毎日『エコノミスト』誌の投資経済情報サイトに連載しています。
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映画「TSUNAMI−ツナミ−」と朝鮮半島の激変(9月21日号)
傑作西部劇と民主党代表選(9月14日号)
映画「キャタピラー」と株安のメドと政策
(9月7日号)
映画「ベスト・キッド」と世界経済同時減速(8月31日号)
映画「瞳の奥の秘密」と円高防止策(8月24日号)
映画「インセプション」と中国・米国経済の行方(8月10日号)
ショパン「別れの曲」と円高、株安
(8月3日号)
歌舞伎「助六」と中国人民元預金(7月27日号)
映画「ザ・ウオーカー」と菅首相の消費税発言(7月20日号)
映画「アウトレイジ」と人民元切上げ(7月13日号)
映画「告白」と女性の労働環境の改善(7月6日号)
映画「孤高のメス」と管政権の経済運営(6月29日号)
映画「川の底からこんにちは」と新内閣と株価(6月22日号)
映画「春との旅」と長寿リスクと北朝鮮、ユーロ、株価(6月15日号)
映画「グリーン・ゾーン」と金価格の私の目標値(6月8日号)
映画「THE 有頂天ホテル」と日本の財政赤字許容限度(6月1日号)
映画「パリより愛をこめて」とギリシャ問題と鳩山政権(5月25日号)
映画「第9地区」とは鳩山政権の人気低下と株価(5月18日号)
交響曲「新世界より」と財政破綻と老後難民の時代 (5月4日・合併号)
映画「TSUNAMI−ツナミ−」と朝鮮半島の激変(9月21日号)「TSUNAMI−ツナミ−」は韓国で1300万人を超える観客を集めたパニック映画。対馬近辺の大地震が高さ100メートル、時速800キロメートルのメガ津波を生み、韓国の代表的リゾートで夏に100万人が訪れるヘウンデを襲う。 このテの映画は、見せ場の津波の前にたくさんの人のドラマが進行し、そこに悲劇が−−となる。そこいらが平凡なので少々辛抱が要るが、CGを使った巨大津波のシーンは大いに見ごたえがある。 いま、北朝鮮に異変が起こりつつあるらしい。マスコミは独裁者、金正日総書記の3男で、まだ20代の金正銀が後継者となることに関心を集中している。しかし、ある事情通は「実権は金正日の妹の夫で経済改革派の張成沢に与えられる。44年ぶりに開かれる労働党代表者会で、改革開放路線が採択される」とみる。 その根拠は8月下旬の金正日訪中と胡錦濤中国主席との会談である。ここで中国側は「自力発展策では経済発展を達成できない。市場原理を導入せよ」と強く勧めている。 金正日は、失敗したら責任を中国が取ってくれるか尋ねているはずだ。中国の保障があれば、経済的にも政治的にも破綻のリスクは低下する。だから同時期に訪朝していた米カーター元大統領に会わなかった。 ◇統一コリアは50年に世界2位へ北朝鮮の改革開放が進めば中国のメリットは大きい。核廃棄の見返りに在韓米軍を撤退させ、朝鮮半島から米国の影響力を低下させられる。 韓国紙『中央日報』(9月9日付)は「南北間の激変が突然発生する可能性が非常に高い」とし、「統一コリア」への韓国の財政負担は数百兆ウォンと推定した。津波のような事態と考えているらしい。韓国国防研究院は、その相当な分は日本から賠償金として取れる、とリポートをまとめている。 「統一コリア」については、米ゴールドマン・サックスが従前からメチャメチャに強気な見通しを発表している。同社のソウル支社のクオン・グフン氏の書いたリポートでは、2020年代に統一が成立し、その後の15年間、北は年15%成長、南は3%成長と見込んでも、シナジー効果で2050年には1人当たり所得は北が7万ドル、南が9万6000ドル、平均して8万6000ドル。これは仏、独、日本を抜いて世界第2位になる。北の鉱物資源の活用と、優秀で安価な労働力の利用が強みになる。 これまで韓国経済の大きなリスクは朝鮮半島の冷戦だった。これが中国との関係が強化されると北は軍事的暴挙ができなくなり、在韓米軍、そして沖縄の海兵隊駐留の必要度も低下してゆく。北朝鮮の軍部が抵抗して、改革開放どころか、何か大変なことが起きるかもしれないが。 映画のセリフから。津波を予想した地質学者が、対策をためらう上司に言う。「中国の四川省地震もインドネシアの津波も、予想もつかなかった。災難には予告はありません」。ある日突然、起きるかもしれない激変事態。案外近いのではないか。
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| 傑作西部劇と民主党代表選(9月14日号)
映画「ワーロック」は1959年の西部劇の異様な傑作。亡くなった映画評論家瀬戸川猛資さんが絶賛してやまなかった。 西部の町ワーロックで無法者どもがしたい放題に暴れている。町の住民は連邦保安官を呼ぶ。これがヘンリー・フォンダで無類の拳銃の使い手。相棒がアンソニー・クインでこれも腕っこきのガンマン。2人は華麗なガンプレーで悪党どもを消す。 普通の西部劇と違い、ここで映画は終わらない。残り3分の1は正義の士のはずのフォンダとクインが決闘、生き残った1人は町の人々の冷たい視線を浴びて去ってゆく。 政権交代で古い勢力は倒される。しかし倒されたあとは革命家自身が悪い権力と化し、血で血を洗う抗争が始まる。今回の民主党代表選挙で私はこの映画を思い出した。監督エドワード・ドミトリクは「赤狩り」旋風の犠牲者で、理想主義の崩壊を目の当たりにした人だ。 私がある有力政治家から聞いていたお話は、円高・株安の国難を理由に、無競争の選挙にする。出馬断念の代わりに小沢氏は、腹心を幹事長職に据えるというもの。事実、鳩山氏はそう動いたが、世論の高い支持率を見て菅氏が拒否したのだろう。 ◇円高・株安は止まらない 代表選のシステムが現職国会議員の比重を大きくしており、現時点では圧倒的に小沢氏有利。この人は負ける戦に出る人じゃない。ただ、党代表になっても自分が首相になるかどうかは疑問だ。恐らく元自民党勢と救国連立政権を作り、ねじれ国会を切り抜けるつもりだろう。 この間、円高・株安は止まらない公算大。ヘッジファンドは真空状態の日本で円買い・株売り戦略を止めることはあるまい。特に外資系証券が大量の先物売りで既に大きな利を取っている。簡単には終わらない。 円高を止める妙案は財政出動と為替介入の組み合わせである。新政権になってもすぐには政策が出ないので、暗い時期がまだまだ続く。というのも米国、ユーロ圏共に通貨安を示唆する悪材料が出ているからだ。 まず米国。住宅も雇用も悪いし、耐久財受注(除く航空機)が前月比8%も急低下し、設備投資の先行き悪化を示している。オバマ政権の支持率は急低下中で、中間選挙での大敗=レームダック化がほぼ確実だ。 ユーロ圏では、ギリシャをはじめとした南欧諸国の信用リスクが再び注目されている。ユーロ加盟国スロバキアがギリシャ支援融資計画を国会で否決、ユーロの構造的問題が明らかになっている。 こうした悪環境のなか、ニューヨーク株に「ヒンデンブルグの凶兆」という大幅下落の予告指標が8月中下旬に4回も出た。この指標はリーマン・ショックを3カ月先行して予告しただけに、不安は高まる。 映画のセリフから。着任した保安官が町の人に言う。「初めは歓迎されますが、本当に平和が来ると冷ややかな批判に変わるんです」。マスコミの小沢氏叩きが当選後どう変わるか。まず歓迎か。その後が問題だ。
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| 映画「キャタピラー」と株安のメドと政策
(9月7日号)
