愛知保険医新聞 2005年7月15日 第1613号 から転載
「佐高 信の政経外科 小泉内閣を斬る」
第五十六回協会定期総会(二〇〇五・六・一九)の記念講演「佐高信の政経外科 小
泉内閣を斬る」の講演要旨を掲載します。(文責編集部)
三つの日付の事変の落差
今日は、三月一日(一九一九年・大正八年)、八月六日(一九四五年・昭和二十年)、九
月十八日(一九二六年・昭和元年)の三つの日付を日本・韓国・中国の人達がどういう
ふうに受けとめているかの話をする。
三月一日は、大日本帝国の支配下の朝鮮で抵抗の独立運動が起こった日である。
この独立運動に立ち上がった朝鮮人に対して、凄まじい弾圧を繰り返し死者だけで
七百人を超えている。韓国では三月一日は祝日となっており重い日と受けとめている。
このことを日本人の何割が知っているのか。よく見積もっても一割だと思う。
八月六日はアメリカが広島に原爆を落とした日、概算で七割位は知っている。
九月十八日は、満州事変を契機に日本が中国への侵略を開始した日で、九・一八記
念館もあり、中国の人にとっては決して忘れられない日である。
これも日本人が知っているのは、一割前後ではないか。殴ったほうは忘れ、殴られた
方は忘れないという落差がある。
小泉首相は、三・一、九・一八、八・六のこの落差をもっと広げようとしている、このこ
とが中国での反日デモの裏側にある。また、右翼を元気づけ「いつまで謝まるのか」
と一言わしめている。
去年の春、福岡地裁で「小泉首相の靖国参拝は憲法違反である」と判決が下された。
小泉首相は「なせ、憲法違反なのか分からない」と、十何回も繰り返した。
サンデー毎日のコラムに「小泉首相は、靖国参拝が憲法違反だと理解する能力がな
い」と書いたら「貴様何様のつもりだ」と変な電話がかかってきた。
アメリカ国債を4割購入
経済の間題でいうと、アメリカが世界に向けて売っている国債があるが、世界で一番
買っているのが日本で、三割から四割と言われている。政府や民間企業が買ってい
る額がどの位になるのか調べたが、教えて貰えなかった。
産経新聞に、石原慎太郎都知事の講演が載っていた。石原知事は「三百兆円」と言
っていたが、最近では「二百兆円」と微調整している。私は百兆円は下らないと思って
いる。更におかしいのは、他国はここ四〜五年の間に比率を一〇%だったら八%とか
に下げている。戦争ばっかりやっている国だから、国債が紙くずになる恐れがあるか
らだ。日本だけは三〇%から四〇%に上げている。
これは財務省の官僚がアメリカの方に顔を向けてやっているからだ。こういう話はマ
スコミから出てこない。新聞記者は財務省に背くと困ることがあるから。
アメリカはこの百兆円がなければイラク戦争はできなかった。日本は「アメリカがなけ
れば駄目だ」と言うが逆で「アメリカは日本がなければ駄目だ」ということだと思う。そ
の証拠に当時の橋本首相が「売りたいい誘惑にかられる」と一度言った時にアメリカ
経済がガタガタとした。
経済の話で言えば、日本はアメリカにへつらう必要はない。
財務省に弱い小泉政治の面々
小泉首相は昔から大蔵族で、いかに財務省に弱いかは二つの人事で示されている。
ひとつは日銀の副総裁に武藤敏郎氏が就任したが、この人は大蔵スキャンダルがあ
り、一度降格され、それから次官になったところを小泉首相が副総裁にした。福井総
裁だけど、実質的には武藤日銀だと言われている。武藤氏を副総裁にしたということ
は、大蔵省を財務・金融と分離したがなしくずしにするということ。
もうひとつは、涌井洋治という主計局長が石油ブローカーから高価な絵をもらったの
がバレて返したが、そのことで、涌井氏は本来百%事務次官になっていたのになれ
なかった。
政治家は財務省に頭が上がらない。なせかというと予算を付けてもらうという感覚と
税務査察で脅かされるから。まともな政治家かどうかを見る場合に財務省にものが
言えるかで私は判断する。
小泉首相は、その涌井氏を昨年日本たばこ産業の会長に抜擢した。
竹中大臣は、日本マクドナルド(創業者・藤田田氏)を持ち上げて、そこの藤田未来経
営研究所の理事長に納まり、株式公開前の未公開株を適正な価格(竹中氏曰く)で譲
り受けている。
リクルート疑惑ではこれが問題になった。竹中氏は同じことをやっている。メディアも
おかしいし、新聞記者も本質を見抜けなくなっている。
真実はつまらない話し
去年、小泉首相が北朝鮮を再訪問したが、あの時に日本テレビを連れて行かないと
いうことがあった。「米の二十五万トンの援助が決まっている」と報じたから。
他の新聞も書いたけれども。飯島秘書官がメディアを脅し、ひとつのメディアを連れて
行かないということはとんでもない話で、小泉首相がまともであれば、その瞬問に飯
島秘書官の首を切っている話だ。
