じっけいとじょうけい  実景と情景

  
S#105 ○○家玄関
  
   

   台本の柱に書かれたそのシーンの場所を端的に表現する「実景」と
   周囲の草木が風になびいたり雨が降ったり日がさしたりしてある種の心象風景を
   表現する「情景」とがある。

   「実景」とはあまり感情を入れ込まない説明的なカットだからFIX(フィックス)の画が多い。
   逆に、「情景」はじわじわとズームで寄っていったり
      
   
   幾つかの或るイメージや雰囲気をカットで重ねて描写する。
   「実景」の場合は、○○家とは「この家の事だ」だが
   「情景」の場合は、○○家とは「こんな風な家だ」になる。
    
   大俯瞰の街や、新幹線の走り、駅に到着する列車、動物園の全体像etc.
   蠢く都会の人々、雨の中を走る新幹線、田舎の寂れた駅の駅長室、昼寝するライオンetc.
   「実景」と「情景」は使い分ける。
   スケジュールなどの都合で○○家の表は「実景班」が組まれ、撮影部だけ或いは助監督と撮影部
   でロケに出る。
   「情景班」は無い。
   多大に演出的な要素が含まれるから、必ず監督が立ち会う。
   監督が立ち会うという事はスタッフ全員が参加するロケになる。


 ししゃ  試写

     文字通りに解釈すれば「試しに写してみる」と言うことか。
     撮影中に観る部分的な試写は「ラッシュ試写」
     この中には音がついている「音付きラッシュ」と、撮って現像したままの
     「棒ラッシュ」編集済みの「編集ラッシュ」や「オールラッシュ」
     など、いずれもスタッフだけが観る「技術試写」である。
     編集やダビングが終わり、プリントが作成されて始めての試写を「0(ゼロ)号試写」という。
     このプリントは商売にしてはいけない製品である。
     技術的に、プリントとして「人様にお金を頂いて観せる価値」があるかどうかを判断する試写なのだ。
     その試写で撮影監督が現像所の現像(タイミング)技師に「あそこはもっと明るく」だの
     「あのカットは色をもうちょい絞めて」とかいちゃもん(注文)をつけて修正させる。
     その後出来てくるのが「初号(1号)プリント」といい、およそ理想的なプリントである。
     そこで、関係者(スタッフ、スポンサー、配給会社など)を集めて観せるのが「初号試写」だ。

     

     一般の人たちに宣伝のために使われる「試写会」用のプリントは初号かそれ以降の
     2号品などが使われる。
     公開用は2号品以降で、メジャーの劇場では一回映写機にかけた(こすった)
     プリントは使用しないのが決まりだ。
     が、低予算の作品は「0号、初号」と言って、技術試写を省く事が多くなった。
     プリント一本の値段が目を剥くように高いからだ。
     現像場の営業部も、最近では「ええっ!0(ゼロ)焼くんですか?」と聞き返すようになってしまった。
     試写会を回ったプリントは、映写機に何度もかけられているので
     「おあしをいただいて」観せるものではないのだが…。

     ちなみに「映倫試写」は0号だが、事前に台本を送りチェックを受ける。
     台本上問題になりそうな箇所があれば、オールラッシュ或いはセミ・オールラッシュを観せる。
     その時点で指摘された箇所を修正するので、0号の時は「映倫マーク」がちゃんと入っている
     かどうかの確認がなされるだけだ。

     

     


 照明部   しょうめいぶ

      灯りの総てにかかわるパート。

      

      *照明技師
       ライティングにおける設計をデザインする。
       撮影監督とのコンビネーションで、画像の色調やイメージを作る。
       外国ではガファーと呼ばれ「親方」の意味を持つ。
       

      *照明助手チーフ
       技師のイメージ通りにライティングをしていく。
       撮影助手チーフとの連係プレイで光量を増減したり、ソフトにしたりする。
       現場スタッフの中で一番威勢がいい。
       セコンド以下の助手たちの不満を一手に担い、制作部や演出部と戦い続ける。
       この人と揉めないようにするのが現場進行をうまくやる秘訣。
       機材調達や、許容電力の計算など賢くしかも狡猾でなければ出来ない。

