『平家落人伝説 まぼろしの旗』
  本当の拠り所〜紹介文にかえて



この物語は、四国祖谷地方に伝わる平家落人伝説です。
平家は「平家再興」の望みをかけ、王位継承の印である 三種の神器を持つ、まだ6つにしかならない安徳帝に 三種の神器のひとつである草薙剣を持たせ、四国の祖谷地方に 落とすことに決めました。
平教経は幼なじみの臣下に、自分の身代わりを命じ、 教経の名を捨て国盛という幼き日の名前に戻り、安徳帝の 父親といつわって、祖谷地方にたどりつきます。
1歳のときに父親を失い、父親と睦み合うことを知らない 安徳帝は、国盛を「父うえ!」と呼び、国盛になつきます。
村に入る前の晩は雪が降っていて、寒い日でした。
安徳帝はこう、言います。
「みのの寝床はあたたかいよ!火のそばでなくても眠れそうだよ。」
それはただ、言葉どおりの意味ではなく、
「冷たい雪にぬれた者を火のそばへ」という意味がこめられていました。
村の娘、穂波は何かと子供扱いする国盛に反感をおぼえますが、ある日 真剣な思いつめた顔で、一心に「平家再興」と「安徳帝復位」を願う 国盛を見てしまいます。穂波は国盛の生き方に疑問を持ちます。
「生きるというのはそういうことじゃない。」と。
9歳を迎える安徳帝は元服します。
その日安徳帝は国盛にこう言います。
「もうこれからは大人の仲間入りをせねばならぬのであろう?
ならば、これで最後にするから、父上と風呂に入りたい。」
安徳帝は幼いながらに自分のなすべきことをきちんと知っていたのです。
ある日、穂波の夢枕に元服前の姿をして、草薙剣を抱えた安徳帝 が立ち、「国盛たちに優しくしてあげて」と言葉を残し消えます。
びっくりした穂波は国盛の所に行きますが、まだ幼い安徳帝は風邪を こじらせあっというまに、亡くなってしまっていたのでした。
安徳帝を亡くしてからの国盛は酒浸りの毎日を送ります。
彼にとっては安徳帝が最後の拠り所だったからです。
そんな国盛を穂波は「私は安徳さまに夢で会った。その言葉が聞きたければ 琵琶の滝まで来い。来る気になるまで待っててやるからいつでも来い!」と 叱咤激励します。それでも酒浸りの国盛はある日「平家の鉾をお前が守れ」と いう夢をみました。元気を取り戻した国盛は厳島神社から鉾を分けてもらい、 祖谷でそれを守ることに決めました。
穂波の待つ琵琶の滝に国盛はようやく足を運びます。しかし、国盛は穂波に 最後の言葉をすぐに聞くことはしませんでした。もう分かっているというので す。言葉というのは「たとえどんなに大切なよりどころでも、喪われたものに すがって生きることは亡霊を呼び戻すのに似ている...。」そんな言葉でし た。国盛は誓います。「この地に根を張り、子々孫々まで脈々と、ただ この命を継いでゆくことを」
そのころ、国盛の身代わりになっていた幼なじみが国盛を訪ねて来ていまし た。

『小学館ビッグコミックスゴールド 580円1999年3月初版』

(文と絵 by ごてん)

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