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■慰安婦問題は、虚偽と誤解に満ちている

2007.7.6

 

<目次>

第1章 「従軍慰安婦」の強制連行説は、どうつくられたか

第2章 うその証言が事実として流布

第3章 朝日新聞の歪曲報道に宮沢首相が謝罪

第4章 日本を貶めた河野談話

第5章 中学教科書に掲載され、論争起こる

第6章 性奴隷説が登場し、国際的に波及
第7章 アメリカに広がる深刻な誤解

第8章 事実を伝え、名誉を守る努力が始まった

第9章 米下院外交委は対日非難決議案を採択

むすび 日本の興亡のかかる課題として取り組もう

 

 

 戦前のわが国は、政府または軍が直接的かつ書式的に慰安婦を強制連行してはおらず、また性奴隷にもしていない。戦後処理は政府間ですべて終了しており、国家として個人補償すべきものではない。しかし、慰安婦を巡る問題が、我が国の教育をゆるがし、青少年の心を傷つけ、さらに国際社会での我が国の名誉を貶めている。

 この問題に決着をつけるために、旧日本軍の慰安婦は、どのようにして問題化され、また海外にまで誤解が広がったのか。その経緯をたどってみたい。

 

私が、インターネット上で意見掲示をするようになったのは、慰安婦問題がきっかけである。平成8年6月、翌年から中学教科書に「従軍慰安婦の強制連行」が掲載されるという報道に触れ、黙っていられなくなった。
 当時私は幼い子供二人の父親として、自分の子供達が中学に上がるころにも、慰安婦のことを吹き込まれるような事態は、絶対に防がなければならないと思ったのである。
 産経新聞に「教科書が教えない歴史」の連載がされていたときで、翌9年1月に「新しい歴史教科書をつくる会」が設立され、歴史教育の偏向を正そうという運動に多くの有識者・教育者が結集し、大きなうねりが起こっていった。そうした先達・先輩の後について、私も勉強かたがたささやかな啓蒙活動を始め、今日に至っている。
 「従軍慰安婦」は、中学教科書からは消えた。私の個人的な願いは一部果された。しかし、高校の教科書には、依然として掲載されている。日本の青少年は、ほとんど根拠のないことを極度に誇張する教え方により、自尊心や誇りを傷つけられているのである。また、わが国では虚偽の事実として否定されたことが、国連やアメリカ議会では、対日非難の材料に使われている。わが国の政府・国民がこうした事態を許していることが残念でならない。
 この問題に決着をつけなければ、日本を再建し、青少年が誇りの持てる日本を築くことはできないと私は思っている。

 

 

第1章 「従軍慰安婦」の強制連行説は、どうつくられたか


●「従軍慰安婦」という用語は不適切

 「従軍慰安婦」という言葉は、あたかも軍が慰安婦を直接集め、慰安所を直営していたかのように錯覚させる言葉である。千田夏光氏が著書『従軍慰安婦』(双葉社、昭和48年、1973)で使ったのが初めだった。
 実際は、旧日本軍の慰安婦は、軍に所属していたのではなく、「従軍」慰安婦といえるものは存在しなかった。「従軍看護婦」とか「従軍記者」のようなものとして、「従軍慰安婦」という呼び方はなかったのである。

 しかし、「従軍慰安婦」には、インパクトがあった。いつしか多用されるようになり、平成8年からは、すべての中学教科書にまで「従軍慰安婦」に関する記述が掲載された。これには、激しい論争が起こった。事実と違うことが確認され、中学の教科書からは消滅した。だが、高校の歴史教科書には、依然として掲載されている。韓国は、国定教科書に掲載している。歴史家の中にも、秦郁彦氏らのように「従軍慰安婦」という用語を使っている人がいる。混乱を招くので、早急に訂正を求めたい。
 「軍慰安婦」あるいは「戦場慰安婦」と言うべきという意見がある。私は、これもややこしいので、旧日本軍の慰安婦、軍慰安所の慰安婦などと呼ぶことにしたい。

●朝鮮人強制連行説が根底に

 旧日本軍の慰安婦は、最初は強制連行として、問題にされた。「慰安婦の強制連行」という虚説は、在日韓国人・朝鮮人の強制連行という虚偽の上に作られたものである。
 在日韓国人・朝鮮人を、まとめて在日コリアンと呼ぶことにする。在日コリアンは強制連行によって日本に連れてこられたという主張がある。この説は、朴慶植著『朝鮮人強制連行』(未来社)に始まる。昭和40年(1965)に出た本だ。朴氏は、約60万人の在日コリアンは、日本統治下の朝鮮半島から奴隷狩りのようにして日本列島に連行されてきたか、またはその子孫だという説を唱えた。
 この説は間違っている。わが国では、昭和14年(1939)に国民徴用令が発令された。大東亜戦争の末期には、朝鮮にも適用されるようになった。朝鮮半島から日本に徴用された者がいた。彼らも日本国民だった。だから、法令に基づく徴用を、強制連行という言葉で表現するのは、間違いである。また徴用で来た朝鮮系日本人以外に、戦前、日本本土で生活をしていた朝鮮人は、よりよい仕事、豊かな生活を求めて、貧しい朝鮮から渡来した人たちが、ほとんどだった。
 この一方、朝鮮人で志願して日本軍の軍人になった者も多くいた。希望者が多く、何十倍もの応募があった。志願して特攻で散華した朝鮮人もいた。朝鮮名のまま陸軍中将になった洪思翔という朝鮮人もいた。戦後、韓国大統領となった朴正煕も朝鮮名の帝国軍人だった。「創氏改名」が強制でなかった証拠でもある。

 敗戦後、マッカーサーは、朝鮮人を半島に帰らせるために、無料で船を出した。当時、日本には約240万人の朝鮮人が居住していた。翌年3月までに約175万人が帰国した。ところが、その時、日本に残った者がいた。在日コリアンの多くは、そういう人たちだ。
 だから、在日1世は、強制連行などとは言わなかった。日本で生活することを自分の意思で選択したからである。しかし、その子供の世代が強制連行という虚説を唱えるようになった。子供だから自分たちが実際に経験したわけではないことを書いた。そこに思想やイデオロギーが込められた。
 強制連行説は、鄭大均氏の『在日・強制連行の神話』(文春新書)によって論破されている。しかし、強制連行という虚説は、旧日本軍の慰安婦の存在と結びついたことによって、生き延びている。むしろ政治的な効果を強め、反日運動の手段に使われている。

●「従軍慰安婦」と強制連行説が結びつく

 慰安婦について、千田夏光氏が『従軍慰安婦』(双葉社)を出したのは、昭和48年(1973)だった。千田氏の本は、三一書房の新書に入って読みつがれ、講談社の文庫にもなった。
 千田氏は、著書に、関東軍参謀・故原善四郎の証言を書いた。しかし、後年、自分が原参謀に面会していなのに、別の書物を元にあたかも自分が面会したかのようなうそを書いたと認めた。もとの書物にも、原自身の証言は出ていない。つくり話だったことが明らかになっている。こういういい加減な本が、人々の歴史認識を捻じ曲げることになった。

 昭和51年(1976)には、慰安婦に関し、世界に多大な誤解を与える本が出た。金一勉著『天皇の軍隊と朝鮮人慰安婦』(三一書房)である。
 この本は、日本が「朝鮮民族抹殺政策」を取り、「朝鮮民族の早期滅亡を企図」して、「梅毒政策・阿片吸引助長政策・遊郭発展政策」を行ったと主張した。実際は、日本が朝鮮を統治した時代に、朝鮮の経済は飛躍的に発展し、人口は2倍に増えたのだから、噴飯ものの主張である。トンでも本といったほうがよいだろう。しかし、こういう本が世界に誤解を広げている。国連人権委員会のラディカ・クマラスワミ女史(スリランカの法律家)による報告書には、この本の内容が反映しているからである。

 千田氏や金氏の本は、旧日本軍の慰安婦について誤解を与える内容ではあったが、刊行当時は、それらを読んで影響を受けた人は、ごく一部だった。しかし、昭和50年代になると、朝鮮人強制連行説が広がり、事実関係が調査・確認されないまま、在日コリアンは、戦前日本に強制連行されてきた被害者だというイメージが普及した。1980年代には、教科書にまで「朝鮮人の強制連行」が歴史的事実であるかのように書き込まれるようになった。そして、朝鮮人強制連行説を基盤に、「従軍慰安婦」も「強制連行」されたという説が唱えられるようになった。

 「従軍慰安婦」なるものは存在しない。朝鮮人の「強制連行」もなかった。だから、「従軍慰安婦の強制連行」は、虚構の上に虚構を重ねたものだったのである。

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第2章 うその証言が事実として流布

 

●自分がやったという吉田清治

 「従軍慰安婦の強制連行」は、虚構の上に虚構を重ねたものだった。ところが、その「強制連行」を、自分はやったと証言する者が現れた。それが、吉田清治という人物である。
 吉田氏は「戦争中、軍の命令で自分が韓国の済州島に出かけ、多数の女性を従軍慰安婦にするために狩り立てた」と「自白」して、謝罪した。この証言を朝日新聞が、昭和57年(1982)9月2日付で報道した。
 翌58年(1983)、吉田証言は本になった。『私の戦争犯罪ーー朝鮮人強制連行』(三一書房)である。この本は、わが国の社会に衝撃を与えた。日本人が自分がやったと言うのだから、普通の人は、事実だから自ら明らかにしたのだろうと思う。その姿勢に誠実さや正直さを感じ、言うとおりに違いないと思ってしまう。

 吉田証言は、「従軍慰安婦」に関する多くの書物に紹介されており、韓国もこの書を基本的な文献として、日本に抗議してきた。さらに、平成8年(1996)4月の国連人権委員会でのクマラスワミ報告にも引用されるに至った。また、平成18年に出された米国議会の慰安婦問題調査報告書も、吉田証言を基本資料としている。

●吉田証言は虚説と確認

 それほどまでの影響を与えている吉田の書が、実は作り話だった。
 吉田は、昭和18年(1943)5月、韓国の済州島で「従軍慰安婦」として朝鮮人女性205人を、自分たちが、強制連行した、と書いている。その真偽を確認するため、歴史家の秦郁彦氏は、平成4年(1992)3月、済州島を現地調査した。秦氏は、慰安婦狩りが行われたとされる城山里の老人クラブで、貝ボタン工場の元組合員など5人の老人と話し合った。それによって、吉田証言が虚構らしいことを確認した。200人以上が、力づくでさらわれっていったと言うのに、誰もそんなことを知らないというのである。(秦郁彦著『昭和史のなぞを追う』(文春文庫)〜第41章「従軍慰安婦たちの春秋」)

 秦氏の反論に対して、吉田氏から反論はなかった。真実を語っていたのであれば、堂々と反論できるだろう。それどころか、吉田氏は、その後、行方をくらましたままである。吉田氏は、真っ赤な嘘をまことしやかに語っていたのである。こういう人物は、詐話師というにふさわしい。

 慰安婦問題の焦点は、強制連行の有無である。強制連行を主張する資料は、千田夏光氏と吉田清治氏の著書だった。その両方とも、つくり話だった。
 ここで注目すべきは、吉田氏の本の巻頭に、朴慶植氏が推薦の辞を寄せていることである。あの「朝鮮人の強制連行」という虚説を唱えた人間と、「従軍慰安婦の強制連行」を捏造した人間が、しっかりつながっているのである。
 私は、背後に、反日的な組織または国家の存在を想像する。日本人や在日コリアンの間に反日的な思想・感情を持つ者を増殖させ、それを目的のために利用する。目的のためには手段を選ばず、捏造やデマを使いまくるのは、共産主義者が得意とするところでもある。

 実は、秦氏の調査の前年、平成元年(1989)8月14日付の済州新聞が、吉田証言は、虚偽だと報道していた。同紙の女性記者が、詳細な現地調査を行って記事を書いた。記事は、「島民たちは『でたらめだ』と一蹴しており、この著述の信憑性に対して強く疑問を投げかけている。城山里の住民のチョン・オク・タンさん(85歳女性)は『250余世帯しかないこの村で15人も徴用したとすれば大事件だが、当時そんなことはなかった』と断言した」と伝えている。郷土史家も「自分も追跡調査したが、事実ではない」とこれを否定した。こうした証言を基に、その女性記者は吉田証言を全面的に否定する記事を書いたのである。

●虚説が「事実」として流布

 しかし、吉田証言は、昭和50年代後半から平成初年代(1980年代から90年代はじめ)においては、強烈な説得力をもって、日本人の理性を麻痺させ、自責・自虐の念を掻き立てていた。
 平成2年(1990)6月6日、参議院の予算委員会で日本社会党(当時)の本岡昭次議員が質問をした。本岡議員は、「強制連行の中に従軍慰安婦という形で連行されたという事実もあるんですが、そのとおりですか」と質問した。これが日本において慰安婦問題が公的な場に持ち出された最初とされる。
 本岡氏が「事実」と発言したのは、吉田清治の著書『私の戦争犯罪ーー朝鮮人強制連行』の記述を「事実」としたものである。「事実」と発言したのは、個人的な思い込みだったのか、それとも組織的かつ戦術的な使い方だったのか。日本社会党が、北朝鮮ときわめて密接な関係にあったことを考えると、組織的かつ戦術的な使い方だっただろうと私は思う。

 

