1日目
讃岐うどんをタップリと食べて、エネルギー満タンでJR徳島線/蔵本駅で途中下車。嫁さんの乗った列車を見送って・・・。
どうやらこの連休は、ずっと天気が良さそうである。これから山岳地帯へと入っていくわけだが、胸の透くような快晴が、早くも「登坂欲」を駆り立ててくれる。入山中の食料として、レトルトパックや即席ラーメン、そしてチョコレートやキャラメルなどの品々を買い込んで、いざ出発!。
国道192号線を離れ鮎喰川沿いを上って行く。本日の野営地・コットンフィールドキャンプ場に隣接する神山温泉では、レストランのラストオーダーが18:30と聞いていたので、それに間に合わすようにハイピッチでペダルを回した。「山を前にして、もっとパンチのあるものをしっかり摂っておきたいから」。序盤こそ平坦な道だったのだが、県道21号線を行くようになると、道は厳しく傾斜も増してくる。辺りでは、この連休を当て込んだ、レジャーな雰囲気満載の、4WDが狭い道路で激しく往来していた。
こじんまりと洒落た造りのコットンフィールドキャンプ場に到着したのは、17:00頃だったろうか。気品溢れる朗らかなオバサンが管理人を務めておられ、設備や利用についての案内を親切丁寧に説明してくださった。「ここは居心地が良さそうだ」。だが、基本的にオートキャンパー向け(?)だろうか、テント場には砂利が敷きつめられていて、ペグを打ち込まないと立たないツェルトの設営に苦労させられた。
神山温泉でサッパリさせていただいた後、ラストオーダーにも何とか間に合って、実に豪勢な『お頭付きの海老フライ&トンカツ定食』に舌鼓を打つことが出来た。もちろん風呂上りの一杯は・・・ジョッキ大!で。「これぐらい食べておかないと、明日から乏しいものナ」。
満天の星空の下、湯冷めをしないように、そそくさとシュラフにもぐり込む。気密性の高い生地が使われたツェルト内は、早々と結露に覆われ始め、そして静かに「ZZZ・・・」の世界へ。
2日目
5:15起床。今日もすこぶる快晴だ。昨夜遅くまで賑やかだったバイク乗り達やオートキャンパーは、まだまだお休みの時間である。結露でビショ濡れのツェルトをたたみ、乾ききらない衣類を取り込みミニベロに積み込む。水も1.5リッターほど積み込んだため、かなり重い。
さて、これからは即席的食生活(?)。朝一番のエネルギー補給は、どんなに旨い讃岐うどんも敵わない!・・・381kcal、とっておきのチキ○ラーメンだ。「ズズズ〜ッ」と啜った後、静かにペダリングを開始した。6:15出発。他のキャンパーは未だ誰一人起きてこない。テントサイトに繋がれた柴犬が静かに見送ってくれた。
野間殿川内林道の入り口で、軽くストレッチなど準備運動をした後、6:45、いよいよ登坂にかかる。ここからひとつ目の峠までは、標高差にして約1000mも登らされる。ウネウネと山肌を巻くように続く長い坂道だ。これほど長い坂道は近年久しく登っていない。オマケにキャンピング装備でとなると・・・。出発前にフリーを入れ替えて正解だった。それでも尚、早々と体がヒートアップする。朝陽がようやく当たり始めた樹林帯の隙間を縫って、所々鋭気溢れる陽光が毀れ出していた。
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登っても登っても、見上げればまだまだ高い所に道が続いている。
10〜11kmほど走った頃だろうか、標高約1000m辺りにあるヘアピンカーブに差し掛かった所で、いきなりガラガラのダートが現れた。20インチ、そしてブロックパターンではないごく普通のタイヤ。空転する後輪、ハンドルをとられることしばしば・・・非常に乗車しづらい。「こんな道が一体どこまで続いているのだろう?」。そんな不安は約1.5kmほどの区間でとりあえず解消して「ホッ」とする。旭丸峠まで続く野間殿川内林道は、その一部を残して走りやすい舗装路であった。峠に辿り着く少し手前から、徳島市辺りだろう大きな町が、そして山また山の深い連なりが眺望できた。
旭丸峠8:50着。概算どおり、ドンピシャのタイムで到着できた。「いいペースだ」。 |
| 【左】 旭丸峠から1kmほど進んだところにあるスーパー林道への分岐。 |
旭丸峠から更に進むと、上勝町から登ってくる道・・・つまり、いよいよ剣山スーパー林道に差し掛かる。この辺りは非常に風が強かった。そして突然、3台のオフロードバイクが現れ、「じ、自転車ですか・・・
