(第71回)  蠅に化け、后に無事を知らせた悟空はまたも后に賽太歳を呼ぶよ  うに指示し、自分は侍女に化け、せっせと妖王に酌をする。また  ニコ毛をシラミに変え、シラミをとっているうちに偽物をの鈴と  交換する。宝鈴の奪取に成功した悟空は賽太歳に攻め入るが、賽     太歳は例の鈴を取りに戻る。偽の鈴を振る賽太歳に、悟空も本物  の鈴で対抗する。絶体絶命の賽太歳のもとに観音菩薩が現れ、火  を消してしまう。賽太歳の正体は観音の金毛こう(犬の一種)で   あり、朱紫国王の災難の理由を明かす。妖怪は本性に戻り、菩薩  に例の鈴を首にかけられ、菩薩と共に南海へ帰る。悟空は后を朱  紫国に連れ戻すが、后の体のとげが取れない。そこに紫陽真人が  現れ、とげの起源を明かし、呪を解く。三蔵一行は国王から通行  手形をいただき、出発する。  またまた妖怪の正体が神々の使いであり、その武器も彼等の道具であった。賽太歳の持つ鈴も太上老君の八卦炉にて鍛えられたものであり、そのため大火を発するのである。  この妖難にはそれなりの原因がある。 朱紫国王がまだ皇太子のころ、狩りに出掛け、孔雀大明王のひなに矢をあててしまう。その報いとして3年間皇后と別れの悲しみを与えるという罰を受けることとなる。その言葉を金毛こうが覚えており、国王にとってはそれが罪滅ぼしになったというのである。 (第72回)  三蔵自らお斎をいただきにいくと、女七人が蹴鞠をしている。三蔵を見るや、鞠を放り出し集まってくる。なまぐさものを出され、断わる三蔵を女達は縛り吊るしてしまう。三蔵の異常に気付いた三人、悟空が様子を伺いに行く。土地神を呼び出し、盤糸洞の女怪について聞く。蠅に化けた悟空、風呂場を覗き、今度は鷹に化け着物をさらっていく。八戒は女怪退治に向かうが、なまずに化けて一緒に風呂に入る。そして一撃食らわそうとしたが、女怪はへその穴から糸を出し、八戒はぐるぐる巻にされてしまう。八戒の姿をみた悟空、悟浄は三蔵救出に向かうが、女怪の養子の虫妖怪が立ちはだかる。が、悟空はニコ毛を七種の鷹に変え、一匹残らず平らげ、三蔵を救出し家を焼き払い出発する。  七人の女妖怪が温泉に入る場面が登場する。その温泉についてこんな詩が歌われる。   開闢よりこのかた      太陽の数はもともと十個   やがて弓の名人げいにより  九羽の烏は地に射落とされ   ただ金烏のみこの世に残る  これぞすなわち太陽の真火   天地に温泉は九個所あるが  いずれも九羽の烏が化けた   その九陽泉とは  香冷泉、伴仙泉、温泉、   東合泉、こう山泉、孝安泉、広汾泉、湯泉、   ここの泉は濯垢泉 と、いうことでいずれも太陽の落ちたところに温泉ができたのだと言う伝承である。 また、女怪たちの美しさに、げいの妻である嫦娥を例えている。 この嫦娥、げいが西王母からいただいた不老不死の薬を盗み、月に逃げ、蟾蜍になったという「嫦娥奔月」神話がある。また嫦娥と、十二個の月を生んだ常羲と同じとする説もある。 (第73回)  黄花観という道士の家を訪ねた一行だったが、そこは先の女怪の  親戚筋であり、女怪たちにそそのかされた道士は三蔵達へのお茶  に毒をもる。三蔵、八戒、悟浄は毒に侵され、怒った悟空は道士  に打って出るが、女怪の糸に退散する。土地神から女怪の正体が  蜘蛛の化け物だと聞き、しっぽの毛で70人のチビ悟空を生み、  7匹の蜘蛛を殺す。