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  国際関係

 

題  目

目 次

01 米・中・韓――売国と自虐の構造を断つ

02 領土問題は、主権・国防・憲法の問題

03 北朝鮮による拉致とは何か(長文)

04 北朝鮮、制裁後のシナリオ

05 日本統治時代の真実――朝鮮と台湾

06 慰安婦問題は、虚偽と誤解に満ちている(長文)

07 旧日本軍の慰安婦問題〜対日非難決議案を阻止すべし(長文)

08 戦後賠償問題は、決着済み

09 現代中国をどうとらえるか〜ファシズム的共産主義の脅威

10 共産中国の覇権主義

11 共産中国の国家目標

12 人類史上最も危険な思想〜中国の積極的核戦争論

13 『ショーダウン』〜米中冷戦・両雄対決

14 核大国化した中国、備えを怠る日本〜日中戦後のあゆみ(長文)

15 中国の日本併合を防ぐには(長文)

16 中国の反日政策にどう対処するか

17 中国の反日デモと権力闘争

18 中国「反国家分裂法」は、他人事ではない

19 中国偏重からインドへのシフト

20 インドへの協力・連携の拡大を〜シン首相の国会演説と日印新時代(長文)

21 日米印の戦略的協力の強化を

22 慰霊と靖国〜日本人を結ぶ絆(長文)

23 日本と国連――旧敵国条項と国連の本質

24 国連安保理常任理事国入りより憲法改正が先

25 9・11〜欺かれた世界、日本の活路(長文)

 

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米・中・韓――売国と自虐の構造を断つ

2005.4.24

 

アメリカは、貿易赤字と財政赤字の双子の赤字を抱えている。それゆえ、金がたくさんあるわけがなく、普通は金融引き締め政策を行うべきところである。ところが、アメリカの投資会社は、ありあまる金をもって、日本への金融や銀行の増資などにどんどん進出している。その金はどこからくるのか。日本からである。日本の金が還流して、日本企業の買収に使われているのである。

 
 日本経済は、ものづくりを基本に置いている。それが資本主義経済の本来の姿である。優秀で魅力のある自動車や電機製品は、消費者の購買意欲をひきつける。その結果、日本は貿易黒字国となっている。

実は日本はバブルの時以上に、金あまり状態になっている。大企業は、銀行にどんどん借金を返している。逆に、銀行は、いろいろ理由をつけて中小企業から融資を引き上げている。そのため、日本国内では金を融資するところがない。そのためジャパン・マネーは、アメリカに流れていく。

その金で日本は、アメリカ国債を買っている。アメリカ国債を買うことによって、アメリカの赤字を日本が埋め合わせているのである。ここで重要なのは、日銀が、金利ほとんどゼロの政策を取り続けていることである。これは、日本の金をアメリカに誘導し、アメリカ国債を買うように仕向ける政策だろう。日本の指導者が、アメリカに強制されて行っている政策だろう。

日本から流出した金は、形を変えてアメリカ人の金となって、日本の買収に使われている。アメリカは貿易で損をした分を金融で取り返しているのである。最も典型的な例は、日本国が3兆円の援助をした新生銀行を、アメリカの投資会社が10億円で買って7千億円儲けた話だ。これは日米間に出来上がってしまった国際経済の仕組みによる。

 
 今の日本は、アメリカの金庫になっている。アメリカは他人の金庫の中に、手を突っ込み、好きな時に好きなだけ持ち出せる。だから、貿易赤字を改善しようと本気で思ってはいない。汗水たらして働かなくとも、上がりを吸い上げる仕組みを作り上げたからである。パラサイト現象である。金融奴隷といっても良い。

既に日本の優良企業の株を40%、50%と持つアメリカ企業が多数出ている。そのうえさらに、日本は、アメリカ企業が一銭の金も払わなくとも日本企業を買収できるという、恐るべき株式交換の方法を実施するよう、アメリカから求められている。今の日本は、これを拒むことができない。せいぜい実現を遅らせて、衝撃を和らげるのが精一杯である。

現在、日本は膨大なるアメリカの債権を持っていながら、経済にも外交にも生かせない。持っているだけで、使えない債権だからである。今後もアメリカの貿易赤字が増え続けると、ドルの価値は年々下がっていく。そうなれば、日本の銀行が持っている債権は、何十兆円という膨大な損失を蒙ることになる。宗主国と保護国の関係のようだ。


 どうしてこんなことになったか。奇蹟の高度成長を成し遂げ、世界一の経済大国になったはずだったのに。まさにそこまで行ったからこそ、アメリカは日本を抑えにかかったのである。大東亜戦争で最初は日本が圧勝していたが、ミッドウェー海戦から逆転し、最後はアメリカに惨敗したのと似ている。

根本原因は、わが国は、国防に決定的な弱点を持つ欠陥国家だということにある。現行憲法は国防を自ら規制している。そのため、ソ連を崩壊に追いやったと喜んだのもつかの間、軍事大国化した中国や核開発を進める北朝鮮の脅威に対し、自分で自分を守る力がない。責められれば、してもいないことまで謝罪してご機嫌を取り、いざという時にはアメリカに守ってもらうしかない。それも絶対的な保証はない。日米安保条約には、必ず守るなどとは書いてないからだ。


 現行憲法を守る限り、自ら得た富によって自分を他国に売るという売国行為と、冤罪とわかっていて謝罪する自虐行為を続けることになる。GHQによって押し付けられた憲法を放置してきたことが、いよいよ本格的な影響を及ぼしてきているのである。現行憲法に固執し、永遠の金融奴隷、無期の冤罪人に甘んじるか。それとも憲法を改正して防衛力を高めたうえで、アメリカと真に対等な関係を結び、周辺諸国にもの言う外交を行える国となるか。日本人はぎりぎりの選択を迫られている。

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■領土問題は、主権・国防・憲法の問題

2005.4.20

 

戦後、日本は、独立を回復すると、失われた領土の問題に取り組んできました。米国との間では、昭和43年に小笠原諸島、47年には沖縄の返還が実現しました。しかし、旧ソ連、現在のロシアとの間では、北方領土問題が依然として未解決です。

さらにそのうえに、新たな領土問題が発生しました。周辺国から次々と領土要求を突き付けられているからです。韓国からは竹島、中国からは尖閣列島および沖縄です。領土問題は、中国・韓国の反日運動の争点の一つとなっており、わが国は危機に直面しています。

 

◆領土問題の本質

 

領土問題は、独立国家としての主権を維持することに関わる問題です。その本質は、主権・国防・憲法の問題です。主権には、対内的な権利と、対外的な権利との両面があります。対内的な権利とは、国内の統治に関する権利です。これに対し、対外的な権利は、領土や関税や在留外国人に関する権利です。対外的な権利としての重要な要素が、領土に関する権利です。

領土なくして国家は存在しません。欧州には「一寸の領土を奪われて黙っている国民は、全部の領土を奪われても黙っている」という言葉があるほどです。領土問題においては、その国民がどこまでを自国の領土だと意識しているかが重要です。そして、他国に対して国家主権を明確に主張し、それを維持する努力をすることが必要です。国際法上、領土と認められている地域であっても、国民が自国の領土だと積極的に認識していない場合は、他国の侵犯を受けても、鈍感になります。それどころか、他国が不法占拠し、実効支配しても、それを排除するための行動を起こさなくなってしまいます。戦後のわが国は、まさにそういう状態にあります。国防について、憲法で大きく規制しているからです。私は領土問題の根本原因は、現行憲法にあると考えています。

 

◆竹島・尖閣諸島の次は、対馬・沖縄・九州

 

竹島は、明治38年(1905)、日本政府は内務省訓令により、“隠岐島の西北八十五里にある島嶼”を「竹島」と命名し、島根県の所管としました。ところが、大東亜戦争後、韓国の大統領となった李承晩が、李承晩ラインを引き、竹島を自国の領土・領海に含めようとしました。これに対し、わが国は有効な抗議・行動をせず、不法占拠を許し、実効支配を受ける状態となってしまいました。韓国では国民に竹島は自国の領土だと教育・宣伝し続けてきており、現在ではほとんどの韓国人が竹島は韓国領だと主張します。

尖閣諸島は、明治28年(1895)1月14日の閣議決定により、沖縄県の所轄としました。日本領土に編入して以来、いかなる国からも異議申し立てはありませんでした。ところが、昭和43年(1968)、国連アジア極東経済委員会(エカフェ)が、この地域に石油、天然ガス等の埋蔵資源があると発表すると、台湾・中国があいついで同諸島は数百年来、わが国の領土であったと主張しはじめました。現在、中国は、尖閣諸島(中国名は釣魚島)は「中国の不可分の領土である台湾省の一部」であると主張しています。

韓国の民間団体は、対馬を非公式の場では、「北九州も山陰も韓国の領土だ」と主張しています。中国では、沖縄は中国領として地図に記載して学校で教育しており、九州の一部も本来中国領だという議論さえされているようです。竹島・尖閣諸島から対馬・沖縄・九州へと、領土問題は拡大するおそれがあるのです。

 

◆北方領土問題はどうして起こったのか?

 

今日の周辺諸国との領土問題を考える際、北方領土問題がなぜ未解決のままなのかを深く認識する必要があると思います。この問題の認識を通じて、国際社会における主権の維持を真剣に考える必要があるでしょう。

 そもそも北方領土問題の発端は何だったのでしょうか。

大東亜戦争の終戦間近、アメリカの原爆投下で日本が決定的に弱まったとき、ソ連は日ソ中立条約を一方的に破棄して、対日参戦しました。昭和20年8月8日のことですそれは背後から袈裟懸けに斬りつけてくるような不意打ちでした。ソ連は満州・樺太等に侵攻し、略奪の限りを尽しました。日本は、8月15日に「ポツダム宣言」を受け入れて、条件つき降伏をしました。すると、ソ連はその3日後の8月18日から、千島列島に攻め込んできました。

ソ連が列島北端の占守島に上陸し始めたとき、日本軍はこれに応戦し、激しい戦いを繰り広げました。しかし、日本軍は北部方面司令官の命令で23日に局地停戦協定を結び、降伏しました。アメリカが侵攻してきていないことを確認したソ連軍は、8月28日に択捉島、9月1日に国後島、色丹島に上陸し、9月3日には歯舞群島まで、ことごとく占領しました。

当時四島にはロシア人は一人もおらず、日本人は四島全体で約1万7千人が住んでいました。島で生活していた人々の中には、着の身着のまま逃げてきた人もいます。住み慣れた土地を離れられなかった人々も、昭和22年にはソ連軍によって強制的に日本へ送還されました。以後、旧ソ連及びロシアは、北方四島をそのまま不法占拠し続けているのです。

 

◆北方四島は、歴史的にも条約上も日本領

 

 北方四島がわが国固有の領土であることは、歴史的に明らかなことです。北方領土は、歴史的に、一度も外国の領土になったことがない我が国固有の領土であり、また、国際的諸取決めからみても、我が国に帰属すべき領土であることは疑う余地もありません。

幕末の1854年2月7日に、「日露通好条約」が結ばれ、千島列島は択捉島とウルップ島の間を国境とし、樺太は両国民混住の地と決められました。明治維新後、わが国は、1875年に、千島列島をロシアから譲り受ける代わりに、樺太全島の権利を放棄する「千島樺太交換条約」を結びました。この条約では、譲り受ける千島列島として、シュムシュ島からウルップ島迄の18の島があげられています。そのうちに国後島、択捉島、色丹島、歯舞群島は入っておらず、これらの島々が日本領であることを物語っています。

しかし、北方四島は、大戦後、現在もなお、ロシアの不法占拠の下に置かれています。北方四島の返還を一日も早く実現することは、まさに国家の主権にかかわる重大な課題です。

 

◆戦後処理の「領土不拡大の原則」に違反

 

ソ連の行為は、連合国の第二次大戦の処理方針である「領土不拡大の原則」に反しています。

連合国は、「領土不拡大の原則」を度々宣言しています。昭和16年(1941)の英米共同宣言(大西洋憲章)や、昭和18年(1943)、アメリカ・中華民国・イギリスの指導者が集まって協定を発表したカイロ宣言もそうでした。カイロ宣言では、「われわれは、日本の侵略をやめさせるために戦争をしているのであって、自国の領土を拡大する意図はない。日本が、暴力(戦争)でとった領土は返される」と述べています。「領土不拡大の原則」は、日本が受諾し、降伏のきっかけとなったポツダム宣言のなかにも引き継がれています。

この原則に照らすならば、わが国固有の領土である北方領土の放棄を求められる筋合いはありません。またそのような法的効果を持つ国際的な取り決めも存在しません。

わが国が主権を回復したサンフランシスコ平和条約では、わが国は千島列島に対する領土権を放棄しました。しかし、わが国固有の領土である北方領土は、千島列島には含まれていません。また、アメリカは、北方四島は常に固有の日本領土の一部をなしてきたものであり、かつ、正当に日本の主権下にあるものとして認められなければならない旨の公式見解を明らかにして、日本の立場を一貫して支持しています。

 

◆ヤルタ密約とスターリンの野望

 

ソ連が北方領土の領有を主張する最も有力な根拠としているのが、ヤルタ協定です。この協定は、昭和20年(1945)2月、アメリカのルーズベルト大統領、イギリスのチャーチル首相、ソ連のスターリン元帥が、クリミヤ半島にある保養地ヤルタに集まって取り決めた秘密協定です。その内容は、「ソ連が、日本に対する戦争に参加すること。日本の敗戦において、樺太の南部とこれに隣接するいっさいの諸島はソ連に返還され、千島列島はソ連に引き渡される」というものでした。
 しかし、ヤルタ協定は、米英ソ三国間の密約にすぎず、わが国が批准した国際条約ではありません。わが国はそれに拘束される国際法的な根拠は何もありません。ヤルタ協定の当事国である米国は、昭和31年(1956)、「ヤルタ協定はただそれを署名した国の首脳が共通の目的を述べたにすぎない」と認め、「その当事国によるいかなる最終的決定をなすものではなく、また領土を移転するいかなる法律的な効果を持つものではない」という見解を明らかにしています。

平成9年10月に米国立公文書館で「米ソ密約地図」が発見されました。それによると、米ソ両国が対日戦における軍事行動の範囲を定めた秘密合意では、千島列島のソ連軍占領地域を北千島四島に限定、北方領土を含む残りの千島中・南部は米軍の占領地域と指定しており、ソ連軍の全千島占領は、米ソの密約に反して行われた事実が、明らかになりました。北方四島の占拠は、米との合意を破ったソ連の膨張主義的軍事行動だったのです。

スターリンのねらいは、全千島だけではなく、北海道を武力制圧することにありました。米軍がこれを察知し、すばやく対処したために、すんでのところで北海道は守られ、北方四島だけで収まったというわけです。

 

◆北方領土返還運動と交渉の遅滞

 

日本はサンフランシスコ講和条約で、多くの国と講和条約を結び戦後処理を行いました。日本は千島列島、樺太の一部の権利、権原、請求権を放棄しました。そこには、北方四島は含まれていません。

北方領土返還動は、終戦の年、安藤根室町長がマッカーサーに直訴したことに始まります。以後、返還要求の声は全国に広まり、各地で様々な団体による返還運動が展開されています。返還を求める署名は約7千万人にも上っています。

わが国は、北方領土の返還を求めて交渉を続けてきましたが、旧ソ連及びロシアは、日本との間に領土問題は存在しない、といって問題そのものを認めない姿勢を続けました。ようやく平成5年(1993)、エリツイン大統領が訪日した際、北方四島の帰属問題を「法と正義の原則に基づいて解決する」と確認した「東京宣言」が宣言されました。宣言では、北方四島の島名を列挙して、領土問題はその帰属に関する問題と位置づけられました。

  しかし、日本政府もロシア政府も本格的に解決に取り組もうという姿勢でなく、いっこうに進展が見られません。領土問題が解決していないため、わが国は、今もロシアとは正式な平和条約を結んでいません。戦後は終わっていないのです。

北方四島では、ただ同然の価格で私有化が進められているといいます。人の土地を不法占拠して返さないどころか、住み着いた者で分けてしまおう、というのでしょう。そのため、日本政府は領土問題交渉で、ロシア中央政府、サハリン州行政府、さらには土地所有者にも配慮しなければならなくなっています。

 

◆ねばり強い返還交渉を

 

 わが国は、2月7日を北方領土の日としています。北方四島がわが国固有の領土であることを日露両国が初めて確認した日露通好条約の調印された日を記念して、昭和56年に定められたものです。

日露両国間の最大の懸案は北方領土問題です。この問題が解決されなければ、両国間に、真に友好的な関係は生まれないでしょう。わが国は北方四島の主権がわが国にあることを機会あるごとに主張しつつ、ねばり強く領土問題の解決をはかっていく必要があります。それは、単に北方四島という領土を回復するということだけでなく、わが国が主権独立国家として、侵害されている主権を回復するという意味があります。

今日の韓国・中国の日本に対する法外な領土の主張は、北方領土に対する日本の弱腰の姿勢を見て、強引に主張・行動すれば、日本は言いなりになる、という認識をもって迫っているものと思われます。

 わが国は北方四島の主権がわが国にあることを機会あるごとに主張しつつ、ねばり強くロシアとの領土問題の解決をはかっていくべきでしょう。そのことが、竹島・尖閣諸島を巡る問題においても、主権国家としてのあり方を明確にしていくことになると思います。

 

◆領土問題の根本は憲法問題

 

大東亜戦争の終戦時のどさくさにまぎれて侵攻したソ連は、北方四島を不法占拠し、ロシアもまたそのまま居座っています。返還交渉は、半世紀以上たって、いまだに解決を見ません。そういう体たらくのわが国に、韓国や中国が領土侵犯を行ってきているのです。

北方領土返還問題が解決しないのは、わが国に主権を裏付ける実力、すなわち国防力が整備されていないことに原因があります。竹島・尖閣諸島についても、わが国が領土の侵犯、領海の侵犯を強く主張できないのは、ここに根本原因があります。

対外的な主権は、実力つまり武力によってのみ裏付けられます。国民に国防の意思が薄弱であれば、対外的な主権意識は低下します。日本国憲法を審議した帝国議会において、当時の憲法学者・佐々木惣一は、「第9条が独立性を失った卑屈な国民を形成していくのではないか」と危惧を述べていました。その懸念のとおり、戦後憲法制定後、国防をおろそかにし、国民の国防意識が低下してきたことが、主権意識の低下を生じています。それがそのまま領土意識の希薄さに結びついているのです。その希薄さにつけこんで、他国が領土を不法占拠しつづけ、また領土や領海を侵犯しているのです。これに対して、わが国は言葉による抗議だけで、実力による行動を出来ない状態です。

実力の裏づけのない外交は、相手国になんら圧力を感じさせません。現行憲法の第9条をそのままにしながら、領土の返還交渉をいくら続けても、埒があかないのです。多くの日本人は、この点を自覚していないのではないでしょうか。憲法の放置と共に、不法占拠された領土を放置してきてしまったのです。そのことが、日本人の主権意識・領土意識を薄弱なものにしています。

領土問題は主権の問題、国防の問題であり、つきつめると憲法問題であることを、認識したいと思います。侵されているのは、北方四島・竹島・尖閣諸島より以上に、1億2千万の日本人の精神そのものなのです。

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■北朝鮮、制裁後のシナリオ

2006.10.25

 

北朝鮮に対し、非軍事的制裁が行われている。国際社会がこの制裁を継続して実施していった場合、今後、どういう展開が考えられるか。
 週刊『ニューズウィーク日本版』2006年10月25日号が、「北朝鮮崩壊のシナリオ」と題した記事で、仮説として5つのシナリオを載せている。ここ数年来出されてきた予想が、よく整理されていると思う。

