Page 1(Vol.1〜Vol.20)



Vol.20  『連鎖』・・・真保裕一 著 (講談社)

放射能汚染食品の輸入に関連して、自殺に見せかけた殺人未遂が発生する。 調査を進めていくうちに暴力団の麻薬の密輸もからんできて、 話はより複雑になっていき最終的な展開が全く詠めない。 しかし、あまりにも話が複雑すぎてちょっとわかりにくいような気がしないでもない。 もう少し単純なストーリーの方が読者には理解しやすいのではないだろうか。

そうは言っても、犯人が捕まってこれで終わりと思わせておいて、 その後2度にわたってどんでん返しがあるあたりはすばらしい。 一番信頼していた2人に裏切られ、 しかもその2人にはそれぞれ事件の真相を歪曲しなければならない事情があり、 殺人未遂を利用していった理由には充分に読者を納得させるものがある。

第37回江戸川乱歩賞受賞作。



Vol.19  『最後の相場師』・・・津本陽 著 (角川書店)

伝説の相場師・是川銀蔵をモデルにした作品。
70歳を過ぎてそこそこの資産もあり、何の不自由もない悠々自適の生活を送れる状況にありながら、 株式相場の世界で勝負に出た老人を通して男の生き方を迫真のタッチで描いている。

株式相場の小説というと金儲けといういやらしい世界を描いているように思うが、 この小説に限って言えば、それほどいやらしさは感じない。 というのは相場を張るのは金儲けのためではなく、 自分の考えを確かめるためだという姿勢が常に表面に出ているからではないだろうか。 確かに最終的には相場で大儲けし、富と名声を勝ち得るのだが、 そこに至るまでの過程での自分の経済に対する考えを頑固に貫き通した姿には爽快なものさえ感じてしまう。

またこの老人の妻の存在も見逃すことはできない。
相場を始めるときには「あんたの好きにしなはれ」と言って何の愚痴も言わず、 何十億と損したときも「年金で生活していけたらええ」と言い、少しも動揺しない。 この相場師が成功したのも経済を見抜く力があったことは当然だが、 肝の据わったこの妻の存在が大きかったのであろう。



Vol.18  『黒パン俘虜記』・・・胡桃沢耕史 著 (文藝春秋)

この作品は筆者自身が体験した捕虜生活をベースに描かれた作品だ。
このタイトルを見たときシベリア抑留の話と思ったが、 連れていかれたのはソ連でなくモンゴルでちょっと舞台は違っていた。 しかし話の内容は大体予想していた通りで、収容所での過酷な生活や飢えと寒さに耐える様子には、 極限状態におかれた人間のもつ本能を見せつけられたような気がする。

私見ではあるが、そもそもソ連の参戦については常々疑問を持っていた。 戦争中、日本とソ連は日ソ不可侵条約を結んでいたのに終戦数日前にいきなり参戦してきて、 日本人を捕虜にし、北の原野に連れていった。 そして強制労働をさせ、多くの人が死んでいったという話を聞くたびに 「おかしいんじやないか」と思っていた。 この作品の中でもソ連の意向でモンゴルに多くの日本人捕虜が連れて行かれ、死んでいる。 しかしその大きな原因は、同じ日本人捕虜の方にあるということがわかり、少し驚いている。 つまり同じ捕虜同士で抑圧や搾取する者とされる者との関係が自然と出来上がり、弱い者から死んでいく。 極限状態では平等などということは考えられないのだ。

このような暗く厳しい話題であるにもかかわらず、サラリとした文体でまとめられているのは、 読む側にとってはとても読みやすくなっている。 日本へ帰りたいがために、共産主義を理解したような態度をとっている下りなどは、 不謹慎かもしれないが、悲劇を通り越して、むしろ滑稽さを感じてしまう。

第89回直木賞受賞作。



Vol.17  『相続人の妻』・・・清水一行 著 (角川書店)

一代で証券会社を築き上げた創業者の、長男が証券会社のオーナーとなり、 次男が系列グループを引き継いだがこの2人が対立していく。

長男はいかにもオーナーの坊っちゃんという感じで、責任感はなく、危機管理能力もない。 一方の弟は理論的で対応もすばやく、経営者の責任も自覚している。 2人の間の溝はどんどん深くなっていくのだが、事ある毎に口をはさんでくるのが長男の妻だ。 タイトルにもなっているこの「相続人の妻」がしゃしゃり出てくるたびに事態は悪い方向に進んでしまい、 結局夫を破滅へと導いてしまう。 この女は上流階級出身ということを鼻にかけ、猜疑心が強く、自己中心的でどうしようもない。 読んでいても腹が立ってくるくらいだ。 またこの本の表紙カバーも目のつりあがった厚化粧の女が描かれており、イメージとぴったりあっている。