次に道士と合戦となるが、道士が正体を顕  す。両脇の下に1000個の目玉がついていて、そこから光を放  つ。光の中に閉じ込められ、地面を掘って逃げる。黎山老姆の化  身した喪服姿の女より千花洞の毘藍婆があの妖怪を倒せることを  聞いた悟空、大急ぎで助けを乞う。毘藍婆は息子の昂日星官が  練った針を持ち、悟空と共に黄花観に向かう。針を宙に放ると道  士の金光は消え、道士は歩くこともできなくなる。毘藍婆は三蔵  たちに解毒丹を与え、道士の本性・七尺もの大むかでを門番にす  るため連れて帰る。  今回の妖怪は久しぶりに純粋な妖怪、七人の女妖怪は蜘蛛、黄花観の道士は大むかでと虫の化身であった。 今回の大ボスの道士、純粋の妖怪また何の武器も持たないのに強い。脇の下の目から光を放ち、その光にあたった悟空の頭の皮が柔らかくなってしまう。これまで太上老君やら多くの神々の武器を耐えてきた悟空の石頭だが、はじめて傷を負うのである。  そんな道士の光をいとも簡単に押さえ、また軽く退治してしまったのが毘藍婆(仏教の十羅刹女のひとり)である。彼女の息子が昂日星官つまり雄鳥の化身、ということは毘藍婆は雌鳥ということになる。鶏ならばむかでなんかへでもないということである。 (第74回)  旅を続ける一行の前に、老人が立ちはだかる。悟空が小坊主に化  け事情を聞くと、この先に妖怪が出ると言う。悟空は老人を驚か  しただけで戻ってきてしまったので、今度は八戒が聞きに行く。  老人が言うには、獅駝洞に三匹の魔王がいるという。この老人、  実は太白金星であり、危険を知らせにきたのである。まずは悟空  が偵察に行くと、下っ端妖怪がひとり歩いている。悟空も同じ姿  に化け、小妖を騙して隊長と名乗り、小妖どもから三魔王の実力  を聞き出す。次に小妖に化け、悟空の噂を流し、臆病な妖兵ども  を退散させる。  またもや妖怪たちに目をつけられた三蔵一行だが、今度の妖怪がまた強いとの噂。太白金星の言うことでは悟空同様、各方面に顔が効くと言う。天宮に手紙を出せば、十一大曜も現れるという。 さて、その十一大曜、占星術での日・月・木・火・土・金・水・き・ほう・羅・計の十一星である。 (第75回)  小鑽風に化け、獅子・象・鳳凰の三魔王に相対すが、魔王をから  かった拍子に化けの皮が剥がれ、捕まってしまう。瓶に閉じ込め  られた悟空、瓶の中は言葉を発すれば火があふれ、蛇が這い出  し、火龍に苦しめられる。昔、菩薩から頂いた三本の毛を錐に変  え、脱出に成功する。三蔵のもとに戻った悟空、今度は八戒と共  に三魔王の洞に向かう。まずは悟空と大魔王の戦いとなるが、白  黒つかない。じれた八戒が撃ち掛かり、魔王は退散する。が、本  性を顕し悟空を飲み込んでしまう。腹の中で脅したり叫んだり、  魔王の飲んだ酒に酔っぱらい、ついに魔王は倒れてしまう。  この回の最後で、腹の中の悟空をどうにかしようと魔王は薬酒を飲むが、これを悟空自身が飲んでしまう。しかし、この酒ふつう二杯も飲めば腹が焼けるようになる、そんな酒を7、8杯も飲んで悟空も酔っぱらう。ここで悟空がそんなに酒が強くないと書かれている。そういえば、いつも飲んでるのは八戒で、悟空は果物を食べている。 (第76回)  命乞いする大魔王、悟空が出てきたところをなんとかしようとす  る。毛を縄に変え、魔王の心臓に縛り、鼻の穴から出ていく。三  人の魔王は襲いかかるが、縄を引っぱり大魔王を苦しめる。