「キャタピラー」は若松孝二監督の反戦映画。主演の寺島しのぶが、ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を獲得した話題作だ。江戸川乱歩の短編「芋虫」をモチーフにしている。 第2次世界大戦末期、シゲ子の夫久蔵が戦地から生還するが、胴体と首以外は切断され、顔の半分は焼けただれ、声帯も耳も損傷している。勲章を3つももらい、村人からは軍神と称えられ新聞にも載ったが、何にもできない半面、食欲と性欲は衰えない。シゲ子は夫への嫌悪感、軍神の妻というプライドのなかで次第に精神をゆがめてゆく。久蔵は戦地での残虐行為がトラウマになる。 手足を失った久蔵のように、今の株式市場は資本調達の場としての機能を喪失してしまった。売買金額が1日5000億円にも達しないし、トヨタのような一流株でも何千株の買い注文しかない。 株価の現水準は異常としか言いようがない低さだ。主要銘柄の株価収益率は過去30年で最低だし、全銘柄の益回りは6%以上、配当利回りは2%。解散時の1株当たり純資産と株価との比率はわずかに0.6倍台だ。 日経平均9000円近辺は、ここ2年ほどのチャートを見ると大事な止まり場だったが、円買いと同時に日本株売りを米系ヘッジファンドが強行している。高値から20%以上の下落は中、長期の下げ相場入りを暗示している。米欧経済の回復ペースが急減速し、ドルもユーロも通貨安による近隣窮乏化政策を強行し始めた。中国の人民元切り上げはほとんど0%。日本国債を買っている。 ◇円高と株安で国内空洞化 ドル・円相場はこうして1995年4月の79円75銭に接近、輸出株の多い日経平均の企業収益の先行き悪化が懸念され、株安につながっている。実効レートで10%の円高は経常利益を5.3%押し下げる。高値から2000円下落した株安も4%の減益要因だ。だが、11年3月期の日経平均の1株当たり利益は、前期から94%の大幅増益が見込まれている。為替と株安合わせて10%に満たない減益なら、そう大した悪影響にはならない。本当なら、8000円台のどこかで下げ止まるところだ。 やはり、為替と株式市場への政権の無関心が投資家のやる気を削いでいるのだろう。国難に対処しなければという意欲が感じられない。日銀も同じだ。 円高と株安が続けば、輸出企業はますます生産を海外に持ってゆき、雇用は減少し空洞化が進行する。中国・韓国など為替安でメリットを受けている国との競争にますます不利になる。菅首相は必死になって、円安・株高になるような、例えば金融緩和、ドル買い、法人税引き下げなどを早急に決めるべきだ。ただし、投機筋は強力だ。粘り強く。 映画のセリフから。久蔵の父が言う。「こんな姿で生きて帰されたってよ。どうしろっていうんだよ」。芋虫みたいな日本にされる前に、手を打たなきゃあ。
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| 映画「ベスト・キッド」と世界経済同時減速(8月31日号)
「ベスト・キッド」は1984年に大ヒットし、シリーズ第4作まで作られた作品のリメーク。オリジナルを上回る出来だ。 今回の主役ドレはウィル・スミスの息子ジェイデン・スミス、教師役ハンがジャッキー・チェン。ドレは父を亡くし、母の勤め先の関係で北京に引っ越してきた。新しい環境でいじめっ子たちの嫌がらせはやまない。ある日、6人に囲まれ窮地に立ったとき、アパートの管理人ハンがカンフーであっという間に叩き伏せる。強くなりたい主人公は、ハンの指導の下に才能が開花してゆく。 映画の舞台の北京だが、このところ「おかしい」という情報を耳にする。北京に行った知り合いは米系高級ホテルがビルごと閉鎖され、通りの反対側の巨大ホテルもつぶれているのを発見。王府井という中心街だ。北京五輪を当て込んだホテル乱立のつけ回しだろう。このほか313メートルの高層ビルが半分近く埋まっていないとか、外国人の借りるマンションの家賃が30%以上下がったとか。 8月9日付『ウォールストリート・ジャーナル』中文版によると「北京を中心に中国の不動産の4分の1が空室で、6450万室に上る」。ただ、主に北京の不動産不況にとどまると見ていいようだ。 ◇中国の不動産バブルの行方 従前から、中国の不動産バブルは北京や広州などで激しいが、中国全体では不動産投資の利回りは長期国債を3.7%上回って健全とされてきた。年間所得と都市部住宅価格の比率は2009年で8倍。不動産価格の伸びは大きいが、賃金上昇率を考えると、住宅ローンの負担は実質収入の6分の1だ。 それでも政府は、2軒目以上の住宅購入に対する頭金引き上げなど住宅投資を規制し、銀行の貸し出し姿勢を厳格化させた。預金準備率引き上げを中心にバブルの計画的調整だ。 中国政府の考えはこうだろう。重要な輸出市場である欧米が今後低迷する可能性は高く、不動産バブル潰しで自国の経済成長まで犠牲にすることはバカバカしい。そこはほどほど。財政出動、特に内陸部の投資拡大で総需要の落ち込みを防ぐ−−という作戦だ。11年は多少スローダウンしても高水準の成長率だろう。 現状では、日本の輸出メーカーに聞くと中国経済は春先までの勢いがないようだ。日本の鉱工業生産も輸出も伸びが止まっている。世界経済同時減速を反映しているのだろう。その先を懸念するのが多数派意見だが、案外悪くならないと私は考える。あの国の指導部はアタマがいい。 私は2012年が世界的な首脳選挙の年であることに注目している。米国、ロシア、フランス、韓国で大統領選があり、台湾は総統選、そして中国は第18回全人代(全国人民代表大会)で胡=温体制から変わる。デフレと不況の不安に対し、必死にどの国も努力するのではないか。 映画のセリフから。ハンがいう。「絶望から立ち直るのは結局、自分次第だ」。最後はやはり政治が握っているのでは。
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| 映画「瞳の奥の秘密」と円高防止策(8月24日号)
「瞳の奥の秘密」は今年度アカデミー賞外国語映画賞を獲得したアルゼンチン映画。評判通りの傑作と思う。一見をおすすめする。 裁判所の捜査官ベンハミンは退職後、記憶に残る殺人事件の回想を書く。せっかく逮捕した容疑者を1970年代の軍事政権は超法規措置で釈放した。何と大統領のガードマンになってしまった容疑者を見て歯噛みする捜査官。 円買いによるヘッジファンドの対日攻撃がはっきりしてきた。ユーロ売りで大成功し、満を持しての円買いなので、95年4月の歴史的高値1ドル=79円75銭を抜く公算大。IMF(国際通貨基金)の購買力平価だと昨年1ドル=111円だから、ヘッジファンドの仕掛けは映画の容疑者釈放に似た無理無体なものに映る。 しかし、10年続いたデフレの影響で実際の購買力平価はもっと低い。1ドル=60円まで行くのではないか。 別に日本経済自体に円高の材料があるわけではなく、日本の体制に問題がある。まず菅首相の先般の消費税発言で財政均衡主義を継続することが明らかになったし、日銀がデフレ脱出を考えていないことも金融政策不変の声明で明白になった。円買いのお墨付きが出たようなものだ。 一方、5年間で輸出倍増を狙う米オバマ政権のドル安志向は強いし、ユーロはまだ為替レート回復のメドさえ立たない。中国は人民元切り上げの悪影響を軽減する目的もあって、日本国債を大量買いしている。 ◇1ドル=60円もありうる 当時の購買力平価は111円70銭で円は妥当値だったのだが、ヘッジファンドは「日本は輸出する側だから輸出価格で、米国は輸入側なので消費者物価で購買力平価を算出するのが正しい」と言っていた。これをもとに私が算出したのが「95年春、83円」で、市場は行き過ぎるものなので80円としたのである。これが正しかったことは歴史が証明する。 同じ方法でヘッジファンドの今の目標値を計算すると、60円になる。 また、クレディスイス証券の白川浩道氏は現在の購買力平価を、日米の貿易収支不均衡が最小の96年6月当時の108円90銭を均衡値として両国の消費者物価で修正し、78円10銭と算出する。購買力平価からの乖離度でみると「95年の79円75銭は現在のレートでは56円」という。 円高防止策としては、中国や韓国のように市場介入を行っている国を見習うか、ゆうちょ銀行やかんぽが保有する米国債を日銀が買い、空いた枠で米国債を買う。また、記念金貨を大量発行すれば、金購入資金を外為市場に供給できる。何にもしないのが一番悪い。 映画のセリフから。捜査官の恋人の検事が言う。「私たちは前向きの人生、過去は管轄外なの」。要は関係者の覚悟次第だ。