!?」などと話し掛けられたのだが、見れば判るでしょ!とは言わずに「まぁ、ノンビリとね」と。
分岐を右に、切り通しを一歩踏み出せば、神山町や木屋平村を見下ろす長大な尾根を行くことになる。四国山地の山深さを改めて思い知る眺めだ。遠くの山肌に、まさにへばり付くように民家が点在していた。 |
先程の分岐からしばらくの間は、概ね平坦で走りやすい道を進んで行ける。だが、標高1200m辺りを割りはじめてからは、急にガレた悪路に変わっていった。そして徐々に下降していく。小径車ゆえ、ハンドル捌きも慎重にせざるを得ない。オフロードバイク達は臆面もなくガツガツ走り去るが、「これはなかなか手強いぞ」。
四苦八苦させられる悪路だが、唯一有り難いことは所々に水場が在ること。雲早山への登山口の近くには、”世界一うまい”と書かれた『雲早の名水』があった。小さな落石を避けながら飲んだその水は・・・「旨い!」。ボトルの水を全てコレに入れ替えて、再スタートを切る。
土須峠をいつの間にか通り過ぎ、雲早隧道まで下ってきた。トンネルを吹き抜ける風が心地よい。
ここから約1.5kmほどの区間は、林道ではなく国道193号線を下っていく。次の分岐を右折すれば再びスーパー林道へと続く。ここまで、標高1200mほどにある旭丸峠から約400mも高度を下げてきたことになる。さてさて登り返しか・・・。
ここからは、国道193号線を辿って神山町や木沢村から即席で上がってきたと思われるオフローダー達が、こぞって走る『銀座』と化した林道に様変わり。さすが三連休の賑わいだ。自転車で俄然「張りきって走ってやろう!」と思いきや、なかなかそうはいかず困難そのもの。野間殿川内林道の登りでかなり脚を使ったせいか、売り切れ状態に限りなく近いことを察するにはそう時間はかからなかった。体力をロスしやすい後輪の空転、そして相変わらずハンドル捌きが難しい。
先程の分岐から、更に標高差650mほども登り返した所に本日の幕営地である『ファガスの森』がある。ゆっくりと、何度か休憩しながらでも、たぶん正午頃には着けるだろう。が、なかなか体力・根気が続かない。何度か休憩しつつ、携帯食のキャラメルやチョコレートを齧りつつ、ボトルの水を流し込みつつ、かろうじて走り、そして幾度か押して、ようやくファガスの森に到着した。12:00ジャスト、「疲れた」。
軽食の摂れるファガスの森では、大勢のオフローダー達で賑わっていた。重そうな装備と身体で現れた小さなミニベロを見て、「ほーッ」とも「へーッ」ともつかぬ溜息のような声が聞こえる。2〜3人の方が興味津々(?)の御様子で話し掛けてくれた。こういう時はやはり嬉しいものだ。しかし、「若いねぇ・・・」と。そして「若いョ、35歳だもん!」と私。一同シ〜ン♪。バイク乗りの方々のほうがずっとお若いのだろうか
!?。
とにかく疲労困憊で、しかも腹ペコである。食べれる所でしっかり補給しておかないと、この先どんな困難に出くわすか判らない。正午に到着して、もうココで本日の行動は切り上げるのだが、軽食でも何でも充分に食べておく。とはいえ、メニューにあるのは山菜うどん&ソバ、そしてご飯ぐらい。
濡れたツェルトと乾ききらなかった衣類などを干す。終日快晴なのが嬉しい。
食堂閉店ギリギリの時間に、再びソバをかき込む。明日に備え、充分に休もう。だが・・・
早めにシュラフにもぐり込み睡眠をむさぼる。23:30。こんな夜中に2台のオフロードバイクが上がって来た。昼間からテントを張りっ放しで留守していた2人である。何とアベックのようだ。真っ暗闇の中を恐くないのだろうか。機動力に満ちたバイクならではの行動ともとれるが、自転車乗りにはまず無理というもの。
それはともかくとして・・・、
未明に起きだして、徐にプランを再検討してみる。昨日の疲労感と困難度を冷静に考えると、「無事に抜け出せるのだろうか?」という不安感が胸中を大きく占め始めた。国道193号線の分岐からここまで、あれほど梃摺ったのだから。時々満天の夜空を見上げつつ、冷静に考えた。
ミニベロでの困難さ !?。扱い難い硬く短いFフォーク。タイヤはしばしば空転し、疲労感が募るばかり。せめてブロックパターンのタイヤなら・・・。承知の上で挑んでいるはずなのに、そんな言い訳じみた思いが胸中を占めはじめた。しかし、意地にならずに冷静に考えよう。食料は保つだろうか。水場は今後も得られるのだろうか。