それからもうひとつおかしいのは、新聞労連に呼ばれた時に「なぜあなた方は、じゃ
あ私たちも行かない、と言わなかったのか」と言った。結局は連れて行くことになって
いいじゃないかということだが「政府批判はしません」という一札を取られて行くのと一
緒だ。新聞記者は権力者から、隠したがる情報を国民のために盗んで来るという仕
事であるはずである。決して上品な仕事ではない。
なせ、日本テレビかというと、第一回の小泉訪朝に遡る。あの時にすっと浮かび上が
って、すっと消えた話がある。それはマツタケの話で、なせ消えたのか。
食糧事情の困る国から、三百箱貰ってきたからだ。飯島秘書官は、日本に着いたら
問題になると思ったのか、羽田にトラックニ台を横付けして、どこかに運びさろうとした
ところをたまたま日本テレビの若い記者が見ていた。箱にマツタケの絵が描いてあり、
それを追っかけてスクープした。
飯島秘書官にとっては、憎さも憎し日本テレビだった。マツタケは外務省を中心とする
官僚と大手マスコミの記者の腹の中に収まった。食べたら記者は書けないので、すっ
と浮かんですっと消えたわけだ。真実はこんなつまらない話の中に存在する。
クリーンとダーティー、ハト派とタカ派 四つのタイプの政治家
政治家をみる場合に、二つの軸を交差させて判断する必要がある。ひとつはクリーン
かダーティーか、もうひとつはハト派かタカ派の軸である。この軸を交差させると、四
つのタイプに分かれる。一番駄目なのが@ダーティーでタカ派、中曽根康弘・森喜朗
など、Aクリーンでタカ派、小泉首相がそれで、クリーンさの中にタカが隠れるので厄
介、Bダーティーでハト派、加藤紘一・田中真紀子など、Cクリーンなハト派、これは
絶滅危惧種だが、三木武夫、田中秀征など。
私はクリーンなタカよりもダーティーなハト派がましという立場だ。国民がクリーンかダ
ーティーかだけにこだわると小泉内閣は続いていく。
ダーティーかクリーンかというイメージを具体的に覆していかないと小泉人気は衰え
ないと思う。
軍人や政治家を人格で判断してはいけない
違った角度から例を挙げれば、山形県鶴岡市に石原莞爾という厄介なもと軍人がい
る。私は講談社文庫にこの人の評伝を書いているが、二人の女性の石原完爾観を
紹介する。市川房枝と犬養道子で、対象的な石原莞爾観を書いている。戦後三十年
経った一九七六年にある出版社が何度目かの石原寛爾全集を出し、そのパンフレツ
トが送られてきた。そこに市川房枝が熱烈推薦の言葉を書いていた。
「私は百姓の娘でしたので、偉い軍人には知人はなく、戦争を好きな軍人・軍部に反
感を持っていました。しかし、石原中将は軍人でも違う、今までにない偉い軍人だと思
います」と書いてあり、私は腰を抜かした。確かに上に突っかかり、部下に優しかった
が、政治家や経営者や軍人を人格で判断してはいけない。
その人が何をやったかで測らなければならない。石原莞爾は、日本の中国全面侵略
の契機となった盧溝橋事件に参謀として関わり、満州事変を起こした中心人物という
のが事実である。
一九三二年の五・一五事件で七十七歳の犬養首相が青年将校によって暗殺される。
孫が犬養道子だが、彼女は「お爺ちゃんを直接殺したのはその人ではないけれど、
殺したのを一人だけ上げよと言われれば石原莞爾だ」と書いている。このように市川
房枝と犬養道子は違う。
小泉悪政に身体を張って待ったをかけよう
小泉内閣の話の中で、郵政民営化は会社化することであるが、会社が問題を起こし
ている時にどうして会社化するのか。JR西日本の話と郵政民営化は直結する。公法
と私法だけではうまくいかないので社会法(労働組合法など)という考えができないの
が小泉首相と竹中大臣だ。「税金の無駄遣いを抑える」と一言っているが、政府が抑
えきれないで民営化する、というのは政府・政治家の敗北だ。イラクの三人の人質に
放たれた「自己責任」はおかしい。
この前、戦争請負企業所属の斉藤さんの問題州発生したが、この時は「自己責任」と
言わず、助けようとした。小泉首相や役人は「アメリカに対して逆う人と逆らわない人」
が基準になっている。自已責件というけれど、国民が自己責任を全部果たしたら政府
は要らない。国民が自己責任でやれない部分があるから、税金を出して政治家と役
人を雇っている。その基本的なことが分かっていない。しかも、小泉・福田・安倍・中
川・麻生など二世・三世議員で親父の足駄に乗っかって自己未熟な議員が国民に対
して自己責任を言うのは何事だ、と言いたい。
政府や政治家の「イラク人質の高遠さんや今井青年など、女性や子どもなど叩きや
すいところを叩く」という考え方に皆さん方は、徹底して身体を張って、待ったをかける
義務がある。このことを注文して終わります。
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