●『ニューズウィーク』によるシナリオ

 シナリオとは、「武力行使」「核ボタン」「体制維持」「経済改革」「内部崩壊」の5つ。内容は大筋以下の通り。

◆シナリオ1 武力行使
 制裁は半年間に及ぶ。北朝鮮がテロ組織に核技術の売却を試みたことにより、国連で軍事制裁が議論されるが、中ロは拒否権行使。米韓中心の多国籍軍が空爆を開始。北朝鮮が反撃し、在韓・在日米軍の基地、東京など日本の主要都市に3〜4百発のミサイルを発射。多大な被害が出る。数万から数十万の難民が発生。
 米海兵隊が北朝鮮に上陸して侵攻。ゲリラ戦に苦戦するも、平壌が陥落し、金正日政権は崩壊。米韓中心のPKFが駐留を始める。

◆シナリオ2 核ボタン
 中国が「人道上の援助」を理由に食料・エネルギー支援を再開。北朝鮮は核開発を継続。日本は特別措置法を成立させ、海上自衛隊が船舶検査を行う。警告射撃により北に死傷者が出たことを受け、金正日が対日宣戦布告。
 突然、北朝鮮が東京に向けて小型核爆弾を搭載したテポドンを発射。MDシステムを使い、パトリオットで迎撃に成功(ただし、着弾すれば50万人を超える死者)。その後、多国籍軍が北朝鮮に侵攻。以下は、シナリオ1と同じ。

◆シナリオ3 体制維持
 アメリカ主導の海上封鎖、韓国からの援助停止で、北朝鮮は苦境に。餓死者も出る。しかし中国の援助により、体制は維持される。北朝鮮が再び核実験を行ったと宣言。アメリカとの2カ国間交渉を要求。数回の交渉の末、核技術の不拡散を条件に、アメリカは核保有を黙認。
 韓国が核実験に踏み切り、台湾も核開発を宣言。日本は非核三原則を部分的に見直し、在日米軍に核ミサイルが配備される。NPT体制は完全に崩壊する。

◆シナリオ4 経済改革
 2008年のアメリカ大統領選で、対北朝鮮外交の転換を訴えた民主党候補が当選。北朝鮮は制裁解除、経済支援、体制の保証を要求。大統領はこれを受け入れる。北朝鮮は、核を手放すことを決定。
 金正日は中国式の経済改革導入を表明。各国の援助と世界銀行の援助で北朝鮮のインフラ整備が飛躍的に進む。中国・南北朝鮮の3カ国はFTAを締結。南北の通貨統一を経て、平和裏に北朝鮮と韓国が統一を果す。

◆シナリオ5 内部崩壊
 経済制裁により、食料不足となった北朝鮮では、多数の餓死者が出る。金正日が、原因不明の死を迎え、暗殺説が流れる。3人の息子・正男、正哲、正雲の誰を指導者にするかで上層部が分裂。数十万を越える難民が中国・ロシア・韓国に。北朝鮮国内は混乱を極め、内戦に突入。地方では軍閥が割拠。
 米中ロの働きかけで国連がPKFを派遣。暫定政権が発足。南北両国で統一を望む声が高まる。両政府は連邦国家を樹立することで合意へ。

 原文は、年月まで入れた予想を提示している。

 

●5つのシナリオの検討

 週刊『ニューズウィーク日本版』の「北朝鮮崩壊のシナリオ」は、五つのシナリオを挙げている。果たして、今後、どのような展開になるのか。誰も確実なことは予想できないが、多少私見を述べたい。

 5つの選択肢に限定されるなら、私としては、シナリオ1「武力行使」及びシナリオ2「核ボタン」は避けたい。シナリオ3「体制維持」は、解決の先延ばしに過ぎない。望ましいのはシナリオ4または5だと思う。
 ただし、このシナリオの並べ方は、読者心理を考えたなかなか巧妙な配列だと思う。1と2から読めば、それは避けたいと思う。か、と言って3の現状維持は解決にならない。4は理想的だが、5でもよいか、でもやはり4がいいな、と誘導的に並んでいるような気がする。

 それぞれのシナリオについて、考察してみたい。シナリオ1「武力行使」及びシナリオ2「核ボタン」は、わが国にミサイルが発射されて多大な被害が出たり、東京に向けて小型核爆弾を搭載したテポドンが発射されたりすることが予想されている。核兵器が着弾すれば50万人を超える死者が出るとしているが、別の予想では最大130万人の犠牲者が出るというものもある。日本人は、こうした事態への備えを真剣に考え、防備に取り組む必要があると思う。

 シナリオ3「体制維持」では、体制維持のまま、東アジアに核が拡散することが予想されている。かえって、核の拡散した東アジアは、世界の火薬庫になるだろう。各国の核が抑止力として働けばよいが、他国の開発の前に先制攻撃を、という展開になるおそれもある。今日、核先制攻撃という軍事思想を明らかにしている中国が、やがて核を恫喝に用いて、台湾侵攻に動くだろう。

 シナリオ4「経済改革」は、次期大統領選挙で民主党の大統領が勝った場合を想定している。そして対北朝鮮宥和政策がプラスに出る展開を描いている。短期的には、最も平和的なソフトランディングだ。しかし、長期的には、中国が統一朝鮮に強い影響力を及ぼして地域覇権を確立するだろう。そしてさらに強大になった中国が、米中対決に進むおそれもある。
 シナリオ5「内部崩壊」は、経済制裁が最も効果を上げた場合となる。シナリオ1〜4との違いは、金正日が死亡する場合を想定している。それには、北朝鮮の内部で、金正日を打倒しようという動きがなくてはならない。これまで、少なくとも三度の暗殺やクーデターの試みが失敗している。
 朝鮮人民軍は中国人民解放軍との人的交流が非常に大きい。朝鮮人民軍の幹部の多くは、中国に学ぶ。軍の指導の下での改革経済政策の成果も知っている。朝鮮半島の安定と半島への影響力の増大を求める中国が、北朝鮮軍部の親中派を使ってクーデターを起こし、親中的な統一国家を実現しようとする可能性は高いと思う。

●中国と北朝鮮が連携する事態

 『ニューズウィーク』のシナリオは、北朝鮮が単独で行動した場合のみを想定している。これに対し、北朝鮮が中国の軍事行動と呼応して行動する場合を想定しているのが、先に紹介した近未来小説『ショーダウン』である。

 
‥‥‥平成20年(2008)の大統領選挙で、民主党の女性大統領が当選。同大統領は『対中関係が大切だから中国を刺激したくない』と中国の動きに対するけん制を求める日本の要請を断る。そこに中国が尖閣諸島に侵攻。日中は海戦を開始。靖国神社に巡航ミサイルが撃ち込まれる。証券取引所等へのサイバー攻撃で、日本経済は麻痺状態に陥る。
 この時、北朝鮮が動き、韓国に侵攻する。アメリカが朝鮮半島に気を取られている隙に、中国は沖縄に侵攻する。巡航ミサイルが撃ち放たれ、米中戦争に発展する。そこで、突如、北朝鮮は大坂を核攻撃する。大坂の市街は完全に消滅し、日本は降伏する。
 お返しに、アメリカは、トライデントD5弾道核ミサイルで北朝鮮を攻撃し、北朝鮮は国家としては消滅する。女性大統領は突然、辞任し、大統領が交代。米中は停戦へ。日本は尖閣諸島を中国に提供して完全に屈服。中国が北朝鮮を支配へ。アメリカは日本・韓国から軍を撤退させ、中国が東アジアの全域を支配するようになる
‥‥‥

 私見を述べると、『ショーダウン』は、戦争の勃発、核の使用という点では、『ニューズウィーク』のシナリオ1及び2と共通点がある。大統領選挙で民主党の大統領が当選するという仮定は、シナリオ4と共通する。新大統領を『ショーダウン』は、女性とする。
 民主党の新大統領のもとでの展開は、『ニューズウィーク』と『ショーダウン』は、まったく違う。
 シナリオ4は、民主党の政策で北朝鮮は核を放棄し、中国式の経済改革をするという、理想的な展開となる。これは、『ニューズウィーク』が、民主党寄りの論調の雑誌であることの反映だろう。一方、『ショーダウン』は、共和党のレーガン・ブッシュ政権の軍事スタッフが書いた本である。こちらは、民主党女性大統領のもとで、東アジアは最悪の事態となると予想している。こういう点では、両者の予想には、来る11月にアメリカで行われる中間選挙を意識した政治的な狙いがあると思う。

 中間選挙は、4年ごとの米大統領選挙の中間に行われる選挙で、連邦議会の下院の全員と上院の3分の1が改選される。今回の選挙は、イラク戦争に関してブッシュ大統領を信任するかどうかが焦点だが、民主党の相当の優勢が伝えられる。
 その選挙の結果にもよるが、現状では2年後に共和党が大統領選で勝つことは困難だと予想される。ちなみに共和党のチェイニー副大統領は、大統領選への出馬を否定し、民主党のヒラリー・クリントンが大統領選で勝利する可能性は十分あると発言している。
 話を戻すと、東アジアにおいて、非常に対応が困難になるのは、『ショーダウン』の筋書きのように、東シナ海と朝鮮半島で、同時に戦争が勃発した場合だろうと私は思う。さらには台湾海峡と朝鮮半島で、中国・北朝鮮が同時に軍事行動を起こす場合が、最も対応が困難になると思う。当然のことながら、中国と北朝鮮が計画的に連携して軍事行動を起こす場合を検討しておく必要があるだろう。
 
●平成6年にあった第2次朝鮮戦争の危機

一体、わが国の政府は、厳しい経済制裁実行後の展開をどのように予想しているのだろうか。

 

北朝鮮への経済制裁によって、今後考えられる展開に関し、海外や民間では、さまざまなシナリオが発表されている。しかし、わが国の政府は、今後起こりうることを国民に示し、理解・協力を求めようとする姿勢が見られない。政府は、具体的な予想をもっていないのだろうか。それとも国民に知らせずに対応するつもりなのか。
 実は10年以上前に、内閣は経済制裁の場合のシミュレーションを作成していた。その内容が、最近一部明らかになった。にもかかわらず、政府は公式には何も国民に呼びかけをしていない。


 話は、10数年前にさかのぼる。北朝鮮による核開発疑惑は、昭和63年(1988)に始まった。北朝鮮は前年、寧辺にソ連型原子炉を稼動させ、使用済み核燃料の再処理工場を作った。平成5年(1993)、北朝鮮は国際原子力機関(IAEA)による核査察実施を拒否し、核拡散防止条約(NPT)からの離脱を宣言した。そして、もし国連安保理が制裁に踏み切るなら「戦争行為」と見なすと通告した。
 翌6年(1994)年5月、北朝鮮の原子炉から8千本の使用済み燃料棒が取り出された。そこに含まれるプルトニウムは、5〜6個の原爆を製造できる量に相当した。これに対し、アメリカのクリントン大統領は、国連安保理で北朝鮮を制裁する動議を出したが、北朝鮮は強硬姿勢を変えなかった。北朝鮮は「ソウルを火の海にする」と恫喝した。
 クリントンは6月、5万人の米軍兵力と400機の戦闘機を韓国に送り込む計画に着手した。当時の高官たちは「クリントンは寧辺の核施設を空爆することも辞さない構えだった」と証言している。第2次朝鮮戦争の危機が高まった。
 クリントンは北朝鮮に圧力をかける一方で、カーター元大統領を北朝鮮に派遣し、交渉を行った。その話し合いをもとに米朝協議が行われ、戦争の危機は回避された。この年10月、核開発の凍結に関する「米朝枠組み合意」が締結された。

 しかし、北朝鮮はその後、極秘に核開発を進めていた。平成8年(1996)の時点で、北朝鮮はプルトニウム使用の核爆弾5個を保有していたことが、北の政府高官の証言でわかった。このことは、翌年産経新聞で報道され、大きな話題になった。アメリカ及び国際社会は、北朝鮮の巧妙な外交に振り回され続けてきた。そして、今回の核実験の強行という事態にいたっている。

●旧内閣安全保障室によるシミュレーション

 さて、クリントンが北朝鮮に宣戦布告をする瀬戸際にあった平成6年(1994)、わが国の細川護煕内閣は、対策案を作成した。このたび『週刊文春』は10月26日号で、当時の内閣安全保障室(現在は内閣危機管理室)が取りまとめた極秘文書の内容を明らかにした。「金正日暴発Xデー 日本政府極秘シミュレーション草案」と題した記事である。
 約12年前、東アジアは、今日と似たような北朝鮮の核問題を巡る危機にあった。その際、作られた対策案(以下、草案)は、現在、内閣危機管理チームが参考にしているという。その内容は、平和ボケ、保護ボケにある戦後日本で、ここまで危機管理が検討されていたのか、と思わせるほどのものがある。『週刊文春』の記事から、要点をまとめて、今日の参考にしたい。

 草案は、国連による対北朝鮮経済制裁は、三段階になると考え、それに対する北朝鮮の対応を想定している。

第1段階の経済制裁

@大量破壊兵器に関係する科学技術や科学者、技術者の交流禁止
A武器及び武器に関連する物資の禁輸
B文化やスポーツの交流停止もしくは遮断
C北朝鮮外交官や政府関係者の入国縮小措置

 さらに追加的なものとして

@パチンコマネーなどを阻止するための送金停止
A海外資産の凍結

・これらの制裁に対する北朝鮮の反応

@海外にある日本大使館や、日本を代表する大手企業の支店と生産工場を狙ったテロ攻撃
A北朝鮮工作員の日本侵入工作の増加と、化学兵器の日本国内への密かな搬入(人口密集地、日本の重要防護施設、または在日米軍基地への攻撃用として準備)

第2段階の経済制裁

@陸上、海上、空路における交通や通信と無線の遮断
A海上における貨物検査。いわゆる海上封鎖(強制措置を伴わない)

・これらの制裁に対する北朝鮮の反応

@重要防護施設等へのゲリラ攻撃
 国会、官邸、皇居、原子力発電所、石油備蓄基地、劇物備蓄施設。
A都市への爆破攻撃と化学兵器使用
 ファッションビル、デパート、テーマパーク、遊園地。
B交通機関へのゲリラ及び爆破攻撃
 新幹線、旅客船、地下鉄、石油タンカー、日本航空と全日空の航空機
C暗殺と誘拐及び殺害(狙撃、爆弾、毒物、サリン等の化学兵器使用)
 大手企業首脳、政界要人
D在日米軍と自衛隊の施設へのゲリラ攻撃
 基地、通信設備、基地周辺

●今日の対北経済制裁における覚悟

 この草案は、平成6年(1994)当時のものである。結局、この時は、わが国は経済制裁を行わなかった。これに比し、わが国は現在、経済制裁を実行しており、北朝鮮の核実験後、追加制裁を断行した。当然、北朝鮮の反応を予想し、それに備えねばならない。
 草案の経済制裁第2段階の
Aは、強制措置を伴わない「貨物検査」を「海上封鎖」と認識している。現在制裁事項となっている「臨検」と比較すべきものである。草案は、この段階で、北朝鮮のゲリラ攻撃・化学兵器使用・無差別テロ等を想定している。
 ところが、今のところわが国の政府は、国民に対して、北朝鮮のテロに対する防備を呼びかけていない。国民に不安・動揺を与えないという考えかもしれないが、私は国民を欺くことになっていると思う。

 9・11以後、戦争の概念は変わった。わが国は国連安保理決議による経済制裁の実施により、テロリズムとの戦いを覚悟しなければならない。そういう段階に近づいていると思う。国民はそのことを早く自覚し、防衛意識を高める必要がある。

 

●軍事的制裁の場合――北朝鮮の反応とわが国の対応

 平成6年(1994)当時、旧内閣安全保障室が取りまとめた対北朝鮮制裁の対応案は、国連が軍事的制裁に踏み切った場合をも、想定している。

第3段階となる軍事的制裁

 日本は憲法上、軍事的制裁には参加しないとされ、具体的な作戦は、草案には登場しない。

・軍事的制裁に対する北朝鮮の反応

@水道、電気、ガスなどのライフライン施設への同時多発ゲリラ攻撃
A空港、港湾施設への大規模で、かつ同時多発的なゲリラ攻撃
B通信ラインの破壊
C弾頭に化学兵器が装填された複数のノドンミサイルによる日本国土への直接攻撃
D日本海への大量の機雷設置による、漁船と貨物船の被害
E弾薬庫の襲撃と略奪
F生物兵器攻撃。天然痘ウィルスの人口密集地での曝露

 草案はこうした想定のもとに、日本政府が行うべき対応について詳細に検討してあるという。この草案をスクープした『週刊文春』は、安全保障上の問題もあるからと、軍事制裁の場合の対応案の全体像を掲載していない。具体例として、化学兵器弾頭のノドンミサイル攻撃への対応を掲載するのみにとどめている。それは、次のようなものである。

・化学兵器弾頭のノドンミサイル攻撃への対応

@大量死者発生に伴う埋葬法の改正
A大量死体収容の棺桶の手配は、政府か自治体か
B空襲警報の整備。NHK、地方自治体の防災無線の活用の検討
C外務省海外広報課による国民への広報体制の確立
D災害対策基本法適用の是非

 当時は、迎撃という発想がなく、先制的自衛権の行使は正当化されていなかった。すべてやられることを前提とした対応である。

 『週刊文春』の記事は、さらに当時の内閣安全保障室が最も深刻に悩んでいたのは、北朝鮮から押し寄せる大量避難民の対策だったという。10万人規模の戦争難民が日本に来る。現有の収容施設では収容しきれない。難民の中には、避難民か工作員かゲリラ部隊か見分けのつかない者が混じっている。
 また、わが国は政治亡命を受け付けない方針を取っていたが、もし北朝鮮要人が突然日本に到着して亡命を主張したら、現実にどう対応するかも難問である。草案は、この点も検討しているらしいが詳細は、記事に書かれていない。

 想定事項は、すべて今日にも当てはまる内容である。有事立法によって、法的には一部整備が進んでいるものの、現実に起こりうる事態への準備は、まだまだ不十分である。

●憲法に国家非常事態条項、そのもとに国家非常事態基本法を

 平成6年(1994)、旧内閣安全保障室が対北朝鮮制裁の対応案を取りまとめていた。その時から現在までの間に、起こりうる「第2次朝鮮戦争」にどれだけの備えがされてきたか。
 平成13年(2001)の9・11同時多発テロ事件以後、有事法制は整備されてきた。安全保障会議設立法と自衛隊法は一部改正された。新設された武力攻撃事態法は、有事おける基本的な対処法を規定した。同法によって先制的自衛権の行使が可能となったものの、専守防衛の方針や集団的自衛権の行使の禁止によって、多くの矛盾を生じている。また国民保護法は、有事において国民の生命・身体、財産を守ることを目的に、国や地方公共団体の役割を規定している。しかし、国民保護計画の策定・実施は、遅々として進んでいない。

 戦争難民の問題もある。草案が作られた翌年の平成7年1月17日、阪神淡路大震災が起こった。5千人以上の死者、3万人以上の被災者が出た。3万人規模でも被災者の収容は容易でなかった。朝鮮戦争の時は200万人の難民が出たというが、その10分の1の20万人が北から押し寄せてきたとしても、対応は相当の難事となるだろう。しかも、わが国自体が北朝鮮の攻撃を受けて多大な被害が出て、多くの死傷者が出ている状態も考えるから、大きな混乱が予想される。