そして今導き出したい答は、まず「川成峠の先の分岐点へ何時間で到着できるのか?」ということだった。地図をじっくりと眺める。・・・その所要時間の5倍が、このスーパー林道を抜け出すおよその時間となるだろう。あくまでも机上の計算である。時間が経てば、より一層動作が鈍るだろうし、昨日の疲れ、そしてもしトラブルが発生すれば・・・?。
剣山スーパー林道の最高所 『徳島のヘソ』にて。
小さなミニベロでも、チャレンジ精神があれば、ここまで来れる。 |
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3日目
5:15起床。快晴である。
本日もチキ○ラーメンで始まった。標高の高さと放射冷却の影響か、「グッ」と冷え込んだ朝である。荷物を積み込んでスタートしたのが6:35。けたたましいエンジン音など一切聞こえない、静寂に包まれた一本のダートをたった一人で進んで行く・・・そんな至福のひととき。聞こえる音は、時々意識的に鳴らす熊除けの鈴、タイヤが弾く小石、そして小鳥のさえずりぐらいか。稜線上は全くの無風である。
7:15。剣山スーパー林道の最高所、標高約1520mの『徳島のヘソ』に到着。青い山々が連なる180度以上とも思える大展望が眼下に広がる。こんな場所に辿り着けた自分というものを、客観的に「格好良い!」と見れる私は相当イカれたナルシストだろう。相変わらずロスが目立つライディングながら、心地良い朝陽を受けて淡々とペダルを回す。見上げれば、秋色には時期まだ早い木々たちが、青々と快晴の空に手を伸ばしていた。
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稜線上を北へ南へ、幾度か乗っ越す度に、瀬戸内側・・・太平洋側・・・と、目まぐるしく展開する眺めが、ダイナミックな下りをよりワイルドに感じさせる。
8:10、川成峠に到着。飯場と化した峠には水場があったので、ひと口ふた口含んでおいた。更に林道は下り坂。そして峠から約1kmで分岐点に辿り着く。8:35。スタートしてから丁度2時間・・・か。単純に計算して、あと8時間はこの林道と対峙することになるだろう。否、それよりも、先に弾き出した回答は、『ミニベロキャンピングでダートを!』は、せいぜい4〜5時間が限度だろう・・・という結論だった。疲労感は今のところさほどでもない。体力面よりも、安全にライディングするための集中力が途切れてしまいそうなのだ。ミニベロの可能性は・・・この程度か
!?。 |
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妥協でも負け犬でも何でもいい。チャレンジしてココまで来れたことを素直に喜ぼう。剣山は高く、そして遠く・・・。
完全舗装の道を川成村へと急降下して行く。勇んでいた気持ち徐々にほぐれ、四国山地に入って以来、初めて”風”になれた気がした。「しかしなぁ・・・」、妥協でも負け犬でも何でもいいが、簡単に諦めることはしたくない。ならば今日一日、「目一杯行動してやろうじゃないか!」。そして、南がダメなら北がある、仕切りなおして「剣山を目指そう」と。
豪快なダウンヒルを決めて川成村へ。途中、焼けるように熱くなったリムにボトルの水を掛けたりもした。
坂州木頭川には、ダンプほどもある大きな岩が所狭しとゴロゴロしていた。荒々しく凄まじい渓谷である。四季美谷温泉を経て五倍木の集落まで下りてきた。郵便局の横にある小さな商店で、即席ヌードルにお湯まで入れていただいて、缶コーヒーと共に慌しく補給する。
さて、10:00。再び雲早隧道を目指して登り返しにかかる。その標高差約650mといったところか。どうやら完全舗装路のようであるし、ノンビリ登って1時間半も見ておけば充分だろう。・・・そして9月下旬にしては暑すぎる陽射を背に受けて、長い登り坂を進んで行った。
途中『大釜の滝』と呼ばれる滝の手前に、山深い秘境を感じさせる素彫りのトンネルに出くわした。集中豪雨の時など、トンネル内に水が染み出したりしないのだろうか?。これほど良い天気にも関わらず、何となく落石を気にしながら通過する。「冷っ」とした空気が心地良い。
トンネルを出てすぐ、目の前に驚くべきものを確認。それは『大釜の滝』なんて悠長ものではなく、大きなスズメバチの巣だった。頭上7〜8mほどの断崖に直径30cmはありそうな大きな巣である。
