漆喰の歴史


 「漆喰」とは、消石灰を結合剤とする塗り壁またはモルタルのことで、その歴史ははるか5000年を遡ります。エジプトのピラミッド、ローマの都、そして万里の長城を組積するとき、モルタルとして使われてきたものも漆喰でした。古代ギリシアの時代からローマ、ルネッサンス、そして近代ヨーロッパへと脈々と継承されてきたフレスコ絵画の伝統も、漆喰の材料と施工技術のエッセンスといえます。
 日本において、築城ブームの到来と共に、海草糊を使用する独特の工法が開発され、耐火性、耐候性にすぐれた仕上げ材として、日本の建築文化を長い間支えてきました。明治維新の後も、煉瓦造や木摺りの上に何層も塗り重ねる本漆喰の工法として、洋館造りの内外装に使用されました。 



漆喰の機能 

◎ 漆喰は不燃です
 火災時に死亡する原因の大部分は、煙に巻かれて窒息することです。 それも化学合成建材から発生する有毒ガスは大変危険な場合があります。
 漆喰は江戸時代にも、延焼を防ぐ為の防火構造として発展しました。

◎ 漆喰は呼吸します
 漆喰の最大の特徴の一つに、優れた吸放湿性能があります。その為、土蔵の古文書なども保存状態が良いのです。
 呼吸をしない新建材の住宅では、結露を起こしやすく、カビ、ダニの発生、アレルギーと言った非健康的な住環境に陥りがちです。
 押入などには必ず漆喰を塗ってあったのは、先人の知恵なのです。 
 
◎ 漆喰は衛生的です
 漆喰は無機の材料であり、強いアルカリ性です。よほど条件が悪く無い限り、カビも細菌も発生しにくいのです。
 漆喰のベースであるカルシウムは、動物にとって最も親和性のある無機材料です。歯も骨も貝殻もみなカルシウムで出来ています。



漆喰に使用される材料について

消石灰
漆喰の主成分となる材料。漆喰塗りは、消石灰の乾燥と空気中の炭酸ガスの吸収による炭酸化(炭酸カルシウム)によって硬化する、気硬性という性質を利用している。 
粉末消石灰
土中釜にて塩焼きされた生石灰(軽焼生石灰)を水で消化することによって得られた消石灰は、粉末度が細かく、可塑性・保水性・安定性が良く、白度の高い性質を示す。

生石灰クリーム
土中釜にて塩焼きされた生石灰(軽焼生石灰)を大量の水で消化、ペースト状にし、数ヶ月寝かせることで、消石灰の結晶を成長させ可塑性などの性質をさらに向上させたものを生石灰クリームという。また、消石灰に比べ、収縮が少なく、表面硬度が硬く、鏝による艶が出やすい性質を持つ。

貝灰
貝殻を炭で焼き水を掛け消化させたもの、古くから漆喰塗りに亀裂防止や耐水性向上の目的で使用されてきた。ただし未焼成貝殻や未消化のものが含まれ、塗り壁に色が付いたり、あばたになるなどの不具合が発生することがある。関東地方では、牡蠣の殻を原料にしていたことにより蠣灰とも呼ばれる。機械で焼いたものは、貝灰としての性質は期待できない。

糊剤
漆喰塗り、土もの壁・砂壁など日本壁の塗り壁材の練り合わせに、適度の粘度を与え、鏝塗りの作業性を良くし、乾燥後の結合と固着を計るために使用する。 
海藻糊
紅藻類の角又(つのまた)や銀杏草・ふのりを使用する。以前は、これらの海藻を現場で炊き、煮汁を漉して使用していたが、臭いが強く手間がかかるので、工場で生産される練り漆喰以外は、主に角又や銀杏草を乾燥粉砕した粉角又・粉銀杏を使用している。

メチルセルロース(MC)
パルプを処理して作られる水溶性の繊維素誘導体で、増粘多糖類とも呼ばれ少量でかなりの高粘度が得られる。漆喰やセメントモルタルの保水剤として使用されるほかに食品や医薬品・シャンプーなどにも使用されている。

すさ
わら・麻・紙などの繊維を短く裁断し、もみほぐしたものを「すさ」又は「つた」と呼ぶ。漆喰塗り付時の材料の落下を防ぎ、乾燥後の塗材の収縮亀裂を防ぐ効果がある。 
はますさ
麻なわ・麻袋を3〜10o程度に裁断したもの、麻なわ・麻袋の使用程度により、上浜・並浜などの等級がある。

白毛すさ
マニラすさとも呼ばれ、マニラ麻ロープを10〜20o程度に裁断したもの、漆喰などの中塗りに使用している。

南京すさ
硝石すさ・異人すさと呼ばれ、ジュート麻袋を裁断したもの。はますさよりも繊維が細く柔らかい。

さらしすさ
上すさとも呼ばれ、はますさを漂白したもの。漆喰や大津壁などの日本壁などの上塗りに使用されている。

油すさ
菜種油などを絞った袋を裁断したもの。屋根漆喰などに用いられた。

紙すさ
和紙やパルプの繊維で、漆喰や日本壁の高級仕上げに用いられている。

化学繊維すさ
ポリエチレン・テトロンなどの繊維で、耐アルカリ性の強いものを使用している。

その他の材料 

漆喰を外部に用いる場合、耐水性を向上するために使用する。大豆油・菜種油・桐油・鯨油などが使用されてきた。

とんぼ・ひげこ
長さ約10pの麻を2つ折りにして釘の頭に結びつけたのもで、ちり廻りに打ち付けてちり廻りの隙間発生を防止する。

のれん
蚊帳や寒冷紗を幅4〜5p・長さ20〜30pに切り、釘を取り付けた竹ひごに糊付けしたもの。とんぼ・ひげこ同様にちり廻りの隙間発生防止に使用する。

蚊帳・寒冷紗・しゅろ毛・パーム・いぐさ
主に、壁面の亀裂発生を防止するために中塗りに塗り込むもので、漆喰塗り、日本壁などに用いられる。



漆喰工法

漆喰工法は、我が国伝統のもので、古くから城郭や、神社仏閣、そして民家の壁や土蔵などに広く使われてきました。
 戦後の一時期までは、町場における内外装仕上材として主流 を成していましたが、高度成長期における建築様式の変化もあり、工事の量もかなり減少してきました。 
 原因としては、漆喰自体の存在価値がなくなったためではな く、工事に手間が掛りすぎ、建築生産のスピードに合わなくなった点が大きいと言えます。
しかし、漆喰の持つ吸放湿性、環境に対する安全性、リサイクル性、健康に対する優しさ、そしてシンプルな美しさなどが再認識されて、その価値が見直されつつあるのが現状です。 


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