(第91回)  玉華州を後にした三蔵一行、金平府の街につき、慈雲寺という寺でお斎をいただく。あさっての元宵節(1月15日)の祭りを見学していくよう言われる。塔を掃く願掛けにより塔の掃除をし、夕方より灯火見物に出かける。金灯橋には三つの金灯があり、その灯油は蘇合香油を使っており、三晩で合計1500斤の油を使ってしまうと言う。その油の減り方によって吉凶を占うのだともいう。  そこに風が吹き、仏の姿が現れる。平伏す三蔵は灯火の消えた闇に攫われてしまう。風を追い掛け、悟空はッ斗雲を飛ばし、大きな山にでくわす。そこに羊飼いに化けた四値功曹を見つけ怒鳴り付け、青龍山玄英洞の辟寒大王・辟暑大王・辟塵大王に攫われたことを聞き、今度は洞門に向かって三蔵返還を叫ぶ。それを聞いた下っ端妖怪は三人の大王に連絡すると、三蔵を連行し素性を聞く。悟空・八戒・悟浄も捕まえることとした大王らは、それぞれの部隊を集め、門外にいる悟空に攻め入る。日暮れまで戦うが、さすがに多勢に無勢、悟空は敗走する。  寺に戻った悟空は八戒悟浄に経緯を話し、軽くお斎をごちそうになってから三人で大王のもとへ向かう。  今回の妖怪の親玉、三人の犀の化け物であることがはやくも名前から分かるが、この「辟寒・辟暑・辟塵」、これは当時の犀のイメージからきている。唐のころからベトナムから朝貢されていた犀だが、冬でも暖気があるのでものを辟寒犀、夏でも暑気払いになるものを辟暑犀、角で簪や櫛をつくって身辺に置くと塵よけになるものを辟塵犀と呼ばれた。 (第92回)  玄英洞についた三人、まずは悟空が螢に化けて潜入し、三蔵が奥の部屋の柱に縛られているのを見つけ、その鎖を解く。見回りの小妖に見つかり、悟空は三蔵を置いて退散し、三蔵は再び縛られる。  今度は三人で攻め入り、三大王と対峙する。が、小妖に囲まれ、八戒・悟浄が捕まり、悟空はまたも退散する。一度、慈雲寺によってから天界に昇り、太白金星に事情を話すと、四木禽星に頼むよう教えられ、玉帝から聖旨を頂き、角木蛟・斗木ミ・奎木狼・井木トと共に下界に降り、さっそく大王らの洞に突入する。 四木禽星を見るや、大王らは本性を顕し逃げ出す。悟空と斗木ミ・奎木狼は大王らを追い、斗木ミ・奎木狼は囚われの三蔵たちを助け出す。八戒悟浄は洞の宝を持ち出し、洞を焼き払う。斗木ミ・奎木狼が悟空に合流し、悟空は海底で三大王と戦う斗木ミ・奎木狼のもとへ向かうと、三大王はまたも逃げ出す。  それを西海の見回りに龍王の手下が見つけ、龍王敖順(本当は敖閏)に報告する。息子の摩昂に悟空助力を命じ、挟み撃ちにされた三大王、辟塵は捕まり、辟寒は本性を顕した井木トにかじられ死んでしまい、辟暑も井木トに捕まる。辟寒の角と皮、そして辟塵・辟暑を連れ金平府に戻り、悟空は上空から住人に経緯を話し、犀牛を地上に落っことす。八戒は辟塵・辟暑の角を切り、玉帝への献上品として四星に渡し、辟寒の角の1本を油の徴集をしないという証文代わりに納めさせ、1本は霊山の仏祖に献上するものとする。  お礼としての宴会が続き、なかなか出発できない三蔵一行はこっそり出発する。  今回の妖怪は犀牛の精だが、誰かの乗り物やペットというわけではなかった。太白金星曰わく、体に天文の図を持っており、長年の修行で雲霧に乗ることもできる。自分の影をも嫌うほど清潔好きでしょっちゅう水浴したがるという。 これも、当時の犀のイメージであろう。 (第93回)  慈雲寺を後にした三蔵一行、布金禅寺に到着する。挨拶をし、お斎を頂き、給孤独園寺の伝説や蜈蚣の化け物のことを聞く。その夜、三蔵と悟空は老僧から牢屋の泣き声の主とその理由を聞く。声の主は風に攫われてきた天竺国の国王の公主であるが、老僧の調べでは公主は宮殿にいるといい、悟空はこの謎ときを依頼される。  翌朝、老僧の依頼と共に宮殿へ向かった一行、駅站に着くと八戒悟浄を置いて三蔵悟空だけで通行手形をもらいに出かけ、ついでに公主の婿選びの鞠投げを見学にいく。  三蔵を見た、にせ公主は三蔵めがけて鞠を投げつけ、見事三蔵は婿に選ばれる。頑に拒否する三蔵だったが、弟子に取経の旅を続ける指示をするために弟子を呼びに遣わせる。