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| 映画「インセプション」と中国・米国経済の行方(8月10日号)
「インセプション」はただ今ヒット中のSF超大作。ディカプリオと渡辺謙が主演。見ごたえのある力作だ。映像も素晴らしい。 他人の夢の中から深層心理に侵入し、まだアイデアの段階で企業機密を盗み出すスペシャリスト・チームの首領コブ。大実業家のサイトーはコブに、世界的大財閥の御曹司の潜在意識に入り込んで、あるアイデアを植えつけることを依頼する。命がけの困難な仕事だが、国際指名手配中で米国に戻れないコブに、家族のもとへの帰国を条件に押し付ける。 手首にケーブルをまいてターゲットと一緒に眠り、夢を共有するという発想が秀逸。まるで今のグローバル化した世界経済と同じだ。 いま、中国では、これまで「夢を共有」してきた外国企業が戦略の転換を始めた。外資企業でストが頻発、大幅な賃上げに応じざるを得なくなった。徐々にインドや東南アジアへ生産拠点を移転し始めている。 大幅賃上げは中国企業にとっても大きな負担になる。『北京週報』は「最低賃金引き上げは時に20%以上に及び、安さを売り物に輸出で稼ぐ時代は終わりつつある」と警告した。高成長の支えがなくなりつつある。 ◇来年は世界の成長率ダウン 中国政府によると、経済成長率は2008年までずっと2ケタだったが、09年には8.7%になり、今年は政府のテコ入れがあっても8%台で、不動産バブルが崩壊すればもっと成長は低くなる。イベントの種も尽きたし、来年の成長率ダウンは必至だろう。中国が大量に購入している資源価格がもう急落している。鉄スクラップ安に私は注目している。 米国も経済が回復軌道に乗っていることは間違いなさそうだが、そのモメンタムはひところの予想を大幅に下回る。金融緩和政策の段階的収束、つまり出口論議は影を潜め、バーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長は最近の議会証言で追加緩和策を考慮していると述べた。 景況感の変化は金利低下に明白に表れている。2年物米国債利回りは、7月下旬に史上最低水準を更新した。超低金利政策の一段の長期化を市場は読んでいる。 ユーロ安は米国債とドルへの信認を高めたが、米国の多国籍企業の海外部門収益はほぼ半分が欧州子会社なので、ユーロの対ドルレートの下落は収益低下と株安につながる。景気刺激策のために投入した財政資金7870億ドルも、効果が少ないまま来年にはタネ切れになる。雇用者数の減少トレンドを抱えたまま、オバマ政権は「容易でない2011年」を迎えることになる。 IMF(国際通貨基金)の予想では世界経済は今年4.2%、来年4.3%成長だが、今年はともかく来年は前年比成長率ダウンではないか。不況ではあるまいが。 映画のセリフから。コブがチームの一員にいう。「人は知らない間に夢に入り込んでいる。ここからが夢だと分かる夢なんてない」。夢が現実でないと知ったとき、株式市場は反応する。
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| ショパン「別れの曲」と円高、株安
(8月3日号)
ショパンの練習曲第3番ホ長調「別れの曲」。いっぺん聞くと忘れられない名曲。ショパン自身「これほど美しいメロディーを二度と見つけられないだろう」と述べた。 実は「別れの曲」の名は日本だけのもの。1935年に日本で公開されたショパンの伝記映画「別れの曲」のメーンのテーマ曲に使われたのでこの名が定着してしまった。私自身、外国人と音楽の話をしていて通用しなくて往生した記憶がある。 円が独歩高になって輸出メーカーはどこも苦労している。中国人民元は切り上げに慎重だし、ユーロはまだ不況の出口がつかめない。米ドルは経済見通しの下方修正が嫌気されているし。 どのくらい強いか。実質価値を示す日経通貨インデックスでは、7月下旬までの6カ月間でユーロは7.9%、韓国ウォンは5.1%、米ドルは2.7%下降したが、円は5.7%上昇した。昨年末時点のIMF(国際通貨基金)の「為替レートと購買力平価比率」を見ると、円は21%も割高で、人民元は46%割安、ウォンも同程度だった。それがまた差が開いた。輸出企業ならアホらしくてやってられるか、という水準だ。 ◇マネー供給を増やせ まずデフレと株安。低利でも元利払いが保証されている国債に国内貯蓄は回る。カネはビジネスや消費に回らず需要は減り、物価はさらに下がる。社会に閉塞感が広がる。 短命で弱体な政権は、財務官僚の財政均衡主義に縛られて積極財政はできず、日銀のインフレ懸念も打破できない。この悪循環が始まったのは2007年6月の1ドル=122円の円安時から。株価も当時がピークでこの3年、理屈に合わない円高が進んでいる。本来なら財政が安定し景況がよくなければ、その国の通貨は上がらないはずなのに。 今回の菅首相の消費税増税発言は、外国人投資家に格好の円買い投機の材料となった。世界の誰もが日本はギリシャのようになるとは考えていないし、現に中国は、米国債購入を減らして日本国債を大量買いしている。人民元の弾力運用で企業の収益低下を懸念している中国指導部は、円レートを切り上げさせて人民元の競争力低下を和らげる作戦だ。 唯一の円安政策は日銀がマネーの供給を増やして、円が金融市場から海外に流れるというルートだ。そうでないと景気の急速な悪化が発生し、2番底の懸念が現実化するだろう。 映画のセリフから。「男はつらいよ」シリーズ12作「私の寅さん」のラストで聞こえてくる音楽。岸恵子のマドンナに寅さんが聞く。「あれはなんという音楽ですか」「別れの曲」「やっぱり旅人(たびにん)の曲でございましょうね」「そうかもしれないわね」。忘れられない名場面だ。寅さんのように、放浪の終わりに柴又に帰れればいいが、円高の行方は見当がつかない。
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| 歌舞伎「助六」と中国人民元預金(7月27日号)
「助六由縁江戸桜」は勧進帳と並ぶ人気演目。4月には歌舞伎座の建て替え休館前の御名残公演で市川団十郎が主役の助六を演じ、5月には新橋演舞場で子の海老蔵が。やはり、若さは強い。海老蔵には華やかなオーラを感じる。 お芝居の筋は単純。奪われた名刀を探すため、助六は吉原に来る侍に次から次へとケンカを吹っかけ抜いた刀を調べる。これを助ける花魁揚巻の胸のすくような悪態、立ち回り、そして捕り方に囲まれた助六をかばう揚巻のタンカ。見せ場が多い。 助六の名刀探しのように、資産運用者は今、混迷に陥っている。それはそうだろう。自他共に認める世界の専門家が、自分の得意の分野で「ダメだ」と言い始めたのだから。 まず債券。世界最大の債券投資信託ピムコのビル・グロス氏がつい先日「今後、米国の国債、政府関連債、先進国の債券は売り(組み入れ比率引き下げ)」と言いだした。 続いて株式。強気派で通り、今回の戻り相場をピタリと予言したバートン・ビッグス氏が得意のハイテク株を大部分処分してしまったとか。 株も債券もだめなら日本人の好きな預金。ところが利率が悲しいほど低い。普通預金が年0.04%。1年物定期預金が年0.06%。仕方がないから外国もの、と考えていたところに中国が人民元の為替弾力化を打ち出した。 人民元は40%割安 利率もさることながら、為替差益が期待できるのが人民元預金のメリット。大きく利を得るにはやはり長期で。だから余裕資金で。なにしろ人民元はIMF(国際通貨基金)の購買力平価での推計では40%も割安。すぐにその分が上昇するわけではないが、長期の利幅は大きい。 私が中国についてお勧めするとゲンがいい。2004年4月に『中国株で資産5倍』という本を書き、ペトロチャイナ、チャイナライフなど7銘柄をお勧めした。私のファンである上場会社の経営者たちも私と同時に購入。4年で5倍の目標を達成した。どうしましょう、と言うから、(1)全部利食い、(2)半分売ってコストをタダにして、あとは長期保有−−の2案を述べた。その後、リーマン・ショックを乗り切った。 それにしても、である。人民元を為替先物取引(FX)で買いたい投資家は文字通りヤマのようにいるはずなのに、取り扱うFX会社を聞かない。教えてほしい。 助六を間夫(本命の男)とする揚巻が、名刀を持つ髭の意休に悪態をつく。「並べてみるときは、こちらは立派な男振り。こちらは意地の悪そうな顔つき。たとえて言えば雪と墨」。中国投資の方針をはっきり明確にしたらどうか。