 現在の有事法制は、まだ土台のないまま仮に立てたテントのようなものではないか。
 国家安全保障の根本となる憲法は、依然として改正されていない。第9条は制定当時のままであり、国際環境の変化に対応できていない。憲法に非常事態条項は新設されていない。
 有事法制を支える国家非常事態基本法も制定されていない。一人一人の国民の生命と財産を守るための国防の教育や訓練は、ほとんど進んでいない。
 防衛庁を「省」に格上げすることが国会で審議されるが、単なる格上げではなく、縦割り行政の弊害を除き、国家危機管理の関係部局を統合した「国家安全保障省」を新設することが望ましい。

●核攻撃を想定した防備

 草案に話しを戻すと、一つ重要な点を指摘したいのは、それが作られた時点では、北朝鮮は核兵器を持っておらず、核攻撃の場合は想定されていないことである。平成9年には北朝鮮が核兵器を保有していることがわかった。その後、政府が何らかの対応策を練ってきたのか、不明である。
 帝京大学教授の志方俊之氏は、わが国を指して「無防備列島」と呼んでいる。わが国は、核に関しては、今日ほとんど無防備なまま、北朝鮮への次なる対応を迫られている。
 今この現在、平成18年に迎えた危機は、北朝鮮が核実験を発表したことで生じたものだ。平成6年の草案では、化学兵器弾頭のノドンミサイル攻撃に対する対応までは、考えられていた。大量の死者が出る場合を想定し、埋葬法の改正や棺桶の手配を検討している。しかし、核兵器は、サリンやVXガスとは違い、人命を奪うだけでなく、多くの建物や施設、情報システムを破壊する。また被爆地は長期にわたり、放射能による汚染が続く。
 平成19年度に導入する計画だったMDシステムの構築は、今年度から1年前倒しして開始された。しかし、それが完成するのは5年先、平成23年度(2011)である。また囮(おとり)を含む多数のミサイルを同時に発射されるなどすれば、全部は撃ち落すことはできない。

 広島・長崎で核攻撃を受けた経験のあるわが国こそ、その経験を生かして、万が一の事態に国民が備えられるようにしていなければいけない。私は、国民に何も呼びかけない政府、またこれを国会で議論しない政治家に、大いなる疑問を抱かざるを得ない。

●国民の意思の結集を

 大東亜戦争の際、時の指導層は、計画性のない戦争を始めた。国民は緒戦の勝利に興奮し、マスコミは国民を戦いに煽った。人命は、鴻毛のごとく軽く扱われた。政府は、陛下の赤子を赤紙一枚で戦地に送り、銃後の国民は無差別虐殺の爆撃・猛火にさらされた。
 戦後は、敗戦の反省に立って進んできたはずだが、日本人は新たな愚行を続けている。わが国は、GHQに押し付けられた憲法を放置し、それを堅持しようという人がまだまだ多数いる。その結果、今日国民は自らを守るすべもなく、未曾有の危機にさらされている。人命の尊重が言われていながら、国家的非常事態に関する備えには、いかほどの進歩があったといえるだろうか。

 わが国を立て直すには、国民の自覚によるしかない。大東亜戦争の時のような大惨事を避けるため、国民の意思を結集する必要がある。自分と家族を守るために、そしてこの国を守るために。
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日本統治時代の真実――朝鮮と台湾

2005.4.20

 

日韓併合は、国内の腐敗した事態に手をやいた当時の朝鮮の指導者層と日本の指導者たちが合意して行なったものでした。日本は決して武力で朝鮮を侵略したのではない。そして欧米の植民地政策と異なり、日本は朝鮮で学校をつくり、河川工事をし、植林等を行ないました。そのため、併合前と比べて朝鮮では生活が大きく向上し、庶民の多くは喜んでいたのです。しかし、旧支配階級、すなわち併合前は特権をほしいままにし庶民の生活を顧みなかった貴族・両班(ヤンパン)階層は、それができなくなったため、日本に恨みを抱いていました。とくに戦後、支配層に属していた李承晩が大統領になってから、反日的な姿勢が強くなりました。李承晩は日本統治時代の大半を海外で過ごし、日本の統治時代を実際には知らなかったのですが、自身の勢力基盤を築くために反日政策・反日教育を行ないました。今日、問題となっている竹島問題も彼が仕掛けたものです。


 今日、反日教育を受けた若い世代の韓国人は、過去の真実を知らずに、為政者に教えられたまま日本に反発しています。またわが国では、偏向マスコミの代表である朝日新聞・岩波書店が盛んに自虐的な報道・出版を行っており、国民を惑わせています。NHKも近現代史に関する限り、かなり自虐的です。これは日韓両国民にとって不幸なことです。

ここにおいて近年、韓国人の中からも日韓併合や日本の統治を評価する人たちが出てきています。呉善花氏、金完燮氏、崔基鎬氏、韓昇助氏等です。とりわけ、崔基鎬氏の本(「日韓併合ーー韓民族を救った『日帝36年』の真実」(祥伝社)等)は、詳細なデータをもとにしており、説得力があるものです。崔氏は、過去500年以上の朝鮮の歴史がいかに悲惨だったかから書き起こし、日本のお陰で韓国がいかに助けられたかを力説しています。彼らが掛け橋となって、歴史の真実が知られ、日韓関係が好転することを願いたいと思います。

 

ところで、韓国では戦後、反日的な傾向が強くなったのに対し、台湾では全く正反対です。台湾はもともと大陸の一部ではなく、シナの支配を受けたこともありません。明治以降、日本に50年間統治されたあと、台湾にやってきたのは、共産軍との戦いに敗れて大陸から追われた蒋介石政権でした。日本の統治時代にも差別はありましたが、日本人は台湾のために教育・衛生・建設などさまざまな貢献をしました。ところが、国民党は台湾人を一方的に搾取し、殺戮し、暴虐の限りを尽くしたのです。こうして、日本とシナという二つの国に植民地化された台湾は、その結果、日本とシナを相対的に眺めることになりました。日本と蒋介石政権とを対比し、日本の統治時代のよさが再評価されていったのです。台湾出身の金美齢氏によると、台湾人は戦後、日本時代を懐かしむようになり、その思い入れのすべてが、「日本精神」という言葉の中に凝縮されているといいます。

「台湾には今でも『日本精神』という言葉が残っている。‥‥台湾語で『リップンチェンシン』と言う。‥‥台湾では生きている言葉でも、日本では聞かれなくなった言葉であろう。‥‥台湾における『日本精神』は、勤勉、向学心、滅私奉公、真面目、約束事を守る、時間を守るといった諸々の価値を包括している。それはたとえば『この人は日本精神″で店を経営している』と言われる商店主は、大いに信用できるということなのである」と金氏は書いている。(金美齢著『今こそ『日本精神』の再生を』(月刊『日本』平成10年5月号 特集『日本人よ、しっかりしなさい!』)

このように、台湾では、日本人が示した精神が高く評価され、受継がれてさえいるのです。

 

日本が台湾で行ったことは、朝鮮で行ったことと基本的には同じです。しかし、同じことが台湾では日本による恩恵として感謝と敬愛をもって受け止められ、韓国では恩恵としてではなく侵略として、怨恨と憎悪をもって受け止められています。そこには、それぞれの歴史や政治や民族性等の違いがあるのでしょう。

一体、反日的な韓国人のいうことが真実なのか、それとも親日的な台湾人のいうことが真実なのか、その答えは金美齢氏の言葉のなかに見ることができると私は思っています。

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■戦後賠償問題は、決着済み

2007.8.10

 

平成19年7月30日米下院で慰安婦問題に関する対日非難決議の採択を実現したマイク・ホンダ議員は、今度は中国系反日団体とともに、米兵捕虜の補償問題に取り組むという。
 しかし、戦後賠償問題は決着済みである。このことについて、私見を述べたい。

●ホンダ議員・中国系反日団体には反論を

 ホンダ氏は、中国系・韓国系の住民の多いカリフォルニア州選出の下院議員である。ホンダ氏を支援して下院に送り込んだのは、「世界抗日史実維護連合会」(以下、抗日連合会)等のアジア系の団体である。彼らは、ホンダ議員に多額の資金を提供していると伝えられる。

 カリフォルニア州では、第二次世界大戦中に日本軍の捕虜となって労働を強制されたという人たちが、日本企業を相手取って補償を求める裁判を多く起こしている。原告は1000人以上になり、三井物産、三菱商事、新日鉄、川崎重工などが被告となっている。これは、カリフォルニア州ではトム・ヘイデン法が制定されたためである。同法は、第二次世界大戦中のナチス・ドイツ及びその同盟国による奴隷・強制労働の損害賠償請求の時効を2010年まで延長するという内容の特例州法である。同法に基いて起こった訴訟の請求金額は、総額100兆円にものぼるという。
 ホンダ議員と抗日連合会等は、反日感情を持つ米国人をけしかけて日本政府に補償を求めさせ、これによって日米間に摩擦を起こし、米中関係を共産中国に有利な方向に導こうとしているのだろう。

 日本人は、心性が善良で、民族的に「すまなかった」「悪いことをした」という感情に流れやすい。しかし、戦争は国家と国家の間の行為であり、戦後の賠償も国家間の取り決めに基いて厳密に行なわれる。事実に基いた議論が必要である。ホンダ氏や中国系反日団体の動きには、明確な反論をしていく必要がある。

●日本は戦後、講和条約に基いて賠償を実行した

 わが国は、戦後賠償としてどれだけのことを実行してきたのか。まずこうした基本的な事実を踏まえなければならない。
 日本の戦後賠償問題は、サンフランシスコ講和条約に基づいて処理された。同条約は、昭和26年(1951)9月に調印された。わが国は、この条約に基いて、真摯に賠償を実行した。

 わが国が戦後処理で外国に支払った金と物は、総額1兆362億5711万円にのぼるとされる。日本という国が支払ったということは、日本の国民が支払ったのである。国家と国民は一体である。すべて国民の税金と財産で支払ったのである。
 実行した内容は、賠償および無償経済協力(準賠償)、賠償とは法的性格を異にするが戦後処理的性格を有する贈与・借款その他の請求権処理、軍需工場など日本国内の資本設備をかつて日本が支配した国に移転・譲渡する中間賠償、戦前、日本政府や企業・個人が海外に持っていた在外資産の所在国への引き渡しの4種からなる。
 わが国は、これらの内容を誠実に実行した。

 サンフランシスコ講和条約は、第14条に「日本国軍隊によって占領され、日本国によって損害を与えられた連合国」が、日本と二国間協定を結ぶことで賠償が受けられる旨を定めた。
「日本に占領され損害を与えられた連合国」とは、フィリピン、ベトナム、ラオス、カンボジア、インドネシア、オーストラリア、オランダ、イギリス、アメリカの9カ国を指す。このうちラオス、カンボジア、豪、蘭、英、米は、賠償請求権を放棄または行使しなかったが、ラオス、カンボジアとは、経済・技術協力協定を結び賠償に代わる準賠償を行った。

●共産中国・台湾・ソ連とも決着している

 中華人民共和国と中華民国台湾は、ともに講和会議に招かれていない。旧ソ連とは、講和条約を結んでいない。これらの国々とは、別途交渉を行なった。
 台湾とは、昭和27年(1952)4月に日華平和条約を結んだ。台湾は同条約で、「日本国民に対する寛厚と善意の表徴として」賠償請求権を放棄した。わが国の政府は、昭和47年(1972)年9月に行なわれた「日中国交正常化」で、同条約は「終了」したとしている。この時、わが国は、共産中国と日中共同声明を出した。共同声明は、「中華人民共和国政府は中日両国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」ことを確認している。
 後になって、共産中国政府が、戦後賠償問題が解決していないかのようにいうのは、間違っている。また、この政府の姿勢を受けて、在外中国人が日本に個人補償を求めるのも、根拠のないものである。
 なお、わが国は旧ソ連とは、昭和31年(1956)年10月に日ソ共同宣言を出した。旧ソ連は、これにより、日本に対する一切の賠償請求権を放棄している。

 わが国は、講和条約や個々の国との取り決めに基いて誠実に賠償を行っており、戦後賠償問題は、決着済みである。今日なお未解決なのは、国交のない北朝鮮だけである。北朝鮮とは、日本人拉致の問題が存在しており、拉致問題の解決が先決問題であって、安易に戦後処理交渉を行ってはならない。ロシアとの領土問題は、性格が異なるので、ここでは触れない。

 

●連合国は、政府も国民も請求権を放棄した

 国家間の戦後賠償は解決していても、個人に対する補償は別問題だという主張がある。アメリカでは、これから個人補償請求運動が再燃するだろう。しかし、個人の問題も含めて戦後賠償問題は、政府間で解決済みである。
 国家は、自主的な判断に基づいて何らかの行為をした場合、それが国際法に違反する行為であれば、国際法上の責任を負う。これを国家責任という。戦争をした国同士が戦後、講和条約を結ぶのは、この国家責任という考え方に基く。
 サンフランシスコ講和条約は、第14条(b) に、以下のように定めている。

 「この条約に別段の定がある場合を除き、連合国は、連合国のすべての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとつた行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権並びに占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する」

 これは、【賠償、在外財産】についての規定である。「連合国及びその国民の他の請求権」とあるように、請求権を放棄する主体は、「連合国」の他に「その国民」も含まれている。国民個人による請求権も含めて、連合国側は放棄したわけである。

 そもそも条約とは、国家間の取り決めである。だから、請求権の主体として個人が表われるのは、例外的である。先に引いた講和条約第14条(b)が「連合国及びその国民」といって、政府だけでなく国民にも言及しているのは、国民個人も含むことを明示したものと理解しなければならない。連合国の各国政府は、国家が蒙った損害と国民の受けた損害をひっくるめて、わが国に請求権を主張し、そのうえでそれを一括して放棄したのである。

 ここで注意したいのは、連合国は、請求権を放棄したといっても、放棄に見合うだけのものを得られるので、権利を放棄したのである。講和条約は、そういう取り決めをしている。

●わが国及び国民も、在外資産や賠償請求権を放棄した

 その一方、わが国は、わが国の在外資産をすべて放棄している。放棄したのは、個人の資産を含む。それを定めたのが、第14条(a)である。条文が長大で詳細ゆえ、引用は省く。また、わが国が蒙った損害に対する賠償請求権についても、わが国の政府及び国民が一括して放棄している。これは、第19条(a)【戦争請求権の放棄】に明記している。

 「日本国は、戦争から生じ、または戦争状態が存在したためにとられた行動から生じた連合国及びその国民に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄し、且つ、この条約の効力発生の前に日本国領域におけるいずれかの連合国の軍隊又は当局の存在、職務遂行又は行動から生じたすべての請求権を放棄する。」

 上記の規定に同意せずにわが国に賠償を請求した国とは、わが国は個別の平和条約を締結した。このように、政府間で約束を決め、日本はそれを実行した。そえによって日本国としての戦後賠償問題はすべて決着しているのである。

 戦争による損害は、戦勝国と敗戦国では、敗戦国がこうむった損害のほうが当然はるかに大きい。わが国は、アメリカによって本土を攻撃され、主要都市は焦土と化した。資産の損失は莫大である。家・財産を失った国民は、数知れない。これに対し、アメリカは本土攻撃を受けていない。だから、双方が請求権を放棄したのは一見平等のようであるが、実際には敗戦国に不利な内容となっている。それは、戦争に負けた側が甘受するしかない。

●米兵元捕虜も、日本人被爆者も、相手国への賠償請求権は消滅

 講和条約によって、連合国もわが国も、ともども政府・民間の請求権を放棄した。だから、アメリカ人元捕虜が在米日本企業に対して損害賠償を請求する権利は、存在しない。彼らが訴訟を起こすなら、こちらも対抗して広島・長崎に投下された原爆による損害請求をしようという主張があるが、これも講和条約に根拠を持たないといわざるを得ない。
 わが国の政府及び国民が放棄した請求権には、原爆で蒙った損害についての賠償請求権利も含む。そう考えなければならない。それも含めて、わが国は一切の請求権を放棄したのである。
 ちなみに原爆投下に対して損害賠償請求訴訟をした裁判に、下田事件がある。その裁判において、原告側は、講和条約第19条でアメリカ政府への請求権は消滅したことを前提として、日本政府に国家賠償請求をした。原爆判決と呼ばれる東京地裁の判決は、請求を棄却した。

 講和条約は、国家間の戦争状態を法的に終結させるものであって、そこで各国が合意した取り決めを、後になって覆そうとすれば、収拾がつかなくなる。個人の権利というものは、国民の権利を超えるものではない。国民個人の権利は、政府が締結した条約の内容に限定されると考えるべきものと思う。

●個人賠償の請求には根拠がない

 先述したように講和条約によって、わが国も連合国も、政府及び国民ともに賠償請求権を放棄した。ところが、個人賠償の問題は解決していないという主張がある。その根拠として、しばしば講和条約の第26条が挙げられる。そして、同条により、日本は、アメリカの民間人、戦時捕虜、その他連合国の数百万の人々に賠償の義務を負い続けているという意見がなされる。
 しかし、繰り返しになるが、講和条約は、戦後賠償問題は国家間の条約によって決定され、これに署名した国は政府が一括処理することとしている。第26条も、この考え方を前提としている。
 同条の全文は、以下のとおり。

 「日本国は、一九四二年一月一日の連合国宣言に署名し若しくは加入しており且つ日本国に対して戦争状態にある国又は以前に第二十三条に列記する国の領域の一部をなしていた国で、この条約の署名国でないものと、この条約に定めるところと同一の又は実質的に同一の条件で二国間の平和条約を締結する用意を有すべきものとする。但し、この日本国の義務は、この条約の効力発生の後三年で満了する。日本国が、いずれかの国との間で、この条約で定めるところよりも大きな利益をその国に与える平和処理又は戦争請求権処理を行ったときは、これと同一の利益は、この条約の当事国にも及ぼされなければならない。」

 本条は、【二国間の平和条約】に関する規定である。講和条約に署名していない国と、日本が今後、平和条約を結ぶ場合について、定めている。その対象となるのは、中国(中華人民共和国と中華民国台湾)、ソ連、韓国などだった。しかし、わが国は、これらの諸国とも、その後、個別に条約・協定を結び、戦後処理を誠実に実行してきた。その際、サンフランシスコ講和条約の規定を踏まえて、すべての取り決めを実行した。
 第26条の最後の文章は、個人賠償を求める根拠としてしばしば用いられるが、この文章も国家間の取り決めに関するものであることは、明らかである。自国の政府の取り決めを無視して、個人が他国政府に賠償を求める根拠には、なりえない。この条文をもって、アメリカなど講和条約に署名した国の国民が、第26条を個人賠償請求の根拠とすることは、できない。同様に、中国や韓国等の国民が、個人賠償を請求することも、出来ない。

●ドイツとは、全く事情が違う

 第26条を個人賠償請求の根拠に挙げる主張には、ドイツと日本の事情の違いを無視した議論が見られる。
 わが国は、サンフランシスコ講和条約を結んで、戦後賠償を行った。わが国は、占領下で主権を制限されていたとはいえ、独立主権国家として正統な政府が存在していた。だから可能となった処理方法である。わが国は、政府が降伏の諸条件を提示したポツダム宣言を受諾して、条件付き降伏をした。
 これに対し、ドイツは、ナチス政権が崩壊して国際法上有効な政府を失っていた。ドイツは、国家を代表する政府が消滅していたため、連合国に無条件降伏した。その点がわが国と全く事情が異なる。戦後、分断国家となったドイツは、日本のように賠償問題を規定した講和条約を結んでいない。西ドイツは、アデナウアー政権時代に、「連邦補償法」を制定し、これが補償の基礎となった。同法はもともとドイツ国民のなかのナチス犠牲者を主たる対象とした国内法である。それを国外の犠牲者にも援用する手法で補償に当たったものである。
 それゆえ、サンフランシスコ講和条約という国際法に基づいて賠償問題を処理した日本と、ドイツでは事情が異なる。ドイツは個人補償を重点にしているのに対し、日本は国家間賠償を進めてきたのも、根本的にこのことによる。