●高校教科書に「従軍慰安婦」が掲載

 平成2年(1990)から教科書の新検定制度が実施され、高校教科書が自虐的な内容を強めた。その内容の一つとして、「従軍慰安婦」に関する記述が載った。
 教科書の記述内容の変化は、昭和57年(1982)の歴史教科書「書き換え」誤報事件がきっかけである。「書き換え」は誤報と明らかになったのに、鈴木善幸内閣の宮沢喜一官房長官は、「政府の責任において(教科書の記述)を是正する」「今後の教科書検定に際しては
‥‥検定基準を改め、前記の趣旨(近隣諸国との友好、親善)が十分実現するように配慮する」という談話を発表した。首相の訪中を控えている状況にかんがみて行った、安易な外交的判断だった。
 それにより、昭和57年11月、検定基準に「近隣諸国条項」が加えられた。「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていること」という条文である。そして「近隣諸国条項」ができた後、高校教科書に盛られた内容の一つが、「従軍慰安婦」だったのである。

 「従軍慰安婦」は、戦前にはなかった言葉であり、実際、「従軍」した慰安婦は存在しない。慰安婦は民間の業者(朝鮮人が多い)が募ったものであり、契約は業者と個人の間で行われた商行為である。日本軍が強制連行したという説も、強制連行を証明する資料はない。
 また、サンフランシスコ講和条約や日韓基本条約等に基づいて、戦後賠償の問題はすべて決着している。国際法では、個人が外国を相手に補償を求めることは、認められていない。
 それにもかかわらず、我が国の教科書には、元「従軍慰安婦」ら外国人戦争被害者個人への「戦後補償」は未解決の問題という趣旨の記述が載せられることになった。その後、現在まで、高校教科書には「従軍慰安婦」が掲載されたままである。

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第3章 朝日新聞の歪曲報道に宮沢首相が謝罪


●怪しげな慰安婦訴訟とそれを後押した朝日新聞

 「従軍慰安婦の強制連行」なる説が多くの日本国民の知るところとなったのは、平成3年(1991)12月6日、元慰安婦3人を含む徴兵や強制連行などの韓国人犠牲者と遺族35人が日本政府を相手取り、損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしたことによる。
 直接の発端は大分県に住む日本の女性運動家がソウルでばらまいた韓国語のビラだった。「従軍慰安婦」にされた人は日本政府を告訴しましょう。そのための訴訟資金を4百万円ほど用意している、と言って呼びかけたのである。そして、高木健一弁護士らがキーセン出身の元慰安婦の婦人らを韓国から連れてきて記者会見やデモをさせた。
 こうした日本人の行動によって多数の韓国人が扇動され、事実と違う訴訟をする原告が現われるにいたった。

 朝日新聞は、この裁判の原告のひとりとなった韓国人元慰安婦・金学順氏について、平成3年(1991)8月11日に報じていた。記事を書いた植村隆記者は、金氏を「『女子挺身隊』の名で戦場に連行され」たと伝えた。「女子挺身隊」は、工場等での勤労奉仕隊であって、慰安婦とは違う。金学順氏は、東京地裁に提出した訴状には、「キーセンとなるべく身売りされた」と書いている。植村記者は、この「親から売られた」という人身売買の事実を書かずに、日本政府が女子挺身隊の名で強制連行したと虚偽を書いたのである。
 実は、植村記者の妻は、日本政府を相手に補償を求める裁判を起こした韓国の太平洋戦争遺族会幹部の娘だった。植村記者は、義理の親の裁判を有利にするために、事実を曲げた記事を書いたのだろう。

 慰安婦訴訟の原告のうち、元慰安婦・文玉珠氏は、訴状では、朝鮮人に誘われてビルマに渡り、そこで慰安婦にさせられたと書いた。軍による強制連行ではまったくない。しかも、文氏は、当時のカネで26000円もの貯金をしていたことがわかった。1円を現在の価値で3000円とすると、7800万円もの大金である。高給を得て蓄財をなした慰安婦が、個人補償を求めるとは、あきれた話である。
 ほかにも原告の元慰安婦たちの証言は、怪しい内容のものだった。

 裁判において、日本政府は、国対国の関係では日韓両国間の請求権は、日韓基本条約と関連協定で、「完全かつ最終的に解決済み」との立場を表明した。これは、国際法に基づいた正当な主張である。根拠のない宣伝や虚偽の報道に惑わされ、同情心や自責心で、判断を誤ってはならない。

 

●朝日新聞による軍関与の歪曲報道

 平成3年(1991)12月に慰安婦裁判の訴えが出された後、翌4年(1992)1月11日付の朝日新聞は、「日本軍が慰安所の設置や、従軍慰安婦の募集を監督、統制していたことを示す通達類や陣中日記が、防衛庁の防衛研究所図書館に所蔵されていること」が、吉見義明・中央大学教授の調査で判明した、と一面トップで大々的に報道した。「慰安所 軍関与示す資料」「<民間任せ>政府見解揺らぐ」の大見出しが紙面を踊った。
 朝日の目的は、慰安婦訴訟を支援するにあったと思われる。また宮沢喜一首相が訪韓を予定しており、日韓外交に影響を与えようという意図があったと見られる。
 記事の内容は、「陸支密大日記」の公文書数点で、関係者や専門家にはこと新しい資料ではなく、朝鮮人慰安婦を特定するものでもなかった。

 朝日新聞が、これぞ軍の関与を示す証拠として打ち出した文書は、「陸支密大日記」に綴じ込まれていた「軍慰安所従業婦等募集に関する件」である。昭和13年(1938)3月4日付、陸軍省兵務局兵務課起案、北支那方面軍及び中支派遣軍参謀長宛である。
 内容は、以下のようなものである。
 「支那事変地に於ける慰安場設置の為内地に於て之が従業婦等を募集するに当り故(ことさら)に軍部諒解等の名儀を利用し為に軍の威信を傷つけ且つ一般民の誤解を招く虞(おそれ)あるもの或は従軍記者、慰問者等を介して不統制に募集し社会問題を惹起する虞あるもの或は募集に任する者の人選適切を欠き為に募集の方法誘拐に類し警察当局に検挙取調を受くるものある等注意を要するもの少なからざるに就ては将来是等に当りては派遣軍に於て統制し之に任する人物の選定を周到適切にし其実施に当りては関係地方の憲兵及警察当局との連繋を密にし、次て軍の威信保持上並に社会問題上遺漏なき様配慮相成度依命通牒す」。

●関与は軍の威信の保持と、社会問題の防止が目的

 この文書を読むと、昭和13年当時、シナにおける慰安婦の募集には、陸軍が困る事態があったことがわかる。問題を起こしているのは、慰安婦を募集している業者である。業者のやり方が、軍の威信を傷つけたり、一般民の誤解を招いたり、社会問題を引き起こしたりするおそれがあり、誘拐に類した集め方で、警察が検挙し取調べた事例もあって、注意を要するものが、少なくない。そこで、こうした事態への対処のために、陸軍省がシナ派遣軍の参謀長に対し、次のようにするように通達した。
 すなわち、

・派遣軍が統制して、募集に当たる者の人選を周到適切にすること。
・実施に当っては、関係地方の憲兵及警察当局との連繋を密にすること。
・軍の威信の保持と社会問題上遺漏のないように配慮すること。

 この文書は、確かに軍が慰安婦の募集に関与していたことを示している。それは、民間任せだとまずい問題が起こっているので、軍が統制して、悪質な業者を除き、警察と連携して、誘拐のようなやり方をやめさせようとしたものである。関与の目的は、軍の威信の保持と、社会問題の防止である。もし現地の軍が不作為を続けていれば、民間人による詐欺・誘拐等が続発し、社会不安が起こっただろう。
 それゆえ、陸軍省の通達は、積極的に評価すべきものであって、これを関与として批判するのは、犯罪の増加や社会不安の拡大を放置すべしというのに等しい。

 平成4年1月11日の朝日新聞の記事は、文書の内容を正確に伝えていない。逆に軍が慰安婦の「強制連行」に直接的かつ組織的に関わっていたかのような印象を与える。この報道の仕方は、一種の詐術である。この記事こそ、宮沢首相の謝罪と河野談話の発表という日本政府の歴史的失態を引き出したものだった。そういう意味では、慰安婦問題の本質は、朝日新聞の歪曲報道の問題でもあるのである。

 

●宮沢首相の調査なき謝罪

 平成4年1月11日、朝日新聞の記事が出たとき、宮沢喜一首相は、5日後に訪韓を控えていた。宮沢首相は、朝日新聞の記事の真偽を知らぬまま、激昂した韓国のマスコミや世論に押され、一転して軍の「関与」を認め、謝罪する方針を打ち出した。訪韓すると、盧泰愚(ノテウ)大統領に対し、慰安婦問題について8回も謝罪した。
 実は、この首相韓国訪問の時点では、日本政府は慰安婦問題について何ら調査していなかった。宮沢首相は、記事をよく検討せず、その場しのぎの対応をしたのだろう。首相たる者は、歴史家や専門家の意見を聴いたうえで、慎重な対応をすべきだった。宮沢氏は、そうする器量を欠いた、腹の据わっていない人物なのだろう。

 宮沢喜一氏こそ、昭和57年(1982)の歴史教科書「書き換え」誤報事件において、首相訪中を前に、教科書の是正を約束し、教科書検定に周辺諸国条項を新設した当事者である。宮沢氏は、この近隣諸国条項の時は官房長官だった。そのうえ、慰安婦問題の時は首相として、周辺諸国との外交のために歴史的事実を曲げ、わが国の名誉と誇りを損なうという大失策を犯したのである。

 宮沢首相は、日韓首脳会議で、慰安婦問題に関する調査を約束した。先に謝罪をしているのだから、調査報告は、謝罪の裏づけとなるような報告を求められることになっていた。
 政府による調査が行なわれる一方、歴史家の秦郁彦氏は、平成4年3月、慰安婦狩りが行われたとされる済州島に現地調査し、吉田証言が虚構らしいことを確認した。また、それ以前に、平成元年(1989)8月14日付の済州新聞が、やはり現地調査により、吉田証言は、虚偽だと報道していた。

●政府調査で強制連行の資料は発見されず

 平成4年1月の日韓首脳会議での約束に基づき、政府は調査を行った。その結果を7月6日に発表した。関係資料127件が発見され、当時の政府や軍が慰安所の設置、監督、検診等に直接関与したことは認められたが、強制連行の有無については、加藤紘一官房長官が、「募集の仕方について、資料は発見されていない」ので「政府としてはその事実を確認できなかった」と言明した。
 実際、政府によって発見された公文書は、すべて民間業者が誘拐まがいの慰安婦募集を行うことをやめさせることを目的に作成されたものばかりで、軍や官憲が強制連行をしていたことを証明する文書は一通もない。

 また、政府は、翌平成5年(1993)7月に、元慰安婦と称する韓国人女性16人に対し、聞き取り調査を実施した。内容は非公開とされており、その上、政府は証言を裏付ける調査を行っていない。
 これに比し、韓国の安秉直ソウル大学教授等が中心になって進めた聞き取り調査は、裏づけ調査を行っている。結果は『証言集 強制連行で連れて行かれた朝鮮人慰安婦達』と題して公表されている。
 この調査は、証言者が意図的に事実を歪曲していると感じられるケースは調査を中断することを原則として、40人に聞き取りをした。半数以上の21人の証言は、不採用になった。つじつまがあわなかったり、混乱した内容だったりしたからだ。
 採用した元慰安婦19人の証言のうち、15人は貧しさによる人身売買だった。強制連行を主張したのは4人のみだった。そのうち2人は、日本政府に補償を求める裁判の訴状では、人身売買と主張していたのに、この調査の時には証言内容を変えて、強制連行だったと述べており、信憑性を欠く。残りの2人は、韓国の富山と釜山の軍慰安所で働いていたと言った。しかし、これらの都市には民間の売春施設が多数あり、軍が強制連行で慰安婦を集める必要がなく、これも信憑性がない。つまり、韓国における調査でも、強制連行を証明できる証言者は一人もいなかったのである。

 先ほど証言者の中に、日本政府に賠償を求めた裁判に関することを書いたが、この裁判の原告の一人が、金学順氏だった。金氏は、東京地裁に出した訴状には、朝鮮人養父にキーセンに売られたと書いた。ところが、韓国での調査の時には、「日本人将校に襲われ、連行された」と述べている。
 同じく文玉珠氏は、訴状では、朝鮮人に誘われてビルマに渡り、そこで慰安婦にさせられたと書いた。ところが、韓国での調査では、日本の軍服を着て長い刀を差した男に拉致され、慰安婦をさせられたと述べている。
 強制連行が事実であれば、損害賠償を求める裁判でこそ主張すべきだろう。事実でないから、訴状に書かなかったのである。韓国での聞き取り調査で、強制連行されたと言ったのは、偽証だったことが明らかである。

 もし旧日本軍によって直接的かつ組織的に強制連行された慰安婦が、実際にいるのであれば、日本国は対応を考える必要があるだろう。しかし、自分がそうだと名乗り出た金学順氏、文玉珠氏は、明らかにうそを言っている。そして彼女たち以外に、一人として、強制連行されたという慰安婦は、本人確認も事実検証もされていない。
 この状態で、誰とも特定できない相手に同情し、自責し、謝罪するのは、おかしなことである。私は、これまでの調査による限り、こう考えるのが妥当だと思う。
 親に売られ、苦界に身を落とした女性に、個人的に同情することと、日本国がそうした女性に個人賠償をするかどうかは、まったく別の話しである。個人の道義やモラルの問題と、国家の法的責任の問題は、はっきり区別しなければならない。

