| Kが病んだ身体から何とか回復し得た後、彼女の翌年の誕生日にこの絵を贈った。
昔の絵の宗教的な祈りの雰囲気を出したかったので、混合技法という手法で描いた
(あまり大上段に技法とよべるほどのものではない)。
冬の裏山に登ると、まわりが脱色したような枯れ色のなかで
山椿のてらてらと光った葉が、寒さの中でも穏やかな日射しの暖かさを感じさせてくれた。
その葉の茂りのなかに少し暗みのある真っ赤な椿の花が、
ひとも見ていないのに鮮やかに咲いていた。
そのまま花の散るにまかせてしまうだけでは何かもったなく思った。
この女の身体に模様のように描いたのはそういう花の存在に対してのオマージュ。
この時期他にも木版で椿をモチーフにした作品をいくつか作っている。
女の手のなかにある光ったものは、山道に落ちていた杉の花芽。
逆さまになっている木の化石化したイメージは、
大江健三郎の「レインツリーを聞く女たち」のなかの
「逆さまになったレインツリー」から。
月蝕の月は、その頃実際にあった皆既月蝕や、
ピンクフロイドのアルバム「ダークサイドオブザムーン」から。
「自己流の「技法」が災いしたのか、
しばらくしたら絵の一部が剥げ落ちてしまった。
それが人物の額に当たる部分なのは偶然だろうか?
何故なら彼女の病のもとが、脳を原因とすると医者に言われもしたから。
絵は現在 Kの仕事場の壁にかかっている。
彫刻の仕事で出る大理石の粉が絵を傷めないようにと
アクリルの透明な板が絵の前に立て掛けられている。
2001.7.21.記
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