 わが国の政府も企業・団体も、相手がアメリカ人であろうと、中国人・韓国人であろうと、一個人による賠償請求に応える必要はない。サンフランシスコ講和条約第26条は、これを覆す余地を含んでいない。日中共同声明・日韓基本条約等にも、そういう内容は一切ない。
 戦後賠償問題は、決着済みである。アメリカで訴訟を起こされたり、メディアや人権運動家等が原則を崩すような動きをしても、この原則を踏まえ、この原則を貫くことが大切だと思う。

関連掲示
・拙稿「日本は無条件降伏などしていない」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08i.htm

 

 

■共産中国の覇権主義

2006.10.31

 

21世紀の人類の最大課題――それは、世界平和の実現と地球環境の保全である。これら二大課題への取り組みにおいて、私は日本と中国の緊密な連携が極めて重要になると考えている。もはや近代西洋が生み出した文明は自壊に進むしかない。東洋アジアの文明が、現代文明の欠陥を補い、新たな文明を創造する必要がある。

 ところが、現在、世界平和の実現と地球環境の保全にとって、最大の障害になりつつあるのは、中国である。その原因は、中国を支配している共産主義であり、とりわけ近年、その性格を変貌させてきたファシズム的共産主義にある。

 世界平和の実現と地球環境の保全への取り組みを成功させるには、中国が自由化・民主化され、東洋の伝統的な思想・文化が再興されることが不可欠である。そのために、日本が果すべき役割は大きい。私は、このように考えている。


 現在、世界平和の実現と地球環境の保全の最大の障害になりつつあるのは、中国だと書いた。ここでは、世界の平和と安全保障を揺るがす現代中国の思想と行動について考察したい。


●猛烈な軍拡とその目的


 中国は、軍事費が18年連続で2桁増加という猛烈な軍拡を行っている。軍拡を開始したのは、1980年代の末期である。平成元年(1989)、共産圏では、民主化の波が起こった。中国では6月3〜4日、天安門広場に集まった学生・市民による民主化運動は、人民解放軍によって制圧された。約2千人が殺害され、3万人の負傷者が出たという。中国は強圧的な対応で、民主化運動を押さえ込んだ。

 しかし、東欧・ソ連では、巨大な崩壊が起こった。同じ年、ポーランドで自主管理労組「連帯」が選挙で圧勝し、民主化革命が起こった。これをきっかけに、東欧諸国では、次々にソ連型の一党独裁体制が放棄された。11月には、東西ベルリンを隔ててきた壁が取り払われ、翌年(1990)10月、東西ドイツが統一された。共産圏の盟主・ソ連では、この年、ゴルバチョフが共産党の一党独裁を放棄し、翌年(1991)12月、ソ連は崩壊した。


 中国では、ケ小平が昭和53年(1978)に主席になって以来、市場経済の導入が積極的に推進されていた。自由主義諸国の資本が投資されるとともに、自由主義・デモクラシーの思想が中国に流入した。それが天安門での学生達を先頭とする「自由」と「民主」の要求だった。中国共産党は、国内における民主化運動を抑圧しなければ、ソ連・東欧の共産党政権の二の舞になることを、痛感したに違いない。「社会主義市場経済」によって共産主義の原則を曲げているから、共産主義思想では、もはや国内を統治できない。そこで導入されたのが、愛国主義である。排外的な民族主義は、国内の矛盾への目を外に向けさせる常套手段だ。

 平成5年(1993)に国家主席となった江沢民のもと、愛国主義の政策が推し進められ、反日的な教育が徹底された。その教育は、文化大革命の時代に毛沢東が、紅衛兵世代に行ったのと同じような、徹底的な統制の中での洗脳教育である。

 軍拡は、こうした動きと並行して行われてきた。5年間で軍事費が倍増という猛烈さである。単なる軍拡ではなく、国民の意識を排外的・好戦的にさせており、共産党の指導による国家全体のファッショ化と見ることができる。


 急激な軍拡は、何が目的だろか。経済的に豊かになれば、中国は民主化し、国際協調路線を歩むようになるという期待があるが、それは疑わしい。経済的に豊かになった国は、その富を守ろうとし、また資源の確保のために、軍事力を増大する。


 地政学の権威、シカゴ大学政治学部教授のジョン・ミアシャイマーは、大意次のように主張する。

 すべての大国、または列強と呼ばれる国々は、本質的に力を拡大する傾向を持っている。ある程度の『パワー(人口力・軍事力・経済力の三位一体)』を得ると、必ず世界覇権国の地位を目指しはじめる。なぜなら世界覇権を手に入れてしまえば、誰も逆らうものがいなくなってしまうからである。ところがどの大国にとっても世界覇権を完全に達成することは不可能だから、せめて周辺国家を服従させて、自国の安全保障を確実なものにしておきたいと考える。だから、大国は、機会があれば他国よりもなるべく多くの力を得ようとして、攻撃的に振舞うようになる、と。


 ミアシャイマーは、中国について、次のように予想する。中国が現在の経済の近代化を維持することに成功すれば、世界で最も豊かな大国となり、その富を強力な軍隊を築くために使うだろう。そして、地域内のいかなる国も中国に挑戦できないほどの軍事力を築き、日本や韓国、その他の国々を支配しようとする。アメリカのアジアへの干渉を許さなくなる。中国は、アメリカが20世紀に直面したナチス・ドイツ、ソ連などの大国より、はるかに強大で危険な潜在覇権国になり、北東アジアではアメリカよりも決定的に有利な状況を手に入れることになる、と。

 潜在覇権国とは、ある地域ですべての大国を支配する可能性がある大国をいう。(『諸君!』平成17年9月号、「20XX年―中国はアメリカと激突する」)

 近未来小説『ショーダウン』は、副題を「なぜ中国は米国との戦争を欲するか」としている。同書は中国の猛烈な軍拡が、やがては米国と対決するためのものだという前提に立って、シミュレーションの形で予測されるシナリオを打ち出している。

『ショーダウン』の著者たちは、中国がアジアからやがては世界覇権を目指し、米国と正面から対決する意思を固めている、と断じている。

●資源の確保と地域覇権をめざす


 米中対決は、まだ先の予想だろうが、中国は、北東アジアでは、地域覇権の取得を目指しつつある。わが国の海洋権益を侵し、東シナ海の石油・天然ガス等を略取しようとしている。大陸では、北朝鮮への影響力を強め、韓国にもそれを広げている。外モンゴルを属国化しつつある。シベリアに大量の移民を送り、豊富な地下資源を取得しようとしている。新疆を前進基地として、中央アジアのイスラム諸国に対し、政治的・経済的・軍事的な影響力を行使しつつある。


 中国は、地下資源が枯渇しつつある。経済成長を続けるためには、大量の資源を輸入しなければならない。平成5年(1993)に石油輸入国に転落した中国は、ますます石油の需要を高めている。

中国が1980年代以降、兵器を供与している国は、イスラム系中東諸国、産油国と世界の戦略的要衝となる国であり、わが国のシーレーンに沿った国やアメリカの世界政策と抵触する国々である。石油以外にも、経済成長に必要な様々な資源を確保するため、中国はアフリカ、中南米等にも貪欲に手を伸ばし、世界各地で資源確保に躍起になっている。

 

石油を中心とする資源の争奪と軍拡によって、中国はアメリカの最大のライバルとなっている。その成長・拡大の勢いは強い。既に米中冷戦の時代に入ったと見る識者は多い。こうした中国が、やがて北東アジアにおける地域覇権の確立のために軍事行動を起こす可能性は、高い。


 展開されつつある中国の覇権主義を把握するには、そのもとにある中国の国家目標・国家戦略を理解する必要がある。(ページの頭へ

 

 

■共産中国の国家目標

2006.11.02

 

現代中国は、共産主義国家である。マルクス=レーニン主義、毛沢東思想に基づく国家である。現在の中国は、ファシズム的共産主義に変質しているが、マルクス・レーニン・毛沢東は否定されていない。

●共産主義の目標

 共産主義の目標は、私有財産制を廃止し、生産手段を社会の共有にすることにより、貧富の格差を解消することにあった。共産主義社会の高度の発展に伴い、階級がなくなり、階級間の暴力的な抑圧装置としての国家(=政府)は死滅する。自由な諸個人の連合による社会が実現するという将来像を抱いていた。
 共産主義社会は、一国だけで実現することはできない。資本主義は世界的な規模で発達したから、資本主義から共産主義への移行も世界規模で行われねばならない。革命に成功した国家は、他国及び植民地において革命を実現すべく、国際共産主義運動を組織・指導しなければならないとされていた。

●ソ連・中国の共産主義の異同

 共産主義革命は、最初ロシアで成功した。革命の当初は、上記のような目標と方法をもって運動が行われた。しかし、ソ連の実態は、プロレタリアート独裁ではなく、共産党の官僚による人民に対する独裁であり、レーニンへの個人崇拝が芽生えていた。
 レーニンの死後、スターリンが権力を握ると、個人崇拝が著しくなった。スターリンは、一国で社会主義建設が可能であるという理論を唱え、またナショナリズム(国家・国民・民族を中心とする主義)を強調した。その結果、ソ連の指導する国際共産主義は、ソ連の国益を拡大するための思想・運動に変貌した。これをスターリニズムという。

 中国共産党は、ソ連の指導・支援のもとに、革命を実現した。中国の共産主義は、スターリニズムのシナ版である。共産党による官僚独裁、毛沢東への個人崇拝、ナショナリズム等の特徴が共通する。
 もちろん違いも多くある。重要な違いの一つは、アヘン戦争以来、シナ(清・中華民国)は欧米列強の支配・収奪を受けてきたことである。シナの革命は、日本を含む列強の支配からの民族解放という性格を持っている。

●共産中国の国家目標

 革命後、中華人民共和国は、明確な国家目標をもって、国家建設を行ってきた。目標は、共産主義による世界の共産化か。否。軍事評論家の平松茂雄氏は、「中華帝国の再興」であると指摘する。
 毛沢東は昭和11年(1936)、アメリカの作家エドガー・スノーに「すべてわが国が失った領土を取り戻すのが目前の事業です」と語った。毛沢東は、シナ史上最大の版図だった清朝最盛期の版図を、中国の持つべき領土だと考えた。平松氏によると、それが「中共政権が建国当初に描いた中国の将来像」だった。中国の領土はアヘン戦争を契機として、欧米、次いで日本に奪われたと考え、奪われたものを取り返そうという「失地回復主義」が、共産中国の膨張政策を支える思想の一つなのである。失地回復の範囲には、台湾、朝鮮半島、ベトナム、カンボジア等が含まれている。驚くべきことに、沖縄、ビルマ、ブータン、ネパールなど、アヘン戦争以後の歴史とは関係のない地域までが含まれている。

 この中華帝国の再興、失地回復主義という思想は、共産主義本来の思想とは本質的に異なる。ソ連の共産主義とも異なる。スターリンは、ソ連を中心とした世界の共産化をめざした。それは、帝政ロシアの膨張政策に似た傾向を持ってはいたが、なお共産主義思想を発展させたものだった。
 しかし、毛沢東の思想は、逆に中華思想的なナショナリズムに、共産主義を取り入れたものという性格が強い。毛沢東をはじめ中国共産党の指導者達が、どれだけマルクス・エンゲルス・レーニンらの理論を理解していたかは疑わしい。シナにおいて権力を奪取し列強に対抗するには、共産党の方法とソ連の指導・支援が有効と思われたから、共産主義を学習・模倣しただけではないかと思われる。

●一貫して国家目標を追求

 平松氏は、共産中国は「常に明確な国家目標を掲げ、それを達成するための国家戦略を持って、国家の総力をあげて着実に目標を実現してきた国である」と言う。氏によると、中国の国家戦略は、昭和24年(1949)、中華人民共和国が建設された初期の段階で、毛沢東が決定したものだ。その国家戦略は、昭和33年から40年前半期(1958-1960)にかけて推進した大躍進、33年(1958)から推進された人民公社運動、40年から51年(1965-1976)にかけての文化大革命等の中で、ぶれることなく、現在まで貫かれている。この指摘は重要である。

 この間、粛清、内戦、餓死等により、6,500万人が共産主義の犠牲になったと推計される。毛沢東は、史上最悪の殺戮者である。その犠牲者の数は、スターリンやヒトラーの比ではない。
 毛沢東の経済社会政策は、破壊と混乱を生み出すばかりだった。人民公社にしても生産性が上がらず、1980年代からは生産請負制の導入で各農家に土地を貸与する方式に移行し、昭和60年(1985)には解体が完了された。文化大革命は、失政によって権力基盤を失いかけた毛沢東の権力回復の闘争だった。この過程で、社会は荒廃し、伝統・文化は徹底的に破壊された。
 しかし、こうした破壊・混乱の繰り返しの中でも、中国共産党の国家目標は、ぶれることなく、追求されてきた。それが、中華帝国の再興、失地の回復である、と平松氏は説く。私は、このような見方をすることによって、現代中国のファシズム的な世界政策を深く理解することができると思う。

●陸から海への拡大

 共産中国の国家目標は、中華帝国の再興、失地の回復である。このことは、中国の歴史に跡づけられる。
 中国は建国以来50年足らずの間に十数回の戦争を行なっている。朝鮮戦争、台湾国民党軍との戦争、チベット侵攻、中印国境紛争、中ソ国境紛争、中越戦争等である。これらはすべて、中国の主権・領土・国境にかかわるものだった。中国は、地政学的に言えば大陸国家、「ランド・パワー」である。中国が行ってきた戦争は、主として陸の国境をめぐる戦争だった。
 ところが、1970年代以降、中国の軍事行動は、海の境界線に関するものにまで広がっている。

 意外なことに中国は、早くも昭和31年(1956)から海洋政策を進めてきた。43年(1968)に東シナ海に、中東に匹敵するほど豊富な石油資源がある可能性が分かると、国益をむき出しにした。わが国が実効支配してきた尖閣諸島に、領有権を主張するようになった。
 軍事評論家の平松茂雄氏は、著書『中国は日本を併合する』(講談社インターナショナル)で次のように語っている。
 「ようやく日本政府と日本国民は中国という国に眼を開くようになった。だがそれは尖閣諸島や春暁というスポットを見ているに過ぎない」
 「中国の海洋進出の現状は凄まじく、このままでいくと南シナ海、東シナ海は『中国の海』となるのも時間の問題である。南シナ海と東シナ海が中国に抑えられると、台湾はその生存空間を失い、中国に呑み込まれることになるであろう。そして次には日本の領土である尖閣諸島や沖縄諸島などの南西諸島、そればかりか、朝鮮半島も呑み込まれていくことになるだろう。中華帝国史上最大の版図への回復は徐々に進んでいるのである」

●戦略的辺疆という概念

 ここで私たちは、シナ独特の国家観を理解する必要がある。中国人の持っている国家観は、近代西洋的な国家観とは異なる。その基本にあるのは、中華思想である。
 中華思想では、「中原(ちゅうげん)の地」にある自民族を中心とし、それより外の地域を「化外(けがい)の地」とみなす。化外とは、天子の教化の及ばない場所という意味である。周辺の異民族は、東夷・西戎・南蛮・北狄と呼んで蔑む。文明と野蛮というより、人間と禽獣という対比である。シナ文明は、周辺の国家や民族を軍事・政治・文化の力で同化吸収してきた。その範囲は、シナの側の力の度合いによって決まる。その周辺地域を「辺疆」と呼ぶ。

 こうした伝統的な世界観に基づいて、中国共産党は覇権主義的な思想を打ち出している。平松氏によると、中国は昭和61年から62年(1986-1987)に、「戦略的辺疆」という概念を提起した。
 戦略的辺疆とは、従来の領土・領海・領空の限界を指す地理的国境という考え方に相反する考え方である。これは、「国家の軍事力が実際に支配している国家利益と関係ある地理的空間的範囲の限界」を、その国の「生存空間」とする概念である。
 「地理的限界(国境)」が「国際的に承認され」「相対的に安定性と確実性を持っている」のに対し、戦略的辺疆は「領土・領海・領空に制約されず、総合国力の変化に伴って変化し、相対的に不安定性と不確実性を持っている」。

 最も注目すべきは、次の点である。この考え方によると、「国際法的に承認されない地理的境界から外に出て、戦略的辺疆を長期間有効に支配すれば、それはその国の領土、領海、領空となる」。
 1980年代後半からの中国の急激な海洋進出は、この戦略的辺疆論による。戦略的辺疆論は「周辺諸国、海域の安全保障を脅かし、侵略を正当化する非常に危険な考え方といえるだろう」と平松氏は言う。

 「生存空間」は、ナチス・ドイツが主張した「生存圏(Lebensraum)」と瓜二つである。ナチスは、生存圏の拡大、すなわち、増大する人口を完全に許容し、民族を自給自足体制に移行させ、世界強国との闘争を可能とする資源をも産出する広大な領土の獲得を目指した。
 中国共産党は、江沢民時代以来、「民族の生存空間の確保」を打ち出している。「13億の中国人にとって海洋は絶対に欠かすことのできない民族的生存空間だ」と公言し、海洋への進出を強化している。これは共産主義の思想ではなく、ナチズムに似た思想である。

●核開発・地域覇権・世界支配

 中国の軍拡は、単に軍事力の増大なのではない。軍拡には、目的がなければならない。軍拡の目的は、中華帝国の再興、失地回復を目指すものであり、地政学的に言えば、生存圏の確保、地域覇権の確立である。さらに、その目的は、アメリカと対決して、世界支配を達成するところにまで、延長されつつあると思われる。

 中国共産党は、当面、アジアにおける覇権の確立をめざしている。中国は既にチベット、モンゴル、新疆等を支配し、さらに台湾、尖閣諸島、東シナ海等に版図を広げようとしている。これは「戦略的辺疆」という考え方のもとに、建国以来の国家目標を実現しようとするものであり、中華思想的な国家観の膨張だろう。台湾を呑み込んだなら、次は朝鮮半島も併合し、さらにはわが国へと貪欲に口を広げてくるだろう。

 覇権確立を実現するために、最大の力となっているのが、核兵器である。中国は1950年代から、核兵器の開発を進めてきた。大躍進、人民公社運動、文化大革命等、破壊と混乱が繰り返され、権力の担い手が代わっても、核開発だけは、一貫して推進されてきた。毛沢東の執着は、核を手に入れて、アメリカに対抗することにあった。一見理解しがたい大躍進と人民公社は、核兵器を開発し、核戦争を生き延びるために採られた政策だった。文化大革命は単なる権力闘争ではなく、核ミサイル開発と人民戦争の組み合わせによる「二本足軍事路線」を貫くために、反対派を駆逐しようとしたものだった。

 中国が国際社会で強い発言力を持つに至ったのは、核を手にしたからである。さらに近年、中国は、大陸間弾道ミサイル、原子力潜水艦、空母、宇宙兵器等の科学兵器を開発・製造しつつある。
 かつてソ連は、世界の共産化のために、アメリカに対抗して軍拡を行った。ソ連がその競争に敗れて崩壊した後、中国はその遺志を継いだかのようだ。しかし、その行動は、共産主義の理想を実現しようというより、ファシズムに近い。また、その思想は、伝統的な中華思想をアジア規模、地球規模に拡張するものと思われる。