●慰安婦の強制連行説は、根拠薄弱

 ここで、平成初年代当時に慰安婦の強制連行があると主張してした説について、整理しておきたい。その主張が根拠としていたものは、以下の4つになる。

@女子挺身隊として集められた
A連行に関わったという日本人の証言
B日本政府が発見した公文書
C元慰安婦の証言

 これらは、根拠たりうるのか。

 
@の女子挺身隊制度は、国家総動員法に基づき、未婚の女性を動員した強制力のある制度だった。韓国では現在も、慰安婦がこの制度により動員されたと信じられている。しかし、挺身隊は、軍需工場などへの勤労動員であって、慰安婦とは一切関係ない。
 
Aの連行に関わったという日本人の証言には、吉田清治氏の証言と、千田夏光氏が著書『従軍慰安婦』の中で書いた関東軍参謀・故原善四郎証言がある。吉田証言は、平成元年8月14日付の済州新聞が、現地調査に基づいてでたらめだと断言し、秦郁彦氏も平成4年3月に現地調査より虚説と確認している。
 原証言については、千田氏自身が、うそを書いたことを認めている。
 
Bの日本政府が発見した公文書は、すべて民間業者が誘拐まがいの慰安婦募集を行うことをやめさせることを目的に作成されたものばかり。朝日新聞が吉見教授が防衛庁保管文書の中から発見したと一面トップで報じた「慰安婦募集に軍が関与していたことを示す」文書が代表的なもの。軍や官憲が強制連行をしていたことを証明する文書は一通もない。
 
Cの元慰安婦の証言には、日本政府が平成5年7月に16人に対する聞き取り調査を実施した際のものがある。内容は非公開とされている上に、政府は証言を裏付ける調査を行っていない。これに対し、韓国の安秉直ソウル大学教授等が中心になって進めた聞き取り調査は裏づけ調査を行った。約40人のすべてが、事実を歪曲また信憑性を欠き、強制連行を証明できる証言者は一人もいない。

 旧日本軍の慰安婦について、強制連行を主張するのは、根拠薄弱なのである。

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第4章 日本を貶めた河野談話

 

●大失策の河野談話

 平成4年(1992)1月朝日新聞の記事によって、慰安婦問題は、にわかに日韓の国際問題になり、宮沢首相が謝罪した。しかし、強制連行の虚構が判明したことで慰安婦問題は、決着に向かいつつあった。ところが、平成5年(1993)8月4日、河野洋平官房長官が談話を出した。宮沢内閣が総辞職する前日だった。
 宮沢内閣は、「最終報告書」を出している。しかし、そこには強制連行をうかがわせる行為は、何も出てこない。日本軍が強制的に慰安婦を集めたことを証すものはない。慰安婦はいても、軍による強制、強要を証明する一級資料は、何一つ発見されなかった。
 それにもかかわらず、河野官房長官は、次のような非常に問題のある談話を出した。

「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話
 平成5年8月4日

 いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。
 今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
 なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
 いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。
 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。
 なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。」

 談話の発表は、今日までわが国の国益と名誉を損ない続けている大失策だった。

●河野談話の問題点

 河野談話は、「いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。」と述べ、政府による調査結果に基くものであることが、明言されている。
 ところが、その内容は、きわめて大きな問題を含んでいた。主な問題点を4点述べたい。

 第一に、談話は「慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」と述べている。
 ここでの焦点は、「官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」という部分である。「明らかになった」と言うには、その証拠を示さねばならない。しかし、このような事実を示す資料は発見されていない。逆に、平成4年1月11日付の朝日新聞の記事が取り上げた文書のように、軍は、民間業者による誘拐に類した募集をやめさせるように通達している。
 談話は「官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」という一文がある事によって、軍が関与したという「慰安婦の移送」が、軍による強制連行であったかのような誤解を生じるものとなっている。


 第二に、「また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。」という一文にも問題がある。「強制的な状況」とは、いかなる状況か。元慰安婦はどのような証言をしたか公開されておらず、また政府は裏づけ調査を行なっていない。具体的な事実を示さずに、「強制的な状況」と言うと、どのような解釈も可能となる。「性奴隷化」という事実と異なる主張をも許すことになっていく。
 契約により一定の雇用条件のもとに労働し、高給が支払われていたことに触れていないのは、河野談話の根本的な欠陥である。

 第三に、「当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。」という一文については、本人たちの意思に反して募集が行なわれたとすれば、まず挙げるべきは、親が娘を売ったことだろう。このことは、朝鮮半島が日本の統治下にあったこととは、直接関係ない。日本内地においても、貧しい農村等で人身売買が行なわれていたからである。

 第四に、「本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。」という部分については、まず政府が聞き取り調査をした元慰安婦の証言を公開すべきである。
 韓国の安秉直ソウル大学教授等による調査では、約5割の証言は事実を歪曲しているとして不採用になり、採用した証言のどれも信憑性を欠いている。安教授は、昨年(平成18年)12月、韓国のMBCテレビのニュース番組で「強制動員されたという一部の慰安婦経験者の証言はあるが、韓国にも日本にも客観的資料は一つもない」と断言している。
 
 以上、河野談話の問題点を四点挙げた。河野談話は、このように極めて問題が多いものである。しかし、この談話は、政府が行った調査結果をもとに官房長官が発表して謝罪したものだから、外国人が、日本政府が強制連行を含む強制性を認めたものととられることは、避けられない。あまりにも大きな失言である。

●韓国への安易な妥協と、宮沢氏を擁護する画策

 河野談話を作成したのは、石原信雄元官房副長官だったという。石原氏は、平成9年(1997)に、櫻井よしこ氏らのインタビューに答えて、次のように証言している。
 「韓国側が元慰安婦の名誉回復に相当、こだわっているのが外務省や在韓大使館を通じて分かっていた。関与を認めただけででは決着しないと思った。強制性を認めれば、問題は収まるという判断があった。これは在韓大使館などの意見を聴き、宮沢首相の了解も得てのことだ」と。
 つまり、河野談話は、韓国との外交上の取引の結果であったことを、石原氏は明らかにしているのである。また、石原氏は、当時、いくら公文書を調べても、強制連行の証拠は全くなかったと述べている。

 日本政府には、日本国の名誉と国益をかけて真剣に交渉する姿勢が欠けていた。韓国政府が「国民を納得させるために、強制があったと認めてくれ。そうすれば今後は二度とこの問題を持ち出す事はしない」と要求し、日本政府は目先の外交的処理として安易にこれに応えたのだろう。そして日本政府は、軍による強制連行の証拠がないまま、「官憲等が直接これに加担したこともあった」と付け加え、さらに慰安所の生活が「強制的な状況の下」にあったとして、強制連行とは異なる漠然とした強制性を加えたのだろう。
 それまで強制に関する議論は、軍による強制連行であり、国家権力による強制だったが、広く「本人たちの意志に反して」行なわれたことを意味するものへと、強制の定義を広げたのである。実際に慰安婦を拘束していたのは、親に支払われた前借金だろう。前借金を返せば、拘束を解かれたのである。高給によって得た多額の貯金を持って、実家に帰り、裕福な生活をすることも可能だった。

 石原元官房副長官は、河野談話の最後の数行は、「河野さんの個人的な思い入れだ」とも証言している。最後の数行とは、次ぎの部分だろう。
、「本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。」
 「心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。」とあるが、その主語は「政府」である。河野氏は、「個人的な思い入れ」を「政府」の名の下に発表したわけである。

 この「お詫びと反省の気持ち」が具体化されたのが、平成7年(1995)設立のアジア女性基金である。元慰安婦への償いのために募った寄付金が、元慰安婦たちに配られた。この基金は、日本政府が事実調査のうえで慰安婦の強制連行・性奴隷化を認めたから設立・運用されたものと、海外では誤解を招くことになった。強制連行を示す証拠はなく、性奴隷化の事実も裏づけがない。それにもかかわらず、償い金を募って配るという行為のもとも、河野談話にある。

 私は、河野談話の発表には、石原元官房副長官が証言した事情だけでなく、次のような理由もあっただろうと想像している。
 河野官房長官の上には、首相の宮沢氏がいた。河野談話は、宮沢首相が安易に謝罪した失敗をおおい隠すために、首相・官房長官らが画策したものだろう。すなわち、宮沢首相が平成4年1月に韓国愚大統領に謝罪したことを正当化し、宮沢氏の社会的な評価や宮沢氏が会長を務める宏池会の利権を守るためという理由である。国益や国民の名誉とは関係のない私的な利益である。私は、その理由もあって、強制の定義を広げて強調し、談話を出して改めて謝罪を重ねたのだろうと想像する。だから、河野談話は、宮沢内閣が総辞職する前に、出されねばならなかった。しかも、発表した後の対応を避けるために、総辞職の前日をあえて選んで出されたのだと思う。

 私は、政府に河野談話の撤回を求めるとともに、撤回のうえで、調査結果を公表し、また談話発表後の学術研究の成果も踏まえて、新たな政府見解を発表すべきと考える。 

●強制連行はありえないという証言

 河野談話が出されると、「従軍慰安婦の強制連行はありえない」という証言が、当時を知る日本人から多数出された。
 大師堂経慰氏(川崎市、当時)は、朝鮮で育ち平壌の小中学を卒業し、朝鮮総督府に勤め、江原道の地方課長などを歴任した。氏によると「私が見たり聞いたりした範囲では、軍隊や警察官が婦女子を慰安婦として強制連行したという話はなかった。仮に、あったとすれば暴動にいたらないまでも、一般民衆の間に動揺が起き、私たちの耳に入ってこないはずはない」と語っている。
 大師堂氏は、友人で同じ時期、朝鮮で警察部長をしていた都内在住の知人に確かめたところ「従軍慰安婦の強制連行のため、警察官を動員したことなどない」「手錠をかけて連行するなど考えられない」と語っている、と伝えている。

 鍵谷武雄氏(東京都港区、当時)は、中国戦線に応召され、南昌付近に駐屯していたころ、慰安所の歩哨勤務につき、慰安婦たちと話す機会があった。彼女らは「朝鮮人の仲人(周旋人)がきて、陸軍の条件を示した。私たちはその条件を信用して応諾した。条件通り、実行されている」「給料はよい」「借金を返せば、3年で解放される」などと話したと、伝えている。

●韓国人・朝鮮人も強制連行を否定

 韓国側でも日本人の証言者と同じように語っている人がある。朴泰赫氏は、次のように述べる。
 「日本は日華事変で戦線拡大し、多くの要所を占領すると、軍が業者と結んで、兵士のために『慰安所』を設けました。慰安婦たちは韓国の遊郭にいるよりも、収入が2倍にもなったといいます。遊郭業者に女性を供給していた女衒(ぜげん=売春業者)たちが、甘語利説をもって、純粋な娘たちを慰安婦として、中国や南方に送り出したこともあったでしょう。女衒は日本本土では日本人だったように、韓国では韓国人だったのです」
 「なかには悪質な日本官憲もいましたから、これにつきまとった韓国人が業績をあげるために、一般の娘たちを騙して、従軍慰安婦に売り込んだことは、かなりあったでしょう」
 「しかし、軍や、警察が一般の娘を強制的に誘拐して、慰安婦にしたというのは、まったくありえないことです。もし、強制拉致があったとすれば、今日の韓国社会では、女子高校生を拉致して、売春婦として売り込むようなことが続いていますが、同じような不良分子の仕業だったでしょう。
 私は地方の村々をめぐって、老人たちが慰安婦に仕立てるための女性狩りはあったか、たずねました。すると、全員がそんなことはなかった、と否定しました。
 それに『(女子)挺身隊』(=徴用により工場などで勤労奉仕をするもの)として無報酬で働いていた貧しい農村出身の娘たちが、月に最低でも60円の大金を儲けられるところがあるといって誘われたら、甘言に従った者も、少なくなかったでしょう」と。(朴泰赫+加瀬英明著『醜い韓国人 歴史検証編』光文社)

 米国陸軍は、昭和20年(1945)にミャンマーで捕らえた3人の朝鮮人軍属を尋問して報告書を出している。朝鮮人軍属のうちの一人は、慰安婦について、日本の官憲が娘たちを拉致したことを強く否定している。
 「もしそのようなことが行なわれたとしたら、朝鮮の全住民が老いも若きも決起して反乱して日本人を殺したはずだ」と憤然として述べた、と報告書は記録している。
 もし旧日本軍が直接的かつ組織的に朝鮮人女性を強制連行し、それを当時の朝鮮人が黙って何もしないでいたと主張するならば、これほどコリアンを侮辱することはないだろう。今日、そうした主張をするコリアンは、自民族を、誇りも抵抗心もない無気力な民族だったと言っているに等しいのである。

●河野談話に基くアジア女性基金の設立

 慰安婦問題は、政府が謝罪したり、個人補償を行なう問題ではない。国対国の関係では日韓両国間の請求権は、日韓基本条約と関連協定で、「完全かつ最終的に解決済み」である。個人補償を検討するのであれば、韓国政府がなすべきことである。日本政府ではありえない。
 この原則を曲げて設立されたのが、アジア女性基金だった。この基金は、正式名称を「財団法人女性のためのアジア平和国民基金」といい、平成7年(1995)7月に、政府の決定により設立された。
 アジア女性基金の問題点については、後で触れることにして、まず河野談話からアジア女性基金の設立にいたる当時のわが国の動きを概観しておきたい。