一方、悟空らは三蔵をネタに駅站で大笑い、国王の遣いに呼ばれ宮殿へ向かう。 (第94回)  国王の面前にきた悟空らはその素性を語り、国王を驚かせる。婚礼の日取りも決まり、三蔵の恨み節を余所に悟空は公主を見破る方法を考える。祝宴が催され、三蔵は国王との詩吟のやりとりをし、そうこうするうちに婚礼の当日となる。公主は悟空らの恐ろしさを理由に出発を催促し、国王の命で三蔵を残して取経の旅に出る。 駅站に着いた悟空は、八戒悟浄と自分の分身を残して、蜜蜂に化けて三蔵のもとへ飛んでいく。 (第95回)  公主が偽物であると見破った悟空は、三蔵の制止も聞かず本性を顕わしにせ公主に打ってかかる。にせ公主の妖精も衣服宝石を投げ捨て、杵の様な短い棒で応戦する。両者の空中での戦いに唖然とする国王らに三蔵は事情を説明する。悟空優勢となるや妖精は西の空へ逃げるが、護国天王にも阻まれ、またも悟空と対決となる。しかし悟空には適わず、南の大きな山に逃げ隠れてしまい、悟空は一旦三蔵のもとへ戻り事情を報告し、八戒悟浄に三蔵を守らせ、再び南の山へ向かう。  土地神を呼び出し事情を話すと、兎の穴に案内され、そこに隠れていた妖精を殺そうとしたその時、太陰星君と 娥天女が制止に入る。妖精の正体は月の玉兎であり、公主ももとは蟾宮の素娥であり、びんたを喰らった恨みで公主を攫ったのだろうと言う。  玉兎は太陰星君らに連れて帰られ、本物の公主も給孤布金寺から助け出され、三蔵一行も宴会の後、旅立つ。  今回の妖怪(妖精)は月で仙薬を搗く玉兎であり、被害者の公主は月の蟾宮の素娥つまりヒキカエルであった。要は、月での兎とヒキカエルの対決であり、これは月のイメージの移り変わりでもある。もとはヒキカエルの方が圧倒的に大きく描かれていたが、時代が下がるにつれ、対等さらに逆転といった兎のイメージが強くなる。遂に、日本に伝わる頃には兎だけという具合である。 (第96回)  銅台府地霊県に着いた一行は、10000人の僧にお斎を出すという願掛けをした寇員外の屋敷に世話になり、三蔵一行でちょうと満願ということであった。おかみと息子の寇梁、寇棟にも歓迎され、豪勢な法要をあげる。早く旅立ちたい三蔵に対し、それを引留める寇一族、ちょっとしたいざこざもあったがやっと出発する。 (第97回)  三蔵一行が去った後、盗賊が寇員外の屋敷に目をつけ、押し入り、寇員外は殺されてしまう。盗賊の正体を三蔵らと決めつけたおかみは役所に届け出る。  寇家を襲った盗賊に出くわした三蔵一行だったが、悟空の定身の法で盗賊を金縛りにし、寇家を襲ったことを聞く。奪った金品を取りかえし、盗賊を逃がしてやるが、そこに役人が追い付いてくる。  一行は役人に捕まり、牢屋に入れられるが、拷問は悟空が買って出る。金目当ての役人に錦襴の袈裟を見せると、獄官が通行手形を見つけ、盗賊ではないことが分かり、翌日知事の判断を仰ぐこととなる。  その夜、悟空はぶよに化け牢を抜け出し、豆腐屋の老人が語る寇家の過去を聞き、今度は寇家に向かい寇員外の棺の上から家族に三蔵一行にあらぬ罪をかぶせたことを咎める。おかみは自分の幼名を言われ、すっかり寇員外と信じ込む。今度は、知事に家に行き、掛け軸の書かれた知事の叔父に扮し、同じく咎める。更に、既に登庁している役人には巨大な神の姿で現れ、役所を踏みながら冤罪を咎める。  知事、寇一族、役人みなが冤罪を申し入れし、一行は釈放される。悟空は死んだ寇員外を呼びにッ斗雲で幽冥界へ、寇員外は生前の功徳で地蔵菩薩より長官に命じられており、今度は12年の寿命延期により俗界に戻れることとなる。悟空と共に俗界に戻った寇員外は一族、役人らに本当の事を告げ、今度こそ三蔵一行は取経の旅に出る。 (第98回)  ついに三蔵一行は霊山の麓に到着し、玉真観の金頂大仙の出迎えを受ける。翌日、正装に着替え三蔵は大仙の案内で霊山へ向かうと、一本の丸太橋のかかる大きな川に阻まれる。悟空が手本となるが、三蔵八戒は拒否する。そこに一隻の渡し舟がやってくる。底なしの舟だが一行は乗り込み、川を渡り始める。