降参  し三蔵の見送を約束した大魔王だが、今度は二魔王が攻めてく  る。八戒が対戦するが、相手にならず連れ去られてしまう。八戒  救出に向かった悟空、八戒をからかい、へそくりを取り上げる。  今度は悟空対二魔王の戦いとなるが悟空の相手にならず、二魔王    の鼻を掴んで三蔵の所へ連れていく。三蔵に諭された二魔王と大  魔王は三蔵を送っていこうと言うが三魔王は納得しない。わなに  はめるつもりで三蔵一行を送っていき、途中の街で襲い掛かる。 (第77回)  悟空らと魔王たちの戦いはというと、八戒は大魔王に捕まり、悟  浄も二魔王の鼻に捲かれ、悟空もきんと雲で逃げるが三魔王に追  い付かれ捕まってしまう。三蔵と三人は蒸篭で蒸されてしまう  が、抜け出た悟空の呼び出した北海龍王によって難を逃れる。悟  空は催眠虫で見張りを眠らし、馬と荷物を取り返し三蔵達を助け    出す。が、やはり魔王たちに見つかり、悟空を除いてまた捕まっ  てしまう。宮殿に潜り込んだ悟空は三蔵を探すが、八戒悟浄とも  師匠は食われたと言い、怒った悟空は如来に会いに天竺へ飛ぶ。  如来から魔王たちの身元を聞き、文殊菩薩と普賢菩薩そして如来  と共に獅駝国へ戻る。悟空に戦いを挑まれ、迎え撃つ魔王たちの  前に主人たる文殊と普賢が立ちはだかり、大魔王と二魔王は青獅    子と白象の本性を顕す。三魔王だけが挑んでくるが、如来によっ  て捕らえられる。  八戒、悟浄そして三蔵を助け出し、一行は再び西へ向かう。  三魔王編の最終回、やはり今回も神々の身内が原因であった。 大魔王は文殊菩薩の乗る青獅子、二魔王は普賢菩薩の乗る白象であり、三魔王は孔雀大明王の兄弟・大鵬であった。 『そもそも、混沌が分かれたときは、天は子の会に開け、地は丑の会に闢け、人は寅の会にうまれたものだ。そこで天と地とはふたたびあい交わり、万物ことごとく生まれたことになる。さて、万物には、走獣と飛禽とがあるが、走獣は麒麟をもって長となし、飛禽は鳳凰をもって長となす。その鳳凰は、また交合の気を得て、孔雀と大鵬とを生んだ。』とある。  さて、この孔雀だが、もとは人を食らう最悪の鳥であった。如来は修業中、孔雀に吸い込まれるが、背中を裂いて出てくる。このまま殺してしまおうかと思ったが、仏母孔雀大明王に封じた。 三魔王は孔雀明王の兄弟なのだから強いはずである。 (第78回)  もと比丘国、いま小子城と呼ばれる国に着いた一行、どの家にも  男の子を入れた鵞鳥の籠があるのに気付く。宿で訳を聞くと、国  王の衰弱の薬として子供の心臓を服すため、側近の道士と皇后と  なったその娘の命で籠の中で飼われているという。夜中、悟空は  土地神・掲諦・功曹たちと共に子供を安全な所へ隠す。正装で国  王に御挨拶に行き、国丈となった道士と道・仏教の話をする。三  蔵が帰った後も悟空は偵察し、子供がいなくなった事を知った国  丈が三蔵の心臓を狙っていることを知る。宿に戻り、悟空は三蔵  を自分の姿に変え、自分は三蔵に化け、役人には自分が捕まるこ  とになる。 (第79回)  捕らえられ、差し出されたニセ三蔵に対し、国王はその心臓を所  望する。ニセ三蔵は腹を切りたくさんの心臓を取り出す。ニセ三  蔵の正体を悟空と見、国丈は雲に乗って逃げる。国王から経緯を  聞いた悟空と八戒、妖怪の住まい柳枝坡清華荘に向かう。土地神  から門の開け方を聞き、洞の中へ攻め入る。