 河野談話を出して総辞職した宮沢政権は、昭和30年(1955)以来38年間続いた自民党政権の終焉となった。いわゆる55年体制の崩壊である。続いて、政権に就いたのは、日本新党を中心とする連立政権で、首相は細川護煕氏だった。
 平成5年(1993)8月、細川首相は、先の大戦は「侵略戦争」だったと認識していると発言した。それに続いて、一連の謝罪外交が行われた。中国・韓国は、戦争補償の問題を蒸し返し、日本に賠償金の支払いを強要しようとし、さまざまな訴訟が起こされた。
 そうしたなか、自民党は政権を奪回するために社会党との連立を図り、平成6年(1994)6月、社会党党首・村山富市氏が、首相となった。首相は、同年8月、「内閣総理大臣の談話」で、いわゆる従軍慰安婦問題について改めて「心からの深い反省とお詫びの気持ち」を述べて、幅広い国民参加の道を追求する考えを表明した。

 翌7年(1995)、わが国は、戦後50年を迎えた。この年6月9日、衆議院は「戦後50年国会決議」いわゆる謝罪決議を行なった。これは立法府が歴史認識に関して決議するという異例なもので、法的な効力はない。
 続く8月15日に、村山首相談話が発表された。首相は、閣議決定に基づき、日本が戦前、戦中に行ったとされる「侵略」や「植民地支配」について公式に謝罪した。村山談話は、以後日本国政府の公式見解として歴代政権に継承されている。
 
 私は、戦後日本人が日本精神を失ってきて、精神的に最低の状態になっていたのが、戦後50年の年と見ている。この平成7年は、1月17日に阪神淡路大震災、3月20日にオウム真理教地下鉄サリン事件が起こった。天災・人災のきわみである。この年の前後5年ほど、つまり平成5年から9年(1993〜1998)ごろは、政府も議会も国民も、自国の歴史認識に関し、最も自虐的に傾いていた。この時期には、今日までわが国の進路に深く影響している失策や事件が目立つと思う。

●使途の詳細不明のまま基金は解散

 アジア女性基金が設立されたのは、戦後50年となる平成7年の7月である。発足当時は、原文兵衛元参議院議長を理事長としたが、平成12年(2000)9月に村山元首相が理事長に就任し、解散まで務めた。
 本基金の目的は「『慰安婦』とされた方々への道義的な責任を痛感した日本政府が、国民と協力して」、元慰安婦への償い事業、歴史の教訓とする事業、女性尊厳事業を行なうためだという。

 アジア女性基金が「償い金」を渡す際には、「深いお詫びと反省の気持ち」を表す首相の手紙を一人一人の元慰安婦に「お届け」したという。その手紙には、次ぎのように書かれている。
 「いわゆる従軍慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題でございました。私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます。(略)」
 このような文言を含む手紙が、歴代首相、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎各氏の署名のもとに渡されたのである。
 手紙の中の「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」という表現は、河野談話の「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」という表現と一致する。宮沢=河野の慰安婦謝罪外交が、以後の政権を呪縛しているのである。

 アジア女性基金は当初、国民から「償い」の名目で募った寄付金を各地の元慰安婦に分配することを活動としていた。初年度は約1億3千万円かけて、主要6紙の全国版に全面広告を出して、募金を呼びかけた。12年間の活動期間に集まった寄付金は、6億円近くにのぼるという。元慰安婦たちへの償いとして、一人あたり200万円が、合計285人に配られたとされる。
 ところがこれは、償いたい人が寄付をし、名乗り出た者に配られたというだけの話ではない。国民からの寄付金のほかに、政府が拠出金を出した。寄付金を、元慰安婦たちに「お届け」(外務省の用語)するために、約48億円もの税金が使われたのである。
 ジャーナリストの野村旗守氏は、使途の詳細を明らかにするよう外務省に求めた。回答は、医療事業費が各国合計で約11億3000万円、歴史教訓事業と女性尊厳事業で併せて約18億円だったという。これらを合算しても、約29億3000万円であり、残りの18億7000万円については、詳細の報告がされていない。(野村旗守著「どこへ消えた? アジア女性基金50億円」〜撃論ムック『慰安婦・南京の真実』オークラ出版)
 アジア女性基金は、国別の支給数も発表していない。発表しないまま、本年(平成19年)3月に解散してしまった。多額の募金を集め、またその8倍もの公費を費やしていて、その使途の詳細を報告していないのである。
 道義と善意に基くはずの基金の運用が、不透明であるところに、アジア女性基金の本質的な問題点があるように思う。基金は、元慰安婦への償い金としてのみ支出されたのではなく、歴史教訓事業・女性尊厳事業という名の下に、別の目的のために使用されたのではないかという疑惑がある。反日・左翼・フェミニズムの勢力は、慰安婦問題を利用してきた。アジア女性基金の資金の一部は、彼らの運動を益するように使われたのではないかという見方である。
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第5章 中学教科書に掲載され、論争起こる

 

●中学教科書に「従軍慰安婦」が掲載

 河野談話が出された約3年後、平成8年(1996)6月27日、翌年春から使われる中学校の新しい歴史教科書の内容が報じられると、大きな波紋が起こった。最大の問題は、河野談話の影響により、全社の中学教科書に「従軍慰安婦」が登場したことだった。
 先に書いたように、昭和57年の歴史教科書「書き換え」誤報事件の後、近隣諸国条項が設けられ、高校の歴史教科書には、平成2年から従軍慰安婦が掲載されていた。平成6年以降は、全社の高校用歴史教科書に「従軍慰安婦が日本軍によって強制連行された」という虚偽が書かれた。教室で、教師によって、公然と生徒にうそが教えられていた。
 今度は、それが中学校にまで拡大されることになったわけである。

 「従軍慰安婦」は、戦後作られた造語であり、日本軍が慰安婦を強制連行したという証拠資料はない。それにもかかわらず、慰安婦にする目的で朝鮮人女性の強制連行が行われたと理解させるような記述が、中学生向けの教科書に掲載された。「慰安婦」というような性的な事柄を、中学生に教える必要があるのか、国民的な議論が起こった。
 「義務教育諸学校教科用図書検定基準」には、「児童生徒の心身の発達段階に適応し」「心身の健康や安全及び健全な情操の育成について必要な配慮を欠いている……ところはないこと」「未確定な時事的事象について断定的に記述しているところはないこと」と規定されている。中学生に慰安婦について教えることは、この規定に違反していた。

 こうしたなか、中学歴史教科書の内容を是正しようとして、平成9年(1997)1月30日に「新しい歴史教科書をつくる会」(西尾幹二会長)が発足した。
 「つくる会」のメンバーは、平成14年度版の中学教科書の検定をめざして、中学歴史『新しい歴史教科書』と中学公民『新しい公民教科書』の執筆を開始した。発行所は、産経新聞社系の扶桑社である。教科書会社の寡占体制にある教科書業界に一般の出版社が参入するかつてない試みとなった。

●「つくる会」等の活動で、「従軍慰安婦」は消滅

 扶桑社版教科書に対する反発は激しかった。平成13年(2001)2月、扶桑社版の検定が通りそうだと分かると、朝日新聞は、中韓両国に干渉と妨害を誘う一大キャンペーンを行った。以来、両国ことに韓国の干渉は、周知の通り日を追うごとにエスカレートし、内政干渉の域をはるかに超える過剰な行動が相次いだ。

 平成13年3月、検定の結果、扶桑社版は、他7社の中学歴史教科書とともに合格した。扶桑社版の中学公民教科書も同時に合格した。
 この時の検定で、教科書に記載するのが適当かどうか批判のあった「慰安婦」、南京事件などについて、各社の教科書から記述が全般的に減少した。歴史教科書発行の8社のなかで、「慰安婦」にふれたのは3社。それまでの7社の教科書はすべてが何らかの形で「慰安婦」に触れていたが、4社の教科書からは姿を消した。それまで4社が使っていた「従軍慰安婦」の表現は姿を消し、「慰安婦」「慰安施設」などの表現を用いるようになった。
 これは、「つくる会」と連携した自由主義史観研究会(藤岡信勝会長)の活動や扶桑社の教科書の参入の影響と見られる。

 ただし、高校教科書は、改善されていない。高校教科書については、平成14年(2002)4月9日、文部科学省が平成15年度使用開始の教科書の検定結果を発表した。前年、外交問題化した教科書問題の影響からか、検定では、朝鮮史に関する指摘が目立った。対朝鮮半島史で異例の厳しい検定が実施され、韓国が前年行った中学歴史教科書への修正要求が、高校の検定のほうで受け入れられた形となった。「従軍慰安婦」の表記が幅をきかせている上、「性奴隷」「彼女たちを辱め」といった描写がフリーパスした。
 そういう教科書が、高校では使われ、教師によって生徒たちに教え込まれてきた。

●扶桑社の教科書がシェアを増やし、他社版も内容が改善

 「従軍慰安婦」の記述が問題になってから第2回目となる中学教科書の採択は、平成17年(2005)秋に行なわれた。平成18年春から使われる教科書の採択である。
 この時の採択では、中国・韓国が、歴史教科書の内容について内政干渉を激しく行い、扶桑社版の採択に反対した。平成17年(2005)4月には、日本の国連安保理常任理事国入り問題も絡んで、激しい反日デモが起こった。日本国内でもこれに同調する者が活発に活動を繰り広げた。
 前回の平成13年の採択でもさまざまな妨害の結果、扶桑社版は、わずか521冊、シェアは0.039%だった。これに比し今回は、前回にまさる干渉があったにもかかわらず、扶桑社の歴史教科書は、5千冊余り、シェア0.4%台と、前回の約10倍となった。
 日本の国民は、平成13年当時に比べ、主権意識・国民意識が強くなり、中韓の反日運動が切欠となって、日本のことを考える人が増えた。特に20代、30代の若い世代に顕著な変化が起こった。

 この時の採択では、それまでの自虐的な内容を批判されて編集方針を変えた東京書籍や大阪書籍の教科書が、大きなシェアを確保した。これに対し、日教組を意識した編集を続けている日本書籍新社は、さらに採択を減らした。このように扶桑社版は、シェアは1%にも満たないものの、その出現は他社の歴史教科書の内容に変化をもたらす効果を生んだといえる。

 「新しい歴史教科書をつくる会」は、この間、指導部の意見対立を繰り返している。扶桑社は、本年(平成19年)5月、「つくる会の組織内に混乱が生じ、事実上分裂する状況になっている」と指摘し、採択で「幅広い推薦をいただける状況にない」として、「つくる会」会員執筆の教科書の発行継続を拒否した。扶桑社は今後、「つくる会」元会長の八木秀次氏らが設立した「日本教育再生機構」と協力し、別の教科書を発行するとみられる。
 中学校教科書の次回の採択は、平成21年(2009)である。慰安婦問題に限らず、歴史認識の誤りや偏りを正し、改正教育基本法に定めた国と郷土を愛する態度、伝統の尊重、公共心を育てる内容を盛り込んだ新しい教科書の登場が待たれる。
 高校教科書については、本年(平成19年)3月、来年春から使われる教科書の検定結果が発表された。「従軍慰安婦」については6社16点の教科書が取り上げたが、修正意見はつかなかったという。ということは、事実と異なることや、誇張歪曲した記述も、そのまま通過したということである、今後、高校教科書も、「従軍慰安婦」の強制連行、「性奴隷」といった虚偽の記述が正されるよう国民の良識を結集していく必要がある。
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第6章 性奴隷説が登場し、国際的に波及

 

●強制連行から強制性へと論点をすり替え

 中学歴史教科書の記述を巡る論争で、強制連行説は、ほとんど決着した。もともと朝日の報道が、吉田清治氏の虚偽証言を広めたのが、はじめだった。論争が決着に向かうと、それまで強制連行を強調してきた朝日新聞は、強制連行説を引き下げざるを得なくなくなった。
 しかし、ここで朝日新聞は、平成9年(1997)3月31日付で、強制連行から強制性へと論点をずらす報道を行なった。朝日は、その日の紙面に、社説と特集記事を載せた。
 社説では、「日本軍が直接に強制連行したか否かという狭い視点で問題を捉えようとする傾向」を批判し、「そのような議論の立て方は、問題の本質を見誤るものだ。資料や証言を見れば慰安婦の移送、管理などを通して、全体として強制と呼ぶべき実態があったのは明らかである」という。おやおや、強制連行を喧伝してきたのは、朝日新聞自体だったのに。
 また、特集記事では、「『強制』を『強制連行』に限定する理由はない。強制性が問われるのは、いかに慰安婦の『人身の自由』が侵害され、その尊厳が踏みにじられたか、という観点からだ」と書いた。
 こうして朝日は、勝手に方針転換をし、読者には一切謝罪訂正をすることなく、論点をすり替えたのである。そして、強制連行を狭義の強制性、慰安婦が自分の意に反して置かれていた状況を、広義の強制性とすることで、慰安婦問題の継続を執拗に追求しようとした。

 実は、強制に広狭二義を認める観点は、朝日新聞の発明ではない。河野談話が打ち出していた観点なのである。河野談話は、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」と書いている。この「強制的な状況」を、「人身の自由」が侵害され、その尊厳が踏みにじられた状況と解釈すれば、朝日新聞の主張となる。河野談話そのものに、朝日の解釈を可能にする広がりがあったものだ。
 しかし、慰安婦の「人身の自由」が侵害され、「尊厳が踏みにじられていた」としても、それは民間業者と慰安婦の親との間で行なわれた人身売買に発するものである。旧日本軍とは、直接関係ない。また、当時の我が国では、売春が公認されていた。軍の慰安所は、日本国内における公娼制度を戦地に応用したものであり、性的慰安も、職業労働だった。
 慰安婦は、契約により一定の雇用条件の下で働き、高給が支払われていた。日本政府を相手取って訴訟を起こした元慰安婦の中には、当時の金額で26000円、現在の価値では7800万円もの多額の貯金を持っている者がいた。こういう事実に触れずに、自由や尊厳を言うのは、悪質なデマゴギーである。

