じ込められ、4年前に無罪が確定した。その過程で、絶対に許すことのできないことがあった。検察が無実を示す証拠を隠し続けていたことだ。
 ロス市警は「あなたは強盗にあったというが、その犯人を見たというのはあなただけだ」と言い、日本の警察・検察、マスコミもウソをついていると言った。
 弁護団がアメリカで目撃者探しを頼んでいた探偵が、ぼくらが銃撃されるのを目撃していたスペアという人を見つけ出した。弁護団はその目撃者に会って詳しい供述調書をとり、東京高裁に出した。スペアさんは事件直後、日本の警察・検察から聴取を受け、供述調書も取られていた。検察は15年間、その調書を隠し続けていた。弁護団が法廷で指摘しても、検事は「そんな調書はない」と言う。しかし、裁判所が「それでは証拠開示命令を出しましょうか」と言うと、その次の法廷で「探したらありました」と出してきた。驚いたのは、その調書を取ったのが、その公判を担当していた検事本人だった。
 事件は、ぼくが言っていた通りの強盗事件だったことを、検察は最初からわかっていた。それにもかかわらず起訴をした。

◆逮捕されると犯人に作り上げられる

 警察・検察は、一度逮捕すると、どうしても犯人に作り上げる。そのために、逮捕された人を犯人らしく仕立てる目撃調書などを作る。時には関係者に免責を与えて被告人に不利な証言をさせ、それを「状況証拠」にする。そうして、被告人に有利な証拠は隠す。和歌山カレー事件もまったく同じ。
 裁判官たちは、警察・検察が作ったそういう「証言」や「状況証拠」で判断する。ロス事件の一審もそう。
 いま、同じ立場に眞須美さんがおかれている。ぼくの場合は、弁護団が有利な証拠を確保し、法廷で開示もさせた。しかし、カレー事件では、眞須美さんに有利な証拠は隠されたまま。
 ぼくが初めて面会した時、眞須美さんは子供たちのことばかり話していた。ぼくは「眞須美さん、あなた、このままだと死刑判決が確定してしまいますよ、もっと自分のことを考えてください」と言った。今、眞須美さん自身も一生懸命、冤罪をわかってもらおうとしている。
 自分がやってもいないことで、何年も拘置所に入れられる。それがいったいどういうことか。どんな気持ちになるか。もっていきようのない怒りに、「なんで自分が」と苦しむ。そんな時に、「おもて」にいる人たちからの手紙や面会に、どれほど勇気づけられる
か。眞須美さんはいま、大阪拘置所にいる。激励のはがき一枚でも出してほしいと思う、と。

★高見秀一弁護士の発言 ◆マスコミが「毒婦」にした

私は、一審の裁判から弁護団に加わってきた。マスコミが眞須美さんを「毒婦」にした。家を取り巻いた報道陣に眞須美さんがホースで水をかけている映像が何度も放映され、それが彼女のイメージにされた。
 捜査段階で彼女は黙秘権を行使し、一通の調書もない。それも非難された。弁護人にも抗議が来て、マスコミの論調も「本当のことをしゃべらせるのが弁護士の仕事だ」「黙秘はけしからん」という風潮が作られた。
 事件が起きたのは98年7月25日。
 捜査は、非常にお粗末。資料、写真がきちんと残っていない。
 「スプリング8」を使ったヒ素の鑑定分析にも問題がある。林家から検出されたとするヒ素とカレーから検出されたヒ素が同じかどうか。鑑定した中井教授は「同じだ」と結論したが、その結果を起訴前にマスコミに話し、「悪事は暴かれるということを立証したかった」と言っている。鑑定の中立性のなさを示す発言だ。
 12月29日に起訴されたが、動機は不明のまま。保険金詐欺は事実のものもあるが、カレー事件は、金と関係のない事件。それを類似事件として無理やり起訴した。
 99年5月の初公判冒頭陳述で、検察は「被告人の悪性格を立証する」として、事件と関係のないことを並べた。弁護団は「事件と関係がない」と異議を申し立てた。
 動機について、検察は一審で「地域住民に疎遠にされて激昂した」と主張したが、判決はそれを否定した。つまり、動機はない。それでも@「カレー鍋を覗き込んでいた」という女子高生の目撃証言は信用できるAカレーと林家から検出されたヒ素は同じB他に犯人の可能性のある者はいない――として、死刑判決を言い渡した。

