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ヴェロニックは、バルザックの文学「村の司祭」のヒロインの名前だ。過去の自分の罪への自責と、強い信仰心ゆえに、あえて過酷な生き方を求めている貴婦人ということなのだが、誰も知らない彼女の内面を、唯一見て来た人物が、田舎の小さな教会の司祭なのだ。
彼女の激しい信仰は、子どもの時から顕著で、祈りに没頭していると彼女の瞳孔の色が変わるし、顔が美しく変化していく様子が描かれている。
女性が主人公ということもあって、思いつめた心境の時期とも重なり、私は、ひどく感動して読み続けた。ところが、その感動的な部分を、夫のHに読み聞かせても、彼にはピンと来ないらしい。おんなの問題はおんなのものなのか?と、その頃は苛立ちながら思ったものだ。もう10年も前のことだけど。
そんなある日、電車で私の向かい側に座った女性に、強く引き込まれた。あんまりじーっと見ては失礼とは思うのだがやめられない。
ひどく痩せていて(拒食症かと思うが)鼻の骨の角まで見えるほどで、若いようでありながら、年齢を超えているようでもあり、、、。
手に肉付きが無いし、腕が手首ほどの太さで、、、。
でも、美しい人だった。仕種や身なりが、何か静かで上品だった。
数日経って、思い出してデッサンしてみた。異常な人の美しさを。
えくぼのように見えたのは、実はえくぼではなくて、骨に張り付いた薄い皮膚が作る陰影だった。頭の大きさというのも、収縮するということを知った。
その後、二度とその人に会うことはなかった。
彫刻に彫ることにして、彫り上がる頃には、私自身の思いつめた感情もだいぶ静まって来ていたらしい。Hが、「この彫刻、ボクにくれない?」
だから、その時から"Veronic"は、彼の画室の絨毯の上に、いつも置かれている。
2001・2/7記
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