思えば、林道を走っている時も、この登り坂に入ってからも、アチラコチラで「ブーン」と羽音を響かせながら、私の傍をすり抜けていくスズメバチが数多くいたのだが、威嚇というには程遠い存在だった。しかし、これほど間近に巣を確認してしまうと・・・さすがに恐い!。できるだけ頭を低くして、登り坂にも関わらず、一目散にその巣の下を駆け抜けた。
風を感じると峠は近い。どこからともなく、冷たく乾いた、心地良い風が吹いてきた。風を感じると・・・峠は近い。
登り返して1時間15分、雲早隧道に到着。優勢な大陸の高気圧から吹き出しているのだろう・・・乾燥した爽やかな風がトンネル内を吹き抜ける。そこを潜り抜ければ、再び神山の谷が眼下に見下ろせた。小休止の後はドンドン下っていく。日陰がちなコチラはさすがに冷える。途中『岳人の森』にて、先に帰阪している嫁さんに電話し、ルート変更の旨を伝えておいた。山中での気紛れなルート変更で、「どこへ行ったか判らない・・・」では家族としてルール違反と言うもの。
延々下った先が川又の集落だった。12:00丁度。いざとなれば携帯食があるわけだし、もっと走ろう。「昼ご飯なんて、まだまだ先だ」。
国道438号線に出て再び登り返す。次のピークまでの標高差は約550mか。昼を過ぎるとさすがに暑い。ニッカーホースをズリ下げて、ニッカーを脱いでレーサーパンツ姿になって、ひたすら登り坂を行く。汗が滴り落ちる。ボトルの水をグビグビ飲んで、チョコレートを齧る。昨日と同様、早朝から行動し続けていると、さすがに疲労を感じるものだ。一つ、また一つ・・・と、実際のカーブと地図上のカーブを脚と眼で追いながら・・・13:05、ようやく川井隧道に到着した。「フ〜ッ」。
しばし小休止の後、再スタート。
下り始めてすぐ「!」。見えた、ようやく見えた。遠かった剣山を初めて確認することができた。逆光にボヤけた、しかし大きく、まだまだ高く、そして遠く・・・。
空腹を我慢しつつ延々と下る。ブレーキシューもかなり磨耗してきたようだ。ブレーキレバーの引きが深くなる一方である。
川井の集落まで下ってきて、ようやく昼御飯となった。国道沿いのこじんまりした食堂で、すぐにできる日替わり定食を注文する。シャキシャキッ!とした生野菜が嬉しい。ようやくお腹が満たされて、新たな鋭気が回復する。
14:20。さて、本日はどこまで行けるのやら・・・。見ノ越まで辿り着ければ、明日の剣山登頂は実に簡単だろう。が、ここからの標高差はまだ1000mもありそうだ。食堂のオバサン曰く「車でも1時間近くかかりますよ」とのことだった。自転車なら?疲労度も増していることだし、3時間はかかるかも知れない。仮に見ノ越に辿り着けたとしても、そこから最寄のキャンプ場まで更に2kmほど進まなければ、”家”を設営することが出来ないのだから、夕刻間際では避けたい心境にもなる。
そして無難に選んだ場所は、手持ちの地図には載っていない中尾山高原キャンプ場だった。途中で入手した資料にて偶然見つけたキャンプ場である。ただ、無難に選んだとは言え、それでも標高差650mも稼がなくては辿り着けないのだから、なかなか骨の折れるアルバイトである。
「これでも国道?」と思わされるような細い道を行くことしばしば。木屋平村の寺内という地区を右折すれば、本日最後の登り、延々の登りが中尾山高原キャンプ場まで続いている。道中、青い山並みが遥か彼方まで遠望できた。四国山地は実に山深い。対岸の山肌には、いかにも山の暮らしの御苦労を感じさせる、そんな営みが伺えた。
登り坂の途中には、『ご自由に』と書かれた看板に誘われて、徳島や香川のナンバーを付けた車が所狭しと駐車されていた。栗である。辺りはまだ秋色を感じるほどでもないのだが、林の中はしっかり”秋している”のだった。標高を稼ぐにつれ、ススキの穂も目立つようになった。黄昏がかる高原では、確かな秋を感じる。
16:00。疲労困憊で中尾山高原キャンプ場に到着した。連休最終日の夕暮れ時、辺りは既に閑古鳥の形相を呈している。人影もまばらで・・・次々に去っていく車。併設された売店も閉まりつつあり、また、受付のオバサンも帰り仕度をしているところだった。
誰もいない広場にツェルトを設営して、熱いシャワーを浴びる。が、300円で10分間も出るシャワーを、「まぁ大丈夫」と高をくくって使い始めたところ、意外にもすぐに時間が経過してしまい、アッと言う間に止まってしまった。丁度、頭を石鹸でゴシゴシと洗っている時だったため、惨めそのもの。財布を覗くと、小銭が無い。「・・・・・」。頭に泡をつけたまま戸外に両替しに行くのも忍びないし、受付のオバサンとて家路についていることだろう。結局は洗面所の冷たい水をバシャバシャと掛けて、ブルブル震えながらシャワー室を後にすることとなった。