◆黙秘権を否定した二審判決

 眞須美さんは捜査段階、一審法廷で黙秘したが、二審では保険金詐欺について具体的に証言した。しかし、大阪高裁は「最初に言わなかったことを突然言っても信用できない」とした。
 「やっていないのなら、最初からやっていないと言わないのはおかしい」と。マスコミや世間一般も同じ言い方をした。
 しかし、被告人は、一切の証拠を持っていかれ、国家機関とたった一人で対峙しなければならない。自分の言い分を言うとしても、あいまいなことや記憶の間違いは往々にしてある。100言うとして、一つでも間違いがあると信用してもらえない。だからこそ、黙秘権がある。
 一・二審有罪判決の決め手にされたのは、カレーを作っていたガレージの向かいにある家の二階から見ていた、という女子高生の「眞須美さんがカレー鍋を覗き、湯気が上がってのけぞった。タオルで汗を拭いていた」という証言。
 しかし、この証言には信用性がない。彼女の証言では、眞須美さんは「白いTシャツを着ていて髪の毛は長かった」となっているが、当日眞須美さんは黒い服を着ており、他の証人も捜査段階では「黒い服」と言っていたし、当時、眞須美さんの髪は短かった。
 ところが、法廷では、他の証人も「白い服」に合わせた。弁護団は、捜査段階での住民の聞き取りに関する捜査報告書の開示を求めたが、裁判所はそれを認めなかった。検察は都合の悪いことがあるから、証拠を出さない。
 弁護団はいま、上告趣意書を作成中。その中で、やはり女子高生の目撃証言が問題になる。そもそも二階からそれらが見えたのかどうか。
 眞須美さんの二女は、「ガレージの中でずっとお母さんと一緒にいた」と証言しているが、裁判所はそれを「信用できない」とした。上告審では、女子高生の証言を崩すことが大きなポイントになると思う。

★弁護団の検証実験報告

この日、弁護団が行なった「目撃証言」検証実験の報告があった。これは、「女子高生の目撃証言」に対し「ほんとうに向かいの家の二階からガレージの奥の動きが見えるのか」の検証実験。
弁護団が、ガレージと「目撃者」の位置関係を示した略図、「目撃」状況の警察の再現写真、この日実施した検証実験の写真などを映しながら、実験の結果を説明した。
※現場の略図。女子高生が目撃したという二階から、カレーを作っていたガレージの奥との距離は直線にして約15メートル。カレーは、「ずん胴鍋」2つで作られた。

◆女子高生が目撃したのは「別人」ではないか

女子高生「目撃」証言のポイントは三つ。
@「眞須美さんがガレージに一人でいた」
A「彼女がカレー鍋の蓋を開けた」
B「その時、鍋から湯気が上がって眞須美さんがのけぞった」
ほかに、眞須美さんが、ガレージの中をぐるぐる歩き回っていた、という供述をした。
 女子高生証言では、眞須美さんの服装は「上は白、下は黒、首にタオル」となっているが、当日、眞須美さんは黒い上着を着ていて、タオルも巻いていない。そして、眞須美さんは、ずっと二女と一緒にいた。女子高生が目撃したというのは「一人」。
 さらに、向かいの家の二階からガレージの奥の動きが実際に見えるのか。
 法廷証言では、女子高生が2階の部屋の網戸越しに、それもレースのカーテン越しにガレージを見たことになっている。レースといっても非常に布地の部分の多いカーテン。同じものではないが、よく似たもので実験した。
 その結果、カーテン越しでは個人の識別が不可能なこと、女子高生証言にあった「カレー鍋の湯気」は、とても見えないことがはっきりした。服装、人数などから考えて、女子高生が見たというのは、実は違う人だったのではないか。そう考えると、女子高生証言は、むしろ眞須美さんの無罪を示す証拠になる可能性がある。 