 中華思想は、世界統治の思想である。共産主義は本来、世界の共産化を目指していた。ナチスに代表されるファシズムも世界支配を目指した。中華思想は今日、共産主義・ファシズムと結びつくことによって、アジアから世界へと支配を広げる思想に成長しつつあるように見える。
 シナの歴史においては、「辺疆」はその時々の帝国の力によって、拡大・縮小した。この21世紀においては、戦略的辺疆は、大陸から海洋に広がりつつあり、西太平洋・インド洋・中央アジアへ、さらに、今後、資源と市場のあるすべてのところ、地球規模に拡大していくだろうと推察する。

 失地の回復、生存圏の確保、地域覇権の確立、世界支配への挑戦。そのために、中国共産党が、まず掌中にしたいのが台湾であり、屈服させたいのが日本なのだろう。(ページの頭へ

 

参考資料

・平松茂雄書『中国は日本を併合する』(講談社インターナショナル)

 

 

■人類史上最も危険な思想〜中国の積極的核戦争論

2006.12.1

 

●中国の核開発

 共産中国は、建国後の数年間、1950年代にアメリカから核兵器で繰り返し威嚇された。朝鮮戦争、インドシナ戦争、大陳諸島解放作戦の際である。中国は威嚇に屈するしかなかった。
 平松茂雄氏によると、その経験から毛沢東は、核兵器の開発を決断し、核兵器を保有してアメリカの世界支配に挑戦するという国家目標を掲げた。この国家目標を実現するために、中国は核兵器開発を最優先する国家戦略を立て、以後約50年間、国力を集中して核兵器を開発してきた。(平松茂雄著『中国、核ミサイルの標的』角川Oneテーマ21)
 いまや中国は、アメリカ本土に到達する核兵器を保有して、アメリカを核攻撃すると威嚇するにいたっている。そして、核の破壊力を裏づけとして、極めて危険な思想が、中国指導部に現れている。

●朱成虎少将の核先制攻撃発言

 朱成虎空軍少将の名は、その危険思想とともに、世界に知られている。朱は、中国人民解放軍の最高学府である国防大学の防務学院長という立場にある。人民解放軍の「健軍の父」と呼ばれる朱徳元帥の孫だという。
 朱少将は、平成17年(2005)7月14日、香港駐在の外国人記者大陸訪問団との会見の席で、次のような発言をした。記者の「米国が台湾海峡の戦争に介入したら、中国はどのように対応するか」という質問に答えての発言である。

 「米国がミサイルや誘導兵器で中国の領土を攻撃するなら、中国は核兵器で反撃せざるを得ない」「中国の領土には、中国軍の艦艇や戦闘機も含まれる」「中国は西安以東の都市の全てが破壊されることを覚悟しており」「米国も当然西海岸の100以上、もしくは200以上、さらにはもっと多くの都市が中国によって破壊されることを覚悟しなければならない」

 この発言は、核の先制不使用の原則を否定するものである。中国は、核兵器をアメリカの核攻撃に対する抑止力として保有するのではなく、台湾侵攻にアメリカが軍事介入したら、核先制攻撃を行う意思があると言うのである。当然、中国はアメリカの報復攻撃を受ける。しかし、それによって西安以東の都市つまり北京・上海・天津・南京・武漢・瀋陽・鄭州・広州等のすべてが壊滅しようとも、戦う。そういう覚悟を持って、アメリカ本土の主要都市を核攻撃すると威嚇している。もし核で米中相撃つならば、中国は、人口・産業の大部分を失う。アメリカも、同様となるだろう。

 朱は、広島・長崎に投下された原爆という兵器の恐ろしさを、理解していないに違いない。核兵器はその後、総量と破壊力を増し、今日万が一、全面核戦争になれば、地球の人口の7割が失われ、地球は、放射能に広く汚染されるだけでなく、「ニュークリアー・ウィンター(核の冬)」という劇的な寒冷化を引き起こすだろう。
 
●朱発言は中国指導部の共有思想

 朱少将の発言は、尋常ではない。しかし、彼の発言は、気の狂った一人の軍人が、妄想を述べているのではない。中国の国防大学とは、人民解放軍の幹部を養成する最高教育機関である。朱は、その大学の上級の教官として、軍人に軍事思想を教育し、民衆に国防意識を広める指導的立場にある。
 黄文雄氏は、朱の発言について、「中国は言論統制の国であり、ことに軍という組織内部では、個人的な発言など許されないから、そのように見てしかるべきである」と述べている。(黄文雄著『米中が激突する日』PHP)

 そもそもこの香港における記者会見は、中国外務省が設けたものだった。朱の発言に関し、中共中央書記処は、「わが国への侵略的軍事挑発に対する不動の決意と立場を表明しただけ」としている。同処は、胡錦濤主席、温家宝首相、呉邦国全人代常務委員長にも審議を求め、彼らは「朱の個人的発言」であるとして同意を示した。また、中央軍事委員会の三人の副首席(全員が上将)は、「朱発言は基本的には間違っていない」「朱発言は、党中央の方針に従ったものにすぎない」という報告を出している。

 私は、朱発言は、共産中国の戦略思想と理解すべきと思う。中国共産党の指導部は、朱の発言を通じて、アメリカ・日本・台湾に対し、台湾侵攻の意思を示し、核による恫喝を行ったのである。
 

●ヒトラー・毛沢東を超えた危険思想


 中国が台湾に侵攻するとき、アメリカが軍事介入すれば、中国は米国に核攻撃を行うという意思表示は、朱成虎少将が初めて行ったものではない。平成7年(1995)から現在まで、中国は米国政府高官に対して何度もこうした威嚇を行っている。

 朱の発言が画期的なのは、外国人記者団に対して意思を表したことである。その発言には、米国指導層に台湾から手を引かせるだけでなく、米国の国民に厭戦気分をかもし出す狙いがあるだろう。その点では、計算された政治的メッセージである。


 実は、朱成虎の思想の真の危険性は、核先制攻撃論にあるのではない。朱は、平成17年(2005)、国防大学の内部会議で講話を行なった。その全文が、中国人のニュースサイト「博訊網」に載せられている。この発言は、外国プレスに向けたものではない。中国内部におけるものである。
 黄文雄氏が、著書『米中が激突する日』(PHP)に発言の要旨を掲載している。そこから抜粋しながら、内容を見てみよう。


 朱少将は言う。

 「国連の統計によれば、今世紀の中葉ごろには人口は150億人に達し、今世紀中には人口過剰の問題が爆発する。(略)ことにインドは人口、経済、パキスタンとの領土紛争をめぐり、核戦争を行なう可能性はきわめて高い。そのドミノ現象で世界核戦争が起こる。(略)だからこの未来の核戦争に対し、我々は受動的でなく、主導的に出撃するべきだ。(略)人口問題を解決するには、核戦争が最も有効にして手っ取り早い方法だ」

 朱はこういう認識の下に、中国人の生き残りと将来の優位を説く。核先制攻撃の戦略思想は、シナの伝統的な人命軽視の思想と結びついている。


 「我々中国人はこの競争(原註 人口増加による資源の争奪)のなかで機先を制さなければならない。(略)なるべく他国の人口を減らし、自国の人口を多く生き残らせるべきだ。そうなれば生き残った人口が未来の人類の新しい進化の過程のなかで、有利な条件を得ることができる。(略)私が核戦争を鼓吹するのは、国家民族の生存発展に有利だからである」

 朱は、「国家民族の生存発展」「未来の人類の新しい進化」というナチス顔負けの思想をもって、核戦争を唱導する。

 

 「もし我々が被導的でなく主導的に出撃すれば、計画的に全面核戦争に出れば、情勢はきわめて有利である。(略)政府はすべての幻想を捨て、あらゆる力を集中して核兵器を増やし、10年以内に地球人口の半分以上を消滅できるようにしなければならない。(略)人口をもっと増やし、そして計画的に周辺諸国に浸透させるべきだ。(略)全面核戦争が起こったら、周辺諸国に疎開した人口の半分と、農村に疎開した人口の半分があるから、他国に比べて多くが生き残ることができる」

 核戦争によって人類の人口を半減させる。その中で中国人が生き残って、核戦争後の地球を支配するための人口政策を説いている。


 「我々にとって最も敵対する隣国は、人口大国のインドと日本である。もし我々が彼らの人口を大量に消滅できない場合は、核大戦後は中国の人口が大量に減少し、日本とインドがわが国に大量移民をすることができるようになる。(略)アメリカは強大な国力を保っているので、徹底的に消滅させないと、将来大患になる。(略)台湾、日本、インド、東南アジアは人口密集の地域であり、人口消滅のための核攻撃の主要目標となる」

 自国民以外を減らすために、核戦争を起こすべきだというのである。人口減少の対象に、日本もアメリカも入っている。


 「以上のことは数年後、必ず起こる。なぜならば人口問題は、いかなる人間にも根本的な解決は不可能だからだ。歴史は必ず私の所説の正しさを証明してくれる。(略)核大戦のなかで、我々は百余年来の重荷を下ろし、世界のすべてが得られる。中華民族は必ず核大戦のなかで、本当の復興を得られる」

 これは、ヒトラーと毛沢東の思想を超えた極めて危険な思想である。私は、人類史上最も危険な思想だと判定する。


●人類と地球を守るために


 先に書いたように、朱成虎少将は、平成17年(2005)7月14日、香港駐在の外国人記者大陸訪問団との会見の席で、「米国がミサイルや誘導兵器で中国の領土を攻撃するなら、中国は核兵器で反撃せざるを得ない」「中国の領土には、中国軍の艦艇や戦闘機も含まれる」「中国は西安以東の都市の全てが破壊されることを覚悟しており」「米国も当然西海岸の100以上、もしくは200以上、さらにはもっと多くの都市が中国によって破壊されることを覚悟しなければならない」と発言した。

 その同じ人物が、国内向けには、「私が核戦争を鼓吹するのは、国家民族の生存発展に有利だからである」「歴史は必ず私の所説の正しさを証明してくれる。(略)核大戦のなかで、我々は百余年来の重荷を下ろし、世界のすべてが得られる。中華民族は必ず核大戦のなかで、本当の復興を得られる」と述べているのである。


 朱少将の核先制攻撃発言は、中国指導部の公認するところであった。そうであれば、朱の中国人核戦争生き残り戦略も、共通した思想を持つ者たちが共産党や人民解放軍の中にいると想定すべきだろう。
 中華思想と共産主義・ファシズムは合体した。さらに核先制攻撃と核戦争生き残り戦略が結合した。この化合物によって、人類史上最も危険な思想が、シナ大陸に発生したと私は思う。それは、東洋人が、自己の伝統思想を忘れ、西洋思想を模倣し、さらに極端に推し進めたからだと思う。

 共産主義は極度の合理主義であり、ファシズムは啓蒙が野蛮に転じたものである。権力は欲望を最大限に肥大させる。道徳を否定した欲望は、自然と生命の消尽に向かう。


 かつて共産主義に対して、人間の美徳を守ろうとした人々が戦った。またナチズムに対して、人類の愛や理性を信じる人々が闘った。いま私たちは、中華思想に基づくファシズム的共産主義という狂暴な思想から、人類の自滅と地球の破壊を防ぐために、最善の努力をしなければならないと思う。

 私は、自滅・破壊の思想から、人類と地球を守るには、日本の役割は重大だと信じている。米中が激突する核大戦を避けるため、日本人は、共存共栄の日本精神を発揮して、東洋精神文化を興隆し、物心調和の道を指示し、世界を平和に導く使命があると思う。またその使命を果すために、この国を滅ぼしてはならないと思っている。日本を守るために、日本人は元気を振起し、国民の総意を結集すべきである。(ページの頭へ

 

 

■『ショーダウン』〜米中冷戦・両雄対決

2006.10.18

 

『ショーダウン(対決)』――副題は「なぜ中国は米国との戦争を欲するか」。北京オリンピックが終わった翌年2009年の7月。中国が日本にミサイルを撃ち込み、尖閣諸島への攻撃を開始した。米国の新大統領は日米安保条約の発動を拒み、日本を支援しないと言明した。そして、新たな日中戦争が始まるーーーこのような軍事シナリオを描いた本が、本年(平成18年)6月アメリカで刊行された。
 来年(平成19年)春には、全訳版が産経新聞出版から刊行されるという。

●尖閣諸島侵攻にはじまるシミュレーション


 著者は、元国防総省の高官2人。ジェッド・バビンは先代ブッシュ政権の国防副次官、エドワード・ティムパーレークはレーガン政権時代の国防総省の動員計画部長だった。ともに軍事全般や中国の軍事動向に詳しい専門家である。

 産経新聞記者の古森義久氏は、本書刊行後、いち早くわが国に紹介している。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/i/25/index.html
 古森氏によると、本書は、中国のいまの強烈な軍拡が、やがては米国と対決するためだという前提から、具体的な人民解放軍の現実を論じ、シミュレーション(模擬演習)の形で予測される軍事シナリオをいくつか打ち出している。
 著者たちは、ものすごい勢いで軍拡を進めている中国は、アジアからやがてはグローバルな覇権を目指し、米国と正面から対決しようという意図を固めていると断じている。そして、本書は、米中の最終対決となる戦争を回避することを目的として、いくつかのシナリオを提示している。そのシナリオのうちの一つが、日本と中国の戦争である、という。

 『ショーダウン(対決)』において、新日中戦争は、2009年1月20日を出発点として描かれている。前年の2008年、アメリカの大統領選挙で民主党リベラルの女性政治家が勝ち、初の女性大統領に就任したという想定である。ヒラリー・クリントンをイメージしているに違いない。
 古森氏の要約によると、本書の示す日中戦争のシナリオは次のように展開する。

 「日本の首相が米国の女性大統領に尖閣諸島の至近海域で中国とロシアの海軍が合同で大演習を始めたことを告げ、米国として中国とロシアにその中止を求めることを要請する。だが同大統領は『対中関係が大切だから中国を刺激したくない』と断る」。
 「中国では北京オリンピックを成功裏に終えたが、貧富の差が広がり、失業者が急増した。共産党政権は人民の不満を抑えようと、国内ではナショナリズムを高揚させ、外部では周辺諸国、特に日本への覇権行使を行い、『中国人民は日本の首相の靖国神社参拝を中国への戦争行為だとみなす』と宣言する」。
 「日本を屈従させるため中国指導部は中国内で働く日本人技師らをスパイ容疑で逮捕して裁判にかけ、死刑の判決を下す一方、中国全土で反日デモを組織するが、そのデモが2000万人参加にまで膨れあがる。中国は日本の首相が靖国を参拝したことに対し、全面的な謝罪を求め、さらに尖閣諸島の放棄を迫る」。
 「2009年7月8日、中国軍は日本列島の上空を通過する弾道ミサイルを発射し、日本を威嚇して、全面謝罪と尖閣諸島放棄を要求する。日本の首相は米国に支援を求め、ミサイル防衛強化のためのイージス艦増強などを要請する。だが米国大統領は『日中二国間の問題だから』と拒む」。
 「中国側は『日本人スパイ』数人を処刑し、サイバー攻撃で東京証券取引所や各地の航空管制システムを混乱させる。日本側は尖閣諸島近くに自衛隊艦艇を出し、演習を開始する。中国側は8月3日、靖国神社に巡航ミサイルを撃ち込んで破壊するとともに、尖閣侵攻の戦闘作戦を始め、日中の海戦がついに始まる」。
 「米国大統領は日本側からの再三の防衛支援の要請にも応じず、日本の首相に『米国は中国との戦争はしたくない』と告げて、不介入を表明し、国連への調停を求めるように通告する」。
 安保理常任理事国の中国が拒否権を使えば、国連は何の行動もとれない。シナリオ記述はまだ先があるが、結局、日本は大被害を受け、中国に降伏するという破局的な結末に終わるという。

●なぜ尖閣諸島が狙われるか

 

『ショーダウン』は、中国がわが国に尖閣諸島の放棄を迫るというシナリオを書いている。戦争には目的が必要である。中華人民共和国は、台湾侵攻を国家的課題としている。尖閣諸島は、これとは直接関係がないように見える。その点を補足したい。

 台湾侵攻は、中国共産党にとって、どうしても成し遂げなければならない課題なのだろう。シナ大陸には、中華民国があった。中国共産党は、内戦起こして、国民党政府を台湾に駆逐した。蒋介石は、台湾に侵攻して、ここに中華民国政府を移した。大陸では、共産党による中華人民共和国が建設された。その結果、中華民国と中華人民共和国が並立する状態となった。中国共産党が政権の正統性を誇示し、世界戦略を進めるためには、中華民国台湾を併合し、「祖国の統一」を成し遂げなければならない。これが政治的・思想的理由だろう。

 しかし、台湾侵攻の現実的な理由は、実利的なものだ。軍事評論家の平松茂雄氏が、中国共産党が台湾に固執するのは「ひとえに台湾の戦略的地政学的位置の重要性にある」と言っている。中国が太平洋に進出するために、「重要なカギとなる位置に存在するのが台湾」なのである。
 台湾は東シナ海と南シナ海の間に位置し、渤海・黄海・東シナ海と南シナ海を二分する位置にある。もし中国が台湾を統一できれば、中国は太平洋に面した国になる。しかも台湾海峡・バシー海峡という日本のシーレーンの重要な拠点を押さえたことになる。
 「日米からすれば、台湾は西太平洋防衛の要の島である。とくに日本にとっては生命線であり、ここが中国の手に落ちれば、日本が窒息することは必定である」「仮に台湾が占領され、日本のシーレーンが中国に扼された場合、そのとき日本は簡単に、その国の属国となってしまうだろう」と平松氏は言う。(平松茂雄著『中国は日本を併合する』講談社インターナショナル)

 いずれ、中国は台湾を侵攻する。中国を中国共産党が支配している限り、必ず台湾を併合するために、戦争を起こす。しかし、現在の中国の軍事力では、まだ台湾侵攻を成功させるのは難しい。2010年代に入ると、軍事的なバランスが中国に有利になる。その時期に作戦を行なう可能性が高い。
 ただし、侵攻を行なわない場合もあり得る。それは、台湾が大陸に併合される道を、選挙によって民主的に選んだ場合である。中国共産党は、軍事的な圧力をかけ、台湾の媚中派に工作することで、戦わずして台湾を掌中にすることができる。台湾のマスコミを多く押さえている中国共産党は、宣伝による世論の誘導に力を入れている。
 しかし、反日愛国主義で辛うじて国民を束ねている中国政府が、「祖国統一」の「聖業」に遅れると、「祖国統一」以前に、共産党政権が自壊する危険性がある。そこで、台湾侵攻の前に国民の感情を納めるため、第一段階として尖閣諸島を狙う可能性はあると思う。

●台湾の「身代わり」としての尖閣侵攻

 国際ジャーリストの日高義樹氏は、中国は尖閣諸島を台湾の「身代わり」として侵攻するという説を唱えている。日高氏は、次のように考察している(日高義樹著「ポスト小泉 媚中派政権なら中国は尖閣諸島を占領する」月刊『正論』平成18年8月号)
 中国では、貧富の差が拡大し、社会不安が高まり、平成17年には1年に5万回を超える暴動が起きている。「国民の不満を抑え、国を一つにまとめておくのに一番効果的なのは、台湾を攻撃し占領することである。だが台湾攻撃は準備に時間がかかるだけでなく、ブッシュ政権がいるかぎりほとんど不可能である。ブッシュ大統領が『台湾を守る』とはっきり宣言しているからだ。このため狙われるのが尖閣諸島なのである。
 尖閣諸島は台湾に近く身代わりとして最適である。日本が領土と言っているところを占領すれば当分の間、国民の不満の爆発を抑えることができる」と日高氏は述べている。