連休最終日にも関わらず、『平成荘』には泊り客があるようで、営業していて「ホッ」とした。もちろん本日の頑張りに対する御褒美、ビールの買出しが目的であったのは言うまでもない。すっかり夜の帳が降りた頃、ようやくシチュー餅にありつけた。満天の星空の下、ビールが旨い。見上げれば、キナ臭い御時世を象徴するかのような・・・飛行機かヘリコプターだか判らないが、何機ものそれらが、何処かの空へと向かっていた。
20:10頃、ヘッドランプの電池が尽き、そして新しい電池に入れ替えると、電球が切れた。単なる偶然だろうか。巷を知るラジオからは詰まらないものばかりが流れている。
4日目
4:30起床。
昨夜残しておいた餅をチキ○ラーメンに放り込んで、慌しく胃袋に流し込む。そして素晴らしい日の出と共にスタートを切った。6:10。今日もすこぶる快晴だ。
中尾山高原からしばらくの間は林道を走る。途中、尾根を巻くカーブを曲がる度に、順光に照らされた剣山が見え隠れしていた。まだまだ高い所に、今回の旅のクライマックスが鎮座しているのだ。ソワソワと急く気持ちを落ち着かせて、ゆっくりとペダルを回す。焦って脚を使うと登山に影響を及ぼすから・・・ゆっくり、ゆっくり。 |
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| 再び国道438号線に出た。まだ朝早い峠道には一台の車も通らない。こんな素晴らしい道を今日にとっておいて正解だった。昨日無理して登れていたとしても、車の往来が激しかっただろうし、何よりも、景色を楽しむ余裕すら生まれない。今、目の前には全く静かな道がある。険しい断崖に造られた道をゆっくりと進む。峠まで、あと3km、2km、1km・・・峠である鞍部は益々低くなり、そして剣山は一層たおやかに変化して近づいて来た。「ここまで遠かった・・・」。7:05、見ノ越に到着。 |
見ノ越のトンネルを潜り抜ければ、信仰の山らしい雰囲気と、それを取り巻く賑やかさが突然現れた。食堂や土産物屋が数件建ち並ぶ。峠の東と西では雰囲気がガラリと違った。しかしながら観光客が去った連休明け、そして早朝ということもあり、まだまだ静寂を保っている。僅かに一軒だけ開いていた食堂で軽食を摂って、軽くストレッチする。
そして7:40。自転車をデポして、いよいよザックを背負って登山口を出発。剣神社にて賽銭と共に手を合わせ、ここまでの旅の無事に感謝し、そしてこれからの旅の無事をお願いしておいた。早朝ゆえにまだ稼動していないリフトを潜り、どんどん標高を稼ぐ。自転車での疲労を感じない訳ではないが、息が切れても休まずに進む。山と対話しているかのような、そんなペースも嫌いではない。
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登山口から30分でリフトの終点・西島駅を通り過ぎ、そして更に25分で・・・ついに、高く、そして遠かった、剣山の頂上に立つことが出来た。
”剣”と名付けられた山でありながら、山頂付近は非常になだらかで、熊笹が何処までも続く雄大な眺めが広がっていた。南に目を転じてみれば、「本当なら、あの山を越えて・・・」と思っていたジロウ笈が大きく立派に構えていた。「いい山だ、見ることができて良かった」。 |
| 急ぎ足で登って来たのには訳があった。登山口を発つ頃から何となく、除々にではあるが湿気を伴った風を感じていたからである。せっかく時間と労力を費やして訪れるのだから、雲に隠されては喜びも半減してしまうというもの。青空の面積は俄然広いものの、どうやら俄かにガスが立ちこめて来たようだ。 |
山頂小屋で温かいお茶をいただく。
本日、この場所での日の出の時間は5:51、そしてその時の気温は7℃、とのこと。山裾を彩る真っ赤な秋は、もう少し先だろうか?。
そして下山路に一歩足を踏み出した時、今まで上ばかりを見ていて全く気が付かなかったのだが、山肌を縫うような国道438号線を俯瞰することができた。それは、延々と登り返して走った道である。長い時間と労力をかけて、ようやく立つことができた山頂での感激よりも、「この眺めこそ!」、この眺めこそ今回の旅のクライマックスと言えようか。 (完)
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