適わないと見た妖怪  は東へ逃げるが、南極老人星(寿老人)に捕まり、本性である白  い鹿に戻る。また国王を誑し込んだ美女も八戒に倒され、白狐に  戻る。  悟空・八戒・土地神は清華洞を燃やしてしまう。国王は寿星・三  蔵一行をもてなし、寿星より棗三つをいただく。一行は出発の支  度をし、掲諦・功曹らも預った子供達を返す。  さて、今回の妖怪の正体は南極老人、七福神が寿老人の鹿であった。東華帝君と碁を打っている隙に、逃げ出したのだという。  また、比丘国王は寿老人に無病延命の法の教授を願い、国王に東華帝君よりお茶菓子としてもらった棗を三つを授ける。これを見た八戒、『火棗』をいただこうとする。 が、火棗なんてあるはずがない。シャレのうまい八戒であるから、「火棗」と同音の「火燥」と考えると『せっかちで荒々しいやつ』つまり孫悟空であり、それを食べたいとからかったのである。 また「火棗」の音をひっくり返せば、「遭禍」「造禍」となり、「これ以上の禍いはもうたくさん」という意味になる。 また『禍棗災梨』ということばがあり、版木の材料となる棗や梨の木を浪費して、くだらない書物をつくるという意味である。 やはり、中国文学は奥が深い! (第80回)  西天への旅を続ける三蔵一行、お斎をもらいに悟空はキント雲で空から眺めると三蔵の上には瑞気がたなびいているが、その南の方には悪気が立ち上っている。一方、三蔵の耳に助けを求める女の声が聞こえてくる。三蔵らは女を助けるが、悟空は 悪気が瑞気を覆ったのを見て飛んで帰る。一時は悟空の説得に応じ女を見捨てた三蔵だが、女妖怪の術に惑わされ助けてしまう。おんぼろ寺院にたどりついた一行と女を寺男が迎える。中は表と違って豪華絢爛、ラマ僧の寺であった。  冒頭に三蔵の詩が登場するが、これは宣和牌という中国のカルタのような骨牌遊戯に関するものを含む作者の遊び心である。   我自天牌伝旨意  錦屏風下領関文   観灯十五離東土  才与唐王天地分   甫能龍虎風雲会  却又師徒拗馬軍   行尽巫山峰十二  何時対個見当今  宣和牌の遊び方は概ね次のとおり。 さいころの二つの面を組み合わせた牌32枚を伏せたまま親一人、子三人の配り、各自8枚を同時にひっくり返し、三人の子が親にそれぞれ挑んで勝負を決する。 勝負は極めて確立の低い特殊な組み合わせ5つを除くと、勝敗の前提条件となる、8枚のうち3枚一組で6通りの組み合わせを2つつくらねばならない。うち3通りは下記のとおり。 1)3枚の牌6面のうち5面が同一であること。   先の「観灯十五」はそのひとつである。 2)3つの牌6面のうち3面が同一、他の3面も同一であること。   「龍虎風雲会」「天地分」はこのひとつ。 3)6面がおのおの同一の2面から成る三対をなす。しかも、おの   おのの対が連続した数値であること。   「拗馬軍」はそのひとつで4、5、6の三対であり、   44、55、66牌の三枚ならば「正馬軍」となる。  以上の組み合わせを二組つくり前提条件を満たした競技者は、残りの2枚の牌で「賞采」と呼ばれる、同一の牌2枚の組み合わせ、もしくは特殊な組み合わせの4種のいずれかをつくれば、所定の点数を得る。麻雀みたいなものだ。 久しぶりに刊行された第9巻。 悟空の居ぬ間に妖怪化けた女を助けた三蔵、共に鎮海禅林寺に到着する。 (第81回)  鎮海禅林寺でお斎を頂き御就寝となるが、三蔵の体調が優れず出発できない。