●質疑 ★黙秘について ◆黙秘の理由

眞須美さんが一審で証言しなかった理由、黙秘を通させたということについて弁護方針は失敗だったと思うか?の質問
弁護士から、「なぜ黙秘をしたか。それは有罪になると思っていなかったから」「黙秘権というのは法廷でもずっと黙っていることができるしそれを一切不利益に扱ってはいけないという権利だからそれを行使したまでのこと」「日本の裁判は被告人は100しゃべるうち2つくらい客観的事実と違うことをしゃべっていると残りの98は信用されなくなる。人間の記憶なんて曖昧だから二つくらい事実と違うことをしゃべってしまうかもしれない」だから黙秘したと。では、控訴審ではなぜしゃべったのか、について。「それは一審で有罪になってしまったから」と。方針が誤まってたかどうかはわからないが、そうせざるをえなかった、と語る。

◆やってない人は裁判にかけられる現実感がない

弁護士から、林さんご夫婦は逮捕される前、マスコミからインタビューを受けいろいろな発言をしている。無防備な状態でいろんなことを言ってしまうことはある。「現実にやってない人は、裁判にかけられるという現実感もないわけですから、いろんなことを言ってしまうと思う」と。「人間だから大げさに言ったりすることはある。そうあったとしても、それで不利になるというのはおかしいと思う」と。裁判にはそのビデオテープが採用されたことから、公判の中で証言の食い違いを避ける為の黙秘だったとも。

◆しゃべると警察は潰す

三浦さんが自分の経験を話した。公判では全て事実をしゃべったが、捜査段階では一言もしゃべっていない。23日間黙秘した。弁護団からも「これから三浦さんに力を与えてくれるのは23日間黙っていることです。あなたがしゃべるとそれを警察は全部つぶします。あなたに有利なものは全て警察は隠すでしょう」と。そうすることが無罪判決につながった、と。

★ヒ素について ◆再鑑定

カレー鍋から検出されたヒ素と林家から出てきたとされるヒ素が同一なことを主張する中井鑑定に対抗してそれを否定する科学者はいないかの質問に対して。
弁護士ー捜査の段階で行われたのが中井鑑定。裁判になってから裁判所が採用した鑑定人がスプリング8で鑑定をやっている。結論的には同じ結論になっているが、データーの読み方、補正の仕方でだいぶ違ってくる。一審の裁判所による鑑定書というのは大きく言うと二つある。最初の「鑑定書」と「鑑定補充書」。
初めの鑑定が出てくるまで1〜2年かかっている。弁護人が中身をついていくと中井鑑定と違ってむしろ、同一とは言い切れないではないかという結論が出てきた。しかし、裁判所は弁護人に言うことなく、その鑑定人に補充意見を求めた。元の鑑定書のままでいいのか、と。すると「補充書」と言うのが出てきて中身は前の「同一かどうか分からない」ではなくて「同一である」という結論になっていた。それは訂正書でなければならないのに補充書になっている。

◆指紋

警察が証拠としている祭会場から見つかったとされる紙コップ、林家から見つかったというヒ素が入っていたプラスチック容器から眞須美さんの指紋は出ているのか、という質問に対して、指紋は全くでていない。

◆他にも亜ヒ酸を扱っていたのでは

弁護士ー園部地区あるいは和歌山市でヒ素を扱っているようなものがなかったのかということだが、白アリ駆除にヒ素はとても有効な薬物で昔はヒ素を扱っている人は相当数いた。ヒ素に接触する機会があるひとはいなかったわけではない。しかし、異同識別ということで同じ時期の同じ工場の同じロットでつくられたヒ素であるということで中井鑑定は同一の砒素であるということを結論付けている。

◆林家で見つかったヒ素への疑問

4日目に林家から砒素が見つかったという。林さんが犯人だったらという前提で判決文を読むと、犯人だったらとてもああいう状況ではないというのがいっぱい見えるという質問。
 弁護士ーこれについて、家全体、庭も含めて班に分かれて一つ一つ潰していった。一部屋一部屋やっていったんで台所というのは4日目の順番だった、と。彼らからすると証拠を探しに入ったのだから、あらゆるところ、可能性あるところ探していったはず。
自宅台所の流しの下の開き戸、調味料とか食器を入れてる場所からプラスチック容器みつかった。その容器について林さんも家族全員が見てない。しかも、「白アリ薬剤」と書かれていて、あまりにもうまくできすぎていてる。家族は「そんなものはなかった」と言うが、それを裁判所は信用しない。