つまらないメンツにこだわる描写は文中のいたるところに出てくるが、 夫が失脚した後もくだらない意地を張っている姿は筋金入りの「根性悪」だとしか思えない。 最後の数ページの描写はもう喜劇といってもいいくらいだ。



Vol.16  『スローカーブを、もう一球』・・・山際淳司 著 (角川書店)

表題を含めた8編のスポーツエッセイです。 その中には、山際淳司の名をスポーツライターとして一気に世間に知らしめた 『江夏の21球』も入っています。

スポーツには人を感動させる力がありますが、 このエッセイを読んでいると「スポーツをやっている人の数だけ、それぞれの生き様があるのだな」と 感じてしまいます。ここで取り上げられているのは有名選手の話ばかりではありません。 むしろ、ボートや棒高跳びといったマイナーな競技の、 ほとんど誰も知らない選手にスポットライトが当てられています。 しかもその瞬間瞬間では、それぞれ輝いてはいますが、 そこに至るまでの光と影を巧みに織り込んだ人間ドラマに仕立てられています。 その競技に対する思い入れや考え方などもそれぞれ違っていて、 単に「スポーツマンは純粋」という一般論では片づけられません。

また『江夏の21球』や『八月のカクテル光線』の緊張の場面では自分がどう考え、 相手は何を予測し、まわりはどう思っているのかが刻一刻と変化していき、 思わず自分がその場に居合わせたような錯覚を起こさせてくれる作品でした。



Vol.15  『保証人』・・・こずかた治 著 (徳間書店)

金融業者を題材にした小説だが、 いかにもワイドショー的な展開で少し興ざめだった。
たとえば女性社員がその道(極道の世界)で名の知られた人だったため、 同業者の大の大人がその女性社員にぺこぺこするというところがあるが、いかにも現実離れしている。 「飛ばし」という手口で借金を転がしていって、最後に破産するという手口も特に目新しいものでもない。
一頃話題になった商工ローンの手口は、少しなるほどと思える部分もあったが、 全体的にはストーリーの山場もなく、ただだらだらと読み終えたという感じだ。



Vol.14  『第一秘書の野望』・・・豊田行二 著 (祥伝社)

いかにも政治の裏側を赤裸々に暴き出しました、という作品。
大物政治家の秘書になった純粋だった青年が、政治の裏の世界にどっぷりつかってしまい、 やがてはその後継者候補に名乗りを挙げるまでを描いている。 その展開も新聞やニュースで報道しているような合法すれすれの資金集めの方法や、 組織ぐるみの集票作戦などがふんだんに出てきて一般国民としてはあきれてしまうことばかりだ。

主人公の秘書は決して清廉潔白な人間ではない。むしろ汚れ役を演じてきている。 読んでいてもとても同情できるような人間ではない。 それでも主人公をそんなに悪人と感じないのは、回りの人がそれ以上に汚く、卑劣な奴ばかりだからだ。 後継者争いで長男を起てようとする妻などは傲慢さがにじみ出ている。
政治の世界は欲と利害の渦巻いた世界であるということを、あらためて感じさせてくれる作品だった。
また「英雄色を好む」の言葉通り、 情交の場面がいくつかあるのも男性としては別の面からも楽しめた。(余談)



Vol.13  『背信重役』・・・清水一行 著 (徳間書店)

この作品は名前こそ千代田油化となっているが、 誰もがすぐに三菱油化を舞台とした三菱化成との合併のからんだ派閥抗争だということに気づくだろう。

実は私の家から5km程のところに三菱油化と三菱化成(合併して現在は三菱化学)が肩を並べて建っている。 四日市の石油化学コンビナートを作り上げたのはこの2社と言っても過言でないだろう。 また父が三菱グループの企業の社員で三菱油化や三菱化成とのつきあいもあったこともあり、親近感を覚えてしまう。

