SF好きなあなたにおすすめ。
竹宮SFの傑作『地球へ…』


『地球へ…』…最初にこの作品に接した時、このタイトルに心引かれました。 地球上ではなく、離れたところから地球を眺めている視点から発せられた、作品の広がり と奥行きを予感させる響き。冒頭の導入部もそれをあらわすかのように、星の海から始ま ります。

西暦3000年代、汚染によって衰退した地球を救うべく、人類はその生命までをもゆだ ねた高度なコンピュータ管理社会を築きました。このような未来社会の中、出現するべく して誕生した新人類ミュウと管理社会とは対立する事となります。ミュウの持つ限りない 地球への慕情に支えられて。

こうして展開されていく人類と新人類の戦いを「縦糸」とすると、その過酷な運命の中を 翻弄されながら深い苦悩を抱きつつも精一杯生きてゆく少年達の織り成すドラマが「横糸」 となり、読み始めると引き込まれるようなストーリーを構成しています。そしてあたかも この作品を、広大な宇宙の中のオアシスである地球そのもののように珠玉のものとしてい ます。

それまでは少女誌のみでご活躍されていた竹宮さんが、初めて少年誌に連載された作品と いう事もあって、竹宮さんご自身にとってもそれまでの作品とは一風変わったものとなっ たようです。それが男性のファンを一気に集める事となったのも見逃せません。また以前 アニメ映画化された事もあって、竹宮さんの作品の中では比較的知名度の高い作品でもあ ります。

連載が開始された1977年頃というと、アメリカで1975年にスペースシャトルの開 発が開始されたせいもあってか、世界的な関心が宇宙に集まっていた時期です。日本では 高度経済成長の寵児とも言える公害問題が取り上げられ、アジアやアフリカでは爆発的に 増加する人口が問題視され始めた頃でもあります。

そう考えると約20年前に完結した作品でありながら、それ程の古さを感じさせません。 それどころか、環境汚染や機械による管理体制など、これからますます重要となってくる テーマを持っています。未来を舞台としていながら、そこで語られている事は現在我々が 直面している現実問題への警鐘とも言えます。

ま、そんな堅苦しい事は抜きにして、竹宮作品ならではの美少年キャラが織り成す、壮大 な世界を舞台に展開されるスリリングなドラマは、ミーハーモードで読んでもこの作品の 素晴らしさを十二分に満喫できますので、どうかご安心を。

人類、新人類を問わず、全ての人間が心に抱く故郷への切ない程の想い。読み終えてみるとこの作品の短いタイトルに、如何に様々な想いが込められているのかをあらためて感じます。

(by らんぶるさん)

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