3.見つめる
「このお茶、冷めてしまいましたね。入れなおしましょうか?」
本を読むのに没頭していたら、彼女の入れてくれたお茶をそのままにしていた。
「いや、冷めてもおいしいから、コレは飲むよ」
そう答えて、マグカップを手に取った。
彼女は母親や、祖母から厳しくしつけられているようで、お茶を入れるのはもちろん、
家事全般をうまくこなす。
紅茶は冷めていてもおいしかった。
「先生、紅茶とコーヒーどっちが好き?」
「どちらかといえば、コーヒーかな、みーは紅茶?」
「うん。でも、カフェオレは好き」
彼女は飲み終わったマグカップを片付けると、自分も本を読み出した。
俺は本を読むのを止めて、彼女が読んでいる姿を見つめた。
視線に気がついたのか、彼女が顔を上げた。
「なあに?」
「何も。ただ、みーを見ていただけ」
「変なの。先生も本の続きを読んだら?」
「ああ。でも、みーを見るほうが楽しい」
彼女の本を読む姿は、遠くから見つめているときから大好きだった。
本の中の主人公になってしまったように、読みながら笑顔になったり、泣いたりするのだ。
「先生、見ないで」
「どうして」
「穴があくでしょ」
以前、俺が言った台詞と同じようなことを言った。
「いや、だったらもうとっくに、穴があいてるはずだ」
彼女を見つめるのは今に始まったことではないのだから。
あとがき:先生ってホントにストーカーっぽい(笑)