 一点、私見を述べれば、日高氏が「国民の不満」と言っているところは、人民解放軍幹部の突き上げという意味を含むと思う。中国は、自由主義的デモクラシーの国ではなく、ファシズム的共産主義の国だからである。

 

●日米安保条約の時代は「終わった」

 中国による尖閣諸島占領といった「最悪のシナリオを避けるために日本がなすべきことは何か」、日高義樹氏は、次のように言う。
 「まず日米安保条約の時代が終わったことを肝に銘じることである。次に中国のやり放題を許さないだけの軍事力を持ち、それを行使できるように憲法を改正することである。その上でアメリカと対等の軍事同盟を結ぶ。日本には『アメリカという強い味方がある』ことを中国にいつも認識させておくためである」と。
 氏の主張は、私の意見とほぼ一致する。その実行を欠いて、わが国の平和と安全を守る道はない。外交による努力は、国防の整備に裏付けられて始めて有効なものとなる。

 日高氏の論のうち、「日米安保条約の時代が終わった」という点には、説明が要るだろう。日高氏は、大要次のように述べている。アメリカは、現在世界的なトランスフォーメイション(軍隊の配置転換)を行っている。その動きを見れば、アメリカは軍事的には孤立主義に向かっていることがわかる。米軍をすべて米国本土に引き揚げる。必要なときはいつでも、本土から世界のどこへでも出撃させる態勢を取ることが第一と考えている。今後は、アメリカの安全が脅かされない限り、軍事行動は取らないということである。アメリカの世界戦略が大きく変わったのである。

 日高氏は言う。「アメリカにとって日本は経済的に重要な存在であることは間違いない。日本が中国にのみこまれたら困るとは思っているが、冷戦時代のように日本に何かあったらただちに駆けつける、という態勢にはない」「これまでの行きがかり上、日本が軍事的に攻撃されたり、戦闘行為にまきこまれるようなことがあればアメリカ軍を出動させるだろう。だが紛争程度であれば、たとえ日本の相手が中国であれ、動かないだろう」「日本に危険が迫っても、アメリカの安全を脅かすものでない限り、助けに駆けつけたりはしない」と。
 これが、日高氏が「日米安保条約の時代が終わった」と言う意味である。私見を付け加えれば、日米安保を無条件の前提とし、米軍を補完する自衛力を持てばよいという時代は終わった。自力の国防力を整えたうえで、アメリカと対等の軍事同盟を保持するのでなければ、アメリカによる保証はない時代に、日米関係は移行しつつある。

 アメリカの世界戦略の変化は、9・11以後のテロリズムとの戦争という従来の国家を単位とした戦争とは異なる戦いへの構えである。さらに、米中が冷戦の時代に入ったための構えである。中国は、急速に軍事力を増強し、共産主義でありながらファシズム的な思想と行動を露にしている。米中冷戦は、米中が「ショーダウン」つまり最後の対決に立ち至るような緊張をはらんでいる。
 わが国は、自力による国防力を整えないと、独立と生存を守ることが出来ない、激烈な世界に直立しているのである。

●中国は、やがて動く

 アメリカの世界戦略の変化に伴って、中国の脅威は、日本にとって一層現実的なものとなっている。中国は昨平成17年夏、94型原子力潜水艦から、アメリカがJL−2と名づけるミサイルの発射実験に成功した。これによって中国は、米国本土をも攻撃できるようになった。さらに、アメリカの第一線クラスの戦闘爆撃機に匹敵するJ10戦闘爆撃機を大量に生産している。J10はミサイルを搭載して日本列島に飛来して攻撃する能力を持つ。いまや中国はその気になりさえすれば、日本を壊滅させる軍事力を保有している。
 今のところ中国は、軍事行動には出ていない。それは、アメリカが怖いからである。だが、日本の指導層を媚中派が占めるようになったり、ポスト・ブッシュに『ショーダウン』が想定するような民主党リベラルの女性大統領が登場したりしたならば、中国が思い切った行動に出ることが予想される。幸いポスト小泉は、媚中派ではなく、自尊外交を展開する安倍晋三氏となった。2008年、平成20年のアメリカ大統領選挙は、果たしてどういう指導者を選び出すか。わが国の国益にとって、非常に注目される選挙となろう。

 中国の対日政策は、尖閣諸島だけでとまるわけがない。尖閣の略取は、東シナ海の資源が、中国のものになることを意味する。尖閣の軍事占領の次は「中国の一部」としての沖縄の返還要求が出てくるだろう。特に沖縄県民の皆さんは、ファシズム的共産主義がいいのか、自由主義的デモクラシーがいいのか、覚悟を決める必要がある。単なる米軍基地移転問題や日本の経済的負担等に、見方を狭くしてはならない。沖縄の次は九州、そして本土と、中華共産主義の手は迫ってくるに違いない。
 こういう構図の中で、『ショーダウン』の提示するシミュレーションを検討することは、日本人にとって有意義なことだと思う。(ページの頭へ

 

参考資料

・拙稿「『フランス敗れたり』に学ぶ〜中国から日本を守るために」 

 『ショーダウン』に関心を持った方は、さらに『フランス敗れたり』に関する拙稿をもとに、わが国の現状について考えていただけると幸いである。

 

 

中国の反日政策にどう対処するか

2005.4.20

 

今日(平成17年4月現在)、中国で反日行動が高揚しているが、その原因には、歴史教科書・尖閣諸島・靖国神社参拝に、国連安保理の常任理事国入り等の問題が重なっている。

中国の反日行動には、歴史教科書・尖閣諸島・靖国神社参拝に、国連安保理の常任理事国入り等の問題が重なっている。これらに共通することの一つに、日本に対する「正義と優位」を維持しようという中国指導層の意思があると思う。


 中国共産党は、マルクス=レーニン主義・毛沢東思想のもとに、抗日民族解放闘争に勝利し、人民民主主義革命を成功させたというのが、政権の大義名分である。それゆえ、毛沢東思想を骨抜きにし、社会主義的計画経済から資本主義的市場経済に実質的に転換すると、残る指導原理は反日しかない。愛国主義・反日政策は、中国共産党の政権維持・国内統制のために必須のものである。それゆえ、どうしても歴史教科書・尖閣諸島・靖国神社参拝にもの申し、国連安保理の常任理事国入りを阻止しなければならないのだろう。

 

しかし、人民の支配・愚民化のために行ってきた愛国反日教育の結果、人民の行動をだんだんコントロールしにくくなってきている。海外から批判が出て国際社会で不利益を生じたり、日本企業からの経済利益に影響が出たり、また政府より過激な大衆的な反日行動が高まると、為政者は苦しくなってくるだろう。

貧富の差が増大し、汚職や不正の横行に不公平感が高まり、各地で農民・貧民による暴動が多発しているようである。毛沢東思想に戻れば、革命のやり直しになる。反政府運動を抑えるには、さらに愛国反日を訴えるしかない。他に指導原理がないのだから。

 

シナ人の反日は近年の愛国反日教育によるのみではない。戦前からその傾向がある。台湾人の評論家・黄文雄氏は、「中国人の排日・侮日運動が日中事変の最大の原因であり、大東亜戦争にまで発展した最大の元凶ではないか」と見ている。(『大東亜共栄圏の精神』祥伝社)

戦前の日本の大陸政策の方にも、いろいろとまずい点はある。外交の稚拙、軍部の暴走、相手の民族性への理解不足等であり、おごりや甘さがあったと思う。しかし、物事は一方からの見方だけでは、全体像をとらえられない。

黄氏の引用を続けよう。「満州事変以後の日中間で生じたさまざまな事件は、むしろ中国人、ことに国民党と共産党のすすめる排日・侮日運動の加熱から引き起こされたものがほとんどである」「国民党革命軍が北伐途中、日本居留民に対して行った略奪、暴行、虐殺事件で、よく知られているのは、南京事件(1927)、漢口事件(1927)、済南事件(1928)である。中国人の虐殺はきわめて残虐で、パターンは決まっている。皮を剥ぎとり、目玉を抉りだし、鼻を切り、内蔵を抉りだし、性器を切り落とす」というものだった。

 

日中戦争の発端となった盧溝橋事件(昭和12年(1937)7月7日)は、かつて日本軍が侵略のために起こした事件だといわれていた。しかし、現在においては、中国共産党が日本軍と国民党軍の双方を罠にはめ、漁夫の利を占めようと図ったのだという謀略を行ったことを、自ら認め、成果を誇ってさえいる。

この事件に続く通州事件(7月29日)では、中国保安隊約3千名が突如、日本軍守備隊を攻撃すると同時に、日本人居留民を襲撃した事件だった。在留邦人385名のうち、女性、子供を含む224名が虐殺された。ある者は耳や鼻を削がれ、女性は陰部に棒切れを挿し込まれ、あるいは生き埋めにされ、手をワイヤーロープにしばられ、つながれ、素裸にされて池に投げ込まれた。居留民の家屋はすべて焼かれ、家財は略奪された。近年になって、通州事件は蒋介石政権下の冀東保安隊第一、第二総隊の計画的行動であることが中国側新資料によって明らかとなった。また、背後には、中国共産党の策謀があったと指摘されている。

こうした事件の連鎖の中で、日本人は憤激して大陸に深入りし、泥沼に引き込まれていった。日本もまずかったが、相手も激しく、またしたたかだったのである。

 

私は今日の中国における反日運動の拡大・激化を見るにつれ、こうした戦前の歴史を思い起こし、憂慮を禁じえない。日本人は、痛恨の過去を教訓として、この高い誇りと老練の知恵を持つシナ民族に対し、おごることも、おもねることもなく、冷静にしてかつ毅然とした態度をもって、接していく必要があると思う。

われわれ日本人は、海外でエスカレートする反日行動にたじろがずに、じっくり自分を見つめ、日本人としての精神を取り戻すべき時期と心得る。ページの頭へ

 

 

■中国の反日デモと権力闘争

2005.5.28

 

反日行動の高揚によって、中国で現政権よりさらに強硬な考えを持つグループが台頭することを、私は懸念してきた。
 平成17年5月27日の、産経新聞の3面に、目を引く記事があった。 「「軍に異変」情報 帰国指示ーー中国指導部 くすぶる権力闘争 「靖国」にすり替え」という題のものだ。

 この記事によると、呉儀副首相がドタキャンをした直前に、「人民解放軍内部で不穏な動きがあり、党指導部が非常警戒態勢に入っていたとする情報が流布されている」。首謀者は「空軍首脳の一人で副政治委員」で「故李先念に近く、江沢民前国家主席の「戦略参謀」」をしていた。「強硬派は反日デモが過激化する最中の4月上旬に対日強硬路線を求める」討論会を開催。胡主席が厳しく叱責するも、「民衆鎮圧は不満」とし、「(政府は)日本軍国主義の復活に反対すべきだ」等の要求を決議。要求が満たされなければ、胡氏の中央軍事委を交代させる署名を実施し、「必要に応じてクーデターを用いても「軍権」の差し出しを迫る」と強硬姿勢を示したという。
 産経の記事は「帰国理由を「緊急公務」から「靖国問題」にすり替えたのも、政情不安を打ち消し、同時に対日強硬姿勢をとるポーズを見せ、軍の不満を抑える意図があったと推測される」とし、「いずれにせよ、こうした情報が流布されること自体が、軍内部にくすぶる主導権争いの深刻さをうかがわせる」と記している。中国側はこの記事の内容を即座に否定したが、今回の「不穏な動き」とは、どの程度の規模のものだったのか、党指導部がどのような対応をしたのか、そのうちわかってくるだろう。

 胡錦濤主席は江沢民からその地位を引き継いだが、最初の3年間は、江沢民の院政が続いたと見られる。胡氏はようやく中央軍事委員会主席ともなり、党・政府・軍の三権を掌握したものの、権力基盤はいまだ脆弱である。

中国やソ連・北朝鮮等の対外情報収集の専門家である菅沼光弘氏によると、中国で広範に高揚した反日行動の背景には、胡錦濤と江沢民系のグループによる権力抗争があると見られる。党中央政治局常務委員会は、いまも江沢民人脈が多数を占め、軍指導部もほとんどは江沢民が引き上げた連中である。上海など中南海における胡氏の立場は、まだ安定しているとはいえない。
 かつてケ小平の跡を継いだ江沢民は、「歴史認識」や「靖国問題」で日本を攻撃する、愛国反日主義の政策をとった。これは、日本の協力の下に経済の改革開放を進めていこうというケ小平の路線からの変更だった。「上海マフィア」と呼ばれる江一派は、裏で英米資本やユダヤ資本とつながっていると見られる。江政権の汚職・腐敗が進み、国内に不信が高まったため、清廉さと実務能力で定評のあった胡錦濤に政権を渡さざるを得なくなったと菅沼氏は見ている。

 胡錦濤は、江沢民と異なり、ケ小平の改革開放路線を継承し、日本重視路線をとる姿勢を見せた。胡政権は、当初、対外政策として「平和台頭論」を打ち出した。国連重視・対米宥和・近隣諸国との友好によって、平和的に中国を発展させるという国家戦略である。日本に対しても、「新思考外交」といって江沢民の狭隘な愛国主義を批判し、新しい日中関係を築いていこうという外交政策を打ち出した。ところが、江一派の嫌がらせに合い、まもなく「平和台頭論」「新思考外交」は公式の発言からは姿を消した。菅沼氏によると、そこには、おそらく江一派の何らかの動きがあった。そして、いま中国国内における路線闘争、つまり権力抗争が反日という形で現れていると見られる。

 こうした観測のある中で、このたび産経新聞が伝えた人民解放軍内部で不穏な動きがあったという記事は、注目すべきニュースだと思う。

産経は、6月27日の記事にて、人民解放軍で不穏な動きをした首謀者とは、劉亜州空軍中将であることを明らかにした。劉氏は、故李先念元国家主席の娘婿。中国空軍の戦略理論家で、空軍の副政治委員。江沢民政権以来、軍や政権の国際戦略に影響力を及ぼしており、胡錦涛政権にも影響力を持つと伝えられる。若手将校のリーダーとして声望も高いようである。
 劉氏の対日政策は当然、胡政権よりも強硬な路線である。対日戦時賠償請求の復活や、日本を「仮想敵」にして国力を増強し、国民の団結力を高めることを主張している。劉氏らは、中国政府が反日デモの抑圧に転じ、対日関係の修復を行ったことに強い不満を持っているようである。
 劉氏は、米国での留学・研修経験があり、一定の民主的な考えを持っているらしい。氏は、中国国内の腐敗や所得格差の拡大などの矛盾が深刻化し、総合国力で先進国との差が開く現状に危機感を示し、国際関係でも自由主義国に包囲され、受身に立たされているという認識を持つ。そして、一党独裁制の矛盾と限界を指摘し、軍主導によって民主的政治制度を確立する必要を強調し、軍が民主化と政治改革を主導することを主張していると伝えられる。
 劉氏の主張に対し、中国の知識人の間は、軍内に政治改革要求が波及したと肯定的な意見があり、民主化や体制変革に軍人が貢献した海外の例を挙げて、過渡的な政治手法と指示する知識人がいるという。逆に軍事政権の下で民主化はできないという批判や、軍が政治に介入を深める危険性を警告も出ているようである。

 

胡錦濤が、短期的また長期的にどのような対日外交をしてくるか、まだ私にはよくわからない。専門家にもいろいろな意見があるようだ。いずれにせよ権力基盤が確立されないと、独自のものは強く打ち出せないだろう。ただし、それが従来より、日本に対して柔軟なものになるという安易な期待はできない。
 中国には、共産党と人民解放軍という二つの巨大組織があり、党が全体を領導しているものの、為政者にとって軍の掌握は政治生命にかかわる。仮に胡錦涛氏が軍の掌握を確立できない場合はどうか。世界の歴史が示しているように、軍人が政治に関与するときは、民族主義的・膨脹主義的・好戦的な政策が打ち出されることが多い。近年の中国の「社会帝国主義」的で反日愛国主義的な姿勢がより強まり、指導部内に従来以上に排外主義的・武断的な考えのグループの台頭を許すおそれがある。また中国の将来の世代は、現在よりさらに右傾化・過激化する可能性もある。
 私たち日本人は、こうした厳しい国際環境に対応するために、日本人本来の団結力を高めていかなければならないと思う。(1)
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(1)現代中国をどう見るかについては、以下の拙稿をご参照下さい。

現代中国をどう見るか〜ファシズム的共産主義の脅威
参考資料
・菅沼光弘氏著「反日デモの背景には中国内部の権力抗争がある」(「月刊日本」平成17年6月号)

 

 

■中国「反国家分裂法」は他人事ではない

2005.4.20

 

平成17年3月、中国で「反国家分裂法」が制定された。同法は台湾が独立に動けば非平和的手段、すなわち武力を行使するとしている。台湾進攻に自国内の法的根拠を与えるものだ。まずは台湾の独立勢力に圧力をかけ、統一派を後押しし戦わずして統一を勝ち取ろうという作戦だろうが、いざとなったら中国共産党政権は武力を行使するだろう。

 

「反国家分裂法」には、20世紀前半の世界を覆った帝国主義ないしファシズムの発想に近いものがある。台湾は民主的な総統や議会を持ち、実質的に独立国として機能している。なにより台湾人の多数は「統一」を望んでいない。そもそも歴史上、中国が台湾を領有したことは一度もない。日清戦争後に日本に割譲され、清朝崩壊後は大陸から中華民国の蒋介石亡命政権が入り込んで、今日に至っている。それなのに中国が台湾を自国領だと主張することには、無理がある。領土拡張・資源確保の野心が感じられるのだ。

 

日本にとっても、「反国家分裂法」は人ごとではない。中国は、尖閣諸島(中国名は釣魚島)は「中国の不可分の領土である台湾省の一部」であると主張している。江沢民に代わって権力を掌中にした胡錦濤は、江沢民の愛国主義を継承したようだ。愛国主義とは、反日政策にほかならない。中国の民衆には、日本が国連安保理の常任理事国となることに反対し、反日感情が沸騰している。「反国家分裂法」の矛先は、やがて尖閣諸島に向かってくるだろう。

中国と台湾が武力でぶつかり合えば、東シナ海が戦場になる。タンカーなどの海上輸送に影響が出るだろう。仮に台湾が独立を宣言し、これに中国が武力を行使して、国際社会がそれを黙認したならば、世界の秩序はびん乱する。そして、石油と食糧をめぐる新たな資源争奪戦が繰り広げられ、修羅場のような世界が再現されかねない。

 

日本にとっての中国・台湾問題は、わが国自体の存立に関わる問題である。また、21世紀の世界を道義に基づく平和の世界となし得るかどうかが、かかっている問題だと思う。

日本は、二つの21世紀の大国の間に位置するという不変の事実がある。
 中国とアメリカが決定的に違うのは、アメリカは現在、日本の同盟国であることである。従属的な同盟国で終わるか、対等的な同盟国に変わるか、それは日本国民の意思次第だと思う。しかし、中国の場合は、明らかに相手は仮想敵国としている。安易な「同種同文」「一衣帯水」の思い込みは通用しない。
 日本人が精神的にしっかりしていけば、米中の間で存在感を発揮し、太平洋を平和の海に導くことができる。逆の場合は、どちらかに飲み込まれるか、分割支配される。そういう位置関係にあることを自覚して、日本の運命を切り開く必要があると思う。(1)

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(1)現代中国をどう見るかについては、以下の拙稿をご参照下さい。

現代中国をどう見るか〜ファシズム的共産主義の脅威

 

 