弱気な三蔵は唐の皇帝に別の僧侶を派遣する様手紙を書く始末、だが悟空は三蔵の前身金蝉長老の因果で三日病気になったと言う。  悟空が水をもらいに行くと、坊主が妖怪が住着いたと泣いている。妖怪退治を引き受けた悟空は快方に向かった三蔵にその事を告げる。夜中、小坊主に化けた悟空の前に美しい女が現れ、誘惑する。おちんちんをつかまれそうになり、悟空は本性を顕し、女も妖怪の本性を顕す。歩が悪いと見るや、女怪は左靴を自分そっくりに変え逃げ出す。追い掛ける悟空だが、靴の女怪に阻まれ、本物の女怪は三蔵を攫って陥空山無底洞に逃げ、三蔵と祝言の準備をする。  取り逃がした悟空は八戒・悟浄に怒りをぶつけるが、悟浄になだめられ翌朝三人で救出に向かう。もときた道を戻り、女を助けた黒松林で山の神と土地神を呼び出し、妖怪のことを聞き出す。陥空山へ雲に乗って向かう三人と馬一頭、まずは八戒が様子伺いに行く。  三蔵が三日間病気になるが、悟空はお見通しであった。 金蝉長老の時分、如来の説法のとき、うたたねした拍子に左足で米をひと粒ふんづけてしまった、その報いだと言う。 (第82回)  二人の女怪を見つけた八戒は声をかけるが天秤棒で殴られ、戻る。悟空に諭され、坊主に化けて再び女怪に挨拶にいき、三蔵が捕まっていることを聞き出す。女怪をつけていくが見失ってしまうが、出入りの穴を見つける。八戒悟浄を外におき、悟空は中に入っていくと、まさしく洞天福地、外界と同じ。悟空は蠅に化け、様子を探り、三蔵をみつけると逃げ出す策をたてる。  女怪に宴会に呼ばれた三蔵は酒を一杯だけ飲み、返杯の酒に羽虫に化けた悟空が入るが失敗する。次に鷹に化けた悟空は宴席をめちゃめちゃにする。  一旦、地上に戻った悟空は八戒悟浄に報告し、再び蠅に化け三蔵のもとへ戻る。桃に化け、女怪の腹に入り込む策をたて、今度は大成功。腹の中で暴れる悟空に耐えかね、女怪は三蔵をおんぶして入り口まで戻る。 (第83回)  洞から脱出し、女怪の腹から飛び出した悟空はすぐさま女怪と戦いになる。八戒悟浄も応援に駆け付けると、またも靴を身替わりにし、女怪は逃げ出す。しかも一人残っていた三蔵と馬荷物まとめてかっさらっていく。  またも悟空は洞穴に入り三蔵救出に向かう。探すあてもない悟空だったが、香風を辿っていくと「尊父 李天王」「尊兄 。三太子」の牌を見つける。これを証拠に玉帝に直訴することとし、告訴状を手に天界へ昇る。昔の恨みの残る李天王と。太子、更に告訴されたとなると怒り心頭、悟空を斬り付けますが。がそれを受け止める。昔助けた妖怪が義理の娘としたことを思い出し、なんとか告訴を取り下げる様に太白金星と悟空に懇願し、玉帝に復命した後李天王と。は悟空と共に陥空山に降りる。  李天王の指揮のもと、悟空と。が先陣となり、別の洞くつにいた女怪と三蔵を見つけ、あっというまに妖怪どもを捕らえる。李天王と。は女怪を天界へ護送する。  この回、。の出生時の逸話がある。封神演技とほとんど同じであり、。の名の由来、左の掌に「」右の掌に「。」の字があったとする。 (第84回)  旅を続ける一行の前に、子供連れの女が「滅法国」のことを告げる。悟空はこれを善財童子を連れた観音菩薩と見抜き感謝し、坊主を殺す滅法国に悟空は空から偵察に行く。蛾に変化した悟空は宿屋を見つけ、そこの客の衣服を拝借しようと計画する。なんとか衣服を拝借してきた悟空はそれをみんなに着せ馬売りと称して滅法国入りする。  