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| 映画「ザ・ウオーカー」と菅首相の消費税発言(7月20日号) 映画「ザ・ウオーカー」は核戦争後の近未来を舞台にしたアクション映画。デンゼル・ワシントン主演。 戦争で文明が崩壊して30年。文字の読めない無法者が暴れまわる無法世界で、人肉を食う人さえいる。貴重品は小瓶に入ったシャンプーの試供品という中を、修道士イーライは1冊しかない聖書を、夢で神に告げられた場所まで届ける旅を続ける。そこに無法者の親分が本を探しており、二人は対立することになる。 選挙戦がたけなわ。もっとも注目されているのは、やはり菅首相の諸費税率引き上げ発言だろう。記者クラブでは衆院解散・総選挙で信を問う可能性に言及し「政治生命をかける」とまで述べた。映画のイーライの本を守る意志に似ている。 ソブリン・リスクが言われている現在、財政再建は重要だ。すでに日本はスペインより格付けが下という状態なのだから、私はこの発言の勇気を好感している。しかし、この7月に限ればタイミングが悪かったのではないか。恐らく米国から内々で自国の政策への協力要請があり、仕方なく決断したのだろうが。 というのはここへ来て、日本の景気に下振れリスクが見えてきたからだ。例えばこれまで景気を引っ張ってきた輸出と鉱工業生産は、増加ペースの鈍化が見えるし、消費など内需の伸びもイマイチ。だからまずデフレ脱却、次に財政再建という順序で参院選の争点を置くべきだったが、対米関係の回復のためには仕方がない。消費税が騒がれれば騒がれるほど子供手当ても消費に向かわず、預金に化ける。また「資産家への課税化」も税制改革の一環という声が聞こえてくる。株式市場での売買高が増えない理由だ。 現在の経済活動水準を鉱工業生産と輸出で判断すると、リーマン・ショック当時の80%程度。デフレ・ギャップはまだ25兆円は残存しているだろう。設備過剰感は残るし、雇用も失業率の低下はあるものの、就職を諦めた人の増加が主因だろう。 輸出も楽観できまい。高い伸びを続けてきた中国も不動産ブームはひと山越えているし、4兆元の景気刺激策の効果も終わる。息の長い拡大はあるだろうが。ユーロ圏は緊縮財政でドイツをのぞいて明年は不況だろうし、米国は家計部門の回復の遅れがある上、予算や金利などの対策も議会、FRBで議論が二分されている。そこでオバマ政権は国税としてのVATを考慮しているのではないか。英国がVATの引き上げを決めたが、米国の露払いをしてやっているのだろう。つづいて日本。 コスト面では資源価格の上昇で、交易条件(輸出価格/輸入価格)の悪化が続いている。半年くらいの時差で企業収益の減少につながる。 私は今2011年3月期が大幅増益で、これが来期も増益が続くと期待していた。しかし、どうも減益の公算大。為替面では人民元の切り上げが「中国の米国債購入足踏み→米国長期金利上昇→ドル高(円安)」という動きにつながると想定しているが、中国政府はまじめに通貨価値の正常化を進める意志はなさそうである。 要するに中国をのぞいて世界の需要不足が問題なのだが、中国がバブル最盛期の日本 と同じく、持続的好況を確信しているので、中国の経営者は、労働者確保こそ勝利のカギと考える。労働者の奪い合いが始まるか、ストライキが続発する。人件費がふたケタ増の中で、インフレは沈静化するはずがない。また原油、鉄鉱石なども価格は高水準が続くだろう。安い人件費が魅力だった外資系輸出産業の打撃は大きいに違いない。 株価はまだ強い反発を材料にしたリバウンドが終わってしまったーとは見ていない。しかし、いつかは何らかの形で、恐らく人気企業の業績悪のニュースで変化を悟るのだろう。 映画のセリフから。核戦争前の時代を振り返ってイーライが言う。「何が大切かまるで分かっていなかった。以前は平気で捨てていたものを今は手に入れるために殺し合う。」いま問題なのは需要不足だ。
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| 映画「アウトレイジ」と人民元切上げ(7月13日号) 「アウトレイジ]は北野武監督、主演。只今ヒット中のB級バイオレンス映画だ。 関東一円を支配する巨大暴力団の幹部会で、直参の幹部部組長は弱小ヤクザとの親密 関係をとがめられる。そこで直参の組長は、いわば2次下請けの組にその弱小のヤクザを痛めつけさせる。次から次へと連鎖的に波紋が広がり、2次下請けはトラブルを治めるために使い捨てられる。出てくる人物全てが、金と権力を握るために平気で他人を蹴落としゆくワルばかり。次から次へと展開するバイオレンス・シーンのまあ激しいこと。コワいもの見たさでヒットするわけだ。 中国人民元銀行が人民元の為替レーtの柔軟性を高めると声明。小幅だが切り上げが始まった。不動産バブルが終わりになり、目先は金融機関の損失が懸念される時点なので、本当はいやだったのだろうが。恐ら国際投機筋にどこか弱点を握られてしまったので仕方なく発表したと思う。映画のヤクザのように。 都市部不動産の価格下落は、先日上海万博を見に行った時に確認した。すでに統計でも中国全都市中もっとも早く動く深センの地価が、ここ3ヶ月下落している。5月の不動産販売は前月比25%減少。まあ北京五輪、上海万博のあとは広州アジア大会ぐらいでイベントがなくなる。不況にはなるまいが成長率の若干のダウンは不可避だろう。 その代わりにご存知の大幅賃上げ。ストを容認し5年間で労賃倍増というから年15%。豊かになった労働者たちが消費に向かい、「世界の工場から世界の市場」に変わる。ちょうど強い円のおかげで日本の1970年代にはパリのシャンゼリゼ通りを農協のオジサン、オバサンが闊歩したものだ。カー、クーラー、カラーテレビの3C時代の再現もすでに始まった。日本からの輸出、現地工場を含め、企業の業績に大いにプラスになるだろう。 いま銀座をちょっと歩くだけで、中国人がブランド品を銀聯カードで買っている光景を目にする。日本新華僑報によると、銀座を訪れる中国人観光客の半数以上が2万元(27万円)以上消費する。人民網日本語版では日本で消費する額は一人当たり32万円だ。 訪日する中国人数も急増中で、1〜4月で65万4000人前年比24・5%増。これまで首位だった韓国を抜いた。昨年7月の個人観光解禁は効果があったし、最近のビザの条件緩和により中国からの来日はペースアップしよう。中国人来日を年200万人、32万円だと6400億円だ。 観光客だけではない。中国からの安値輸入品が日本のデフレの犯人だったのだから目先の効果はまだ少なくとも、中長期での日本の物価上昇の役に立つ。日本の輸入はGDPの20%で中国製品はその五分の一。ともかく人民元はIMFの購買の平価で割安度40%と推定されている。かつての日本円と同じく多少の切り上げだと「次」を催促して投機筋は動く。最大限1・6%の物価上昇要因だ。デフレ脱出効果。 折もおり、1〜3月の日本の国内物価デフレーターは6・四半期ぶりにプラス0・5%となった。タイミングもいいのではないか。 人民元高になると円もつれて高くなる、といわれてきたが、現実にはそうなっていない。元高で米国債の入札が不調となり米長期金利上昇から円安、という流れが市場では重視されているだろう。当面中国関連株を中心に日本株は戻り歩調で4月高値1万1339円に挑戦しよう。私は抜く可能性は実はあまり期待していないが、くわしくは別の機会に。 映画のセリフから。ビートたけしの親分が可愛がっている子分を逃がすときに言う。「一人くらい生きてねえとよ。結果わかんねえじゃねえか。」繁栄の歴史を経験したわれわれは、中国がこれからどんな段階に入るか、知っている。結果も。