■中国偏重からインドへのシフト

2005.6.21

 

 近年インドの経済成長は目覚しく、昨年の第4四半期のGDP成長率は、中国を抜いて10.4%となった。人口も、2035年には中国を上回ると見られている。国連安保理の理事国の候補の一角に上がっているだけの裏づけがあるのだ。

 中国との関係は程ほどにし、インドとの関係を深めていくほうがよいという人が増えている。私も中国からインドに重点をシフトしたほうがよいと思う。そうは言っても、多くの日本人にはピンとこないだろう。極貧の国、不衛生の国というイメージが強いからだろう。しかし、そのまた昔には、唐(から)・天竺(てんじく)といわれ、インドはシナより上だった。


 なによりインドは世界でも最も親日的な国の一つである。日本人は、インド独立の英雄チャンドラ・ボースらを支援し、大東亜戦争のときにはF機関を通じて、民族独立運動を育て、インパール作戦では、インドのために血を流した。インド人は今も日本のお陰で独立が早まったと感謝している。インドの国家指導者は靖国神社に参拝している。戦後、首相となったネールは、東京裁判のインド代表判事にパール博士を任命した。パール博士は、東京裁判の不当性を明らかにし、日本の戦犯容疑者全員の無罪を判決した。インド政府は、当時も今もパール博士の判決を支持しているという。中国とは、まったく正反対ではないか。


 中国の経済は、雲行きが怪しくなっている。なにより北京オリンピックの開催を危ぶむ声がある。メインスタジアムは建設中止となり、既存の施設を使うことに変更された。10個の競技場は半分が建設取り消しとなった。資金不足が深刻で、胡錦涛政権は引き締めにかかっているのだ。株は6年前から暴落し、低迷を続けている。沿岸都市部と内陸農村部の格差が拡大し、失業者があふれ、暴動やストが年間1万件以上起こっているらしい。石油不足・電力不足・水不足は深刻となり、沙漠化・環境汚染・大気汚染・水質汚染が進行している。中国は、既に破綻し始めているのだ。

 ピーター・ドラッガーは、「インドへの投資のほうが中国より魅力的である」と予想した。「巨大な軍と農村の余剰を都会の製造業が吸収するという社会構造の変化を中国に望むのは無理だろう」と述べ、「なによりも教育を受けたエンジニア、スペシャリストがインドに大量に育っている」と指摘している。


 ソフトウエアの開発でインドの伸長が目覚しいことは、わが国でも常識になりつつある。ソフト産業では、インドの輸出額は既に中国の2倍以上になっている。欧米企業はインドへの投資を増大しており、インドが中国に替わって「世界の工場」になりつつある。IBMがパソコン部門を中国のレノボに売却したニュースは衝撃的だったが、その一方でIBMはインドの「ダクシュ」という大手通信会社を買収し、着々とインド進出を行っているという。

 IT時代にインドが急速に発達してきたことには、十分な理由がある。インドはゼロを発見した国として有名だが、「マハーバーラタ」の時代からインド人には数理的に特異な能力がある。小学校高学年の子だと、3桁の暗算ができるのが普通というのだから、驚異的である。インドの大学進学率は、既に中国を上回っている。またインド人の公用語は英語で、概念的に高度な内容のことも英語で会話できることが、情報通信産業では非常に有利になっているようである。


 インドの経済成長は、大衆文化の発達をも生み出している。インドの映画産業は、アジア最大の規模を誇る。映画製作の中心地、ムンバイ(イギリス名ボンベイ)は、「ボリウッド」と呼ばれる。インドの「ハリウッド」という意味である。作品の質の高さでも、世界の注目を集めており、そのうちオスカーを取るだろうという声もあるらしい。

 インド人の人生観には、深遠な宇宙哲学があり、精神的な価値を重んじる。高い精神性がうかがわれる。自己主張が強くて身勝手なシナ人と違い、穏やかで親和的だ。シナ人のように即物的・拝金的でなく、インド人は物欲や金銭欲だけでは動かないと聞く。商取引でも、順法精神が見られるようだ。当然のことのように約束を破るシナ人とは異なり、まともな付き合いができると言うわけだ。


 そのうえ、中国は事実上、共産党の一党独裁の国であるが、インドはデモクラシーの国である。アジア最大の民主主義国家である。この違いは非常に大きい。また、中国に軍事的脅威を感じるわが国と、地政学的に中国を警戒するインドの提携は、両方にメリットが大きいといわれる。ペルシャ湾から南シナ海へのシーレーンの防衛は、中国にとっても重要な課題だが、インドはいざとなったらこれを抑える力を秘めているようである。こうしたインドとの提携は、わが国に有効な外交カードを増やすことになる。

 
 反日的な周辺の二、三の国のことばかり意識するのでなく、視野を広げて、日本を愛し、日本に感謝している国々との関係を深めていくべきだろう。ましてや、今世紀半ばには中国を抜くだろうといわれる大国が、そこにあるのだから。

 

関連掲示

・拙稿「インドの独立にも日本人が貢献

・拙稿「パール博士の『日本無罪論』

・拙稿「ネールは愛国者・頭山満に感謝した

・拙稿「インドへの協力・連携の拡大を〜シン首相の国会演説と日印新時代

 

 

■日米印の戦略的協力の強化を

2007.4.23

 

平成18年12月、日本はインドと共同声明を発表した。この日本とインドの連携・協力の拡大は、日本が独自に行なっていることではなく、アメリカの世界戦略と深く結びついた動きだと思う。その点について述べたい。


●アメリカの世界戦略の変化

 

昨年(平成18年)3月、ブッシュ大統領が、インドを訪問した。ブッシュは、核拡散防止条約(NPT)に加盟していないインドに、民生用の核開発分野で協力を行うという協定に合意し、「戦略的パートナーシップ」の拡大等にも合意した。その年の12月、安倍首相が、来日したインドのマンモハン・シン首相と、「戦略的パートナーシップ」を結ぶ共同声明を発表した。これは、アメリカの動きに連動した外交だと私は思う。

今年(平成19年)3月には、安倍首相は、オーストラリアのハワード首相と、安全保障を中心とする日豪共同宣言を発表した。これも当然、アメリカとの連携が基礎にある。

今月(4月)16日、わが国の海上自衛隊は、米印両海軍との間で初の3カ国による親善訓練を実施した。この防衛交流には、海軍力を増強し海洋進出を図る中国を牽制する狙いがあるだろう。当然、わが国が主導した訓練ではなく、アメリカが主導したはずである。日米印の合同訓練は、わが国が、アメリカの世界戦略の変化に応じて、外交・安全保障を展開していることの一つの現れだと思う。


 ブッシュ政権は、ここ数年、次ぎの三つに重点を置いて、外交と軍事を行なっていると思う。


(1)9・11以後のテロリズムへの対応

(2)イラクへの対応

(3)中国への対応


 アメリカが最も重視しているのは、中東政策である。石油・エネルギー政策といってもいい。アメリカは、宗教的・人脈的理由から、イスラエルを強力に支持している。同時にアメリカは、中東の石油をできるだけ有利な形で確保したいわけで、事情は複雑だ。

 そうしたなかで仕掛けたのが、イラク戦争だったが、形だけ終結はしたものの泥沼化している。米国内での政府批判が高まっている。アラブ諸国との関係は難しくなり、反米的な諸国の反発も強まっている。

アメリカは、世界情勢に対応するために、世界規模でトランスフォーメイション(軍隊の配置転換)を行っている。米軍の大半を米国本土に引き揚げ、必要なときは本土から世界各地に出撃する態勢を取るという布陣に切り換えている。

このような世界戦略の変化は、9・11以後のテロリズムとの戦争という従来の国家を単位とした戦争とは異なる戦いへの構えである。

さらに、これは、米中が冷戦の時代に入ったための構えでもある。中国は、急速に軍事力を増大し、共産主義でありながらファシズム的な思想と行動を露にしている。中国は、世界各地で資源・エネルギーの確保に躍起になり、世界規模で米中の主導権争いが行なわれている。とりわけ米中両軍が対峙しているのが、東アジアだ。台湾をめぐる緊張関係は、わが国に厳しい意思決定を迫っている。

 

●インドの重要性の増大


 こうした状況において、アメリカにとってのインドの重要性が増したのだろう。インドは、IT産業を中心に、目覚しい経済成長を続けている。今後、人口や経済力で中国を抜くと予測されている。しかも、インドは、核兵器を保有している。インドが昭和49年(1974)に核実験を行ったのは、中国に対抗するためだった。インドが核を持つと、パキスタンも核を開発した。インドもパキスタンもNPTに加盟していないから、ルール違反ではない。両国は、平成10年(1998)に核保有を公式に宣言した。

 また、インドがイランと友好関係を持っていることも、アメリカには重要なのだろう。イランは、アメリカが支持するイスラエルに対抗するために、核開発を行なっている。アメリカは、イランを押さえ込みたいのだが、イランと戦えば苦戦は必至である。対決は避けたい。インドをアメリカの側に引き寄せ、インドからイランに核技術が流出することを、防ぎたいところだろう。

それゆえ、インドは、アラブ諸国や中国との関係に重大課題を抱えるアメリカにとって、経済的にも軍事的・政治的にも、重要な存在になったのだと私は思う。

 

昨年(平成18年)3月、ブッシュ米大統領は、インドのシン首相と民生用の核開発分野で協力を行うという協定に合意した。このことは、インドを米露中英仏に加えて、6番目の核保有国として認知したことになる。核の時代に突入して以後、第2次世界大戦の戦勝国であり、かつ国連安全保障理事会の常任理事国5カ国が、核を独占する体制が確立された。アメリカは、従来、核の寡占体制を維持し、核不拡散政策を取ってきたが、インドの認知によって、この政策を転換したことを意味する。

しかも、ブッシュ大統領とシン首相は、米印間の「戦略的パートナーシップ」の拡大にも合意した。「戦略(ストラテジー)」は、もともと軍事用語だが、現在では、ある目標を達成するために立案された総合的な行動計画をいう。「パートナーシップ」は、提携・共同・協力を意味する。「パートナー」は、協力者・協調国を意味する。


 ブッシュ大統領は、平成13年には、「中国はアメリカの戦略的パートナーではない」と明言した。この度、ブッシュ大統領は、インドを「同じ価値観を共有するパートナー」と呼んだ。インドを「世界最大のデモクラシー国家」とたたえ、「世界最古のデモクラシー国家」であるアメリカとの協力関係の深化・拡大を呼びかけた。また、インドを「21世紀のアメリカの当然のパートナーである」とし、「両国はグローバルな指導国だ。われわれに達成できないことはない」と述べた。ブッシュ大統領は「今日の合意は歴史的なものだ」と成果を強調し、シン首相も「両国のパートナーシップに制限はない」と意義を語った。

米印両国は、強大化する中国に向けて、政治・経済・軍事にわたる協力関係を強化することを、アピールしたものと見られる。アメリカ側には、中国と連携を深めているロシアやイランへの牽制の意図もあるだろう。


●依存的な日本と自主的なインド


 わが国は、このようなアメリカの世界戦略の展開に応じて、インドに対し、積極的な外交を行なうことになったものと思う。結果として、わが国自体にとって、非常によい動きとなった。

わが国は、中国との経済関係が深い。その中国でトラブルが多く、そのうえ中国経済は先行きが危ぶまれている。他の国々へのシフトを進めなければならない。また、わが国は、アメリカ以上に中国から軍事的脅威を受けている。シーレーン諸国との関係を深める中国に対抗しなければ、中東からの石油を安全に確保できなくなる。こうした時、インドの存在は重要だが、日本単独でインドに接近することは出来ない。ブッシュ政権がインド重視に転換したことで、わが国は、有利な条件を手にしたと思う。


 マンモハン・シン首相は、昨年(平成18年)12月に来日した際、衆議院で演説を行なった。マスメディアはこの演説の内容を報道しなかったが、インターネット・ユーザーがネットに載せたことにより、知られるようになった。拙稿「インドへの協力・連携の拡大を〜シン首相の国会演説と日印新時代」にも掲載したシン首相の演説は、確かに日本人に感動を与えている。

ただし、インドも一筋縄でいくような国ではない。インドは、非同盟諸国の指導国として独自の外交をしてきた誇り高い国である。ロシアとは旧ソ連時代から関係が深く、最新鋭兵器を購入している。今月24日からは合同演習を行なう。また、中国との間も、一方では対抗し、一方では連携するという関係を取っている。インドは、中央アジアの共同安全保障の仕組みである上海協力機構に加盟し、中国・ロシアと同盟関係に入った。このように、インドはインドとして、自分の意思で、したたかな外交を行なっているのである。


 わが国は、この点、アメリカへの依存が強いが、アメリカは、大統領が変われば、世界戦略も変わる国である。ブッシュ大統領は、日本とともにインドを重視し、中国に対抗する政策を行なっているが、政権が交代すれば、反日親中の政策に転換するかもしれない。

仮にそうなっても、わが国は、中国に対して、歴史認識や靖国参拝等で、自主的な態度を明確にしなければならない。そうした主体的な外交のためには、有効なカードの一つとして、インドとの連携・協力を拡大していくべきである。


 去る3月13日、安倍首相は、オーストラリアのハワード首相と、日豪共同宣言を発表した。共同宣言は、国際社会とアジア太平洋地域の「自由と繁栄」に向けて、日豪両国が貢献することを表明した。

両国は、安保分野の協力と経済関係の拡大を2本柱に「包括的な戦略的関係(リレイションシップ)」の強化を目指している。この動きもまたアメリカの世界戦略に対応したものと思うが、これもアメリカの国益への奉仕ではなく、わが国の国益の実現のために生かしたいものである。

インドに対するにも、オーストラリアに対するにも、主体的な戦略をもって行動することが必要である。


●わが国は、主体的な戦略を


 共産中国が猛烈な勢いで軍拡を進め、海軍力を強化して、本格的に太平洋に乗り出そうとしている。わが国にとってはもちろん、アジア太平洋の国々にとって、大きな脅威である。

これに対し、自由とデモクラシーの価値を共有する日米印豪が、安全保障で連携・協力を強めることは、重要な動きだと思う。この国際的な協力関係を、東南アジア諸国などのアジア太平洋諸国に広げていけば、中国・北朝鮮・ロシア・イラン等の軍事行動への抑止力を高められるだろう。逆に、日米印豪の側に引き付ける力が弱ければ、中国を中心とした体制に、アジア太平洋諸国の多数がなびくだろう。その場合、インドもロシアやイランとともに、中国の側に付くかもしれない。国際関係、各国の戦略とはそういうものである。


 それゆえ、重要なのは、わが国が独自の世界戦略を構築することである。わが国にとって、アメリカは最も重要な国だ。日米同盟は、21世紀においても基軸である。だが、だからと言って、わが国がアメリカの属国・属州のごとく、政治的・金融的・軍事的に従属し続けることは、独立主権国家としての自己否定である。

早期に憲法を改正して国防を整備するととともに、主体的な戦略を立て、アジア太平洋地域に新しい集団安全保障体制を創出することが、わが国にとって、死活に関わる課題であると思う。


 最後になるが、もう一つ重要なことがある。21世紀の安全保障は、地球環境の問題を含めて考えなければならない。世界の132国が京都議定書を批准している。日本とインドは、批准している。しかし、アメリカとオーストラリアは批准していない。中国・ロシアどころか、北朝鮮さえ批准しているのに、である。

わが国は、地球規模の集団安全保障のために、「戦略的パートナー」であるアメリカとオーストラリアに対し、京都議定書の批准を求め、地球的(グローバル)な協力関係の質を高めていく役割も持っていると思う。(了)


関連掲示

    拙稿「中国の日本併合を防ぐには」

http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12a.htm
・拙稿「インドへの協力・連携の拡大を〜シン首相の国会演説と日印新時代」

http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12d.htm

 

 

日本と国連――旧敵国条項と国連の本質

2005.6.4

 

◆旧敵国条項は、ようやく削除か

 

本日(平成17年6月4日)の共同通信の配信記事によると、「国連憲章」からの「旧敵国条項」の削除がようやく実現しそうだ。
 「国際連合」とは、the United Nations の訳語である。第2次世界大戦中は、同じ英語が「連合国」と訳されていた。中国は当時から一貫して、「連合国」と訳している。ところが、わが国では戦後、しばらくしてから、これを「国際連合」に変えた。外務官僚の知恵らしい。言葉を変えたからといって、実態が変わるわけではない。
 「国連=連合国」は、第2次大戦の戦勝国が作った軍事同盟である。設立は日米戦争中から進められた。軍事同盟であるから「敵国」と戦うための同盟である。そこで、「国連憲章=連合国憲章」には、「旧敵国条項」が定められている。
 この条項は、第2次世界大戦中に連合国の敵国であった国々に対し、地域的機関などが、安全保障理事会の許可がなくとも強制行動を取り得ること等が記載されている条項である。第53条と第107条である。条文には明記されていないが、旧敵国とは、日本、ドイツ、イタリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、フィンランドの7か国を指すと考えられてきた。

 わが国は、「国連=連合国」に加入後、その一員として誠実に役割を果たし、経済復興後は、巨額の分担金を払って、組織を支えてきた。しかし、半世紀以上もの間、一貫して「旧敵国」の地位のまま、現時点でも条文の上では、そうである。「旧敵国」に対しては、他の国連加盟国は、国連安全保障理事会の許可なしに、経済的にも軍事的にも強制行動をとってよいということが、定められている。アメリカも中国も、ロシアもフランスも、いざとなれば自由に日本に攻め入ってもいいということを堂々と決め、それを半世紀以上も、そのままにしてきたのである。
 昭和45年(1970)の第25回国連総会以来、わが国は、たびたび総会などの場で、国連憲章から「旧敵国条項」を削除すべしとの立場を主張してきた。平成6年(1994)12月、ようやく総会において憲章特別委員会に対し、「旧敵国条項」の削除の検討を要請する決議が採択された。平成7年(1995)12月には、第50回総会において憲章特別委員会の検討結果を踏まえて、削除へ向けての憲章改正手続きを開始する決議が採択された。そこからもまた、長い。もう10年近く過ぎている。

 共同のニュースによると、国連総会のピン議長はこの3日、国連改革をめぐり、「旧敵国条項」の削除等を盛り込んだ「結論文書」の草案を公表した。「旧敵国条項」の削除は、本年3月にアナン事務総長が発表した国連改革のための「勧告」でも主張されていた。総会議長が加盟国の合意を得られる見通しが立ったと判断し、「結論文書」に明記したことで条項が削除される公算が大きくなったという。「結論文書」とは、加盟各国の首脳が一堂に会する、9月の国連総会特別首脳会合で協議した内容をまとめる文書で、国連改革の在り方について総括するものだという。草案は今後、特別首脳会合開催までに一部修正の可能性はあるが、旧敵国条項削除については強い反対意見は出ておらず、そのまま文書に盛り込まれる見通しだと伝えられる。
 「憲章」の改正は、総会での決議を要する。是非、順調に進捗し、次の総会では、晴れて「旧敵国」という不名誉な地位を脱却し、国際社会における名誉ある地位を得たいと思う。

 それにしても、「国連=連合国」とは、面妖な組織である。わが国のみならず、旧敵国とされていた国は、はるか前に、すべて国連加盟国となっている。「旧敵国条項」が「国連憲章=連合国憲章」上に存在することは、実態と合わなくなっていたのである。憲章第2条1項には、「加盟国の主権平等の原則」が定められている。旧戦勝国は、これをどう考えてきたのか。このような差別待遇を半世紀以上も放置してきた「国連=連合国」とは、いかにいい加減な機関かわかるというものである。
 わが国民には、国連に対して漠然とした幻想を抱いている人が多いようだ。なかには「国連中心主義」などという外交・防衛政策を打ち出している政治家までいる。しかし、上記の経緯を一つ見ても、「国連=連合国」に幻想を抱くべきでなく、偶像視すべきでないと私は思うのである。

