2.爪
「みー、どうかした?」
いつもの元気がない彼女を見て声をかけた。
「爪が割れちゃいました。せっかく伸ばし始めたのに」
彼女は大学生になって、友だちから化粧を教えてもらったと喜んでいた。
今までは、子どものようにキッチリと切っていた爪も伸ばしてマニキュアを塗っていた。
彼女が少しずつ、少女から大人になっていく様を側で見ているのは楽しい。
しかし、自分が縛り付けているのでは不安になるときもある。
「この爪だけ切ったらおかしいから、全部切ろうかな」
そう言いながら、爪の色を落とし始めた。
「先生、匂いがキツイ?」
除光液を見せながら聞いたので、首を振った。
彼女を見ているだけで幸せな気持ちになる。
何をしているときでも。
爪をヤスリで削り始めたので、
「右手はやりにくくないのか?」と聞いてみた。
「ううん、慣れてるから大丈夫。先生のもやってあげましょうか?」
彼女は、爪切りを使わずに、ヤスリで爪を整えるそうだ。
そんなに伸びていないが、自分の右手を差し出すと、
その小さな手で押さえながら、爪を磨いてくれた。
こういう時間が永遠に続けばいいのにと勝手なことを思いながら、
再び彼女の手元を鑑賞した。
あとがき:ダブルの君の伏線みたいですね…