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| 映画「告白」と女性の労働環境の改善(7月6日号) 映画「告白」は湊かなえのベストセラーを松たか子主演、中島哲也監督で。衝撃的な傑作サスペンス。只今ヒット中。 中学1年の教室。女性教師が数ヶ月前事故死した幼い娘は「実はこのクラスの生徒2名による殺人です」という。衝撃的な発言にも好き勝手に騒ぐ崩壊学級だが、犯人の二人の牛乳にHIVの血液をいれて飲ませたと聞いて全員が凍りつく。善き母で教師だった女性の復讐譚だ。一方中学生は底意地が悪く残酷、他人の痛みが分かるほど成熟していない。平気で他人を傷つける。 主人公は娘を保育所に預けたが、6時まで。そこから悲劇が始まる。この映画は、子持ちの女性労働者の厳しい労働環境を紛糾している。 総合研究開発機構の辻明子主任研究員によると、家庭と仕事の両立を希望する女性に 実現のための支援が必要だ。ワークシェアバランスと呼ばれるもので、欧米では早くから実施されているが、わが国では明らかに立ち遅れている。 現在、例えば第一子を産んだ後の女性が同一職場で継続して就業する比率は38%に過ぎない。これを2017年に55%にするのが目標とか。また育児休業の取得率は女性が72.3%、男性は0.5%。これをそれぞれ80%、10%に上昇させるのが目標。 やはりこれらの条件が企業の協力を得て実行されないと、女性の労働参加と人口再生産の同時達成は夢物語に過ぎない。子供手当てを出しているではないか、というかもしれない。しかし海外の例では充実した経済的支援が出生率の回復に直結しないことに気づいたので、ワークライフバランス重視に変わった。 ドイツの例ではGDP比で1.4%と日本の0.3%の4倍以上だが、近年は保育所の抜本的は拡充に重点が置かれている。 継続就業の意義はきわめて大きい。数字で示そう。生涯賃金は大卒で2億3000万円、高卒で1億6000万円。ところが出産のため30歳で退職し、その後専業主婦になったとすると受け取る賃金は3000万円で、40歳で再就職しパートとすると6000万円に過ぎない。大卒で1億円以上の就職による生涯賃金ロスが発生する。 これに対して月間2万6000円(怪しくなったが)を子供が15歳になるまでもらっても500万円。どう考えても子供手当てより育児と仕事を両立できる労働環境の整備、保育所の充実の方が、はるかに大切だ。この試算はみずほ総合研究所の大嶋寧子主任研究員の調べだ。 大嶋さんによると待機児童は急増している。2009年4月1日次点の認可保育所への待機児童数は2万5000人と前年比24%、6000人も増加した。その後も雇用情勢から見てもっと増加していよう。 まだある。主婦がパートとして働く場合の「130万円の壁」だ。時給1000円、週25時間労働が上限なのは社会保障制度と税制。この改善も緊急の課題だろう。選挙に目がくらんだ政党には分かるまいが。 映画のセリフから。主人公は言う「やりたいことがすぐ見つかり従事できる人は少ない。目の前の仕事を精一杯こなしていかなくては。」働く環境を、もっともっと大切にしてあげなくちゃ。
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| 映画「孤高のメス」と管政権の経済運営(6月29日号) 映画「孤高のメス」はミリオンセラー外科医当麻鉄彦シリーズの映画化で只今ヒット中。堤眞一主演、成島出監督。手術シーンのリアルさが凄い。 1989年地方の市民病院に米国で肝臓移植も経験した外科医当麻が赴任。事なかれ主義で、患者よりも医師のメンツを重視する病院の雰囲気を変えてゆく。そこに病院の支持者だった市長が倒れ、命を救うには生体肝移植しかない。事故で息子が脳死と診断された母が臓器を使ってほしいと願い出る。当時の法律では認められていなかった手術だが、当麻は断行を決意する。生命を救う確率は半々。 新内閣がスタートした。経済成長、財政再建、社会保障充実という三位一体の目標追求がうたわれている。ロジックとしては、増税で社会保障を充実させると雇用が増えて、成長率が高まるというもの。要するに増税で増えた財源を、効率よく配分することが焦点になる。 私はこの政策は不可能だと考える。まず財政再建のためには、消費税増税を含む税制の抜本政策を、と管首相は主張している。私はその前にとるべき政策があると考える。名目成長率を高めて税収増加を図ることが必要だが、それにはインフレ目標を明確化しなければならない。日銀を説得出来るか、どうか。 また増税の前に巨額な政府資産を圧縮し、公務員の人件費支払いをカットしなくてはならないが、政府資産の多くは特殊法人つまり天下り先への貸付金、出資金である。官僚組織の反発を押し切れるかどうか。この二つの前提という、患者の複合した病状に似た難問を解決しないで、手軽に増税で片付けようとしたら、やはり国民は怒るに違いない。 それに「効率の良い金の使い道」にも疑問がある。第一は自民党時代の公共投資、第二が小泉・竹中時代の供給サイド強化でともに失敗した。だから第三の道、というわけだ。ブレーンとされる小野善康大坂大学教授によると「例えば失業率が3%以下になれば、政府はその事業から手を引くという取り決め」が重要という。 確かに一理はある。増税で増えた政府収入を100%使えば日本全体の消費は上昇し、雇用は増える。国債で資金調達するより財政破綻の心配は少ない。しかしこの考え方は、新たな増税で奪われる民間需要を、無視又は軽視している。 また失業率が3%以下になれば政府が事業から手を引くという「取り決め」は恐ろしく非現実的だ。100%政府出資の会社にして、後に民営化し売却するという形式にしても、政府から有形、無形の援助が流れる実質官営になる公算大。つまり官製社会主義化だ。かつてのソ連と変わりない。これが非効率的なことは誰でも知っている。 むしろ経産省調べでは大手企業の半分近くが高い法人税や規制、との絡みで本社機能 を含めて海外への移転を考えているーという事実に管内閣は注目すべきだ。企業いじめをやっていたら、成長は起きない。左派出身の多い管内閣は目的どおり小沢はずしで支持率は上昇したが、これを怪しげな経済政策支持と勘違いしないことだ。私は株に強気だが、企業収益の増加に注目しているだけで、政治が材料ではない。念のため。 映画のセリフから。主人公が言う。「ドナー(臓器提供者)、レシピエント双方の願いが一致しない臓器移植はやってはいけない。僕はそう信じています。」管政権はソ連型社会主義革命をやってはいけない。国民との合意が必要だ。