余談はこれくらいにしてこの作品だが、いわゆる役員の派閥抗争を描いているが、 そこに合併がからんできて、やや複雑な話になっている。 登場人物も15人の役員とそれを取り巻く人たちがいるので名前が一致せず、 何度も前に戻って読み返すという具合だった。
派閥抗争というのは、基本的に多数派工作に他ならないが、 主流派を倒して主導権を握った派閥が今度は新しい勢力につぶされていくという、 どろどろした人間関係がこの作品中には、余すところなく表現されている。 そしてこの多数派工作というのは、いつの時代も同じなのであろう。 どちらの派閥にも属さなかった者が自分の保身のために有利な方になびいていく姿は、いかにも現実にありそうだ。

それにしても清水一行の作品を読むといつも思うのだが、 舞台は誰もが知っている超一流企業であることが多い。 そしてどこまでが事実でどこからがフィクションなのかわからない。 この作品もそういう点でもすばらしい作品のような気がする。



Vol.12  『女重役』・・・清水一行 著 (光文社)

昭和56年、ダイエーが高島屋の株を買い占め提携を迫ったことから起きた 高島屋のお家騒動をモデルにしている。 そこでいたずらに問題を大きくしてしまった女重役は 「このままでは高島屋をつぶしてしまう」と言われたくらい評判が悪かったらしい。 小説の中では、この女重役はそれほど悪人としては書かれていないが、 「男性と同じように仕事をしたい」、「女でもやれることを証明したい」との思いがあまりに強すぎて、 大局を見誤ってしまうという結果になっている。

男社会の中でこの女重役が自立した女性として生きていくための、 仕事に対する情熱は認められる部分もあるが、取締役として経営陣に加わってからは、 あまりに感情で物事を解決しようとしていたきらいがある。 支店長としては有能だが、経営者としては失格というところだろうか。 自分の感情を押し殺してでも「会社にとっての利益は何か」ということを考えられる女性であれば、 こういう内紛劇を世間に暴露することもなかったであろう。



Vol.11  『違法弁護』・・・中嶋博行 著 (講談社)

さっそく中嶋博行の第二作を読んでみた。 『検察捜査』は検察の側から描いたものだったが、この『違法弁護』は弁護士の側から描かれている。 そしてもう1つ『司法戦争』と合わせて「法曹三部作」と呼ばれているらしい。

読み始めて最初に思ったことは、 トム・クルーズ主演のアメリカ映画「ザ・ファーム」に似ているということだ。 この映画は巨大なロー・ファーム(弁護士事務所)に就職したトム・クルーズ扮する新米弁護士が 事務所経営者の悪事を暴いていくリーガル・サスペンスだったと記憶している。
この作品もリーガル・サスペンスで巨大なロー・ファームが舞台となっている。 主人公の女性弁護士が事務所経営者の陰謀にはまっていくが、 最後には事件を解決する手助けをするというものだ。
前作でもそうだったが、今回も事件の裏にはそれぞれの組織(弁護士事務所・検察・警察)の 思惑が働いていてすんなり事件解決とはいかない。 ただ前作と違うところは、主人公の女性弁護士が上昇志向の強い鼻持ちならない女だということだ。 「なにか裏がある」と感じながらも出世を優先させ、 警察と対立していく姿は正義の味方という姿とは程遠い。 半分ほど読んだところでは、この女性弁護士は最終的に犯罪の手助けをして、 弁護士資格を剥奪され破滅していくという展開を予想したぐらいだ。 結果はそうはならなかったが、最終的には警察の捜査に協力したとはいえ、拍手喝采というわけにはいかない。 その点からも「ザ・ファーム」のトム・クルーズのような爽快感はない。



Vol.10  『検察捜査』・・・中嶋博行 著 (講談社)

「面白かった」というのが、この作品を読んだ感想だ。
この著者の名前も知らなかったし、もちろん作品を読んだこともなかったが、 現役の弁護士だけあって検察や日本弁護士連合会(以下「日弁連」)の体質がわかりやすく、しかも正確に記されているようだ。

この作品は「第40回江戸川乱歩賞」を受賞しているが、 その面白味は事件のトリックを暴いていくということではない。 それよりも読み進むうちに明らかになっていく予想もできない背景にあるような気がする。
ある殺人事件の担当になった女性検察官が事件を捜査していくうちに、 事件の陰に隠された日弁連の権力争い、検察のどす黒い陰謀が浮かび上がってくる。 醜い権力争いやとてつもない闇の世界の記述には 「法曹の世界はこういうものなのだろう」などと思わせてしまう。 あわせて、検察、日弁連、裁判所、警察などの縄張り意識も巧みに描かれており、その人間模様も楽しめる。

