透過する光線

1997年  W35×H35×D8cm 大理石

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あの頃見た不思議な夢のひとつに、“強烈な光”の夢がある。 まだ夜が明けるには暗過ぎる。そんな時間だった。
すっかり眠り込んでいたのに、異常な気配で眼を覚ました。
家のすぐ前に迫って連なる山。その山のむこうから、強烈な光が現れようとしている。山の縁(ふち)を透けて来る光線は、閉めてあるはずの雨戸さえも貫いて射し込んで来る。 私は直感した。この光線に照らされたら、どんなものも消えて無くなってしまうだろうと。 自分達の終わりが、こんなふうに突然やって来るとは思っていなかった。 すべての存在を消し去る光線を受けた後で、無になった私たちは、互いをどうやって捜して、それがその人だと確認したらいいのだろう?どんどん上がってくる光を前に、絶望的になっていた。 「ひとつになろう!」とっさに考えた。
 何も気が付かずにまだ眠っている(変な話しだが、そんな時でも、彼は安らかに寝ていた。)彼の口に、自分の口を強く重ねる。ふたつの顔が、ひとつになれと言わんばかりに。
 “無”になる前からくっ付いて離れずにいれば、その人を見失うこともないのではないか?すべての触覚を失ってしまっているはずなのだから。最後の希望だった。 あー ああー!光線が上ってくる。 夢から醒めた。辺りはまだ暗かった。ゆっくり見回す。彼は横に寝ているし、ここはまだこの世のようだ。リアル過ぎて、すぐには安心出来なかった。 しばらくして、この夢のことを大理石の板に彫ることにした。彫り続けるうちに、私には夢の意味が解って来た。
2001.3.28記