(第14版;平成20年6月12日)
1..表示放電管
表示放電管には、アメリカのバローズ社の登録商標であるNIXIE(通称ニクシー管)、セグメント(モザイク)型の単桁管、多桁管がありました。ニクシー型単桁管は、数字の形をした薄い陰極板を狭い間隔で積み重ねて絶縁し、それぞれ外部に取り出して選択表示をする。
セグメント(モザイク)型単桁管は、数字や文字などを同一平面上の簡単な部分の組み合わせで表すように分解して、それぞれを絶縁して外部に取り出して、これらの組み合わせで数字や文字の形状として選択表示する。
2..初期の表示放電管 ”NUMITRON”


1970年に”Popular Electronics magazine”の3月号に発表されたNUMITRON 表示管があります。この表示管は、数字を構成するセグメントを白熱フィラメントで構成したフィラメント型表示管で、外形はアメリカのRCA社と日本のアポロがミニチュア管で、ピンライト、岡谷電機、富士電子工業の各社はICのDIP型と同様な形状でした。フィラメントには、直径40μmのモリブデン心線に同じサイズのモリブデン線を巻き付け、管内に結合した後で、モリブデン心線を王水で溶解したコイルなどが使用されました。 駆動電圧が3〜12Vと低く、白熱光で高輝度であるため外部フィルターにより必要な表示色が得られました。(”電子管の歴史”を参照下さい)
上の写真は、”Popular Electronics magazine”、1970、Marchに記載のRCA のDA-2900で、右の写真は、 ApolloのDA-2900です

以下は、The Popular Electronics magazineの1970年3月号からの抜粋です。
RCAが開発した表示管は、非常に単純なもので、以前なぜ誰もそれについて考えなかったのかと、筆者(Vincent Wood)は不思議に思います。開発された新タイプの7セグメント表示管は、基本的に、長方形の8の字の7セグメントのフィラメントで構成されています。
7セグメント表示管(Numitron)は、数字を形成するために7つの短いフィラメント・ワイヤーを使用してます。フィラメントは、暗い板に支持され、従来の9ピンのミアチュア管に収容されています。電圧がフィラメントに印可されると適切な数字に発光します。3.5〜5Vの電圧で動作し、1つのセグメント当たり24mAが流れますが、Numitronの予想寿命時間は、100,000時間を越えています。セグメント電圧を変化させることにより、ディスプレイ明るさをコントロールできます。さらに、セグメントは、白色光のため、全面にフィルターを付けることにより、希望の色が発色できます。
(この2.初期の表示放電管 ”NUMITRON” は、鴨志田哲三氏のご指摘により追加したものです。)
3.ニクシー型単桁管
初期の表示管は、数字そのものを表示させるのではなく、数字に対応した位置を示すことによって数字表示の代用としたものです。これに対して数字や文字をありのままの形状で表示させる電子管として、1956年にバローズ社がニクシー管として市販しました。これはネオンオレンジ色に発光する冷陰極グロー表示放電管でした。0〜9のアラビヤ文字状の電極を積層構造の放電管として表示させるアイデアは、すでに1939年のアメリカの特許にありますが、実用的にはバローズ社が1956年発表した頭部表示型の6884および6884Aが最初でした。
6884Aは、動作寿命が比較的短かかった。1958年に水銀を管内に封入して陰極金属のスパッタリングによる消耗を抑制し動作寿命を格段に改善した所謂、ニクシー型単桁管がデジタル表示素子として広く採用されました。
一方、イギリスのエリクソン社は1958年にDIJITRONの商標で側部表示型を発表しました。我が国では、1958年頃から岡谷無線、日本電氣がニキシー管の試作と生産を始めました。1968年頃には、松下電子、日本無線、日立製作所などが生産を開始しました。
バローズ社は、ニクシー管だけでなく、トランジスターでスイッチングするという駆動回路特許と共にニクシー管を使用した会社から莫大な特許料を取得したが、結果的には蛍光表示管の開発を促進し、かつ多桁管のの出現を早めたのは皮肉なことであった。
下の表は、収集した表示放電管の一覧表を手元にある資料で作成しました。国内の表示放電管の登録は、CD11から始まった。例えば、CD11〜CD15までは、岡谷電機、CD16〜CD17まではNEC、CD18、CD19は、ナショナル、その他となっていました。 このほか、各社により個別の型名を付けていたようでした。
| 型 名 | 表 示 | 全長x最大径 | 陽極電圧 | 陽極電流 | 製造会社と相当品 |
| B-5750S | 0〜9,PR,PL | 32mmx12.5mmφ | 146v | 2.6mA | Burroughs |
| 5750 | 0〜9,PR,PL | 33x12.3 | 146 | 2.6 | JRC |
| CD11 | 0〜9 | 55x30 | 170 | 2.5 | 岡谷電機 |
| CD12 | 0〜9 | 77x51 | 200 | 5.0 | 岡谷電機 |
| CD13 | 0〜9 | 30x55 | 170 | 0.9 | 岡谷電機 |
| CD14 | +、−、X、÷ | 45x30 | 170 | 2.5 | 岡谷電機 |
| CD17 | +、−、X、÷、= | 30x25.4 | ? | ? | NEC |
| CD18 | 0〜9 | 32x28 | ? | ? | ナショナル |
| CD24 | 0〜9 | 35x27.5 | 170 | 2.25 | NEC |
| CD28 | 0〜9、 | 35x26 | 170 | 1.7 | 岡谷無線 |
| CD34 | μA,mA、A | 30x25.3 | ? | ? | NEC |
| CD56 | 0〜9 | 30x25.8 | 170 | 1.5〜2.5 | NEC |
| CD71 | 0〜9、小数点 | 37x12.5 | 200 | 0.12〜1.0 | 日立 |
| CD81 | 0〜9、小数点 | 35x12.5 | ? | ? | 日立 |
| LD820 | 0〜9 | 30x25.7 | ? | ? | NEC |
| LD946 | 0〜9 | 33x12 | NEC | ||
| GR-1 | 0〜9 | 43x31 | ? | ? | 岡谷電機 |
| NL-7009 | 0〜9 | 27x15.2 | ? | ? | 米国製 |
上記の表中、型名が太字のニクシー型単桁表示管を下記に示す。