この作品を出した後、今度は弁護士側からみた『違法弁護』が出版されているようなので、 さっそく読んでみようと思う。



Vol.9  『燃えよ剣』(上)・(下)・・・司馬遼太郎 著 (新潮社)

この本を最初に読んだのは大学生の頃だったので、もう20年以上も前になる。 もともと日本史が好きで特に幕末物は大好きで読み漁っていた。今もう一度読んでみてもやはり面白かった。
この『燃えよ剣』は新選組の鬼副長・土方歳三の函館戦争で死ぬまでの生き様が描かれている。 新選組はご存知の通り幕府配下の人斬り集団で、その行動は全く時代の流れに逆行していた。 現代の評価でも坂本竜馬・高杉晋作・西郷隆盛らの評価に比べて幕府方の評価はさんざんなものだ。 それを作者は土方歳三を尊王攘夷、佐幕といった思想家としてではなく一人の喧嘩師として描いている。

歴史小説というものは史実を基本として架空の人物やエピソードを挿入し ストーリーを作っていくが、司馬遼太郎はこの辺が実にうまく全く飽きさせない。 ここでもお雪なる女性を登場させ、歳三の意外な一面をのぞかせている。

私個人としては「喧嘩は勝つためにやるんだ」という単純な歳三の生き方に少しひかれるところがある。



Vol.8  『小説帝銀事件』・・・松本清張 著 (角川書店)

実は私は今まで松本清張の本は読んだことがありませんでした。
テレビや映画ではいくつか観たことがあり、それなりに楽しんでいたのですが 本を読んでみようと言う気持ちにはさせなかったのです。 しかし、このタイトルを見たとき「一度読んでみよう」と言う気になりました。 帝銀事件という名をニュースやドキュメンタリーなどで知っていたからです。

帝銀事件は終戦後間もなく起きた、銀行員に毒薬を飲ませて12人を殺害した強盗事件です。 ご存知の方も多いと思います。 そして被疑者が死亡し、事件発生から50年を経過した現在も冤罪事件として法廷闘争が続いています。
逮捕された平沢貞通は状況証拠で固められて有罪となり、死刑が確定しました。 物的証拠がないということから現在であれば無罪となるのではないかとも思われます。 そして作者はこの事件の陰には当時のアメリカ占領軍GHQがあるのではないかと考えました。 事件の真相はわかりませんが読み進んでいくうちに警察の捜査がGHQの壁にぶちあたり、 平沢貞通が犯人にでっち上げられたのではないかと考えるようになってきました。



Vol.7  『鴻池一族の野望』・・・南原幹雄 著 (集英社)

8代将軍・吉宗の時代、大名貸しで力をつけていった鴻池屋が経済支配を企てる。 それを阻もうとする奉行所与力との闘いの様子を描いている。 タイトルからも陰謀と術策の匂いがぷんぷんしてくる。 しかし、その内容はテレビ時代劇のようで斬った張ったに終始していて、 期待していた策謀で相手を陥れるというものとはちょっと違っていた。 ストーリーも山場がなく、なんとなく一件落着してしまったという感じ。



Vol.6  『高麗奔流』・・・深田祐介 著 (文藝春秋)

北朝鮮の金正日による奇想天外なソウル制圧計画の国際冒険小説。
北朝鮮からソウルにつながるトンネルを掘り、 アメリカの軍服を着せたザイール兵と韓国の軍服を着た北朝鮮の兵士を送り込み 一気にソウルを制圧しようとする計画。
金正日と言えば大韓航空機爆破事件など実際にとんでもないことをやってしまうという イメージがあるので、この小説も本当なのではないかと思ってしまう。

前半部分はソウル制圧作戦実行のための登場人物とシチュエーションの説明で少し退屈に感じたが、 核心部分では次の展開が気になってしまい一気に読みきれる。 作戦が失敗して落胆するどころか最後の数ページで金正日が「再び南進すべし」と また行動を起こそうとして終わっている所も緊張感が持続したままで金正日の不気味さが伝わってくる。
主人公が女性でロマンスが加わっているのも読みやすさを増しているようだ。



Vol.5  『器に非ず』・・・清水一行 著 (光文社)

前回に続いて清水一行の作品です。 実はこの清水一行という作家は司馬遼太郎とともに私の最も好きな作家の一人です。

この作品はあの世界に冠たる「HONDA」の1975年の電撃的な社長交代劇を題材にしたものです。
当時の社長は本田宗一郎、副社長は藤沢武雄。 この二人が戦後の小さな町工場から今の「HONDA」の基礎を作り上げました。 その二人が突然そろって辞任してしまうのです。 そして「HONDAは本田家のものではない」と言って後継者に同時45歳の河島喜好を指名しました。 新社長が身内でなかった事、45歳と若かった事で当時のマスコミは美談として大きく取り上げました。

