民法の基礎知識


「保証人」と「連帯保証人」では大違い
アパートやお金を借りるとき、よく「保証人」という言葉を目にする。 保証人というのは、被保証人がアパートの家賃を支払わなかったり、借金を返さなかったりした場合に、 代わりにその義務を負う人のことである。
それでは「保証人」と「連帯保証人」とでは何が違うのであろうか。
「保証人」は借金をした人間がどうしても弁済できないときのものなので、すぐに請求に応じる必要はない。 「金を払え」と請求されても、「まず、債務者に言ってくれ」と突っぱねることができる。 これは保証人に認められた権利で、「催告の抗弁権」という。
さらに、保証人には「検索の抗弁権」という権利がある。 これは債務者に資力があることを証明すれば、「まず債務者の財産からとってくれ」と突っぱねることができる権利である。
ただし、これらの権利は「保証人」だけに認められており、「連帯保証人」にはない。 連帯という言葉がついているように、債務者と連帯して債務を保証することになるので事実上債務者と同じである。
お金を貸す側が保証人を立てる場合に、 「連帯保証人」を求めてくるのはこういった事情からなのだ。

買ったものが横領品なら自分のもの、
盗品だったら返さなければならない
野菜や洋服をスーパーやデパートで買うとき、 その物の所有権はスーパーやデパートにあるのが普通だ。 しかし、本は書店が所有権を持っているのではなくあくまでも出版社にあり、 出版社は書店に販売を委託しているだけなのだ。 つまり、客が本を買うとその本の所有権は出版社から直接客へと移ることになるのだ。
では、友達から預かっている本を勝手に売ってしまったらどうなるのだろうか?
売り主は預かっていただけなので、その本の所有権を持っていない。 所有権を有する本来の所有者は売る意志がない。 となると買い主は本を返さなければならないようだが、そんなことはない。 「即時取得」という制度で買い主は所有権を取得することができる。
「即時取得」というのは、売り主に動産の所有権がないことを知らずに、 買い取ったり、占有を受け継いだときは、その物を自分のものにすることができるという制度なのだ。 つまり、詐欺や横領の犯人からそのことを知らずに品物を買ったとしても、 買い主は「即時取得」に守られているので、その品物を自分のものにすることができる。
それでは、泥棒から品物を買ったときはどうなるのだろうか? この場合は残念ながらすぐには買い主の物にはならず、2年間待たなければならない。 この間に、本来の持ち主から返してほしいと言われれば、返さなくてはならないのだ。

遺産相続で借金があったら
それを相続しなければならない?
  親の面倒をちゃんとみた子供には
遺産を多くもらう権利がある
相続とは被相続人(死亡者)の財産を引き継ぐことをいう。 財産とはお金や土地のプラス財産と借金などのマイナス財産とがある。 それでは借金がたくさんあったとき、その借金を相続しなければならないのか、というとそうでもないのだ。
被相続人(死亡者)の借金が多額でとても返せないようなときは、プラス財産もマイナス財産も相続しないと言う 「相続の放棄」をすればよいのだ。
また「限定承認」という方法もある。 これは一応相続はするがプラス財産の限度内でしか責任を負わないというものだ。 なお、これらの手続は、3ヶ月以内にしなければならないので、 期間経過後は借金があってもすべて相続することになるので注意が必要だ。
ちなみに「相続の放棄」や「限定承認」をした場合でも生命保険の保険金は受け取ることができる。 保険金でそのマイナス部分を埋める必要は全くない。 遺産の相続と保険金は別のものなのだ。
  父と子供二人。 兄は高校卒業以来家業に従事し、弟はまったく家業に携わっていなかった。 このケースで父親が死んだら遺産はやはり2等分すべきなのだろうか?
この場合、民法904条の2で父親の事業を長年にわたり手伝い、 財産の維持・増加に寄与したとして「寄与分」というものが認められ、 他の相続人より多く相続できると保証されている。 親の面倒をみた子供は相続において報われるようになっているのである。
「寄与分」が認められるのは、この家事従事型のほか、財産給付型、療養看護型などがある。 財産給付型は被相続人の事業に財産を提供して、被相続人の財産を増加させたりしたとき、 療養看護型は長年にわたり被相続人の看護や身の回りの世話をしたときなどに認められる。
「寄与分」は共同相続人の協議によって決めるものとしているが、 協議で結論が出ない場合は家庭裁判所の調停か審判で決めることになる。