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WANTED | ![]() |
| Burroughs B-5750S | JRC B-5750 | RODIN CD11 | RODIN CD13 |
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| NEC CD17 | ナショナル CD18 | NEC CD24 | OKAYA CD28 |
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| NEC CD34 | NEC CD56 | 日立 CD71 | 日立 CD81 |
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| NEC LD820 | NEC LD946 | RODIN GRー1 | Unknown NL-7009 |
4.セグメント(モザイク)型単桁管
ニクシー管が自然な形状のアラビヤも自他数字が表示できる反面、積層構造であるがための位置ずれや見えにくい欠点があった。そのために、複数のセグメントをモザイク状に配置して単桁管が開発された。我が国では岡谷電機が1968年に発売をした[日]の文字形の7セグメントのエルフィンや日本無線が1970年に公表した[田]の文字型の8セグメントのJ4850/J4850Sがあるが何れも電卓用のパルス動作の側部表示型であった。この種の単桁管もすぐに多桁管に移行していった。
このようなニクシー管も前述のごとき表示文字や数字が前後に動く等の特性の欠陥および高額な特許料のため、我が国では、1965
年頃から伊勢電子を創立した中村氏らにより、蛍光表示管(VFD;vacuum fluorescent display)の原型が開発された。このVFDは、3極管の格子に当たる蛍光体に、格子で制御された電子が当たって光ることを利用して表示する。しかも駆動電圧が20Vという低電圧でしかも明るく表示できるという利点があった。 伊勢電子(ISEDEN)は、1967年から生産を開始した。また特許は、1969年から1971年に掛けて欧米主要国で、1972年には国内でそれぞれ成立した。
当時のブラウン管では少なくとも500V以上の印加電圧により蛍光体を発光させていた。このほかに低電圧で発光する蛍光体があったが、中村正は、酸化亜鉛蛍光体が、更に低電圧で発光出来ることを知っていた。しかも蛍光体は発光側から見た方が、、ブラウン管のように蛍光体層を透過するより明るいことを実験的に求めていた。伊勢電子設立後、静岡大学の高木克己の指導と大日本塗料の協力を得て、20V程度で酸化亜鉛蛍光体を発光させる事に成功し、その塗布方法と平面発光の電極製作技術が確立した。
| 型 名 | 表 示 | 全長x最大径 | フィラメント電圧x電流 | 陽極電圧 | 製造会社と相当品 |
| DG12C | 0〜9、小数点、区切り | 51mmx13mmφ | 1.0Vx?mA | 15V | ISEDEN、Iltron |
| DG10E | 0〜9、小数点、区切り | 36x10 | 0.9x100 | 50 | NEC |
| DG12EN | 0〜9、小数点、区切り | 50x12.5 | 0.8x90 | 50 | NEC |
| LD8012 | 0〜9、小数点、区切り | 45x12.5 | 0.8x80 | 50 | NEC,DG12P*1 |
| LD8039B | 0〜9、小数点 | 30x8 | 0.6x27 | 50 | NEC,DG8K相当 |
| LD8035E | 0〜9、小数点 | 30x7.5 | ?x? | 50 | NEC |
| LD8113 | 0〜9、小数点 | 50x18 | 1.7x95 | 27 | ISEDEN、DG19E |
| DG10Q1 | 0〜9、小数点 | 35x9.5 | 0.7x28 | 40 | FUTABA |
| SP10D4 | E、→、小数点 | 33x9.5 | 0.7x56 | 27 | FUTABA |
| S6048 | 0〜9、小数点、区切り | 33x10.0 | ?x? | ? | Mitsubishi |
| DG8S | 0〜9、小数点、区切り | 30x7.8 | ?x? | ? | FUTABA |
| DG10S1 | 0〜9、小数点 | 35x9.5 | ?x? | ? | FUTABA |
*1;NEC LD8012(DG12P)は菊池和男氏のご厚意による寄贈品です。
上記の表中、型名が太字の蛍光表示管を下記に示す。
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| ISEDEN DG12C | NEC DG10E | NEC DG12EN | NEC LD8012 |
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| NEC LD8039B | NEC LD8113 | FUTABA DG10Q1 | FUTABA SP10D4 |
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| Mitsubishi S6048 | FUTABA DG8S | NEC LD8035E | FUTABA DG10S1 |
5.先端排気型蛍光表示多桁管
蛍光表示管の多桁管の開発は、1971年から1972年に掛けて伊勢電子で行われ、金属容器に入れられた金属多桁管が開発実用された。更に、18〜19mmφガラス丸形多桁管の開発が日本電氣、東京芝浦や双葉電氣で行われ、1972年には実用化が始まり、同時に今まで陽極はセラミック基板であっものが、ガラス基板へと大幅なコスト低減が行われた。
これらには、先端排気型(リード線が片側に集中した表示管)と側面排気型(リード線が両側に分けられて表示管)の2種類があった。下記の写真は、先端排気型蛍光表示多桁管、ISE DP94R(9桁)を示す。
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| ISE DP94R | FUTABA 6−LTー25−9E |
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| NEC FIP LD8164 | ISE DC1015A2 |
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| MFJ-116 24/12 時間トランジスタデジタル時計 7セグメント 多桁表示板を使用した例です。 |
以上