●性奴隷説を広めたクマラスワミ報告

 わが国で、中学校の教科書に慰安婦が掲載されることになった平成8年(1996)、海外では、ある画期をなす出来事が起こっていた。第52回国連人権委員会に「クマラスワミ報告」が出されたのである。
 今日、国連の人権委員会やアメリカのマスメディア等の認識の核心にあるのは、慰安婦は「性奴隷」だったという誤解である。
 「性奴隷(sex slave)」という言葉は、多くの偏見を生んでいる。かつて日本において「強制連行」という言葉が果たしたのと似た役割を、「性奴隷」という言葉が現在、国際社会で果たしている。この言葉を流行らせる上で決定的な役割をしたのが、「クマラスワミ報告」である。

 国連人権委員会で慰安婦問題の特別報告者に指名されたのが、スリランカの女性活動家、ラディカ・クマラスワミ女史だった。彼女は、平成7年(1995)、ソウルに5日間、東京に6日間滞在して、英文37ページの報告を書いた。その内容は、わずか2冊の本をもとにまとめたものだった。
 その2冊とは、オーストラリアのジャーナリスト、ジョージ・ヒックスの『The Comfort Women(慰安婦)』と、吉田清治の『私の戦争犯罪ーー朝鮮人強制連行』である。

 クマラスワミが事実関係の部分をほとんどすべてを依存しているのが、ヒックスの著書であるという。ヒックスは、日本語ができない。そのため、在日3世の女性が集めた材料に8割方依存した。ヒックスが最も頻繁に引用しているのが、先に触れた金一勉著『天皇の軍隊と朝鮮人慰安婦』であるという。
 本書は、日本が「朝鮮民族抹殺政策」を取り、「朝鮮民族の早期滅亡を企図」して、「梅毒政策・阿片吸引助長政策・遊郭発展政策」を取ったという主張をしている本で、あやしげな雑誌や週刊誌に材料を求めたものである。そのような本から頻繁に引用して書いたヒックスの本に、クマラスワミは、依拠しているわけである。
 もう1冊の吉田氏の著書については、既に書いたように済州島における現地調査によって、虚説であることが、平成4年までに明らかになっている。それにもかかわらず、クマラスワミは、吉田氏の虚偽の証言を無批判に資料としているわけである。

 クマラスワミ報告は、強制はあったとする立場の吉見義明中央大学教授すら、クマラスワミに書簡を送って、ヒックスの本は「誤りの大変多い著書」で、引用部分を削除したほうがいい、吉田に関連する部分も削除するように勧めているほどだという。
 しかし、吉見氏の忠告に従うと、クマラスワミ報告はほとんど内容がなくなってしまう。そのような低レベルの報告書が、国連人権委員会の判断に強い影響を与えているのである。国連人権委員会の委員は、よほど調査能力がない者が多いのか、左翼人権思想に凝り固まった活動家が集合しているのかもしれない。

 クマラスワミ報告への影響関係を、時系列的に並べると、次のようになる。

 金一勉著『天皇の軍隊と朝鮮人慰安婦』(昭和51年、1976) → 吉田清治著『私の戦争犯罪――朝鮮人強制連行』(昭和58年、1983) → ヒックス著『The Comfort Women』(平成7年、1995)

 これらがクマラスワミ報告(平成8年、1996)に流れ込んでいるわけである。これらの虚説の流れの出発点には、朴慶植著『朝鮮人強制連行』(昭和40年、1965)がある。在日朝鮮人の強制連行はなく、慰安婦の強制連行もなく、朝鮮民族抹殺政策も存在しない。それにもかかわらず、うそにうそを重ねたデマが、国連の人権委員会で、あたかも真実であるかのように化けてしまった。

 藤岡信勝氏は、次のように書いている。
 「いったん『性奴隷』 という言葉が発明されると、英語圏の世界では、実態とは別に慰安婦を『性奴隷』として最初からみなして、全ての情報をそういう眼鏡を通して解釈することになる。素材となった事実の信憑性などどうでもよい。こうして、いつの間にか日本の公娼制度の戦地への延長形態にすぎなかった『慰安婦』システムが、20世紀奴隷制の一形態だということにされてしまった。」と。(藤岡信勝著「日米離反を仕掛ける中国の罠を打ち破れ」〜月刊『正論』平成19年6月号)

わが国において「強制連行」という言葉が強烈なイメージを喚起したのと同じような効果を、海外では「性奴隷(sex slave)」という言葉が生み出しているようである。「性奴隷」という言葉は、「広義の強制性」が漠然と「本人の意思に反して」させられた強制的な状況を意味するのに対し、はるかに強烈な、女性の人権無視や猟奇的な性犯罪を連想させる。それだけに、イメージの払拭は容易ではない。
 日本人には、「広義の強制性」は気の毒だという情緒的な反応を呼び、その感情を否定しがたいのに対し、欧米人には、「性奴隷」は奴隷制度があっただけに、倫理的な反感を招き、その反感は取り除きにくいだろう。
 このイメージを払拭するには、慰安婦は「性奴隷」ではなく、高給を得ていた性労働者だと規定して強調すべきである。

 

●「女性国際戦犯法廷」が国際的な画期に

 慰安婦問題において、国際的に見て画期となったことの一つに、「女性国際戦犯法廷」がある。この集会は、平成12年(2000)12月、東京で行われた。主催は「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(バウネット・ジャパン)のメンバー。当時の代表は、元朝日新聞記者の故・松井やより氏である。
 主催者は、集会の目的を「『慰安婦』制度という日本軍性奴隷制が女性に対する戦争犯罪であった真相を明らかにします。被害女性たちの尊厳を回復し、日本政府に戦争責任・戦後責任をとらせる手がかりとし、性奴隷制や強かんなどの戦時・性暴力が今後世界各地で繰り返されないよう、女性の人権が尊重される平和な新世紀を創ることです。」としていた。
 集会参加者は、出席した元慰安婦らの証言及び文献資料をもとに、我が国の慰安所制度が人道に対する罪、とりわけ強姦と奴隷化にあたるとし、昭和天皇を人道に対する罪について「有罪」と断じ、また日本政府には国家責任があるとした。

 判事役・検事役は、アメリカ、アルゼンチン、イギリス、タイ、ケニア。アメリカ、オウトリア、韓国、北朝鮮、中国等の諸国から集まった。しかし、この「法廷」は、法廷とは名ばかりで、法的根拠はない。また被告側に弁護団役がなく、裁判の名を借りた一方的な糾弾集会にすぎない。
 注目すべきは、検事役に、北朝鮮の代表者が3人入っていたことである。うち2人については、安倍晋三議員(当時)が、北朝鮮の工作員と認定されて日本政府よりこれ以降入国ビザの発行を止められていることを指摘し、女性国際戦犯法廷に北朝鮮の工作活動がされていたとする見方を明らかにした。

 翌13年(2001)年12月には、オランダのハーグで再度「法廷」が開催され、「最終判決」なるものを発表した。
 慰安婦問題で国際的に対日批判を広げたのは、共産主義者、在日コリアン、急進的なフェミニスト、左翼のキリスト教徒等の国際的な連携と見られる。

●NHKの放送とそれをめぐる裁判、朝日・NHKの泥仕合

 NHKは、平成12年12月の「女性国際戦犯法廷」を取材し、翌13年1月に、ETV2001「問われる戦時性暴力」と題して全国放送した。製作段階で局内で問題になり、番組の一部が改変された。公共放送としてそのままでは放送できない内容があったからである。しかし、この改変について、主催者団体であるバウネットが裁判を起こした。
 バウネットは、平成13年7月に、NHKや制作会社等に損害賠償を求めて、東京地裁に提訴した。東京地裁は、平成16年(2004)3月、NHKの責任は認めず、製作会社にのみ賠償命令を出した。これに対し、原告が控訴。東京高裁は、平成17年(2005)1月、バウネットの放送内容への「期待権」に対する侵害と「説明義務」違反を認め、NHK等の三者に賠償を命じた。NHKは、判決を不服として上告した。まだ抗争中である。

 二審の判決の出た17年1月、突然、NHKの製作担当・長井プロデューサーが内部告発めいた記者会見をした。朝日新聞は、この会見につき、NHKの幹部と安部晋三(現首相)・中川昭一(現政調会長)両衆議院議員を名指して、政治による報道への圧力と決め付けて報道した。安部氏・中川氏は、関与を明確に否定した。それによって朝日の報道姿勢の異常さが明らかになったが、NHKと朝日は非難合戦の泥仕合を続け。マスメディアへの国民の不信を高めた。

●背後に北朝鮮の工作、共産主義・フェミニズムの国際的連携が

 二審の判決が出た翌月となる平成17年2月1日、「『女性国際戦犯法廷』に対する冒とくと誹謗中傷を許さない日朝女性の緊急集会」が東京で開催された。「女性国際戦犯法廷」には、検事役に北朝鮮の代表者が3名いたわけだが、うち2名は工作員だった。こういう「法廷」への「冒とくと誹謗中傷を許さない」というのが、この集会の目的である。

 この集会に参加しようとした殿下氏なる人物が、以下のように報告している。
http://blog.goo.ne.jp/takkie0516/e/dc32611dccbf0887f5019cce98774b1a
 会場は、衆議院第2議員会館の第1会議室。国会議員が思量する議員会館に、この様な集会の会場を手配したのは、民主党の石毛えい子・衆議院議員。以前から、慰安婦問題等で北朝鮮との関係の深い人物である。
 殿下氏が集会に参加しようとすると、「朝鮮総連広報担当者」だと名乗る男から、「我々の知らない方には居て欲しくない」と傍聴を断わられた。集会における発言者の中には、金昭子・在日本朝鮮民主女性同盟中央本部委員長がいたという。朝鮮総連中央委員会の副議長であり、北朝鮮の国会議員である。

 殿下氏の報告から、「女性国際戦犯法廷」を支持する集会は、北朝鮮による対日工作の一環と考えられる。金正日が、慰安婦問題等を、自己の権力維持のために利用しているのである。北朝鮮は、人権に関して最も劣悪な状況にある国のひとつである。そうした国が、元慰安婦や女性の人権問題を利用しているとは、笑止千万である。
 慰安婦問題で国際的に対日批判を広げている共産主義者、在日コリアン、急進的なフェミニスト、左翼のキリスト教徒等は、北朝鮮の関与を知りながら、北朝鮮における人権問題を取り上げない。60年以上も前の元慰安婦の人権を用いて日本を批判しながら、現実にいま北朝鮮で行なわれている人権侵害を批判しない。ここに明瞭な政治性・思想性がある。

 さらに今日、慰安婦問題を韓国・北朝鮮以上に利用するようになっているのが、中国である。中国共産党は、アメリカを中心に慰安婦問題を使った反日工作を進めている。昨26日、アメリカの下院外交委員会で、対日非難決議が採択されたが、その背後には、慰安婦問題の国際的な広がりを利用して、アメリカ議会への宣伝・買収工作を進めた中国の存在がある。
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第7章 アメリカに広がる深刻な誤解

 

●アメリカ議会での対日非難決議の動き

 アメリカでは、平成6年(1994)、海外華僑、中国系住民によって「世界抗日戦争史実維護連合会」(以下、抗日連合会)が創設された。抗日連合会は、本部をカリフォルニア州クパナティノにおき、傘下に50以上の下部組織を持つ。中国国営の新華社通信とウェブサイトを共有するほか、中国側の公的組織との共催の形で日本批判のセミナー類の行事を中国国内で頻繁に開き、中国当局との密接なきずなを明示している。
 抗日連合会はその任務を日本の残虐行為を恒常的に糾弾し、謝罪や賠償を求め続けることとし、日本側のこれまでの謝罪や賠償をまったく認めずにわが国の教育や言論にまで干渉しようとしている。平成9年(1997)には、アイリス・チャン著の『レイプ・オブ・南京』を、組織をあげて宣伝した。また、同17年(2005)年春に中国で起こった反日デモを煽ったと見られている。

 抗日連合会の幹部イグナシアス・ディン氏は、1990年代後半、当時カリフォルニア州下院議員だったマイク・ホンダ氏に接近した。ディン氏は、「ホンダ氏と共同で州議会に出す決議案の草案を書き、日本の南京大虐殺、731細菌部隊、米人捕虜虐待、慰安婦強制徴用など戦争犯罪を追及した」と地元の新聞に述べているように、平成11年(1999)にが、ホンダ氏の「日本への戦後補償要求決議」の採択を州議会で成功させている。
 ホンダ氏は、翌12年(2000)に、州議会から連邦議会への転出を図り、ディン氏らの支援で、下院議員になった。そして、連邦議会でホンダ議員が、執拗に取り組んできたのが、旧日本軍の慰安婦問題である。ホンダ議員は、平成13年、15年、18年、19年、つまり2001年、03年、06年、07年と連続して、慰安婦問題で日本政府に謝罪を求める決議案を提出した。その内容は、ディン氏らの意向に沿ったものである。

 ホンダ議員の決議案提出を受けて、米議会調査局は、平成18年(2006)4月、日本の慰安婦制度に関する報告書を出した。この報告書の「慰安婦制度の説明文献」は、冒頭に吉田清治氏の著書を挙げている。議会の調査員も、吉田氏の著書が虚説を書いたものと知らずに、資料として扱っていたのである。アメリカの下院議員たちは、そのような報告書をもとに、対日非難決議を審議していたのである。