 

◆中国の国連加盟と台湾の脱退

 

国連創設時は「中華民国」が加盟していたが、昭和46年(1971)10月に、北京政府(中華人民共和国)が台北政府にかわって代表権を認められた。

 国連はいい加減な機関だと書いたが、国連憲章では、今も安保理常任理事国は「中華民国」のままである。中共の加盟、蒋介石政府の脱退後も、「中華民国」を「中華人民共和国」と読み替えることにして、ずっと放置してきたからである。
 中共は建国後、国際社会における地位を高める努力をして存在感を増し、国連の一員と認めることが自然というふうになっていった。ド・ゴールのフランスは、アメリカに対抗して昭和39年(1964)に中共を承認し、独自の外交を展開した。
 昭和40年(1965)から文化大革命が始まると、毛沢東思想が国際的に幻想を振りまいた。中国の国連加盟を提案したのはアルバニアだが、アルバニアは当時、社会主義国内で、唯一中国を積極的に支持していた。中国はソ連に距離をおいた自主外交で、後に言われる「第三世界」の諸国に影響力を強めていったのだろう。アルバニアの提案を支持する国が段々数を増していき、それまで中国の加盟を阻止していたアメリカが、形勢を見て賛成に転じた。あくまで台湾を支持していたわが国は孤立し、アメリカに従わざるをえなくなった。かくして、中共は、昭和46年(1971)に国連に加盟を許された。この時、国連から脱退したのは、厳密には蒋介石政権であって、中華民国そのものではない。しかし、実質的に台湾は国連から追放されたに等しい。

中国の国連加盟の翌年2月、ニクソン=キッシンジャーが、日本の頭越しに、電撃的な米中国交回復を行った。昭和40年代は、共産主義陣営は、中ソが対立を強めた時代だった。世界の左翼もそのため四分五裂。中ソ国境紛争もあった。文革を潰すためにソ連が侵攻しようとしていたところ、中国が支援を求めたらしく、間に入ったアメリカがソ連を制した。これでアメリカは東側を分断させることに成功し、米中の急接近となったわけである。結果として、第3次世界大戦も避けられた。
 アメリカは、イデオロギーよりもパワー・ポリティックスで、したたかな国益追求の外交を展開した。裏切られた日本は追従するしかなく、昭和47年9月、日中国交回復と台湾との断交を選択した。独自の国防力を持たないわが国は、国家存立のために日米同盟に頼らざるを得ず、外交もまたすべて対米関係を軸とするしかなかったわけである。

◆国連中心主義の愚

 

「国連中心主義」を政策に掲げている政党があり、政治家がいる。国連での外交を重視するということならわかる。しかし、国連を「中心」にするというのであれば、国連自体に中心というものが、なければならないだろう。国連に中心はあるのか。いや、ないのである。中心のないものを中心にするというのは、どういう了見なのだろう。

 国連は、第2次世界大戦時の連合国による軍事同盟が母体となって発展したものである。「旧敵国条項」のことは、先に書いた。国連は、戦勝国を主要メンバーとする主権国家の連合体であって、主権国家の上に立つ国際機関ではない。諸国の外交の場、意見調整の場、時には陳情の場にすぎないのである。
 国連の主要な構成国は、安保理の常任理事国である。創設以来、常任理事国の5カ国(米・英・仏・露・中)は、拒否権を持つという特権的存在である。国連は決して諸国平等の組織ではない。また、5カ国のすべてが、軍事大国であり核保有国である。国連は決して戦争否定の組織ではない。
 もし、主要5カ国が一丸となって、国際社会に対して集団指導体制を取っているのであれば、曲がりなりにも、国連を地球共同体の雛型と見ることが可能かもしれない。しかし、そういう体制にはなっていない。国連は、米ソ協調を前提として創られた機関だが、大戦終結後、冷戦の開始によって、たちまち行き詰まった。国連の構想の基礎にあった、主要国の協調による強制行動という手段は、一度も実施されていない。第2次大戦後の主な戦争や紛争を見ると、朝鮮戦争は形式的には例外としても、ハンガリー動乱、チベット紛争、ベトナム戦争、プラハの春、アフガン戦争、湾岸戦争、チェチェン紛争、イラク戦争等、安保理常任理事国は、その折々に一貫性のない行動を取っている。メンバーが互いにたびたび拒否権を行使するので、それを避けるための手練手管ばかりが発達してきた。

 一体、わが国以外に、主要な先進国で、責任ある政党、有力な政治家が「国連中心主義」を打ち出しているような国があるだろうか。イギリス、フランス、ロシア、ドイツ、イタリア等、どこにもそんな国はない。欧州諸国は、ユーゴ紛争では国連決議など求めなかった。
 なかでも超大国アメリカは、創設以来、国連に対する態度を、何度も変えてきている。「国連中心主義」どころか、自国の国益にプラスになる時は積極的に利用し、プラスにならない時は無視して、独自の外交や軍事行動を大胆に行う。分担金も堂々と滞納している。
 今日、アメリカは、世界唯一の超大国の座を占めるにいたった。高度な科学技術に裏付けられたアメリカの情報力と軍事力は、他の追随を許さない。歴史上、一つの国家がこれほど圧倒的な力を持ったことはない。だから、世界の多くの国は、アメリカとどのような国家間関係を持つかということを、外交政策の根本に置いている。外交という観点から、世界に中心があるとすれば、アメリカ以外にない。各国は、それぞれアメリカへの依存と反発の関係を基軸にして、他の諸国との国際関係を組み立てていると見るべきだろう。

 戦後日本の平和は、国連が保障してくれたのではない。まして平和憲法のお陰などではない。日米安保条約によるところが大きいのである。憲法によって、国防に大きな制約を課せられているわが国は、もし第3国から侵攻を受けた場合、自力のみで防衛することは難しい。そういう法整備や国民の訓練もされていない。核兵器・生物兵器・化学兵器・情報通信攻撃のABCITへの対応は、全くできていない。いざという時に頼りになるのは、唯一の同盟国アメリカしかない。日本の安全を国連が守ってくれるわけではないのである。
 この厳粛な事実を確認すれば、国連と日米同盟の重要度の違いは、明らかである。そのことを深く認識せずして、「国連中心主義」を説くのは、国民に幻想を与え、かえって国民の生命と財産を危うくするものである。
 アメリカに頼るべきでないと考えるのであれば、憲法を改正して、国防力を強化する以外にない。条約というものは、相手の都合によって、いつ破られるかわからないものである。(日ソ中立条約を思い起こされたし) アメリカも、自国の国益に反すると国民多数が判断した場合は、安保条約など破棄するだろう。だから、いかなる場合にも対応できるよう、いま日米安保のある間に、自主防衛のできるように、法制度を改正・整備していかなければならないのである。
 この課題の遂行ができていないからこそ、戦後のわが国はアメリカへの依存を深める一方となり、「NOと言える日本」になれず、アメリカのための日本改造をゴリゴリと迫られても、「拒否できない日本」となっているのである。国家破産に立ち至るやも知れぬ財政危機も、根本は憲法の欠陥にあると私は思う。欠陥というのは、前文や第9条であり、国防の義務や緊急事態の規定のないことなど、挙げるときりがない。

 私は、とりわけ憲法第9条の規定をそのままにして、国連安保理の理事国入りをしようとしているのは、おかしなことだと思っている。まずその前に、憲法を改正して、国軍を創設し、国民が国防の義務を担い、政府は集団的自衛権を行使する体制を整えることが先であろう。そして、アメリカの外交を補助するアシスタントとして加わるのではなく、自国の国益を第一として、国連という場を活用する外交を展開できるような国家戦略を練ることが先決だと思うのである。

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■国連安保理常任理事国入りより憲法改正が先

2005.10.1

 

わが国の政府・外務省は、国連安保理の常任理事国入りを目指して、外交努力を行っている。わが国は、「C4」と呼ばれる国々、日本、ドイツ、インド、ブラジルと共同で常任理事国の拡大を提案した。だが、アメリカの態度がもう一つ一貫しないうえに、わが国には中国・韓国が激しく反対し、ドイツ等の提案国も利害関係のある国々から反対を受けている。このままでは、外交努力は徒労に終わりそうだ。

私はそもそも現在のわが国が安保理常任理事国入りを求めていることに、不賛成である。わが国自身の条件が整っていないと思うからである。常任理事国入りより憲法の改正が先であり、国連においては敵国条項の削除と分担金の比率是正から行うべきと思う。

 

◆安保理入りより憲法改正が先


 まずこのたび(平成17年9月)開かれた国連総会について触れたい。今回の特別首脳会合において「成果文書」案が採択された。その中に安保理の早期改革への支持が記述されたものの、どういう改革をするのかは、未だ具体的でない。

 9月17日から18日の共同通信社のニュースは、以下のように伝えている。いろいろ重要な内容があるが、日本関連のことに絞る。


 国連総会特別首脳会合は16日夜(日本時間17日午前)、幅広い国連改革を盛り込んだ「成果文書」案を正式採択した。過去最大級の約190カ国の首脳らが参加、創設60年を迎えた国連の「再生」を目指した会合はテロ対策などで国際社会の結束をアピールして閉幕した。

 「成果文書」は、最大の焦点である安全保障理事会改革について、「早期改革」に支持を表明しつつも、常任理事国入りを目指す日本など4カ国(G4)が求める「年内決着」の期限を明記しななった。また、「成果文書」は、第2次世界大戦の敗戦国である日本などを現在も国連憲章で「敵国」と規定している「旧敵国条項」について、「『敵国』への言及の削除を決意する」と明記はしたが、「決意」は「決定」とは違う。

 今後、削除を望む国が現行の国連憲章を改正する決議案を総会に提出、国連加盟国の3分の2(128カ国)以上の支持を得て採択、批准されて初めて削除が実現する。

 

 わが国の政府は、安全保障理事会の常任理事国入りを目指しており、安保理改革と併せて憲章改正を必要とする旧敵国条項の削除を求める方針である。

 町村信孝外相は17日夜(日本時間18日午前)、国連総会で「新しい国連と日本」と題した演説を行った。外相は、安全保障理事会改革について「国連全体の刷新を達成するための鍵」と重要性を指摘、「わが国は改革実現のため最大限の努力を続ける。今次総会で早期に決定に至るよう求める」と、1年以内の安保理改革実現と日本の常任理事国入りに向けた不変の決意を表明したという。

 しかし、安保理改革は難航しており、敵国条項も、すぐ削除が実現する状況にはない。

 報道の内容は大要、以上である。


 冒頭に私は現在のわが国が安保理常任国入りを求めていることに不賛成だと書いた。次にその理由を述べたい。

 国連は、基本的に軍事同盟である。第2次世界大戦期の連合国が母体になって、今日の国連に発展した。英語では、the United Nations と書く。戦前も戦後も変わらない。「連合国=国連」である。ところが、わが国は、いわゆる「戦争放棄」を定めた憲法を保持している。前文からその主旨が盛られているが、具体的な条項としては、第9条に以下のとおり定めている。


 第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


 以上は一般に「戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認」と要約される。この条文にいう「戦争」とは侵攻戦争のことであり自衛戦争は含まない、それゆえ自衛のための「戦力」を持つことを妨げないと解釈して、わが国は自衛隊を創設した。自衛権は自然権として所有するというわけである。

 自衛権については、国連は当然、自然権と認めている。かつまた個別的自衛権も集団的自衛権もともに認めている。しかし、わが国の政府は、集団的自衛権は「権利はあるが行使できない」という特異な見解を取っている。理由は、憲法の規定によってだという。その一方、日米安保は「憲法の範囲内で」と明記されているので違憲ではないとしている。憲法の条文のどこにそのような定めがあるのだろうか。いかにも無理がある。


 国連憲章も日米安全保障条約も、国際法にあたる。憲法は、国内法である。国際法は国内法に優先するという原則がある。そして、憲法第98条2項には、次のように規定されている。


 第98条 (略)

 2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。


 この規定に従うならば、わが国は、国連憲章を「誠実に遵守」しなければならない。

 「連合国=国連」は集団安全保障機構であり、加盟国に共同防衛の義務を課している。加盟国は相互の安全保障のために軍事力を提供する義務がある。それゆえ、わが国は集団的自衛権の行使として、この義務を誠実に果たさねばならない。政府の集団的自衛権は「権利はあるが行使できない」という見解は、支離滅裂である。


 わが国は国連協力法を制定し、PKOへの参加は合憲であることになった。しかし、PKFや、さらに国連憲章第43条に規定される国連軍への兵力の提供ということについては、第9条に抵触するというのが多数の見解である。つまり、国連に加盟していながら、加盟国としての当然の義務を果たせない状態である。


 こうした矛盾に満ちた憲法の規定と政府見解をそのままにして、国連の安保理常任理事国入りしようというのは、無理に無理を重ねるものである。

 もしかすると、わが国の政治や官僚は、国連安保理入りを果たすことで、国民の意識を変え、その上で憲法を改正しようという方法を考えているのかもしれない。そうだとすると、これは正当な方法ではない。国民を騙し、国際社会を欺くものとなる。


 国連安保理の常任理事国の地位を得たいのであれば、まずわが国の憲法を改正することが先決問題である。憲法を改正し、国家安全保障の整備をして初めて、常任理事国入りを求める条件が整う。このことを日本人は、よく確認すべきだと思う。

 

改正についての私見を述べると、侵攻戦争の放棄と自衛戦争の肯定の主旨を明記する。自衛のために国軍を持ち、個別的・集団的自衛権を行使することを定める。交戦権否認を削除する。内閣総理大臣が国軍の指揮権を持つ。国際的な安全保障のための国際貢献を行うことも盛り込む。国民の義務として、国を守る義務を明記する。非常事態条項を定める。このようにすべきと思う。このほか、防衛庁を国家安全保障省に改めて機能を強化すること、また防衛関連法規の整備も必要と思う。また、これに関連して、前文は全面的に新しいものを書き下ろさねばならない。前文が第9条だけでなく、憲法全体をしばってきたからである。

具体案の小差はあれども、まず矛盾に満ちた憲法の改正を日本人自らが実行した上で、安保理常任理事国入りを求めるのが、本筋と思う。

 

◆まず敵国条項と分担金

 

次に、旧敵国条項と分担金の比率是正について述べたい。

わが国が国連で最初に実現すべきは、国連憲章から「旧敵国条項」を削除することである。昭和45年(1970)の第25回国連総会以来、わが国はたびたび総会などの場で、「旧敵国条項」を削除すべしと主張してきたが、35年たっても未だに実現していない。今回の国連の「成果文書」は、本条項の削除を「決意する」とまでは記載した。ただし、「決定する」ではない。また、いつまでにという期限は定められていない。

「旧敵国条項」は、第2次世界大戦中に連合国の敵国であった国々について定めたものである。わが国は、国連に加盟した後も、その「連合国=国連」に対する旧敵国という地位のままである。国連憲章には明記されていないが、他にドイツ、イタリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、フィンランドの計7か国を指すと考えられている。


 「旧敵国条項」とは、これらの国々に対して、他の加盟国は、国連安全保障理事会の許可なしに、経済的・軍事的に強制行動を取り得ること等を記載している条項である。第53条と第107条がそれである。つまり、アメリカも中国も他の国でも、いざとなれば自由に日本に攻め入っていいと決めているのである。

しかし、旧敵国とされていた国はすべて国連加盟国となり、「旧敵国条項」が存在することは実態と合わなくなって久しい。このような条文と実態の乖離を、ずっと放置してきたのが、「連合国=国連」という組織なのである。


 もう一つ、国連費用の分担金の問題がある。9月19日の産経新聞によると、町村外相は、国連総会の演説の中で、米国に次ぎ2番目に高い日本の国連分担金比率に言及した。日本の常任理事国入りが実現しない場合、負担率の削減を求める可能性を示唆したという。外相は、今後の分担金見直し協議で、「より公平かつ公正な分担率」を目指し、「加盟国の地位と責任が分担率に適切に考慮されるように最大限の努力を行う」と強調したとのことである。

日本の負担率は現在、米国の22%に次ぐ、約19.2%である。これは米国以外の他の常任理事国、イギリス、フランス、ロシア、中国4カ国の合計15.3%を上回っている。

負担率第一位のアメリカは、分担金をまともに支払っていない。連邦議会が、現在の国連に不満を持ち、アメリカの国益にならないとして不払いを決めているからである。税金にたとえれば、堂々たる滞納である。納税義務違反である。町村外相が分担金の「より公平かつ公正な分担率」をめざし、「加盟国の地位と責任が分担率に適切に考慮されるように最大限の努力を行う」と言うのであれば、アメリカにこそ責任ある態度を求めるべきである。


 また、中国の負担率は、約2.1%に過ぎない。日本の10分の1しか金を出していない。そういう国がわが国の常任理事国入りに、激しく反対している。台湾を併合し、東アジアでの覇権確立を目指す中国にとって、同一地域に常任理事国がもう一つ誕生することは、軍事行動の妨げになる。石油の輸入国に転じ、資源・エネルギーの獲得に躍起になっている中国は、海洋への進出を図っている。それが、日本の常任理事国入りを阻止しようとする最大の理由だろう。本年4月に中国各地で行われた反日デモは、日本の加入反対を表明する国際社会へのデモンストレーションでもあった。

 

現在の国連に不満を持つ人々の中には、わが国は国連を脱退すべしという極論もある。確かにいろいろ問題の多い国連ではあるが、脱退論はよくない。一国が国際社会で生き延びるためには、孤立しないということが重要である。かつてわが国は、昭和7年の満州国建設がきっかけで、翌8年に国際連盟を脱退し、国際的孤立化の道に踏み出した。連盟では満州国について非難は受けたものの満州国の放棄や除名を決議されたわけでもないのに、自分から連盟を脱退してしまったのである。このことでわが国は進路を大きく誤った。孤立した挙句、あろうことかナチスと軍事同盟を結んで、英米を敵に回してしまった。こういう歴史を二度と繰り返してはならない。

現代世界では、約190カ国の国または地域的等の団体が国連に加盟している。経済的にも世界の単一市場化が進んでいる。わが国は石油も資源も食糧も海外に依存している。この世界で孤立することは、大きなリスクを負う。

わが国は国連の一員という地位を保ちながら、その中で言うべきことを言って発言力を強め、自国の国益と国際社会の公益を追及する外交に努力すべきと思う。


 まとめとして、私はわが国が安保理常任理事国入りを目指すのであれば、まず自国においては憲法の改正、国連に対しては旧敵国条項削除の実現、分担金の負担率是正をしたうえで進めるのが正道だと私は考える。

 次に、日本が国際的な安全保障で積極的な役割を担うには、明確な国家目標を立てることが不可欠だと思う。これから国際社会において、どういう国であろうとするのか。その目標である。

 私は、第2次世界大戦後の戦勝国を中心とした体制を是正し、大国の自己中心的な行動を抑えて国際協調を図り、世界唯一の被爆国として完全核廃絶を押し進め、これまでの主義・民族・宗教等の対立を超えた国際平和の実現に貢献することを、わが国の国家目標とすべきと思う。日本古来の「和」の精神、日本精神を発揮して、地球に共存共栄の指導原理を確立し、人類文明の維持・発展に寄与することが、日本人に課せられた重大な役割だと考える。

 こうした国家目標を打ち立てるためにも、自らの手で憲法を作り上げることが必要だと思う。

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