      *照明助手セコンド
       基本的には一チームに二人以上いるが、その中でもギャラにランキングがある。
       サードを基本的にはつけないスタイルが多い。つまり、このクラスは員数勝負のようなところがあって
       経験と力量がギャラの差になる。
       なぜなら、サードは全くギャラが安い。
       セコンドの主な仕事は、チーフに指示された機材を指示された場所(ポジション)まで運び
       配線してセッティングする。
       機材は昔から重い。
       体力と理解力の要求されるポジションだ。
       
      *照明助手サード
       単なる人足の仕事しかさせてもらえない程ギャラが安い。
       「レフ、持ってきて」と言われ機材車に走っていくのだが大概重労働に挫折して辞めていく。
       体力の他に忍耐力が必要なパート。

         照明助手の必携品「ピンチ」
                      アルミ製の洗濯ばさみだが、照明部さんはこれで何でも挟む。はさむ。

      このパートは、やたら上昇志向が強い。
      つまり、ポジションによってギャランティが全く違うからだ。
      ただ、映画やTV以外にも、CF(コマーシャル)やイベントなど短期間に稼げる仕事なので
      (他のパートに比べ遥かに需要が多い)下の方ほどスケジュールが無い。
      それゆえ金回りもいいが、その労働の過酷さ故、ギャラを殆ど飲んでしまうスタッフが多い。
      そこが制作部の狙い目で、照明部を供応する事が現場進行が旨く行く方法論だった。
      が、最近飲まない照明部が増えてきた。
      理由はわからない。
      そしてあまり「暴れん坊将軍」が居なくなった。


      機材車に積み込まれた照明機材(TV用)

     *照明準備班
      夜間ロケの場合で、撮影本隊が昼間どこかで撮影をしている場合、夜間照明の準備をするパートがある。
      俳優や撮影日数、ロケ場所の都合などで昼夜撮影は行われるが、ライティングが大規模になった場合
      本隊が現場に到着する頃には日が暮れてしまい、準備にならない時に登場するチーム。
      あらかじめ照明技師と打ち合わせをして、ゼネレーター(電源車)を止める位置の確保、
      そこから一番広い画のライティングの為の配線をする。
      キャップタイヤ(電源コード)をひいて、本隊照明部が到着するまで待っている。
      本隊の照明部は、現場に到着するとすでに配線が済んでいるので、
      ライトを持って来てセッティングするだけでいい。
      効率はいいのだが、このチームは撮影そのものに関与しない。台本も渡っていない場合もある。
      撮影中は何処にいるのか現場には居ないので判らないが、終了時にドドッと現れて、
      自分たちが準備したものだけ撤収して闇の中に消えていく。
      撮影所の照明部で、おそらく担当している作品が無い時に「応援」という形で
      日当を貰うのだろう。或いは残業手当なのか?




 しだし

     仕出し弁当のことではない。
     
     

     広辞苑によると「演劇・映画などで、本筋に関係がなくてちょっと現れるだけの端役」とある。
     が、その別項に「(工夫して)作り出すこと」「出前」とあるが、全部当たっているような気がする。
     「エキストラ」の意味で使う場合もある。「仕出し屋」はエキストラ会社のことである。

     「演技事務」の項で少し触れたが、エキストラやちょい役の仕切りは彼らの仕事である。
     演技事務は大部屋の役者に少しでも「役」を振ってやらなければならない。
     「仕出しに毛の生えたようなものだけど」と言い訳して大部屋俳優がエキストラではない「役付き」だと
     言いくるめギャラを稼いであげる。
     エキストラは日当や時間給だが、「役付き」は一本幾らのギャラだからプライドと収入が守られるわけだ。
     友情を「(工夫して)作り出す」…フム…。
     どうやら、「しだし」はちょい役とエキストラの間ぐらいのポジションかも




 しあげ

     仕上げる事。
     現場(撮影の)が終わった後の作業。
     ポストプロダクション。
     
    *音 撮り終えたポシを繋いでいく編集部の作業と平行して、効果音や現場の音(生音)が使えない場合の補助的な音
       の作成、音楽が作られる。
    *画 合成処理やCGの導入。
       タイトルやスーパーインポーズなどの写植の発注と作成。それらの作画やアニメーション撮影。
       ローリングタイトルなどの光学処理。
       これらの素材をネガに組み込む作業。