●安倍首相の慰安婦問題対応に甘さ

 平成18年(2006)10月、首相となった安倍晋三氏は、就任直後に、河野談話を「受け継ぐ」と表明した。それまで安倍氏は、慰安婦問題について、歴史的事実を踏まえた認識を述べていた。また「女性国際戦犯法廷」に関するNHKの番組を巡っては、朝日新聞に政治の介入といわれなきことを書かれた当事者であり、慰安婦問題の背後に政治的・思想的な動きがあることは、十分承知している。それにもかかわらず、安倍首相が河野談話を「受け継ぐ」と述べたことは、安易だったと思う。
 安倍首相は、本年(平成19年)3月1日、記者団の質問に答えて、慰安婦問題について見解を述べた。朝日新聞は、「首相 河野談話見直しを示唆/「強制性裏付けなかった」」という見出しの記事でこれを報じた。同月4日付の朝日新聞から引用する。

――自民党議連で談話見直しの提言を取りまとめる動きがあります。
 安倍首相: 「当初、定義されていた強制性を裏付けるものはなかった。その証拠はなかったのは事実ではないかと思う」

――強制連行の証拠がないにもかかわらず(強制性を)認めたという指摘もあります。談話見直しの必要性は。
 「(強制性の)定義が(「狭義」から「広義」へ)変わったということを前提に考えなければならないと思う」

――(議連の動きは)中韓との関係に水を差す懸念はありませんか。
 「歴史について、いろいろな事実関係について研究することは、それはそれで当然、日本は自由な国だから、私は悪いことではないと思う」

 このやり取りにおいて、安倍首相は、「当初、定義されていた強制性を裏付けるものはなかった」と語った。また「定義が変わったということを前提に考えなければならないと思う」と発言した。
 この首相発言は、強制には広義と狭義があり、狭義の強制性は裏付けるものがなかったが、広義の強制性は認めたものと解釈されるだろう。
 河野談話は、「慰安婦の募集については、
‥‥官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」と述べている。それゆえ、河野談話は強制連行があったと認めたものという解釈が広まった。もし安倍首相が、強制連行を示す証拠はないと考えるなら、河野談話のこの部分を明確に修正すべきである。
 しかし、首相は、その修正をせずに、強制性の定義が変わったと言う。河野談話は、先ほどの部分に続いて、「また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。」と述べている。これは、強制連行とは異なる漠然とした強制性を持ち出し、広く「本人たちの意志に反して」行なわれたことを意味するものを強制性に加えている。
 安倍首相は、河野談話を「受け継ぐ」と表明しているから、この記者会見で、狭義の強制性としての強制連行には否定的な見解を述べてはいても、広義の強制性を否定する発言とはなっていない。そのため、海外で流布している「性奴隷化」という虚説に対して、無防備な発言となったと思う。

●安倍首相発言を米メディアが非難

 安倍首相の慰安婦問題に関する発言は、アメリカのメディアによる激しい非難を引き起こした。
 3月2日付のワシントン・ポスト紙は、安倍首相の談話を報じ、大意次ぎのように書いた。

 「歴史家たちは、20万人の女性(朝鮮半島と中国出身者が多くを占める)が1930年代から40年代を通じ、アジア全域で働いたと言う。日本軍部隊によって誘拐され、性奴隷になるべく強制されたと多くの女性が語っている。しかし、昨年9月に就任して以来、学校での愛国心教育と、主張する外交を推進してきた安倍首相は、『女性を売春婦にするよう強制したという証拠はない』と記者団に語った。首相の発言は、1992年に発見された公文書の証拠と矛盾するものだ。それは軍当局が業者と一体になって女性を売春宿に強制的に斡旋する上で、直接に関与していたことを示すと歴史家は語っている」

 他の新聞も似たようなもので、誤謬に満ち、根拠のない思い込みでものを書いた記事が続出した。

 「安倍首相は日本政府の長年の公的立場と矛盾する、日本軍が外国人女性を強制的に性奴隷としたことを否定した」(ニューヨーク・タイムズ紙 3月2日付東京発)
 「慰安所は商業施設ではなかった。女性たちの調達には、隠然・公然の暴力が用いられた。そこで行われていたのは絶え間ない強姦であって売春ではなかった」(ニューヨーク・タイムズ紙 3月6日付社説)
 「ホロコーストを否定するようなものだ」(サンノゼ・マーキュリー紙 3月6日付)
 「この問題を修復する最適任者は天皇本人だ」(ロサンゼルス・タイムズ紙 3月7日付、社説)

●間違いだらけ、飛躍した主張

 これらの記事の間違いを指摘したい。

1.「歴史家たちは、20万人の女性が
‥‥働いたと言う」
 20万人という数字は誇大である。実証的な研究書である秦郁彦氏の『慰安婦と戦場の性』(新潮選書)は、軍人の数や慰安婦の接客回数から推計して、慰安婦の総数を2万人前後から2万数千人としている。

2.「朝鮮半島と中国出身者が多数を占める」
 多数を占めていたのは、日本人女性である。秦氏は、昭和戦前期の日本の領事館が慰安婦の人種別人数を記載している報告書を出しているものをもとに、日本人が4割、それぞれの地域の現地人が3割、朝鮮人2割、その他1割と計算している。

3.「日本軍部隊によって誘拐され」
 吉田清治氏は、軍の命令で韓国の済州島に出かけ、多数の女性を慰安婦にするために狩り立てたと「自白」して謝罪しているが、済州島の現地調査により、虚説であることが確認されている。吉田氏本人は、行方をくらませている。

4.「1992年に発見された公文書の証拠と矛盾する」
 軍による直接的かつ組織的な誘拐を示す公文書は、見つかっていない。1992年に発見された公文書とは、同年1月11日付の朝日新聞が報じたものだが、これは業者による誘拐を防ぐための指令書であり、軍が強制連行をしていなかったことの証拠になるものである。

5.安倍首相が「日本軍が外国人女性を強制的に性奴隷としたことを否定した」
 否定していない。そのことに言及していない。

6.「慰安所は商業施設ではなかった。」「売春でなかった」
 事実と異なる。慰安所は料金を支払って利用する商業施設であり、慰安婦は一定の雇用条件のもとで務め、性的慰安を行って高給を得ていた。そのことを最もよく明かすのは、米陸軍が昭和19年(1944)9月に作成した「前線地区での日本軍売春宿」と題した報告書である。アメリカのメディアは、自国の軍が作成した報告書を、まず読むべきである。

7.ホロコースト、天皇、拉致問題との関連付け
 慰安婦問題の事実関係に触れることが、「ホロコーストを否定するようなものだ」とは、ひどい飛躍である。安倍首相は、慰安婦に関する発言で、ナチスによるユダヤ人虐殺に関しては、述べていない。
 ある程度定説的になった歴史認識に対して、事実の調査・検討に基いて見直しを行なうことは、学問の自由として保障されねばならない。
 なお、慰安婦は、ユダヤ人のように組織的に多数虐殺されてはいない。慰安婦は戦地で多数が殺されたとか置き去りにされておらず、9割以上が生還したと秦氏は推定している。
 慰安婦問題について天皇を持ち出すのは、「女性国際戦犯法廷」の影響だろう。この「法廷」は、慰安婦問題に関して昭和天皇を一方的に断罪した。そこには、北朝鮮が深くかかわっていた。また、慰安婦の話しで北朝鮮による拉致を減殺するかの主張も、北朝鮮の工作の影響だろう。アメリカ政府は、北朝鮮の拉致問題や核施設に関して厳しい交渉を行なっている。その相手国を利するような報道をするのは、反国家的行為であり、アンタイ・アメリカ的行為だろう。

 安倍首相が、記者会見で安易な発言をし、事実を無視するアメリカのメディアから非難を受けたのは、わが国政府が事実を調べ、またそれを伝える努力をまったく行なわずにきたことの報いである。

 

●米下院で元慰安婦が証言

 米下院外交委員会は、ホンダ議員らによる対日非難決議案の上程を受けて、本年2月15日に、公聴会を行なった。同委員会のアジア・太平洋・地球環境小委員会で証言したのは、元慰安婦の韓国人の李容洙氏と金君子氏、オランダ出身でオーストラリア人のジャン・ルフ・オハーン氏の3人である。
 この3人の元慰安婦には、共通項がある。全員がかの「女性国際戦犯法廷」に出場したことである。

 韓国人女性の2人は、日本での集会や朝日新聞などに何度も登場している。李容洙氏は、証言するたびに「連行」された場所や年齢、状況、慰安所の場所等が異なり、証言に一貫性がない。本当に慰安婦だったのかさえ疑われている。金君子氏は、公聴会では「警官に家を出てお金を稼がなくてはならないと言われた。軍服を着た朝鮮人が私を送り出した」と証言したが、別のインタビューでは「17歳のときボーイフレンドとの結婚を彼の両親から反対され、不本意ながら日本に性奴隷として招集され、中国に連行された」と述べており、やはり信憑性を欠く。

 もう一人の証言者であるオランダ人女性は、過去の証言から「スマラン事件」の被害者であることがわかっている。この事件は、日本の占領下にあったインドネシア・ジャワ島で起こった強制売春事件である。現地の第16軍は、本人の明確な同意のもとに慰安所の開設を許可していたが、一部にそれに違反した部隊があり、抑留されていたオランダ人数十人が強制売春をさせられたというものである。ただし、事実を知った第16軍によって、この慰安所は直ちに閉鎖させられた。また、戦後の戦犯裁判で、関係者は死刑を含めた重罰に処せられた。このことは、旧日本軍は、強制売春を禁じていた証拠でもある。
 こうした不法行為を含めて日本・オランダ間での戦後処理は、日本・オランダ議定書をもって完全に終了している。それゆえ、米議会で証言したオランダ人女性の件は、日本政府に謝罪・賠償を求める論拠にはなり得ない。

 米下院の委員たちは、彼女たちの過去の証言を精査して矛盾点を尋問するとか、歴史的な事実を調査してそれと対照するというような緻密な聞き取りを行なっていない。彼女たちの証言は、委員たちに実体験と思わせ、対日非難に効果を上げた。この公聴会は、対日非難決議案を採択の方向に進めるものとなった。

●米議会調査局の報告書には変化が

 アメリカのメディアは事実に基かずに無責任な報道をし、下院の委員会ではずさんな公聴会が行なわれていた一方、米議会調査局は、報告書の内容に変化を現していた。
 議会調査局は、本年(平成19年)4月3日に、「日本軍の『慰安婦』システム」と題する報告書の改訂版を出した。昨年版で吉田証言を根拠に作成した部分を削除し、これに加えて「日本軍による組織的・政策的な強制徴用はなかった。特に朝鮮半島ではそうだった」という趣旨の見解を示した。この報告書は、議員による審議の基礎資料となるものという。
 報告書の内容について、産経新聞4月12日付が、「慰安婦問題 米議会調査局が報告書 『組織的強制徴用なし』」と題して、次のように伝えている。

 「いわゆる慰安婦問題の主要争点とされる「日本軍による女性の強制徴用」について同報告書は「日本軍はおそらくほとんどの徴募を直接に実行はしなかっただろう。とくに朝鮮半島ではそうだった」と述べ、いま下院に提出されている慰安婦問題での日本糾弾の決議案が「日本軍による20万人女性の性の奴隷化」という表現で非難する日本軍による組織的、政策的な強制徴用はなかったという趣旨の見解を示した。
 しかし同報告書は安倍首相らの強制徴用否定の言明について、(1)慰安婦システムの一部分である「徴募」だけの否定の強調は軍が大きな役割を果たした慰安所の設置や運営、慰安婦の輸送、管理などを矮小(わいしょう)化する、(2)一部の言明は徴用にはいかなる軍の強制もなかったと受け取られ、日本政府自身の調査をも含む元慰安婦らの証言に矛盾するーーと批判し、「強制性」の最大の論拠としては2002年に米英両国で出版された「日本の慰安婦」(田中ユキ著)という英文の書を挙げた。
 同報告書はその一方、日本政府が慰安婦問題に対して1990年代前半から「アジア女性基金」の設立などで謝罪や賠償の努力を重ねてきたことを詳述し、「同基金は元慰安婦たちに償い、助けるための日本政府の真実の努力だ」として、女性たちによるその基金からの賠償金の受け取りを韓国政府が事実上の脅しにより阻んだとして非難した。同報告書はとくに賠償について政府間ではすでに対日講和条約や日韓関係正常化で解決ずみとの見解を示し、もし諸外国が日本にいま公式の賠償を求めれば、「日本側は戦争中の東京大空襲の死者8万人や原爆投下の被害への賠償を求めてくる潜在性もある」とも指摘した。」

 米議会調査局の報告書には、このような変化が現れていたのだが、下院外交委員会の委員たちは、資料を理解していないか、結論を先に持って資料の内容を無視しているか、どちらかだったのだろう。

●決議案採択には反対意見も
 
 この時点も今も、米議会には、決議案の採択に反対の議員もいる。共和党はもちろん民主党にもいる。本年3月5日付の産経新聞は、反対勢力の意見は、以下のように要約されると報じた。

@日本の首相や閣僚は、慰安婦問題について1993年以来何度も謝罪している。
A2世代前の先人の行為を理由に、現在の日本国民を懲罰するのは不当だ。
B米国も含め世界のどの国も過去には罪を犯してきたが、それほど謝罪はしていない。
C今の日本が米国の同盟国として人道主義を推進し、世界的にも重要な民主主義の旗手であることを、この決議案は無視するに等しい。