見事馬売りに姿をやつして宿屋に入り、なんだかんだと言って精進料理を食べ、夜中正体がばれぬように長持の中で寝ることとする。長持の中で悟空が大金を持っているとの話を聞いた宿屋の連中は盗賊の仲間を集め、宿屋へ押し入り街の東へ長持ごと一行をかついでいく。が、城内守備軍を前に長持を置いて逃げてしまう。蟻に化け長持を抜け出し、悟空は国王のもとへ向かい、にこ毛を催眠虫にして宮中じゅうを眠らせ、全員の髪を剃ってしまう。 (第85回)  宮廷中がつるっ禿げとなった国王は今後和尚殺しをやめることを誓う。そこに先の長持が持ち込まれ、中から三蔵等が出てくる。三蔵たちを快く迎えた国王は国名を三蔵に「欽法国」と改めてもらい、三蔵らを見送る。欽法国を後にした一行は、悟空からことの経緯を聞き大笑い。  ある山の頂上についた一行に風が吹き付け、霧が出てくる。様子を伺いに飛んだ悟空は、手下を従えた妖怪が風を吹いたり霧を吐き出しているのを見つける。が、ここは八戒に花を持たせようと、霧は饅頭を蒸かす蒸気とからかい八戒を妖怪のもとへ向かわせる。  坊主に化け街道へ向かう八戒に妖怪の手下が群がる。一杯食わされたと分かった八戒はまぐわで小妖を突きまくり、小妖は妖王に報告する。唐僧の弟子八戒とわかり、妖王と八戒の戦いが始まる。 悟空も八戒の様子が気になり、にせ悟空を残して八戒のもとへ飛ぶ。悟空登場に八戒も勢いづき、妖王を退散させる。  戻った八戒は経緯を三蔵に話す。八戒を先頭に旅を続ける一行だが、退散した妖王は御機嫌ななめ。妖王の前に元獅駝洞にいた一人の手下が現れ、三蔵一行について詳しく説明する。そして「分辨梅花(ぶんべんばいか)の計」なる影武者作戦を申し立てる。  1000匹の中から選りすぐりの3匹が妖王そっくりになり、別々に八戒・悟空・悟浄を誘い出し、本物の妖王が残った三蔵をさらっていく。先の手下を先鋒に任じ、三蔵料理の仕度を命ずるが、先鋒により弟子がいなくなってから食する様に促される。木に吊るされた三蔵に、向いの木に吊るされていた樵夫が声をかけ、二人で行く末を案じ涙する。三蔵が消えたと悟空たちも大慌てで捜しまわる。 (第86回)  分辨梅花の計にかかったと分かった三人が三蔵探しに山へ向かう。洞を見つけた三人は扉を壊し、怒鳴り散らす。先鋒はまたも騙そうと、柳の根っこを人間の生首の形に切り、もう食べてしまったといって投げ渡す。八戒悟浄は騙されるが、悟空はすぐににせものと見破る。今度は三蔵とは別の本物の生首を用意し、投げ渡す。これには悟空も騙され、八戒は墓を作る。  悟空八戒は仇討ちに洞内へ殴り込み、妖王・南山大王もそれに応戦する。悟空は分身法で手下を追い払い、ついに南山大王は逃げ出し、先鋒は金箍棒にて背中の黒い狼の正体を現わす。南山大王は表門を閉ざしてしまったので、一度悟浄のもとへ二人は戻る。  悟空は裏門を見つけ、どぶねずみ・羽蟻と姿を変えながら洞を進む。悟空は三蔵が生きていることを聞き、ついに捜し出す。三蔵を炒める、蒸かす、煮るだの聞いた悟空は頭にきて、催眠虫を放ち妖怪たちを眠らせる。三蔵と一緒に樵夫も助け、洞を脱出する。  悟空は眠っている妖王を縛り担ぎ出し、八戒は樵夫と共に薪を集め洞内に火を放つ。にこ毛を集め、目を覚ました小妖どもは焼きつくされ、妖王も目覚めの一発を八戒にくらい、艾(よもぎ)の葉の模様の豹の正体を現わす。  助かった樵夫は老いた母の待つ家に戻り、三蔵一行にお斎を差し出す。