    総ての素材が揃ったところでダビングミックスの作業が行われる。
    そして音は音ネガに、画は画ネガとして現像場に送られる。
    その二つをまたまた光学処理して一本のプリントが出来上がる。
    撮影現場以降の作業を「しあげ」と呼ぶのだ。
    この期間にかける日数や費用は、監督のグレードで決まる。
    予算が少なくても、この作業をする人たち(会社)が、金勘定ではなく誠心誠意時間や労力を駆使する。
    出来上がりの評価が「営業」で、次の仕事に繋がるからだ。
        


 しゅうごう・しゅっぱつ  集合・出発

       基本的にロケーションに出かける場合は「撮影所出発」になるが、TVや独立プロの場合
       ベースになる撮影所がないのである特定の場所から出発する。
       主な決まり物の場所として
       新宿駅西口 スバルビル前 安田生命ビル前
       渋谷駅   パンテオン前
       が基本である。

       新宿が二つあるのは、業界が違うからだ。
       スバルビル前は主に東映(大泉)、松竹、日活、角川、東宝 そしてTVの制作プロダクションなど
       安田生命前は、PR映画、ドキュメンタリー、CF、アダルト系、独立プロ系や写真系
       なぜそうなのかはよく判らないが、不文律のようにそうしている。

       渋谷は既に「パンテオン」という映画館は解体され、現在は246号線沿いに200m坂を登った
       東邦生命ビル近くになっているが、依然として「渋谷 パンテオン前出発」と予定が出る。

        現在の渋谷パンテオン前(工事現場) 2005

         
       朝早くから場所取りのためにロケバスが待機している。(渋谷)AM7:00

         
       バス以外のほかの車輌も集まってくる頃には通勤ラッシュになっている。AM7:20

       
       AM7:30きっかりにロケ隊は出かけていくと、路地裏で待機していた8:00出発の
       車輌がその位置に入ってくる。


       基本の新宿と渋谷以外には
       小田急線成城学園駅北口ミスタードーナッツ前がある。
       成城学園には、東宝砧撮影所、円谷プロダクション、国際放映、東宝ビルトなどの
       撮影所があり、活動屋も多く住んでいる。
       ここも、地域住民からの苦情でミスドから100メートル先の路地が集合場所になっている。

       撮影所を使う仕事でも最近はロケーションの出発は上記から出発する。
       撮影所のスタッフ(社員スタッフ)は撮影所に勤務しているので集合解散は撮影所であることが
       労働条件に組み込まれていた。新宿でロケしても、撮影所から出て行き、撮影所に戻る。
       それは、出発時間までに機材などを積み込み、ロケ終了後機材などを保管整備の為に撮影所に戻ると
       その分だけ早出、残業が加算される。
       撮影所を使うデメリットはそうした人件費などがかかりすぎることだ。
       撮影所には、守衛さんや掃除の人などがいて、外部の制作会社はその人たちの人件費まで
       支払わなければならない。
       予算削減するには人件費と相場が決まっているから、出来るだけ撮影所の社員スタッフは使わなくなった。
       だから、集合出発は、現場移動に最も少ない時間の場所になり、解散はロケ終了時のもよりの駅だ。

   補足: 渋谷は、東名高速や第三京浜が近いので、横浜など東京以西方面
       新宿は都心など北、東方面のロケの出発場所になる。
       朝、7:00以前の出発にはこの場所で朝食を出さなければならない。
         7:15以降は自前になる。
       多い時は10組ぐらいのロケ隊が同時に出発する事もある。
       役者や、スタッフが揃ったかどうか、他の組のバスに乗ったりしていないかどうか、
       制作部が「撮影部さん、照明部さん、録音部さん皆さんそろいましたか?」
       と撮・照・録の順に点呼をする。俳優やエキストラの確認は演出部の仕事。


じしゅえいが  自主映画
        あるいは自主制作

        配給や、制作に当たっての資金的な援助を何処からも得ない映画製作のこと。
        かつて、様々な若手監督が出てきた場所で、コンテストなどに応募して評価を得る手段。
        活動屋は職業だから、徒弟制度の中で苦労し、親分や兄貴分に認められプロになっていくのだが
        この分野は、「自分で」なる。
        コンテストは沢山あって、最近ではメディアのバックアップもあったりする。

        

        先日近所の公園で奇妙なグループと遭遇。
        デジタルのMOVIEカメラで怪獣?を撮影していた。
        昨今はやりの「戦隊ものTV」にしてはカメラがちょっと…照明も居ない。
        手前のおばさんがじっと彼らの行動を見守っていた。