 これらの前提にあるのは、日本政府は慰安婦の強制連行を認めて謝罪しているという理解である。謝罪をしているか、していないかで議員の意見が分かれている。慰安婦問題で日本がいわれていることは、歴史的事実と違うという認識をもっている議員が、アメリカにどれだけいるかは、はなはだ疑問である。
 それは、わが国の政府が、河野談話以後、謝罪を繰り返すばかりで、事実の再調査を実行せず、学術的な研究の成果に学ばず、アメリカにまで広がった誤解を正そうという努力をまったくしてこなかったためである。
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第8章 事実を伝え、名誉を守る努力が始まった

 

●民間有志による事実伝達の努力

 わが国の政府は、米下院での対日非難決議の動きに対し、何ら行動しなかった。この状態を見て、民間の有志が事実を伝える活動を開始した。
 外交評論家の加瀬英明氏が代表を務める「史実を世界に発信する会」は、昨年(2006)9月28日にアメリカの全下院議員に、慰安婦問題のポイントを、外国人も理解できるように、明快に記した手紙と資料を送った。また、ホンダ議員に対しては、公開質問状には、本年(平成19年)2月16日付で、公開質問状を送った。この質問状には、先に下院議員に送った資料を添付した。

 ホンダ議員から、回答は来ていない。公職にある者が自分が関わっていることについて公開質問状を受け、これに正々堂々と回答しないのは、まともな考えの人間ではない。

本件は、別に書いたので、詳しくはそれに譲る。

http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12e.htm


●加瀬英明氏が「ニューズウィーク」に寄稿

 「史実を世界に発信する会」の代表として、アメリカの全下院議員に手紙と資料を、またホンダ議員には公開質問状を送った加瀬英明氏は、アメリカの雑誌「ニューズウィーク」の本年4月2日号に、意見を寄せた。
 これは、同誌編集部が、加瀬氏に慰安婦問題と南京事件をめぐる論争について寄稿を求め、それに加瀬氏が応えたものである。(加瀬英明著「米誌『ニューズウィーク』を舞台に中韓と戦った慰安婦論争顛末記」〜月刊『正論』平成19年7月号)
 加瀬氏の記事は「The Use and Abuse of the Past(利用され、悪用される歴史)」と題され、同誌の英語版だけでなく、日本語版(4月1日号)、韓国語版、中国語版、スペイン語版、アラビア語版、ポーランド語版、ロシア語版にも掲載された。

 加瀬氏は、記事の中に、次ぎのように書いている。(原文は英語)
 「韓国政府は1965年に日本との国交を正常化した際に、慰安婦問題にまったく触れなかった。日本の左翼が80年代に入ってからこの問題を創りあげたのだ。慰安所も、その実態は商業施設だった。米陸軍の報告書によると、慰安婦は『売春婦』であり、日本の官憲による『拉致』の例についてはひとつも見つからなかった。慰安婦の4割が日本人であったことにも注目するべきだ。
 多くの日本の政治家は、南京虐殺は中国が捏造したもので、中国がこれを使って政治経済などの領域で日本から利益を引き出そうとしているとみなすようになった。今年2月と3月には延べ60人以上もの国会議員による勉強会が3回催され、事件を否定する多くの証拠が提示された」
 「日本は常識的な防衛力と外交政策を兼ね備えた普通の国として、世界における地位を回復することを願っている、近隣諸国やアメリカが謝罪を迫れば迫るほど、日本の反発が激しくなろう」

 加瀬氏によると、この記事に対し、韓国ではテレビ各局が非難誹謗するニュースを流し、中国では『人民日報』が非難する記事を載せた。
 また、「ニューズウィーク」誌のウェブサイトに、中国人や韓国人から抗議の投稿が殺到した。加瀬氏は「ヒステリックに口汚く罵倒するものばかりであるので、あきれはてた」「私があげた論拠に対して反論するものは、一つとしてなかった」という。そのため、氏自身は、ウェブサイトの論争には加わらなかった。代わって、何人かの日本人有志が論争に参加して健闘し、「冷静に事実を指摘して対応する日本側の完勝だった」という。

 こういう発信と応戦は、本来政治家や官僚が行なうべきことである。「ニューズウィーク」サイトでのやりとりのように、「冷静に事実を指摘して対応する」姿勢が大切だと思う。正々堂々の日本精神で発言したい。またそういう努力を続ければ、理性のある外国人は、事実を理解し、誤解を認めるようになるだろう。  

 

●自民党議連が、安倍首相に提言

 民間有志の動きに対し、わが国の政治家は、何をやってきたのか。日本の国益と日本時の名誉のために、実態を調査し、事実を主張する政治家はいないのか。

 自民党には、平成9年(1997)、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が結成され、現在の中川昭一政調会長が代表、安倍首相が事務局長を務めた。同会は、歴史認識や歴史教育の見直しに積極的に取り組んだ。慰安婦問題については、文部省(当時)の幹部や教科書会社社長、教科書執筆者などを呼び、教科書の記述について追求を行った。また、河野談話を「確たる証拠もなく『強制性』を先方に求められるままに認めた」と批判し、河野氏に撤回を迫ったという。
 同会は、現在「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」と改称して、活動を続けている。現会長は、元文部科学大臣・中山成彬氏である。同会は、本年3月8日には、慰安婦問題に関する提言をまとめ、同日、安倍首相に提出した。

 提言の内容は、以下のとおり。
―――――――――――――――――――――――――――――――
1.「慰安婦」問題に関し、今、米国下院に提出されている決議案は、「若い女性を日本帝国軍隊が強制的に性奴隷化」、「輪姦、強制的中絶、屈辱的行為、性的暴行が含まれるかつて例のない」、「20世紀最大の人身売買」などの客観的史実に基づかない一方的な認識により、日本政府に対して謝罪を求めている。日本の名誉のためにも米下院関係者を含め、「慰安婦」問題に関して内外に正確な理解を求め、決議案が採択されないよう、引き続き外交努力を行う。

2.今回の慰安婦決議案も含めた数々の「慰安婦」問題に関する誤った認識は、平成5年の河野官房長官談話が根拠となっている。
 当時は公娼制度が認められており、慰安婦の中には不幸な境遇の方々がおられたことは認識している。この点に関しては同情を禁じえないし、遺憾の意を表する。しかし、我々の調査では、民間の業者による本人の意思に反する強制連行はあっても、軍や政府による強制連行という事実はなかった。1件だけ、ジャワ島における「スマラン事件」があったが、これは直ちに処分されており、むしろ軍による強制連行がなかったことを示すものである。政府として本問題の根本的解決のため、再度の実態調査を行い、関連する資料の結果を全面的に公開することを求める。
―――――――――――――――――――――――――――――――

 以上のように提言は、慰安婦問題に対する誤った認識は、河野談話が「根拠となっている」という認識に立ち、米議会における謝罪決議案の採択を阻止すること、また根本的な解決のため、政府として再度の実態調査を行い、関連する資料の結果を全面的に公開することを求めている。

 提言を受けた安倍首相は、記者団の質問に対し、「政府による再調査」については言明を避けたが、自民党への資料提供等協力を行っていくことを明らかにした。これに対し、自民党の議連は、あくまでも「政府による『再度の実態調査』」を求め、今後さらに政府に対して「提言」の実施を求めていくと見られる。

 こうした議連の動きには、以下のような事情があったことが伝えられている。平成17年(2005)9月11日の衆議院選挙(郵政選挙)で、重要会員を失った議連は活動を休止していたが、昨年(平成18年)12月、会員の自民党復帰に伴って活動を再開した。官邸の意向を受けたもので、安倍首相も同意した上の活動再開だった。議連が官邸を突き上げる形で提言し、それを受けて政府が河野談話に代わる新しい談話を出すという筋書きだったと、中山会長は語っている。(『史』2月号〜「新しい歴史教科書をつくる会」)
 しかし、こうした動きは、自民党内では少数派の動きであり、またアメリカの議会やメディアの勢いに押されて、まだ実を結んでいない。

●日本の有識者・国会議員が米紙に反論広告

 

旧日本軍の慰安婦問題について、わが国の言論人が本年(平成19年)6月14日付の米紙ワシントン・ポストに、慰安婦らが日本軍によって強制的に慰安婦にされたことを示す歴史文書は存在しないなどとする全面広告を出した。
 広告を出したのは、歴史事実委員会のメンバーで、政治評論家の屋山太郎氏、やジャーナリストの櫻井よしこ氏、花岡信昭氏、西村幸祐氏、作曲家のすぎやまこういち氏の5名。
 賛同者として、国会議員・学者・有識者が名前を連ねている。国会議員は平沼赳夫元経済産業相(無所属)、島村宜伸元農水相(自民)、河村たかし氏(民主)ら超党派の面々が45名。自民党30名、民主党13名、無所属2名である。学者・有識者は14名、東中野修道氏、藤岡信勝氏、加瀬英明氏、西尾幹二氏、岡崎久彦氏らである。

 この意見広告は、「THE FACTS(事実)」と題し、歴史的事実を提示するのが目的だと記している。直接的には、ワシントン・ポスト紙が、4月末に載せた「慰安婦についての真実」と題した社説に対して反論したものとなっている。

ネットブロガーの譲吉氏による全文訳を一部校正して、以下に転載させていただく。 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=467532265&owner_id=9225185

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『事実』

 
この有料意見広告の目的は史実を提示することである。

 月末、「慰安婦に関する真実」を述べる趣旨の広告がワシントン・ポスト紙に掲載された。しかしその陳述における主張は「真実」とはほど遠く、それは「事実」に基づいていると言うよりも、むしろ「信念」の産物に見受けられる代物であった。
 民主主義国家の仲間、そして信頼できる強力な同盟国としてのアメリカ合衆国に対して、日本の人々は最高の敬意を払っている。 民主主義を実質的にオペレートするためには、言論・思想・学術研究そして信仰の自由は保証されるべきであり、その上で市民一人ひとりがそれぞれの適切な結論に達する事が出来る。それを可能にするためには、虚偽、歪曲、偏見や間違った情報ではなく、人々がいつでも正確な情報を入手出来ることが必要である。この意見広告の目的は、これまで十分明るみに出て来なかった「従軍慰安婦」に関する歴史的事実を幾つか提示し、ワシントン・ポスト紙の読者がそれぞれこの問題に関して考えを持って頂きたいと言うものである。

事実

 歴史学者や研究団体によって発見された如何なる歴史的な記録にも、女性達がその意志に反して日本軍によって売春を強制されたことを明確に示すものはない。戦時中の政府や軍幹部の指令を保管しているアジア歴史資料センターの記録でも、女性達が「イアンフ」又は「comfort women (慰安婦)」として働くために、強制的に駆り集められたと示すものは何も探し当てる事は出来なかった。
 それとは対照的に、女性達をその意思に反して強制しないよう民間ブローカーに対して警告している文書が多く見つかっている。
 1938年日付の陸軍省副官通牒2197では、軍の名義を不正に利用したり、誘拐と見なされる方法での募集を明確に禁止しており、そのような方法での採用行為は罰っせられていると警告している。1938年月18日付の自治省指令(No. 77)は、「慰安婦」の募集は国際法に従うべきで、女性の奴隷化や誘拐を禁じている。同年11月日付の指令(No.136)は更に、21歳以上で既に売春婦として働いている女性のみを「慰安婦」として募集して良いとの命令をしている。そこではまた、女性の家族や親類の許可を義務としている。
 一方「慰安婦」の数は20万人に及んだと主張している歴史学者(米国メディアでよく引用されている主張)は、この通牒が軍の積極的な関与の証拠であると考えている。

訳者註

     この意見広告には陸軍省副官通牒2197の写真が挿入されている。
http://iroiro.alualu.jp/sekaisi/misairu/viploader357390.jpg

歴史学者とは吉見義明氏のこと。

事実

 更に、これらの指令が責任を持って実行された事を示す多くの新聞記事が存在する。1938年8月31年付の朝鮮で発行された東亜日報の記事では、女性達を強制的にイアンフにしたブローカーが、当時日本の管轄であった朝鮮の地元警察によって逮捕されたニュースを報じている。これは日本政府が女性に対する非人道的犯罪に対して厳しく対処していたと言う証拠となるものである。

【新聞記事】

悪徳紹介業者が跋扈
農村婦女子を誘拐
被害女性が百名を突破する
釜山刑事、奉天へ急行

【釜山】満州において悪徳業者が貧しい家庭から報酬と引き換えに女性誘拐をしていたが明らかになった[満州は、日本兵がこぞって売春宿に通っていたとの主張がされている所]。釜山に拠点を置く45の悪徳業者が摘発された。それらの業者は釜山で何も知らない若い女性を雇い、家族から引き離し、満州の売春業者に売り飛ばしていた。100人以上の女性が既に被害に会っている。釜山警察による徹底的な捜査で、奉天におけるこれらの業者の存在が明らかになり、6人の刑事が8月20日の夜に現地に向かいこれらの業者を逮捕した。今回の逮捕劇で、これらのブローカーの暗躍が完全に明らかになるものと予想される。

訳者註

・この意見広告にはこの東亜日報の記事の写真がプリントされている。
この東亜日報の記事はタイトルが漢字ハングル混じり、記事がハングルで書かれている。日本語訳がネット上に存在しないので、タイトル以外は英文より翻訳。
http://ameblo.jp/nidanosuke/entry-10027570035.html