愛人は男からもらった物はもらい得?
男が愛人関係にある女性に いろいろと貢ぎ物をするのは、昔も今も変わらない。
かつて愛人関係にあった男が女に貢いだ家を取り戻そうと思っていたところ、 女が所有権移転登記手続を求める訴えを起こした。 男はこの訴訟に対し、「2人の間の贈与契約は妾契約であり、公序良俗に反して無効である。 したがってこの訴えは失当である。」と主張し、裁判所も女の請求を棄却した。 そして今度は男が女に対して建物の明け渡し訴訟を起こした。 ところが女は、「民法の規定によって、自分に贈ったこの家は不法原因給付 (肉体関係を続けていくことを理由として家を贈ったもの)にあたるから、 男は返還を求めることはできない」と主張し、今度は女が勝訴するという奇妙な結果になった。
妾契約のような公序良俗に反する行為や不法なことを原因とする 贈与などは契約上無効なので、取り戻すことはできないのだ。
しかし、女性が「バッグや靴やネックレスを買ってくれたら結婚してあげる。」と言って プレゼントしたにもかかわらず結婚を断られたら詐欺罪で訴えることが可能だ。

自分の土地だと思い込んでいて、
相手も20年以上気づかなかったら時効成立?
「時効」ときくと権利を喪失するイメージがあるが、 逆に権利を取得する時効もある。これを「取得時効」という。
本来の土地の所有者ではない人間が偽造の印鑑や委任状を悪用して、 勝手に名義登記した土地を購入した場合、買主は残念ながらその土地は自分のものにならない。 しかし、買主は土地を使い始めて10年たつと、その土地の所有権を取得できるのである。 そして本来の土地所有者は所有権を失ってしまう。これが「取得時効」である。
この例は、自分の土地だと思い込むのも無理はない状況だが、 他人の土地とわかっていながら、 自分の所有として使い続けたら20年たてば同じように「取得時効」が成立するのである。
土地や建物は悪意のある他人によって取得時効されて、 泣く泣く所有権を失うこともあるということを頭に入れておこう。

ギャンブルで貸した金は
裁判で請求してもムダ?
  隣家の木の枝が越境してきても、
勝手に切ったり、実を食べてはダメ
マージャン好きのある男が、マージャンで負けて10万円払った。 今度は同じメンバーで20万円勝った。 しかし、その男は「賭けマージャンは無効だから払わない」と主張し、払ってくれない。 「それなら、前に払った10万円を返せ」と言うと「もらったものは返す必要がない」と応じようとしない。
この主張には正当性があるのだろうか? まず20万円については、賭けマージャンは民法90条の公序良俗に反する行為であるので 無効となり請求することはできない。それでは負けて払った10万円はどうだろう。 これは民法708条の不法原因給付にあたりこれも請求できないのである。
  隣家の柿の木の枝が自分の敷地内にまで伸びてきているとき、 勝手に木の枝を切り取ることはできるのだろうか? この場合、隣家に対して枝を切り取るように請求することはできるが、自分で切ってしまうことはできない。 もちろん、柿の木の枝になっている実も隣家のものだ。 たとえ自分の土地に落ちた柿の実であっても、やはり隣家のものなのである。
では、竹や木の根が境界線を越えている場合はどうなるのであろうか。 枝は勝手に切ることはできないが根は切り取ることができる。 しかし、何の損害もないのに切ってしまうと権利の濫用となってしまうおそれがある。


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