        

        衣裳とか小道具に凝っていてお金がかかっていそうに見えた。

        

        クリックするとわかるが、フレーム右の方に人が座っている。
        初めはスタッフ?かと思っていたが彼は「箸」を持っている。
        奥さんと子供と公園でお弁当を食べていたのだ。
        多分、家族団欒のピクニック場所が、以前から決めていた(ロケハンした)場所だったのだろう。
        双方とも自分たちのしている行動に没頭していてトラブルは無いようだった。
        劇場用の映画とか、TVなどの営利を目的とした撮影は一区画幾らと使用料が決まっている。
        管理人のおじさんがきたら「自主映画です」といえば只になる
        
        我々の感覚では、自主といえども「映画」なのだから、
        8でも16でも35でもフィルムに焼き付けてほしいのだが、
        「変換できます」「動いているからムービーです」らしい。
        昔は「自主上映」しか出来ない「映画」のことを言っていたように思うのは過去の話か?
        ビデオでもDVDでも確かにハードが変わっただけなのだろう。
        理屈は別にしてどんどん撮り続けて欲しいものだ。




  
じょうじつキャスティング   情実キャステイング



        広辞苑には@ありのままの事情
             Aまごころ
             B私情が絡んで、公正な処置のしにくい事柄。
        と書いてあるが、そのいずれにも当てはまる作業。

       キャスティングする時、端役のキャスティングにはいつも苦労する。
       脇役にも、使いどころによっては才能や技量を発揮する役者が沢山居る。
       しかし、一言二言のセリフで、ギャラも少なくあまりお願いできない「役」がある時が悩みの種だ。
       が、そういう役ほど「売り込み」が多い。
       「大した役ではないし、お金も無いよ」と牽制するのだが
       「なんでもいいからやらせてください」とマネージャー諸氏に懇願される。
       大概は付き合いのない俳優で、その力量も判らないのだが、
       プロダクションとしてはこちらに役者を覚えさせるのにいいチャンスなのだろう。
       最後の数人の端役が決まっていないと執拗にマネージャー氏が追いかけてくる。
       芸暦書と写真(プロフィール)がデスクの上に山積みになる。
       時間が来てもう総ての出演者を決めなければならない時、役者ではなく、日頃付き合いのある事務所とか
       その作品に出演している俳優と同じ事務所とかで、たいがい落ち着く。
       それでも決まらない時がある。
       日頃熱心に売り込みに来ているマネージャー(若くて美人がなおいい)に「誰かこの役、やれる人居る?」
       と声をかけ、喫茶室でお茶する。名も知れぬ事務所のマネージャーほど熱心だ。
       そこでも決まらないと行きつけの酒場でアルバイトしている女優に、
       「マネージャーさんに明日来るように言って」
       で、決まる。
       また、スポンサーの知り合いとか、そんな事もアリ。
       ま、それで誰かの顔がたち、作品が成立すればすべて良しとすべきだ。

       たまに現場から電話がかかってきて
       「看護婦役の○○さんなんですが、芝居が出来なくて困っています」とクレームがつく。
       「いや、それはスポンサーさんの情実キャスティングだから、
       なんとか演技指導してやってよ」と切り返す。
       監督も、泣く子とスポンサーには勝てないから大概あっさり折れてくる。

       昔からある習慣。



  
しめごろし   閉め殺し

       (扉などが)打ち付けてあって開閉できないようにしてある状態の事。
       古い建物などに多い。

       アクションものとかサスペンスものでよく廃墟などを使う事がある
       かつてはドァや窓として使用していたが、老朽化の為危険な事から出入りや
       開閉をさせない為に使用不可にしてある。
       人物がそこから出て来るとシチュエーションどおりのロケ場所になるのだが、
       打ち付けてある為使用できない。
       ロケハンの時にそれを確認しておかないと実際のロケの時
       扉や窓を壊さなければならなくなって大騒ぎになる。
       
       
       現在も使用している駐車場だが、料金所の窓が打ち付けてある。

       
       この窓から「犯人が顔を出す」なんてシーンを撮りたくても「閉め殺し」にしてあるので
       窓は開かない。
       監督 「その窓から犯人が覗けるよね」
       助監督「監督、この窓『閉め殺し』にしてありますよ」
       監督 「じゃ、制作部に言って開くように交渉させてよ」