民法ではこう裁かれる


「時効」と思っても時効ではない場合もある
民法によれば、債権は一定期間が経過すれば消滅する。
たとえば、友人から10万円借りて10年が経過すれば、相手がその後返済するように求めてきても、 その債権は消滅時効によって消滅しているので、返済する必要はない。 ただし、このとき「時効が成立しているので払わない。」とはっきり言わなければならない。 このように明確にして初めて時効は成立するのだ。
それでは、サラ金からお金を借りて、返済ができずに逃げている場合はどうだろう。 このケースは商事債権となるので、時効は5年。 では5年間サラ金から逃げ続ければ時効が成立するのかといえば、そうともいい切れない。 5年の間に一部を返済すると、その時点から5年たたなければ時効は成立しなくなる。 これを「時効の中断」という。
サラ金業者は相手が行方不明でも「公示送達」という方法で裁判を起こし、 被告人不在のまま裁判が進行し、判決が下る。 民法の規定により、判決確定後10年はサラ金業者は行方不明者を追い回して返済を求めることができる。 差押えや仮差押え、仮処分などの法律上の手続でも「時効の中断」が認められるので、 一定期間が経過すれば、時効が成立しているとは限らないのだ。

離婚後に夫がもらった退職金を
妻は財産分与請求できる?
結婚して30年になる夫婦が、離婚をした。 いわゆる熟年離婚。離婚当時、財産もほとんどなかったので財産分与の請求もせず、 夫が不倫をした訳でもないので妻は別に慰謝料の請求もしなかった。 その後、夫に退職金が入ったので、妻はその一部を財産分与請求した。 離婚した後でも財産分与請求はできるのか。そもそも退職金は財産分与の対象になるのであろうか。
財産分与は通常離婚と同時に行われるが、離婚が成立してからでも請求できる。 相手がこれに応じない場合は、離婚届を提出した日から2年間は、 財産分与の支払命令を求めて家裁に審判の申立てをすることができるのだ。
それでは、退職金が財産分与の対象になるのか。 退職金というのは、長年勤務してきたことに対する会社の対価といえる。 妻の協力で会社で仕事をすることができたので、退職金を得られた訳で、それは夫婦の共同財産だとみなされる。 たとえ離婚後に入った退職金であっても財産分与請求ができるのだ。

夫婦の間には借金の時効はない   胎児でも遺産を相続できる?
婚姻中、妻が夫に100万円貸したとしよう。 夫婦の間が円満なら返済を督促することはないかもしれないが、この夫婦が10年後離婚したらどうであろうか。 「10年たっているから時効だ」と言われたら、妻はあきらめるしかないのであろうか。
民法には、夫婦間の金銭の貸借については特別の規定があり、 「夫婦間の債権は夫婦である間は時効にならず、離婚しても、6ヶ月間は時効にならない」と定めている。 だから、妻は堂々と返済を請求できるのだ。
  民法では、 「人は、生まれると同時に権利の主体となる資格がある」と定められていて、権利能力は出生のときから認められる。 ということは、母親のおなかのなかにいる胎児には権利能力がないということになる。
しかし、この考えを相続権についてあてはめてみると不公平なことが起きてしまう。 たとえば胎児のうちに死亡した場合、同じ親の子でありながら、 すでに生まれていた子供には相続権があり、まだ生まれていない子は何も相続できないということになる。
そこで民法886条で「相続が始まったとき、すでに胎児になっていれば、 その胎児は相続については生まれる前でも生まれているものとして取り扱われる。」 と規定しているので、胎児でも遺産の相続ができるのだ。 死産だった場合は、その胎児は存在しなかったものとして取り扱われる。


結婚を前提に肉体関係を結んだあと
結婚を拒絶されたら、慰謝料の請求はできる?
大学時代からのつきあいの、 あるカップルは卒業前に結婚の約束をしていた。 デートを重ねるうちに肉体関係を持つようになり、2度の中絶もした。その後、男は結婚を断り、別の女性と結婚した。 この場合、婚約不履行を理由として慰謝料を請求できるのであろうか?
婚約というのは、婚約指輪を交換したり、結納をしたりするが、本来は当事者の合意によって成立するもの。 結婚の申込をし、肉体関係を持っていたのだから、結婚の意志があったとみなさせる。
婚約を不当に破棄すると、損害賠償の責任を負うことになる。不当破棄とは、正当な理由なしに婚約を破棄すること。 相手の性的不能、性病、行方不明なども正当な理由と判断される。
ちなみに婚約不履行の慰謝料は50万〜200万円が相場。 肉体関係があるかないかで慰謝料に大きな差が出る。

好意で車に乗せてもらった人が事故でケガをしたら、
損害賠償はどうなる?
会社の帰り道同僚に 「駅まで乗せていって」と頼まれることがよくあると思う。 それで事故を起こし同乗者を負傷させた場合、 加害者である運転者は被害者である同乗者に全損害額を賠償しなければならないのだろうか。
このような問題を一般に「好意(無償)同乗」の問題という。
車に乗せてあげた側からすれば、「好意で乗せてあげたのに損害額を全額請求するなんて」 という思いがあり、同乗した側としては、「事故を起こしたんだから、全額支払うのは当然」と考えるだろう。 このような場合は、どういった状態で同乗するようになったかということが考慮されるが、 一般的には、ただ乗せてもらって事故にあったということであれば、 損害賠償額、慰謝料ともにほとんど減額されることはない。
しかし、2人で飲みに行って、運転者が大量にアルコールを摂取していることを知りながら、 同乗したとすれば、50%程度の過失相殺がなされる。

夫が借金をしたら妻はそれを返す義務はある?
民法においては「夫婦別産制」というのが原則。 結婚しても夫のものは夫のものだし、妻のものは妻のものだ。 夫婦のどちらか一方が結婚前から持っていたものは、結婚後もその人の特有財産となる。 また、結婚後に親から贈与を受けたり相続したりと、パートナーとは関係ない法的原理で取得した財産も、 その人の特有財産となる。
ただし、結婚後増えた財産があって、それが夫か妻のどちらのものとも判断できない場合は、共有財産と推定される。
財産が別々なら、借金もまた別々に扱われる。 夫の借金は夫の責任、妻の借金は妻の責任、自分以外の人間がつくった借金に対して支払いの義務はない。
さらにもうひとつ、日常家事債務という概念がある。 これは夫婦が普通の生活をしていくうえで、必要と思われる借金に対しては、 連帯して返済する義務を負うというもので、八百屋や魚屋のツケ、子供の学費、病院の支払いなどがこれにあたる。 夫の飲み屋のツケや遊興費のための借金などは日常家事債務ではないので妻に支払いの義務はない。


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