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| 映画「川の底からこんにちは」と新内閣と株価(6月22日号) 映画「川の底からこんにちは」は新鋭監督石井裕也の傑作コメディ。上映館がまだ少なくてかわいそうだが、今年のベスト5に入るだろう。 主人公は上京して5年目のOL佐和子(満島ひかり)。しようがないが口癖の無気力な毎日で何回も男に捨てられ、付き合っているのは子持ちのバツイチでまったく頼りない。そこに父親が重病。ひとり娘として帰京しシジミの加工工場を継ぐ。ところが工員のオバサンたちはやれ駆け落ちして逃亡した女、とかいって嫌う。子連れでついてきた男は子供を残して逃げ出す。 全く希望の持てない状況。ところがそこで主人公は開き直る。「所詮自分は中の下」だが世の中みんなそうじゃないか。コペルニクス的な大転回。 上海万博に行っていたが留守中に政変。まあ誰がどう見てもひどすぎる首相だったから、後継者に期待がかかる。私の見るところ選挙管理内閣だが、父親や祖父が首相でない政治家、脱(かどうか分からないが)小沢というのがセールスポイント。だが普天間とか政治とカネとか負の遺産は多い。ひるがえって世界を見ると@欧州財政危機A金融規制導入B中国のバブルは列懸念C朝鮮半島の緊張D流動性危機とこれまた容易に解決しそうもない問題点ばかり。映画の主人公が押し込められた環境に似ている。 しかし私は日本株について楽観的だ。まずNY。乱高下を繰り返しているが、これは大底圏の特徴だ。 株価が上昇基調にあることを数字で示そう。株価の基本は企業収益。日経平均225種の予想一株当たり利益はリーマン・ショック後瞬間マイナスに下落した。2008年末から2009年初頭の金融危機が一番ひどい時期である。結局2010年3月期は343円だが、ピーク時の2007年11月の1000円近くの三分の一。 しかし2011年3月期の予想利益は650円。2012年3月期は野村證券金融経済研予想では792円。増益基調が続く。NYも。また一株当たり純資産と株価との比率が1倍割れとか。騰落レシオ63ポイントとか、底値を示す指標が続出している。 実は実体経済のほうでもあまり注目されていないのが不思議だが、長い間苦しめられていたデフレに終わる兆しがすでに目立ってきている。 これは実績で示した方がいいだろう。第一・四半期のGDPが5月20日に発表されたが、勇気付けられるポイントが多い。まず成長率。2009年度の実質成長率は−1・9%と政府や日銀の予想より上振れし、ゲタとのからみで2010暦年が3%台、年度でも2%台となること確実だ。 デフレについてだが、2008年10〜12月期から5四半期連結して下落した国内需要デフレーターが前期比プラス0・4%とプラスに転じた。これにもっと注目されていい。 恐らく名目の雇用者報酬の好転が寄与している。8四半期ぶりに前期比@・6%の上昇に転じ、実質でも2四半期ぶりに上昇した。 GDPの6%30兆円が需給ギャップというのが定説だったが、輸出を中心に急速に縮小している。このため現金給与と雇用者数が前期比でプラスに転じたのが雇用者報酬の基調変化につながっているのだろう。 では1〜3月期に良くて4〜6月期はダメかというとほとんどの景気指標は好調持続。もう少し時間がたつと皆が言い出すだろう。 映画のセリフから。主人公の作った社歌。「上がるゾ上がるゾ消費税。来るゾ来るゾ大不況。そうなりゃ政府をぶっつぶせ。」そりゃそうだ。
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| 映画「春との旅」と長寿リスクと北朝鮮、ユーロ、株価(6月15日号) 映画「春との旅」は仲代達矢主演、小林政広監督の秀作。恐らく今年の日本映画のベストワンを争うだろう。 北海道のかつてニシン漁で栄え、今はその面影もない寒村に住む老漁師忠男とその孫娘春。春は小学校の給食係をしていたが廃校で失職、東京に働きに出ようと考える。足が不自由で老いた祖父をどうしたらいいか。永年疎遠になっていた忠男の姉兄弟たち三人を尋ねる旅に出る。しかし再会しても解決がつかない。そのうち春は長く離別していた父親に会いたくなる。ラストにちかく、忠男と春がソバやで会話するシーンでは私は涙した。 急速に日本の老齢化が進む。75歳以上の後期高齢者はこれから20年で倍増し2000万人。長寿化も進みそのころには男性90、女性100が普通だろう。としたら65歳を基点としてそれぞれ25年、35年という途方もなく永い、永い老後になる。その期間、財産の食いつぶし。これは保険会社にとって大きなリスクになる。年金も同じだ。この問題はじつは日本の財政破綻と直結しているので、大いに私は注目している。 なぜかを説明する前にまず海外の例を。ニッセイ基礎研REPORT5月号で青山麻理さんが、保険先進国の英国での最近の動きをまとめている。 英国では、進行する長寿化のため年金や保険業の支払う負担の増大が懸念されている 。対策として再保険、長寿債発行、長寿スワップ、年金買収等々、紙数の関係で一つ一つ解説できないが、その中では長寿スワップが注目されている。これはプレミアムを受け取れる買い手が、年金や保険会社に代わって生存者に対し給付を払うシステム。 とくに90歳以上の人たちへは、政府の長寿債発行によるリスクヘッジが論議されている。 実例を挙げてなぜかを説明しよう。日本の終身年金を例にとる。65歳の男性が年80万円づつ保険料をもらうには、保険会社は一時払いで1350万円の保険料を取る。17年以上長生きされると保険会社は赤字になってしまう。これが長寿リスクである。保険会社が運用でよほど巧みに利益を挙げないと大変だ。英国のように政府が何らかの策を考えないとかならず問題が起きる。これが国債の重要な買い手が売り手に転じるカギだ。参院選でこれが政策に入るか、どうか、私は注目している。 長期の問題は措いて目先の不安について一言。まず北朝鮮だが、突発的開戦のリスクはないではないが、万博開催期間は中国がメンツからも押さえ込む。準備にタマと時間がかかる長距離ミサイルは上空から見ればすぐ分かる。心配する必要なし。ウワサでは金成日亡命説も。 ユーロ売りはヘッジファンドの目標値1ドル1ユーロを、もう方々で言い出したので、先は見えた。騒ぎは大きいが米FRBとECBのスワップ協定が再締結されたことは安定化に役立つ。 日本株と円高。株価は年初来で世界株を相対的にアウトパフォームし、株価収益率、株価資産比率など株価水準指標を見ると割安ゾーン。円高は通貨市場での円売り買戻しが一巡したので再び円安への流れ。リーマンショックのときは株価底入れに5ヶ月かかったが、あれを震度6とすると今回はせいぜい3.私は弱気じゃない。 映画のセリフから。春が父親に聞く。「過ちって償えないものなの?」リーマンの経験が今回のユーロ騒ぎのキズを軽くする。なんといってもどこの国も企業収益が急増中だ。世界大不況説を私は信じない。
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| 映画「グリーン・ゾーン」と金価格の私の目標値(6月8日号) 映画「グリーン・ ゾーン」はイラクの戦争の内情を描いた戦場サスペンス。ボーン・シリーズを大ヒットさせたマット・ディモン主演・ポール・グリーングラス監督のコンビ。凄い迫真性がある。 題はバグダッド中心部の米軍駐在区域のこと。周囲は危険に満ちているが、ここは絶対安全。そのゾーンの中心で情報戦争が始まる。映画は戦争のきっかけとなった大量破壊兵器がどこにあるのか、兵器捜し部隊長が疑問を持つ。国防総省とCIAの対立が明瞭に。ついにナゾの核心に迫ってゆく。 いまやユーロは対ドルで4年ぶりの安値。まだ通貨市場では米系ヘッジファンド中心の売り越し額が増加を続けている。 年初から手揃いで売り仕掛けをはじめたときの売り目標は、ユーロの対ドルレート1対1.まあこれは信用しない方がいいが。ただ売りのテーマが「ソブリン・リスク」つまりユーロ圏のリスクの高い国が、次から次へ債務不履行(デフォルト)に陥ることだ。これは容易じゃあない。 今年一杯このソブリン・リスクがテーマになりそうだ。それは米国景気の回復、中国など新興国の内需拡大で「百年に一度」の世界大不況どころか、かなりの好況。当然、現在の超低金利とか過剰流動性は修正に入る。あと1年もすればグローバルな投資資金の争奪戦が始まる。米系ヘッジファンドの仕掛けの目的はユーロを投資地域から外させ、その分対米投資が増えること。ギリシャ危機は資金獲得戦争の開幕戦だ。現に米国債への投資は急増中。 それでもやはりペーパーマネーに対する不信感は拭い切れない。 