しかし清水一行はこの社長交代劇が本当に美談なのか?なにかウラがあるのではないのか? 副社長の藤沢武雄は本当に2のままで満足できたのであろうか?ということを、 この小説で藤沢武雄(小説の中では神山竜男)の視点で描いています。 そして裏付けとなる資料も綿密に調査しているようです。 「栄光の2」と呼ばれた男の心の内に秘めた社長の椅子への思いが実に細かく描写されており、 企業のトップ人事の内側を見せつけられたような気がします。
この作品は企業小説が得意な作者の会心作と言ってもよいのではないでしょうか。



Vol.4  『動脈列島』・・・清水一行 著 (光文社)

新幹線「ひかり号」から爆発物と脅迫状が発見された。 ここからこの作品はスタートする。
この作品はいわゆるサスペンス小説だが、「誰が犯人なのか?」というような 単なるサスペンス小説ではない。 公害という社会犯罪をいち早く扱った社会派小説と言ってもよいだろう。 この分野では松本清張が第一人者だが、 松本清張の後継者として清水一行が認められた作品でもあるのではないだろうか。

犯人側と捜査陣側からのそれぞれの描写も息をのむものがあり、スリリングな展開の連続だ。 そして新幹線の妨害予告をし、厳戒体制の中次々と予告どおり事を成し遂げてしまう様子は、 まさに痛快そのものだ。読んでいくにつれて自然と犯人を応援してしまい、読んだ後も爽快感が残る。
それでは何故このように犯人に感情移入してしまうのだろう?
おそらく公害という巨大な社会悪に、自分の利害抜きで立ち向かっていく姿に感銘を受けるのだろう。 正義感の押し売りは御免蒙りたいが、 この犯人の主張(おそらく作者の主張でもある)がいやらしく見えないのがすばらしい。

第28回日本推理作家協会賞受賞作。



Vol.3  『我が友 本田宗一郎』・・・井深大 著 (文藝春秋)

本田宗一郎の人となりを、さまざまなエピソードを紹介しながら、 親友としての目を通して語られている。
本田宗一郎といえば「ホンダ」の創業者であることは誰もが知っている。 一方、著者の井深大も「ソニー」の創業者として知られている。 この二人はともに日本を代表する企業の経営者として世界中に知られているが、 日本国内よりも海外での方が高い評価を得ている。 その生き様も、共に戦後の混乱期を自分の技術を拠り所として生き抜いてきただけに、説得力がある。

本田と井深は性格こそ違うようだが、互いに目指すところは同じだったので、 親しく交際していたようだ。この本を読むとその男同士の友情というものがひしひしと感じられる。



Vol.2  『レベル7』・・・宮部みゆき 著 (新潮社)

謎の言葉を残して失踪した女子高生と、完全に記憶をなくしてしまった若い二人の男女。 その女子高生の捜索と、記憶をなくした二人の身元調査の様子が交互に描かれていくが、全く接点が出てこない。
最後には見事にその二つがつながるのだが、 読者の興味を引っ張れるだけ引っ張るという作者独特の手法により、つい先へ先へと読み進んでしまう。 まさに宮部みゆきの真骨頂と言えるだろう。 個人的には前半部分の方が息もつかせぬ緊張感があり好きだが、 事件が明るみになってきた後半部分はちょっとだれたかな?という感じがしないでもない。



Vol.1  『45(よんじゅうご)』・・・大沢栄 著 (彩図社)

この『45(よんじゅうご)』は「雪女」「イーハトーブ」「裸電球」そして「万馬券」の 4編の短編集で、一貫して流れるテーマは”人の心の優しさと愛”。 この本を読むと、人間が本来誰もが持っている”優しさ”というものを再認識させられます。 そして、いつのまにか忘れてしまった人間らしい気持ちを呼び起こさせてくれます。
ストーリー展開も「えっ、こんなのあり?」という、 あっと驚く手法が取られているので読んだ人はびっくりするのではないでしょうか。

今の自分をもう一度見つめ直すチャンスを与えてくれるこの本は、 現代を生きる私たちのバイブルと言ってもよいものです。
あなたもこの本を読んで自分探しの旅に出てみませんか?




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