そして、再び天竺向けての旅を続ける。  今回の妖怪は久しぶりに純粋な妖怪であった。悟空曰わく、まだらのある豹は虎も食べる。また、先鋒となり妙案を出した狼の妖怪が以前悟空にあったことのあるものとする点が特筆にあたる。 長いこと旅を続ければ顔見知りにも出会うってこと。 (第87回)  隠霧山を下り、天竺国の国境の鳳仙郡についた一行は、雨乞い募集の高札を目にする。悟空の朝飯前の一言に、役人は太守のもとへ跳んで帰り報告する。太守の願いに、悟空は八戒悟浄を輔星・弼星に見立て、北斗踏みをして東海龍王を呼び出す。が、玉帝の聖旨なしに雨は降らせないとの答えに、悟空は天界へと向かう。  天界に到着した悟空は、護国天王から米の山、麺の山、黄金の錠前と訳の分からないことを言われるが、先へ進む。玉帝にお願いする悟空だが、太守の不徳の罰に、十丈の高さの米の山を一羽のひよこが啄み尽し、二十丈の高さの麺の山を一匹の狆が食べ突くし、一尺三寸もの錠前のかんぬきを灯明の火が溶かし切ったら、雨を降らせてもよいというものがあったことを知る。が、四天師より善行を積むことで米や麺の山も崩れる様になると諭され、下界に降りた悟空は太守を一喝する。その原因と天界の仕掛けを太守に話し、太守は早速土地の僧侶や道士を招き経をあげさせ、香を焚いて礼拝する。悟空は文書をしたため、天界へ上奏に行くと、護国天王から玉帝に会うまでもなく雷部の神将を借りにいけとの話。すぐに玉皇天尊に訳をはなし、雷部四将と共に鳳仙郡へ下り雷を鳴らす。  玉帝は三つの仕掛けを検分させ、米も麺もなくなり錠前のかんぬきも切れていることを確認し、更に鳳仙郡の土地神らも奏上し、ついに風部・雲部・雨部の神々へ命令が下り、1日で三尺と42滴の雨を降らせる。  感謝の宴会が半月も続き、寺も完成し、三蔵により甘霖普済寺と名付けられ、一行もいよいよ出発となる。  今回の苦難は妖怪ではなく、太守の不徳によるものであった。玉帝が下界に降り人々の様子を伺う際、天に備える供物をひっくり返して犬に食わせ、罵詈雑言を吐いたというのである。この玉帝の降臨は旧暦の12月25日に行われるとされた。クリスマスも季節の変り目に精霊がやってくるという民間信仰をベースとしているのと同じであろう。 (第88回)  一行は天竺国玉華県につく。三蔵は通行手形を王に検分していただき、王はお斎の仕度を命じ、三蔵にも弟子を呼びよせるよう言う。が、その顔の恐ろしさに大騒ぎ。  内宮に下がった王の顔色の悪さに、三人の王子が事情を訊ねる。僧とその弟子のことを聞いた王子たちは暴紗亭の一行のもとへ殴り込む。第二王子はまぐわで八戒に、第一王子は斉眉棍で悟空に、第三王子は烏油棒で悟浄に、それぞれ打ちかかるが対するその武器を見ただけで腰砕けとなる。逆に王子たちから技を披露するよう嘆願され、三人は空中で神技を披露する。  宮廷に帰り、王に報告した王子たちは今度は王共々一行のもとを訪ね、武芸の伝授を請う。悟空は三王子に気が巡る様に法を使うと、第一王子は金箍棒を、第二王子はまぐわを、第三王子は降妖棒を少しは扱える様になる。  翌日、それぞれの武器のレプリカをつくりたいとの王子たちの申し出に快く了解した悟空たち。鍛冶場での見本として置き去りにされていた武器の光条を目にした、豹頭山虎口洞の妖怪は3つまとめて持ち去ってしまう。  今回、再び悟空らの武器が注目される。八戒のまぐわと悟浄の杖は共に5048斤、一蔵分のお経の数だという。 (第89回)  翌朝、鍛冶場に武器が見当たらないから大騒ぎ。八戒は鍛冶師たちが盗んだんだと言うが、悟空は冷静に妖怪の仕業と見抜く。 悟空は王に妖怪のアジトを聞き、豹頭山に向かう。蝶に姿を変え、見回りの小妖の話を盗み聞きし、小妖を金縛りにかけ名札と銀子を奪い、三蔵へ報告する。  悟空は「突飛腹黒」に、八戒は「腹黒突飛」、悟浄は羊売りに化け、山に向かう。途中、別の子分に出くわし、招待状を見せてもらい、金毛の獅子の妖怪だと分かるが、その書状の宛先である九霊元聖というのが分からない。洞に着いた三人は宝を見たいと言って奥に入り、武器を取りかえす。三人がかりで親分に打ちかかり、不利とみた親分は逃げ出す。洞内の妖怪も打ち殺し、きれいに焼き払う。  三蔵と王の待つ暴紗亭に戻り、事情を報告し、金毛獅子の妖怪が九霊元聖と共に報復にくるだろうが安心する様に促す。金毛獅子の妖怪は祖父の九霊元聖のもとへ逃げ込み、経緯を話す。悟空たちを知っていた九霊元聖だが、自分の手下のホ獅(どうし)・雪獅・マ猊(さんげい)・白沢・伏狸・搏象を伴い豹頭山に行く。本物の「突飛腹黒」「腹黒突飛」が焼跡で泣いており、二人からも事情を聞き、ますます悟空への敵意を燃やす。妖怪達は大挙して玉華州に押し寄せ、悟空も迎え撃つ。  豹頭山の妖怪の本性の中に「馬鹿(あかしか)」がある。『本草綱目』にも、子馬ほどの大きさで黄質白斑のシカの俗称とある。 さて、悪口の「馬鹿」、これは「暗愚」を意味するサンスクリット語mohaの音写。「莫迦」「莫訶」の字もあるが、『史記』の秦の二代目皇帝胡亥の故事(暗愚な胡亥を操る趙高がシカをウマと言い、逆らうものを暗殺した)に基づく。 (第90回)  九霊元聖を中心に獅子の妖怪の集団と悟空八戒悟浄が衝突する。半日も戦い、疲れの見え逃げ出した八戒が捕まり、悟空悟浄はマ猊と白沢を捕まえる。互いに人質を縛り上げ、一夜を明かす。  悟空悟浄が黄獅らと戦っている間に九霊元聖の大親分は三蔵と王、王子らをくわえて、捕らえていた八戒もくわえ、アジトへ帰る。策にはまったと分かるや悟空はにこ毛を小悟空に変え、黄獅らを縛り上げ(黄獅は殺してしまったが)城内にかつぎこむ。  翌朝、悟空と悟浄は竹節山に雲を飛ばし、それに大親分が立ち向かう。あっさり、悟空も悟浄もくわえられてしまい、三蔵らと共に洞内に縛られる。悟空は棍棒でたたかれつづけるが、すきを見て抜け出し、逆に見張りの腹黒突飛、突飛腹黒、青面を倒し、悟浄の縄を解いたところで、八戒が騒いで大親分が目を醒ます。悟空は逃げるが、悟浄は見つかりまた縛られる。  一方、悟空のもとに土地神たちが集まり、掲諦が一人の土地神を捕らえてくる。この土地神から九霊元聖の素性を聞き出し、東極妙巌宮の太乙救苦天尊のもとへ向かい、事情を説明する。天尊が調べると、獅子係が居眠りしている間に九つ頭の獅子が逃げており、獅子係りに獅子収服を命じる。  竹節山に戻った天尊と悟空、悟空が九霊元聖を攻め立て外に誘き出すと、天尊の一喝により九霊元聖は気力も失せ、へなへなと腹ばいになる。獅子係に殴られ、天尊を乗せ妙巌宮へ帰る。洞内の三蔵らを助け出し、洞に火をつけ、州城に帰る。  捕らえていた六獅子は殺して食用として処分してしまう。悟空等の武器を真似て作られた武器も届けられ、一対一の指導により王子たちは奥義を尽く習熟する。金銀の代りに法衣を頂き、三蔵一行は玉華州を後にする。 つづく...