ユーロに劣らず米ドルも大幅財政赤字で大いに問題があるし、円だってヒト様のことをいえる状況にない。人民元は別だが。 となると金だけが安全な「グリーン・ゾーン」の中にいる。新高値更新も当然だろう。 利子のつかない金への投資。しかも歴史的高値更新なので、早くから強気を申し上げてきた私のところにはお問合せが多い。以前から言っているのだが、あらためてお答えしよう。 とりあえずの目標はオンス1400ドル台のどこか。次は1900ドル近辺。 理由は次の通り。主に経験則だ。 金価格は1980年1月にオンス875・00ドルの高値。その後下落を続け1999年7月に253.20ドルの安値をつけた。下げ幅621・80ドル。 株や商品で価格が何年も下落を続けていたのが反転上昇に転じたとき、目安として「倍返し」つまり下げ幅の分がかつての高値にプラスされることが多い。この場合875プラス621・80だから1496ドル。 だが私はこの価格も上抜くと考える。理由は中国、インドなど新興国の購買意欲だ。 中国は2008年末の保有分が600トン。これが昨年末に1054トンに。自国産出分と市場購入と両方だろう。ある高官は「数年間で1万トン保有」といっている。 インドは同じように1年間で200トン保有を増やし557トンへ。つい先日オンス1060ドルで市場の売り物を全部さらっていった。かつての外貨危機の経験から金保有の意欲は強い。ロシアも同じ。 これに米年金などの金ETF買い。恐らくオンス2000ドルが目標として広く共有され、現実にはその直前までゆく。そこらが天井ではないか。 映画のセリフから。通訳のイラク人が隊長に言う。「俺だって自分の将来を考え、この国の未来を思ってるんだ。あんたたちの思いより強くな。」未来を考えると、やはり金投資か。
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| 映画「THE 有頂天ホテル」と日本の財政赤字許容限度(6月1日号) 三谷幸喜脚本・監督「THE 有頂天ホテル」は2006年の大ヒット映画。私は三谷作品では最高と思う。楽しめる力作。 舞台は新年のカウントダウン・パーティを2時間後に控えた一流ホテル。登場人物は皆、目前に突然発生した窮地をしのぐため、とっさに嘘をついたり、口からでまかせのごまかしを言う。そのあたりが笑いを生む。役所広司のホテル副支配人は別れた妻と偶然再会して、つい恰好をつけるため嘘。松たか子の客室係りはある女性客と間違えられて、その女性客になりすます。佐藤浩市の国会議員は疑惑に直面して、真相を公表するかどうかで迷いに迷う。伊東四朗のホテルの支配人も芸能プロ社長の唐沢寿明も、その場しのぎしか考えていない。 当初マニフェストを神聖不可侵の黄門様の印籠のように扱っていた民主党政権が、修正を余儀なくされている。政権獲得のためについた嘘、というか、現実無視のツケ回しだろう。 普天間問題がそのひとつだが、最大のものは財政のつじつまが合わないこと。10年度の税収は37兆円なのに鳩山政権は歳出92兆円の予算。差額は国債44兆円と埋蔵金の利用など11兆円。 これが11年度になると一段とひどくなる。 すでに法律にもとずいて基礎年金の国庫負担が三分の一から二分の一になる。これで2兆5000億円。高齢化に伴う社会保障費自然増が1兆円。 さてここに民主党マニフェスト出費がのしかかる。子供手当てを満額支給すると2兆2600億円、高速道路無料化や農家への戸別所得保障が3兆5000億円(毎日新聞エコノミスト誌4月10日号「東奔政走」)。この通りに11年度予算案がつくられると、9兆6000億円の支出増で歳出は100兆円を超える。税収は多少伸びても埋蔵金は使い切ったし、やはり国債。63兆円という途方もない発行量になる。 ところが菅財務相が「来年度の国債発行は10年度と同じ水準に」と発言すると鳩山首相がこれを否定。沖縄米海兵隊の存在意義を就任後8ヶ月もかかって漸く分かったように、現実を知らない統治能力不足は、小沢幹事長の政治とカネ以上に深刻だ。しかも一部では首相も幹事長も辞めないという報道も聞く。支持率が下落するわけだ。谷さんなどの著名人起用で人気回復すると考えているなら、甘すぎるのではないか。 国債の発行はどのくらいが限界だろうか。現在のばら撒き政策を続けても消費が盛り上がらなければ、例えば子供手当てには預金に回る。銀行はまた国債を買う。国債を発行しても買い手があるから大丈夫、と言う皮肉な状況だ。 経済学の教科書を見ると総貯蓄で赤字国債の発行限度が決まる。まあ30兆円の大台 が限度だろう。 私はお隣の中国が債券市場を確立し、中国の国債が投資できるようになれば日本の機 関投資家はいくら財務省のご威光があっても日本国債への投資を減らして中国にカネは流れる。利率はいいし、人民元切り上げの魅力もあるからだ。大幅円安、インフレ必至だ。あと10年は持たないだろう。財政再建を本気で言う党を私は支持する。 映画のセリフから。別れた妻は役所広司のウソは見抜いていた。「嘘をつく必要なんてなかったのよ。自分のやっていることに誇りを持ってちょうだい。」大切なことは、出来ないことをできない、と言い切る勇気だ。
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| 映画「パリより愛をこめて」とギリシャ問題と鳩山政権(5月25日号) 「パリより愛をこめて]は映画ファンならすぐ分かる007シリーズの傑作の題から。楽しいアクション・コメディだ。製作リュック・ベッソン。監督は前作「96時間」をヒットさせたP・モレル。只今ヒット中だ。 パリの米国大使館員リースの裏の顔は、CIAの見習い捜査官。そこに本国から凄腕のベテラン・ワックスがやってくる。ジョン・トラボルタ演じるこの男が何ともハチャメチャ。スキンヘッドにバイカーのようなファッション。まず空港でひと悶着した後、すぐに表面は中華料理店だが実はドラッグ密売アジトに乗り込み、派手な銃撃戦。次から次への麻薬組織への攻撃が続き、展開は急テンポで息もつかせない。 リースははじめての銃撃戦が終わった後、ワックスに聞く。「あと何人?」「統計によると10億人」 ギリシャ問題についてトリシエECB総裁の失言もあり、世界の株式市場は大幅安、連休明けの東京市場も外人売りと円高で大きく下げた。欧州の混乱で米国の出口戦略が遅れる、との思惑で、通貨市場での円売りドル買いが巻き戻しとなっている。 先行きが見えない不安感が市場を覆っているが、私はこの号が市場に出るころには世界的株安はボトムアウトしていると考える。理由は次の通り。第一。なんといっても実体経済がいい。連休中に発表された景気指標はすべていいし、見通しも悪くない。第二に米国で起きたリーマンショックという先例がある。欧州、特にカギを握るドイツがギリシャ再建に及び腰だったが、メルケル首相の発言が株安後に変わった。問題が世界と自国に及ぶことを明確に認識している。 第三は「次のギリシャ」とされる南欧の国債や銀行株価が底値圏と見られること。そして第三に米国も日本も株式市場が少々過熱気味だった。だから連日三桁の変動幅となっているので、慌てる必要はない。株安は世界の経済の景況感悪化を予告していない。長期上昇トレンドの中の調整に止まると考える。 ギリシャ騒動は案外後から見ると軽震程度で済みそうだが、私が懸念しているのは日本の政局だ。 普天間問題が5月中に地元、米国の了解を得て決着するのは9割方難しい。そこで鳩山首相辞任が取沙汰されている。また小沢幹事長の政治と金の問題も、ご本人は終わったと考えているだろうが、世間サマはそうは思っていない。 となると首相、幹事長同時辞任という声が起きるだろうが、私は両人とも居座りという最悪の事態が公算大と考える。首相はまた何かと途方もない、いいくるめを宇宙人らしく考えて辞任しない。米国側も自分たちが政治を動かしたという結果にしたくない。小沢幹事長は有罪になるまでがんばるだろう。 それでも、普天間があるので「鳩山辞任、小沢居座り」が一番可能性の高いシナリオだが、後任がどうなるか。菅?仙石?大穴の森口?だれでも民主党内はガタガタ。基地問題で社民が抜ければ、連立の構図も変わる。株価には案外いい材料にとらえられそうだが、一時的には混乱か。 映画のセリフから。リースは初体験なので「オレはこの仕事に向いていない」と弱音。ワックスは「だからオレみたいなヤツが一緒にいるんだ」。リーマン問題という1回目の経験が、今回生かされるか、どうか。
