民法のびっくり判例集


政治家と同姓同名という理由で名前を変更できる?
兵庫県に住む田中さん夫婦に長男が誕生した。 その当時、活躍していた政治家の田中角栄にちなんで「角栄」と名づけた。 そのころの田中角栄は「日本列島改造論」を唱え、政界に大きな力を持っており、その後は総理大臣にまで上りつめた。
しかし角栄君が小学校2、3年の頃、ロッキード事件で裁判にかけられるようになると、 いままで「角ちゃん」と呼ばれていたのが「角栄」と呼び捨てになり、 そのうち「ロッキード」といじめられるようになった。 そこで角栄君が中学生になるとき、両親は家庭裁判所に角栄君の名前を変える申立てをし、 家庭裁判所は角栄君の悩みや苦労を理解し、名前を変更することが正式に認められた。
戸籍法によると、名前の変更は正当な事由がある場合に、家庭裁判所の許可を得て認められる。 「病気がちで運が悪い」とか「姓名判断ですすめられた」などは正当な事由とは認められない。

憲法違反なのに正当という
判決が出た不思議
  裁判官も判決文の表現に
注意しないと処分される
大阪の大手電気工業会社の 女性社員2人が「女性であることを理由に昇進や昇給で差別を受けた」として、 会社を相手取り損害賠償を求めた訴訟で平成12年判決が出た。
裁判長は「処遇の格差を生じさせた男女別労務管理は差別を禁じた憲法の趣旨に反するが、 公序良俗に違反したとはいえず、現時点での企業側の格差是正義務も認められない。」として請求を棄却した。
以上のような、男女別労務管理は憲法違反としながら、 男女の賃金格差は正当だとした判決に対して、男女を問わず反発が広がっている。
  1998年、タクシー運転手が客を殺害し、現金を奪った。 遺族はこの運転手とタクシー会社を相手取って、損害賠償請求を起こした。 その判決文のなかで「一般論でいえばタクシー乗務員の中には、雲助まがいの者や賭け事などで、 借財を抱えた者がまま見受けられる。」と指摘した。 この表現にタクシー業界や運転手で組織する労働組合などが「差別意識の表われだ」として猛反発。
結局、この裁判官は注意処分を受けることとなった。

殺人事件の時効後に名乗り出て、
民事裁判で損害賠償を命じられた事件
1978年7月25日に 静岡県富士市の銀行員が集金に出たまま行方不明になった。 10日後富士市の山中でその銀行員が千枚通しで首を刺されて死んでいるのが発見された。 集金バッグがなくなっていることから強盗殺人事件として捜査したが、犯人を特定できず迷宮入りした。
事件から20年近くたった1998年2月、ある男が富士署を訪れ、自分を含め4人で殺害したと名乗り出た。 しかし、事件から15年以上が過ぎ、時効が成立しているため、刑事訴追はできない。
なぜ名乗り出たかというと、「自分はガンで先の長くないことを知った。 良心の呵責から逃れることはできない」などと語ったという。 その男によると、遊ぶ金欲しさに男2人、女2人の4人で襲ったという。 共犯のもう一人の男も殺害の事実を認めているが、女性2人の行方はわかっていない。
被害者の両親は、その2人を相手取り1998年7月1日、1億2300万円の損害賠償を求めて提訴した。 民事訴訟で損害賠償を請求できる期限は20年。7月25日の時効成立直前の提訴だった。 2人は時効成立で刑事事件については問われないが、民事で罪を償うこととなった。
しかし、被告の2人は口頭弁論に出席せずそのまま判決となり、 原告の請求通りの損害賠償の支払いを命じた。謝るなら謝るできちんとけじめをつけるべきなのに、 遺族の感情を逆なでするだけの自分勝手な行動と言われても仕方がない。


不倫の損害賠償を否定した画期的な判決があった!
30年ほど前ある夫婦が平穏な日々を送っていた。 結婚して10もたった頃、夫は銀座のホステスに入れ込むようになり、やがてそのホステスは子供を産んだ。 それから4年後、妻がその事実を知り、夫を責め立て夫婦仲は破綻、夫は家を飛び出した。 しかし生活が成り立たないため、3年後、そのホステスの家に身を寄せた。 このころその女は独立して銀座に自分の店を持っており男からは何の経済的援助も受けていなかった。 そして妻はその女に対して、妻の地位を侵害したとして慰謝料請求の訴えを起こした。
東京高裁は、家を出た夫とホステスの関係は自然な愛情によって生じたものであり、 しかも、同棲生活を始めたのは、妻との夫婦生活が破綻した後だから、 ホステスの行為に違法性はなく、妻に対する不法行為にはならないとした。
しかし、妻が上告し、のちに最高裁はこの判決を破棄した。
ちなみに、これまでの判決によれば、 不倫の慰謝料は100万円〜300万円が相場のようだ。

輸血を拒否している患者に
輸血した医者に下された判決
  「男いらず」の一言で
セクハラと認定される
宗教団体の女性信者が 宗教的理由で輸血を拒否したのに勝手に輸血され、 精神的苦痛を受けたとして遺族が東大医科学研究所附属病院の医師と国に1200万円の損害賠償を求め、訴訟を起こした。
第一審は請求を棄却したが東京高裁は一審を破棄し、55万円の支払いを命じた。
判決はさらに、「今回のような手術を行うに際しては患者の同意が必要であり、 それは尊厳死を選択する自由も含めて、人の生き方は自ら決定できるという自己決定権に由来する。」との判断を示し、 病院側の説明義務違反を指摘した。そのうえで、「場合によっては輸血をして手術を行う必要が出てきたと判断した時点で、 輸血するという治療方針を患者に説明すべきだった」と結論づけた。
  千葉県松戸市の女性市議が、 男性市議から「男いらず」と言われたのはセクハラにあたるとして、290万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。 判決はその男性市議に計40万円の損害賠償の支払いを命じるものでった。この例は、言葉でセクハラと認定されたケースだ。
セクハラは大きく2つに分類できる。 性的な言動に対する女性の対応によってその女性労働者が労働条件で不利益を被る対価型と、 性的な言動で女性の就業環境を悪化させる環境型である。
セクハラ訴訟では、女性が勝訴する例が多いように感じるが、実はそうでもない。 当事者しかいない場所での行為であるため第三者からの証言が得られなかったり、被告が目撃者の上司であることなどから、 被告に不利な証言を避けたりするという事情があるからだ。

落語で居眠りした客が追い出されたのは誰のせい?
落語の独演会で居眠りした客を退席させるのは、 客の「聞く権利」を侵害するものなのか。
立川談志さんの落語独演会で、客席の最前列中央部に座っていた客が、落語の最中に居眠りを始めた。 談志さんは「やる気がなくなった」といって中断。 その客は主催者側の求めで退席させられたが、客は「プライドを傷つけられた」として、 主催者側に10万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。
判決は「主催者側の対応は社会通念上妥当」として、被告の全面勝訴だった。 判決理由の中で「居眠りによって演者の意欲をそぎ、演芸会続行において重大な障害となってしまうような場合は、 退出などの措置を取るのはやむを得ない」としている。
ある演芸評論家は、「居眠りそのものが悪いというより、 居眠りによって他のお客に迷惑をかけてはいけないということではないか」と、 客席のマナーのあり方について述べている。


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