★元従業員の存在

林さんの「悪人格」を言おうとして保険金詐欺をしたといわれている。保険金をかけられて殺されそうになった元従業員は何回も林さんの家でものを食べて体が悪くなったと言っている。その人のことについて。
 弁護士ー彼は、警察の保護下にあるので我々も話を聞きたいが聞けない。砒素というのは速効性かあるので、体内に入るとすぐに反応がある。ところが彼は、一時間、二時間がたって反応ガでいる。彼が体内に入れたものが砒素なのかは難しい問題がある。それは鑑定されているわけではなくて彼の供述からそうだと評価されてる。その点について我々はそれは砒素ではなかったと思っている。彼から本当のこと聞きたい。

★ハードルは高いがやらざるをえない

恵庭事件の場合、上告を出して僅か半年で棄却決定が出た。調査官も読んでいないのではないかというぐらいのスピードで出てくる。上告の趣意書なり補充書なりだしていく上で調査官が絶対目に留める、そういう理由書を作っていくという大変な作業になると思う。益々前よりハードル高くなってる。その中でかんがえていること、について。
 弁護士からは一審二審の段階における裁判所の認定した矛盾をついていくこと、裁判所が有力な証拠としているものが実はそうではないことを追及していくこと、それから新しい証拠をつき足していくことも必要。しかし、よく議論になるのはじゃあ、眞須美さんでなければ誰なんだいう形でこの事件は常に議論される。あれでは有罪証拠といえないけれど、眞須美さんでなければいったい誰だったんだろうかという話になって来る。一審二審の判決にそれが露骨に出ている。一番犯人らしいじゃないか、彼女が。大変難しい場面になる。最高裁で調査官の数は今22人。それが膨大な数の刑事事件をやっているわけで彼らの目をこちらに向かせること。彼らに納得させること。至難の業だが、やらざるをえない。

★会場からの発言ー「くそばえ」との連帯はできない

浅野健一さんから発言があった。テレビで林眞須美さんと秋田の事件の被疑者と並べて映像を流している。水を撒くシーン。当時メディアの取材報道陣が、林家を取り囲んだ。そこで彼女が抗う姿勢を見せたシーンをあたかも人格を攻撃するようなこと、しかも何の関係もない秋田の事件と並列するという、まったく卑劣なやり方をしている。このことについて抗議の声をあげるべきだと思う、と。いまのテレビに何が信用できるか。テレビ局の中に良心的な人もいる。でもそうした人たちはきちんと抗議する人たちを信頼しているはず。辺見庸さんが「くそばえ」と呼んでる「コメンテーター」のひとたちと私は連帯のしようがないと思う、と。眞須美さんの映像を勝手に流しており、それは肖像権の侵害だし人権侵害だから、テレビ局に最低限このビデオを提出させるということをやろうとしており協力を訴えた。

最後に

この日体調が悪く参加できなかった林健治さんに代わり子供さんたちが立ち上がりあいさつした。
「両親のために集っていただいてありがとうございます。これからいろんなこと学んで弁護士さんや支援者の人たちとできるだけ協力して頑張っていきたいと思っていますのでよろしくお願いします」と長男。
次女から「母とは家からガレージに行くとき一緒に行きましたし、ガレージでずっと一緒にいたし離れた時間はない。家に帰ってきたときも離れたときはない」と改めて眞須美さんと一緒にいたことを発言した。
事件当時4歳だった三女も「これからもお母さんのことよろしくお願いします」と。
そして長女から「今日は皆様本当にありがとうございました。一回一回支援会に参加するたびに人数が増えてきてるのを本当に感動しております。最初はきょうだい四人からのスタートだったんですけども今はこんなにいろんな人に支援して貰ってものすごく嬉しく思っています。これからもお願い致します」と話した。  

林眞須美さんの支援する集りはこれで4回目。回ごとに参加者が増えている。マスコミばかりだった参加者の層も市民へと変ってきた。それは一つには、眞須美さんの無実を訴える家族の姿がいつもあるからなのだろうと思う。
 
                                               まとめ責・坂口
                                       


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