上流から死体が流れて来、皆で「あれはお師匠だ」とはしゃぐ。川を渡り終え、凡胎を脱した一行はとうとう大雷音寺の門をくぐる。  一行は釈迦如来に拝し、三蔵の経の中から数巻づついただくこととなり、まずはお斎を頂く。阿難と迦葉に案内で経文と引き換えに進物を要求され、悟空が騒ぐがなんとか経文を頂く。しかし、この経文は文字の書かれぬ白紙の経であることに気付いた燃灯古仏が白雄尊者に無字の経巻奪取を命じる。風に乗って三蔵一行に追い付いた白雄尊者だが、悟空に阻まれ奪回とはいかなかったが散乱させる。これを拾い集める一行だが、無字の経巻であることに気付き、再び如来に拝し事情を請う。改めて経巻を頂くこととなり、今度は進物として唐の帝から配した鉢盂を阿難に差し出し、今度こそ5048巻の経巻を頂く。阿難・迦葉は授けた経巻の内訳を如来に報告し、三蔵一行は帰途へつく。  三蔵を見送った後、観世音菩薩から既に取経の旅に5040日費やしており8日で唐土へ戻す様にお願いされた如来の命で、八大金剛と雲に乗って唐土へ帰ることとなる。  ついに取経の旅の終点である大雷音寺についた三蔵一行。 だが、この前に三途の川ともいえる大きな川を渡る。この時、上流から死体が流れてくるが、これを三蔵だと言っている。解脱し、肉体を放棄したということだろうが、実際にインドの川などでは死体が流れてくることなど一般の出来ごとであったのかも知れず、宗教上の通過儀礼的なものに活用されたこともあったであろう。  苦難の旅をし、やっと経巻を頂くが、ここでも苦難が待っている。進物、ワイロを要求され、これを断わり、白紙のお経しか貰えない。しかも、これがお釈迦様公認だという。以前、舎衛国の趙長者からのお布施があまりに安いため、設定したことのようだ。地獄も極楽も金次第である。  三蔵が頂いた経巻は下記のとおり。括弧内は経巻全部の数。   『涅槃経』 400(748)   『菩薩経』 360(1021)   『虚空蔵経』 20(400)   『首楞厳経(しゅりょうごん)』 30(110)   『恩意経大集』 40(50)   『決定経』 40(140)   『宝蔵経』 20(45)   『華厳経』 81(500)   『礼真如経』 30(90)   『大般若経』 600(916)   『大光明経』 50(300)   『未曾有経』 550(1110)   『維摩経』 30(170)   『三論別経』 42(270)   『金剛経』 1(100)   『正法論経』 20(120)   『仏本行経』 116(800)   『五龍経』 20(32)   『菩薩戒経』 60(116)   『大集経』 30(130)   『摩竭経』 140(350)   『法華経』 10(100)   『瑜伽経』 30(100)   『宝常経』 170(360)   『西天論経』 30(130)   『僧メ経』 110(156)   『仏国雑経』 1638(1950)   『起信論経』 50(1000)   『大智度経』 90(1080)   『宝威経』 140(1280)   『本閣経』 56(850)   『正律文経』 10(200)   『大孔雀経』14(220)   『唯識論経』 10(100)   『具舎論経』 10(200)  合計 5048巻。 (第99回)  これまで三蔵を守ってきた掲諦らも任を解かれ、災難簿をチェックすると80難とひとつ足りない。そこで雲から三蔵らを落とし、数あわせをする。  通天河に落とされた一行は、往きに世話になった白亀に再び乗せてもらう。しかし、その時の亀の依頼を忘れていたため水中に放り出されてしまう。水から上がると、陰魔の仕業で天地は真っ暗、雷鳴が轟き、風が吹き荒れる。三蔵は経巻をしっかり抱き、悟空が警戒し、夜が明ける。濡れたお経を乾かしているところを、陳家荘の者に見つかり、歓迎を受ける。この時、『仏本行経』の一部が岩に張り付いてしまい、破れてしまう。町に建立された寺には三蔵一行の塑像が祀られており、次々に宴に呼ばれてしまい、ついに夜中こっそり抜け出す。