俳句教室 寸評と指導


2009・9・10制作


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詳しい句評は月刊俳句誌「ゆめ」に掲載

7月分講評・添削


ショベルカーつまみ出さるる茗荷の子  歩未
ショベル(shovel)は、日本ではシャベルとも言い、言葉としてはどちらも通用します。ショベルカーは
どうやら和製英語のようで、ショベルローダーというのだそうです。茗荷はなかな俳句での扱いは難し
く、「茗荷の子」が夏の季語。「茗荷の花」は秋の季語で、茗荷だけでは季語になりません。ショベル
カーで「つまみ出す」のですから、実際に考えれば、変な表現と言われても仕様がありません。おそら
くは、茗荷の子も含めて一切合切が、あっという間に抉り取られていったのでしょう。「つまみ出す」
は作者の俳諧味であったわけで、殺伐とした光景が俳人の目を通して人間味のある光景に変りました。


菅笠で野天風呂かな梅雨最中  宏子
格助詞「で」や「て」は、どうしても原因と結果を示しますので、俳句自体の膨らみや広がりは小さく
なります。菅笠を被ってまで入った野天風呂です、もう少し状況や体験した事実を知りたいと思うのは
私だけではないのでは。

「菅笠を叩く荒梅雨野天風呂」

巡拝者般若心経梅雨晴間  一好
もう一句、「浄土へは十万億土蓮の花」もありましたね。これから辛口のことを書きますが、作者を責
めているわけではありません。初心者にはごく普通に見られる事例ですので、皆さんも自分に置き換え
て読み、理解してください。取り上げた句は、四五十年前の俳句の世界なら良しとする人も多かったの
ですが、俳句の研究が進んできた今日では、一番避けなければいけないスタイルとなりました。先ずは
「巡拝者」の句から見てみましょう。こうした句の欠点は、般若心経の部分が南無阿弥陀仏でも収まり
ます。もう少し厳しく言うなら「浄土へは十万億土蓮の花」の「十万億土」を当て嵌めても句は成立し
てしまいます。また季語も初時雨でも良い訳です。俳句は季節を詠むものですので、出来るだけ季語は、
この季語でなければという設定が欲しいわけです。読むと実にリズム感が良いので、俳句としても良い
ものに聞こえてしまいますが、やはり中味は大切にしたいものです。「浄土」の句は、言葉としてすで
に多くの人の意識下にあるフレーズですので、文芸作品という訳には行きません。こうした言葉や心情
は、一度は詠んでみたいと思っている人が結構多いのです。それどころか、俳句はこうした心情を詠む
ものだと思い込んでいる人も多いのです。心情を詠むにしろ、先ずは借り物の表現では無い、自分だけ
のオリジナルな表現なら、立派な作品になる可能性は大いにあります。ちゃんとした先生の居る句会な
ら、
どこの句会へ行っても同じ指摘をされるはずです。巡拝の寺の名を具体的に詠み込むと、句柄がが
らりと変り、俳句になりますよ。

梅雨晴間毘沙門堂の苔の色

病室の濃あぢさゐの閑かなり  淳子
紫陽花の色は何色でしょうか。七変化が別名にあるくらいですから、ここは紺、紫、紅と色を出した方
が、その色で受ける印象も違います。自分以外の人にも、分かってもらおうという気持ちを持つように
しましょう。下五の閑かなりは安易過ぎたのではないでしょうか。
「あぢさゐの紅病室の大き窓」

雨上がり蜘蛛の囲を風が抜け  幸敏
十七音しかない中に、自然現象の雨上がりと風を入れたのでは、中味はなくなってしまいます。雨か
風のどちらかを省略して、もう少し周囲を、或いは蜘蛛の囲の様子を写生したいですね。読んだ人の脳
裏に、景色や情景の描ける材料を与えてください。
「蜘蛛の囲を風吹き抜ける渡し跡」

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