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| 映画「第9地区」とは鳩山政権の人気低下と株価(5月18日号) 映画「第9地区」はおそらく今年のベスト・スリーに入るSF映画の快作。「指環物語」のピーター・ジャクソン製作。アカデミー作品賞にノミネートされた。 南ア・ヨハネスブルグ上空に巨大な宇宙船がやってきてそのまま動かない。開けてみたら百万を超えるエイリアン。仕方がないので難民として住まわせる。映画の題は居住区のこと。国民の猛反発で別の地区に移動させようとする。意外や以外の展開で目が離せない。 5月に期限が来る普天間問題で、まあよほどの奇蹟が起きないと明確な結論が出ないだろう。首相の発言に軽さが目立っている。「3月中に政府案のまとめる」と明言しながら「腹案は用意している」とか「法的に決まっているわけではない」とか。地元と米側の合意を得て決着させるのは99%ムリだろう。頭上に居座った宇宙船のようなもの。 毎日新聞の全国世論調査では鳩山内閣支持率は3月日10ポイント急落し33%、不支持率も52%と半数を超えた。普天間が決着しなかった場合「退陣すべき」との回答も53%に達している。 昨年の内閣発足時に70%を超えていた支持率がほぼ一貫して下落したが、奇妙なことに株価は上昇している。TOPIXでは11月に811の底値をつけ最近970近辺の節目を抜いた。目先はゴールドマン問題もありNY調整の影響はあるが、上昇ペースは変わるまい。 現政権が反企業・反市場的な政策をとっていることは周知の事実だ。高い法人税率は依然続いているし、1億円以上の役員報酬開示、労働市場での規制強化、インターネットでの大衆薬販売規制―いくらでも列挙できる。 いや、日本の優れた技術、特に環境関連やインフラ技術を軸にアジアを中心に市場開拓しようとしているではないか、といわれるかも。わが国企業の事業展開の支援に挙国体制をとろうとしている。大賛成だ。 しかし、欠落している視点がある。いくら成長領域でわが国企業が技術優位に立っていても、日本という国家に生産活動の優位がなければ日本経済は良い方向に行かない。 為替レートは20%も割高だし、韓国などに比べて、FTA(自由貿易協定)も進行していない。 また株式市場の主導権が外国投資家に握られたまま、国内投資家を冷遇するような税制やもろもろの規制が継続もしくは強化されそうなのも大問題である。優秀な技術で世界展開に成功する日本企業が現れても、果実は国外に還流してわが国の金融資産にはプラスにならない。 そういう政権だということは勿論分かっていた。しかし自民党政権末期の政治も相当ひどかったし、新政権への期待も強かった。これが発足後半年で失望し、不支持率の上昇と株高と重なっているのではないか。 1980年のフランスで社会党が政権を握った。当時のミッテラン大統領は大企業と銀行を国有化したが、企業が国外に逃げ出し3年で民営化中心に180度転回した。今回の民主党のマニフェストは実は当時の仏社会党のコピーだが、グローバル経済の時代、転回まで3年もかかったら悪夢以外の何ものでもない。それまでは支持率の低下が好材料になるだろう。 映画のセリフから。人間はエイリアンに対し生物実験や破壊兵器の実験を繰り返す。本来人間より力が強く知能も高いのに肩身の狭い思いをしている。「エビ顔のゲス野郎。お前たちの武器をどう使ったらいいんだ?」「食べ物をくれ!」基本的に考えなくてはならないことがあるのでは。
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| 交響曲「新世界より」と財政破綻と老後難民の時代 (5月4日・合併号) ドボルザークの第9番の交響曲「新世界より」は第2楽章がもっとも有名。のどかなメロディは唱歌「家路」として知られ、学校から帰る時間になると流れるので、知らない人はあるまい。最も演奏回数の多い名曲中の名曲だ。 チェコの中西部ボヘミア出身ドボルザークは米国の富豪に招かれニューヨークの音楽学校長に。3年しかいなかったが、この間に「新世界より」は作曲された。1892年。 米国側の提供した年俸は1万5000ドルで、母国でもらっていた給料の25倍だったとか。今ならばどのくらいにあたるのか。数字にくわしい富国生命の市岡繁男さんに聞いたら 同期間でNYダウは201倍、金は55倍、消費者物価29倍、小麦は7.7倍だそうだ。音楽家への報酬は資産価格なみと考えると金でいうと82万ドルだ。まあ小麦なみとすると11万5500ドルだが。 日本ならどうか。1892年(明治25年)当時の米の価格は1俵(60kg)2円28銭、今ブランド米なら1俵30万円。実に79万倍だ。やはり戦後の超インフレのせいだろう。 私は昭和21年の混乱を忘れない。預貯金は封鎖され毎月世帯主300円、家族一人100円 がおろしてつかえる。 そのとき新紙幣しか使えない。そして超高率の税金。インフレは例えば昭和20年に1俵60円だった米が22年700円、27年には3000円になった。第二次大戦の戦費をまかなった国債残高とGDPの比率210%の重荷をインフレで軽くしようとした。国民の生活がどんなに苦しかったか。もうすぐそのときと同率になる。 このコラムで何回も述べたが、日本の財政破綻は国内要因からは起こらないだろう。しかし恐らく4,5年後に中国の為替、国債市場が先物を含めて完備すれば、いくら財務省のご意向でも投資家の資金は流出。円安と物価上昇が発生すると考える。 この悪夢のシナリオが起きないためには、海底資源の開発にメドがつくこと。1975年以降の英国が北海原油で斜陽国から復活した歴史の再現を期待する。政府予算の15%、輸出の20%をこの原油でまかなった。また物価はグローバル経済の時代だからハイパーインフレにはなるまいが、数%の上昇は必至。このところ消費税増税を前向きに論じる雰囲気も出てきた。ここは何が何でも財政破綻を起きないという政府の強い姿勢がほしい。今がもっとも大事な時期だ。 というのは明後2012年から団塊の世代の第1陣が65歳になり年金受給が始まる。65歳以上の人口比率は今後5年間で15%増、10年間で22%増と見込まれている。 ところがその退職する年代の準備が全く不足。フィデリティ退職・投資教育研究所長の野尻哲史さんによると、退職後の公的年金以外の生活資金必要額は平均約3000万円と見られるが、現実には準備している額は516万円にとどまる。また44%の人は準備金ゼロ。この数字は1万人強を同研究所でアンケート調査したもので、野尻さんは「将来に向けて準備が出来ていない『老後難民予備軍』の存在が浮かび上がった」。確かに4割を超える層は問題だ。もっとも経済的打撃に弱い層がこれだけいる。年20万人ぐらいか。もっと多いか。 同調査では退職後の準備をしている人のなかでは確定拠出型年金に加入している人の 方が、非加入者の準備額より7割近く多い。やはりこの制度をもっともっと普及させることは大切だ。 「新世界より」は確かに聴くものを感動させる。故黒沢明監督はあの名作「7人の侍」を製作する際この曲を何遍もくり返し聴いて、曲の構造を学んだ。ついにレコードが擦り切れたとか。 芸術も政治も経済もどう人の心をつかむかがカギになる。政府はこのことを忘れないでほしい。
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