再び八大金剛により空中から帰途につく。  五方掲諦・四値功曹・六甲六丁・護教伽藍がつけていた三蔵の災難簿は下記のとおり。   金蝉が俗界に落とされしこと 第一難   胎を出て殺されかかりしこと 第二難   月満ちて江に捨てられしこと 第三難   親を尋ねて冤を晴らせしこと 第四難   城を出てて虎に逢いしこと 第五難   坑に落ちて従を失いしこと 第六難   双叉嶺にてのこと 第七難   両界山にてのこと 第八難   険谷にて馬を換えしこと 第九難   夜間に火に焼かれしこと 第十難   袈裟を失却せしこと 第十一難   八戒を収伏せしこと 第十二難   黄風怪に阻まれしこと 第十三難   霊吉に請い求めしこと 第十四難   流沙の渡り難きこと 第十五難   悟浄を収得せしこと 第十六難   四聖の顕化せしこと 第十七難   五荘観の中でのこと 第十八難   人参を活かし難かりしこと 第十九難   心猿を貶とし退けたること 第二十難   黒松林にてはぐれしこと 第二十一難   宝象国に書を届けしこと 第二十二難   金鑾殿にて虎に変ぜしこと 第二十三難   平頂山にて魔に逢いしこと 第二十四難   蓮花洞にて吊るされしこと 第二十五難   烏鶏国にて主を救いしこと 第二十六難   魔により化かされしこと 第二十七難   号山にて怪に逢いしこと 第二十八難   風に聖僧を摂われしこと 第二十九難   心猿すら害に逢いしこと 第三十難   聖に請いて妖を降せしこと 第三十一難   黒河にて沈没せられしこと 第三十二難   車遅にて搬運せしこと 第三十三難   大勝負をば賭けしこと 第三十四難   道を払い僧を興せしこと 第三十五難   路にて大水に逢いしこと 第三十六難   天河に身を落とされしこと 第三十七難   魚籃が身を現じ給いしこと 第三十八難   金モ山にて魔怪に遇いしこと 第三十九難   普天の神も伏し難かりしこと 第四十難   仏に根源をお訊ねせしこと 第四十一難   水を吃して毒に遭いしこと 第四十二難   西梁国が留め婚せんとせしこと 第四十三難   琵琶洞にて女難をば受けしこと 第四十四難   心猿を再び放逐せしこと 第四十五難   ヤ猴を弁じ難かりしこと 第四十六難   火ユ山が路を阻みしこと 第四十七難   芭蕉扇を求め取りしこと 第四十八難   魔王をば収め縛せしこと 第四十九難   賽城にて塔を掃きしこと 第五十難   宝を取り僧を救いしこと 第五十一難   棘林にて詩を吟ぜしこと 第五十二難   小雷音にて遭難せしこと 第五十三難   諸天神すら困惑せしこと 第五十四難   稀柿ヨにて穢に阻まれしこと 第五十五難   朱紫国にて医を行ないしこと 第五十六難   国王の重病をば治癒せしこと 第五十七難   妖を降し后を取り戻せしこと 第五十八難   七情に迷わされしこと 第五十九難   多目に傷められしこと 第六十難   獅駝にて路を阻まれしこと 第六十一難   魔王は三種に分かれしこと 第六十二難   城内にて災厄に遇いしこと 第六十三難   仏に請いて魔を収めしこと 第六十四難   比丘国にて子を救いしこと 第六十五難   真と邪とを弁じ認めしこと 第六十六難   松林にて怪を救いしこと 第六十七難   僧房にて病に臥せしこと 第六十八難   無底洞にて苦厄に遭いしこと 第六十九難   滅法国にて行き難かりしこと 第七十難   隠霧山にて魔に遇いしこと 第七十一難   鳳仙郡にて雨を求めしこと 第七十二難   武器をば失ないたること 第七十三難   釘ラを慶ばんとせしこと 第七十四難   竹節山にて難に遭いしこと 第七十五難   玄英洞にて苦を受けしこと 第七十六難   犀牛を追いかけ捉えしこと 第七十七難   天竺にて婚に招かれしこと 第七十八難   銅台府にて監禁せられしこと 第七十九難   凌雲渡にて脱胎いたせしこと 第八十難 80の災難では最大陽数9の二乗81にはひとつ足りないというのである。 (第100回)  八大金剛に連れられた三蔵一行、あっという間に長安に着く。お経を届けたならばすぐに引き返して共に復命する様に指示され、望経楼の近くに降り、皇帝・太宗に帰国を告げる。三蔵が昔住んでいた洪福寺の松が東を向き、三蔵の帰国を示す。  三蔵は太宗に天竺での経巻取得の難を報告し、5048巻一蔵分の経巻を献上する。続いて、悟空・八戒・悟浄・龍馬の素性を語り、いくつもの玉璽をいただいた通行手形を返還する。三蔵帰朝の祝宴が催された後、三蔵一行は洪福寺に帰る。  翌日、太宗は三蔵の功績を称える文を読み、三蔵は真経と誦すため雁塔寺に赴き、写本づくりを促す。三蔵が経を誦せんとしたそのとき、八大金剛が空から声をかけ、悟空らそして三蔵は天空に飛び去っていく。  八大金剛と共に往復8日で霊山に戻った三蔵一行は如来より新たな職、三蔵は「栴檀功徳仏」、悟空は「闘戦勝仏」、八戒は「浄壇使者」、悟浄は「金身羅漢」、龍馬は「八部天龍馬」に任命される。八戒は多少気に入らない様子である。龍馬は化龍池に突き落とされ、龍に姿を変え山門内の柱に巻き付く。悟空は三蔵に頭の金箍を取ってもらおうとするがすでに無くなっており、みな本然の姿に戻っている。たくさんの仏が勢ぞろいし、合掌し帰依を願う。   十方三世一切仏   諸尊菩薩摩訶薩   摩訶般若波羅蜜  めでたく100回完結を迎える。  三蔵が玉璽をいただいた通行手形、宝象国・烏鶏国・車遅国・西梁女国・祭賽国・朱紫国・比丘国・滅法国の玉璽、鳳仙郡・玉華州・金平府の公印がある。  「銀杏」の別名に「鴨脚子」とある。イチョウの葉がアヒルの水掻きに似ているのでこういい、イチョウというのも中国音を転訛したものである。更にイチョウの木を英語でgingkoというが、これは銀杏(ぎんこう)の漢音読みからきている。  三蔵・悟空は「仏」となるが、李卓吾評では「三蔵行者位居観世音之上矣。人可不努力哉。(三蔵と悟空は観世音より上位になってしまったわい。いやはや、人間たるもの、努力すればしただけのことはあるのう。)とある。すなわち、『菩薩』は「悟りを求める人」の意であるのに対し、『仏』は「悟りを得た人」の意であるからである。  西遊記100回は大きく4つの部分に分かれる。   A 孫悟空の「大閙天宮」故事   B 観音の取経者さがしの旅   C 太宗入冥譚と玄奘の登場   D 「西天取経」故事  まず注目は、AとDとで孫悟空の役割が逆転していることである。Aであばれまわっていた悟空も五行山に閉じ込められることで、母胎への回帰を意味し、そこからの救出は再生を意味するのである。  Dの取経の旅では、数合わせと言うか数遊びが多く見られる。 第64回「荊棘嶺の段」では樹木の妖怪が登場するが、五行の木が東に配され、その数8の二乗64回がその段に相当するのである。  頭が9つある妖怪が2回登場するが、その退治されるのが63回と90回と共に9の倍数。また釈迦如来が俗界に現れるのも7回で悟空を取り押さえるためと77回の大鵬金翅鳥収服のときであり、7の倍数となる。  三蔵一行が西天に到着するのは98回、その半分49回(7の二乗でちょうどいい)旅の半分ではない。出発は13回であるので、55回と56回の境目が旅の中心となる。これを中心として、エピソードも対称構成(シンメトリー)となっている。  32〜35回「金角・銀角の段」と74〜77回「獅駝洞の段」は回数的に対称であり、更に人物構成や武器構成も類似しており明らかに意図されたものである。 また、37〜39回「烏鶏国の段」と68〜71回「朱紫国の段」は共に皇后の貞操問題を秘め、朱紫国は更に40〜42回「紅孩児の段」とは同じ猛火を出す妖怪である。  49回である「通天河の段」もシンメトリーの中心であり、43回「黒水河の段」と53回「子母河の段」はそれを中心軸に配されており、3つの河をめぐる段が近接しており、その意味がありそうである。また、三蔵女難のエピソードも、64回「荊棘嶺の段」、第72回「盤糸洞の段」、第80回「地湧夫人の段」、第93回「天竺国の段」とほぼ等間隔に配置されている。 このように、数に対する作者の執着が随所に見られ、更なる解釈がされる。