事実

 尤も、明確な規律違反のケースもあった。オランダ領東インド(現在のインドネシア)のスマラン島では、陸軍部隊が若いオランダ人女性の一団を強制的に「慰安所」で働かせるために駆り集めたと言う例がある。この事件が明るみに出た時、その慰安所は軍の命令で閉鎖され、更に関係した将校らは処罰された。これらの人物やその他の戦犯はオランダの法廷で死刑を含む厳しい判決が言い渡された。

事実

 マイク・ホンダ下院議員による決議案121や、その他の日本の「慰安婦」虐待に対する告発の殆どが、元イアンフの証言によるものである。しかし当初の陳述には、彼女達が軍や日本政府機関によって強制的に働かされたことを証明するものは何一つなかった。
 それにも関わらず、反日キャンペーンの開始後、これらの証言は劇的な変化を遂げた。下院公聴会での最初のレポートでは、彼女等はブローカーによって連れ去られたとあるが、その後、誘拐した人物の服装を「警察の制服に見えた」と主張している。

【下段の小さい文字サイズの太字で書かれている部分】

 悲しい事に、第二次大戦中の不幸な時代に多くの女性が極甚な苦難に合い、この悲劇的な歴史事実を私達は深い遺憾の意を持って考える。
 同時に、下院決議案の「20世紀の尤も大きな人身売買事件の一つ」として日本軍が「若い女性達を性奴隷に強制した」戦争犯罪者であると言う主張は、粗野で計画的な事実歪曲であることを私達は注意する必要がある。戦時中のおよそ2万人のイアンフの5分の2は日本人女性であることは、歴史学者秦郁彦氏の研究論文で詳しく述べられている。
 アメリカの一般市民の方々と真実を共有する事が私達の第一の関心事である。実際に起こった事への批判は甘んじて受け入れるべきものであるが、根拠のない中傷や名誉毀損に対して謝罪することは、歴史的事実に関してアメリカ世論に間違った印象を与えるだけでなく、日米友好に否定的な影響を与えることになるかもしれない。私達が求めているのは「事実」が客観的に見られることのそのたった一点であり、そこで初めて正確な歴史認識が共有出来るようになる。

 
『組織的強制的な募集はなかった:慰安婦に関する誤解と日本軍』の英訳は
http://www.sdh-fact.com/CL02_1/31_S4.pdf

賛同者

国会議員

自由民主党)
 
赤池誠章、稲田朋美、江藤 拓、大塚高司、岡部英明、小川友一、 鍵田忠兵衛、亀岡偉民、木原 稔、木挽 司、坂井 学、島村宜伸、杉田元司、鈴木馨祐、薗浦健太郎、平 将明、戸井田徹、土井 亨、土井真樹、西本勝子、林 潤、古川禎久、松本文明、松本洋平、武藤容治、愛知和男、山本朋広、渡部 篤、中川義雄

民主党)
 
松木謙公、笠 浩史、牧 義夫、吉田 泉、河村たかし、石関貴志、泉 健太、神風英男、田村憲司、鷲尾英一郎、北神圭朗、松原 仁、松下新平

無所属)
 
西村眞悟、平沼赳夫

学者/評論家/ジャーナリスト

 
学者:福田 逸、遠藤浩一、宮崎正弘、東中野修道、荒木和博、島田洋一、西岡 力、藤岡信勝
 
評論家:加瀬英明、西尾幹二、富岡幸一郎、岡崎久彦
 
ジャーナリスト:青山繁晴、茂木弘道

 
我々、歴史事実委員会のメンバーは、上記の意見広告を是認する。
 
屋山太郎(政治コメンテーター)、櫻井よしこ(ジャーナリスト)、花岡信昭(政治コメンテーター)、すぎやまこういち(音楽家)、西村幸佑(ジャーナリスト)

 
106-0047 東京都港区南麻布3丁目16−8 イトーピア南麻布603
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

この意見広告に関して、時事通信社は、15日付の記事で「「強制性否定」が逆効果」と題し、「ここまで支持が拡大した要因の1つに、安倍晋三首相が「狭義の強制性」を否定する論陣を張り、米議員の反感を買ったことが挙げられる。日本の国会議員らによる最近の強制性否定の意見広告が駄目押しとなったとの見方も広がっている。」と書いた。
 毎日新聞も、同日付の記事で、「日本の超党派国会議員らは14日付の米紙に「旧日本軍が強制的に慰安婦にさせたとする歴史的文書は見つかっていない」との全面広告を出したが、同日中に共同提案者は5人増え、同広告への米国内の反発が強まったとの指摘もある。」と書いた。
 これらの文言は、正確な報道と言うより、「狭義の強制性」つまり強制連行を否定したり、事実を伝えようとする広告を出すのは逆効果という印象を、読者に持たせるための作為的な表現と思われる。
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第9章 米下院外交委は対日非難決議案を採択

 

●米下院外交委が決議案を採択

 

アメリカ下院外交委員会は、6月26日、慰安婦問題に関する対日非難決議案を原案を一部修正のうえ、39対2(欠席9)の賛成多数で可決した。圧倒的多数による裁決である。反対の2名は、ともに共和党の議員だが、法案の内容ではなく、同委員会が過去の歴史問題を判断するのにふさわしくないとして反対したにすぎない。民主党だけでなく共和党議員の多くも賛成したことから、下院本会議に上程されれば、採択されるのは確実とみられている。
 決議案は、原案よりも表現をやや緩やかにする修正が加えられて、採択された。しかし、ホンダ議員及び抗日連合会の対日非難の趣旨は変わっていない。
 以下が、米下院外交委決議の全文である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<慰安婦問題に関する米下院外交委の決議案全文>

 日本政府は1930年代から第2次世界大戦期間に、「慰安婦」と呼ばれる若い女性を日本軍に性的サービスを提供する目的で動員することを公式に委任した。日本政府による強制の軍隊売春制度「慰安婦」は、集団の性的暴行や強制流産、辱め、身体の切断や死亡、究極的に自殺を招いた性的暴行など、残虐性と規模で前例のない20世紀最大規模の人身売買のひとつだ。

 日本の学校で使われている新しい教科書は、慰安婦の悲劇や太平洋戦争中の日本の戦争犯罪を縮小しようとしている。

 日本の公共、民間の関係者は、慰安婦の苦しみに対する政府の真剣な謝罪を盛り込んだ1993年の河野洋平官房長官の慰安婦関連談話を希釈したり撤回しようとする意図を示している。

 日本政府は、1921年に女性と児童の人身売買を禁止する条約に署名し、2000年には武力紛争が女性に及ぼす影響に関する国連安全保障理事会決議1325号も支持している。

 下院は、人間の安全と人権、民主的価値、法律の統治や安保理決議1325号への支持など、日本の努力を称賛する。

 日米同盟はアジア太平洋地域での米国の安保利益の礎で、地域安定と繁栄の根本だ。

 冷戦以降、戦略的な環境の変化にかかわらず、日米同盟はアジア太平洋地域で政治・経済的な自由と人権、民主的制度に対する支持、両国国民と国際社会の繁栄確保などを含む共同の核心利益と価値に基盤を置いている。

 下院は、日本の官僚や民間人の努力で1995年に民間レベルのアジア女性基金が設立されたことを称賛する。アジア女性基金には570万ドルが集まり、日本人の贖罪(しょくざい)を慰安婦らに伝えた後、2007年3月31日付で活動を終了した。

 以下は米下院の共同意見。

1.日本政府は1930年代から第2次世界大戦終戦に至るまでアジア諸国と太平洋諸島を植民地化したり戦時占領する過程で、日本軍が強制的に若い女性を「慰安婦」と呼ばれる性の奴隷にした事実を、明確な態度で公式に認めて謝罪し、歴史的な責任を負わなければならない。

2.日本の首相が公式声明を通じ謝罪すれば、これまで発表した声明の真実性と水準に対し繰り返されている疑惑を解消するのに役立つだろう。

3.日本政府は、日本軍が慰安婦を性の奴隷として人身売買を行った事実は決していないとする主張に対して、明確に、公開的に反論しなければならない。

4.日本政府は、国際社会が提示した慰安婦に関する勧告に従い、現世代と未来世代を対象に残酷な犯罪について教育を行わなければならない。

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 この採択に対し、塩崎官房長官は同月27日の記者会見で、「政府の立場は4月の安倍首相訪米(の際のおわび表明)を含めて明らかにしている。付け加えることはない。他国の議会のことであり、政府としてコメントする筋合いのものではない」と述べ、事態の推移を静観する考えを示した。
 その一方、ワシントン・ポスト紙に全面広告を掲載した自民・民主両党など超党派の国会議員らは、決議案採択に強い反発を表わした。平沼元経産相らは、記者会見し、「事実に基づかない決議は、日米両国に重大な亀裂を生じさせる。憂慮をもって受け止める」とする声明文を発表した。この声明文は、「1日米両国での慰安婦問題に関する共同歴史研究、2河野談話の歴史的検証」の2点を提案している。そして、次のように述べている。

「特に日本国内に於いては、このような事態を引き起こした平成5年(1993)の河野談話の徹底的な検証を行い、河野談話の責任を追及する必要がある。「決議案121 号」の提案者、マイク・ホンダ議員は「河野談話」が提案の根拠となったと述べているからである。なぜ、歴史事実に基づかない河野談話が生まれたのか、その経緯と事実関係の徹 底的検証が必要になる。さらに、日本の情報発信、広報のあり方をあわせて研究 、提言する必要がある。具体的には有識者と共に研究会などを通し、政府に要望と提言を行い、河野衆議院議長の責任も追及して行く。」と

●背後に中国系団体の宣伝・買収工作が


 私は、下院外交委員会で非難決議が採択された要因には、中国系反日団体が積極的に工作を行なっていることがあると思う。
 わが国の有識者・国会議員らがm6月14日ワシントン・ポスト紙に意見広告を出す2週間ほど前、「世界抗日戦争史実維護連合会」がニューヨーク・タイムズに広告を出した。この団体こそ、マイク・ホンダ議員に多額の献金をして対日非難決議案採択を推進している団体である。決議案121の内容は、同連合会の主張とほぼ同じである。
 産経新聞は、同連合会の広告について伝えている。

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●産経新聞 平成19年6月3日付
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070603/usa070603004.htm

米議会、慰安婦決議案 中国系団体も表舞台に
採択訴える新聞広告を掲載

 【ワシントン=古森義久】米国議会での慰安婦問題での日本糾弾決議案の推進でこれまで韓国系組織の背後に隠れた形だった中国系反日団体がついに表面に出てきた。同団体が自らの名を明記して米紙ニューヨーク・タイムズに日本を非難して同決議案の採択を訴える意見広告を載せた。
 ニューヨーク・タイムズ5月28日付は第19面の右下半分に米国下院に出ている慰安婦決議案への支持を訴える意見広告を掲載した。同広告は同紙3月6日社説の「安倍首相は『日本軍の性的奴隷』のどこを理解できず、謝罪ができないのか」という記述を冒頭に載せ、「何十万もの女性が性的奴隷へと強制徴用された」と非難した。さらに同広告は安倍首相ら日本の指導者がその真実を無情にも否定したとして、マイク・ホンダ議員が提案して共同提案者が129人となった、日本に明白な謝罪を求める「下院決議案121」の採択を訴えた。
 同広告を掲載した具体的な当事者としては「世界抗日戦争史実維護連合会」(以下、抗日連合会と略)の名がまず記され、そのウェブサイトのアドレスも大きく明記されていた。(略)米国ではこれまで慰安婦決議案推進ではもっぱら「ワシントン慰安婦連合」という韓国系組織が前面に出て、中国系の世界抗日戦争史実維護連合会は背後に隠れた形となっていた。それが新聞広告に組織名を出すという格好で表面に登場してきたのは、同決議案の上程などが意外に難航し、組織をあげての宣伝工作が必要とみなされるようになったためともみられる。
(2007/06/03 19:27)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「世界抗日戦争史実維護連合会」が表面に出てきたというのは、中国共産党が今こそ攻勢をかける時機として指令を出しているのだろう。
 わが国のほうは、国会議員・有識者が有志の活動として、新聞広告を出しているに過ぎない。それに比し、中国のほうは、国を上げて、また在米中国人組織を上げて、宣伝・買収工作をしている。このPRの質・量の違いが、米議会の動きとなって表れているものと思う。

●工作はラントス委員長にも及ぶ

産経新聞平成19年6月28日付の記事は、米下院外交委員会が決議案を可決した動きの背後で、中国系反日団体の抗日連合会がトム・ラントス委員長に激しい圧力をかけ、敏速に採決の動きをとらなければ次回の選挙で別の候補を支援するという政治的脅しがあったと報じている。元の情報は、カリフォルニア州中部の地方通信社「ベイ・シティ・ニューズ」(本社・サンフランシスコ)の6月14日発報道であり、地元の新聞数紙に掲載されたという。以下、産経の記事から引用する。
 

「同報道によると、歴史問題で日本を一貫して非難している在米中国系団体「世界抗日戦争史実維護連合会」(以下、抗日連合会と略)の幹部たちは、他の在米中国系組織幹部とともに同州クパナティノの中国料理店で集会を開き、マイク・ホンダ議員らが下院に提出した慰安婦決議案の可決促進を協議した。抗日連合会のイグナシアス・ディン副会長(中国系米人)が語ったところでは、同幹部連は下院のナンシー・ペロシ議長とラントス委員長が(慰安婦決議案の採決推進に関して)言い逃げをしているとの見解を明示した。とくにラントス委員長は人権擁護派の評判にもかかわらず「同決議案支持へのわれわれの訴えに応じず、有権者とアジア系米人社会への軽侮を示している」と主張したという。(略)
 しかし「ベイ・シティ・ニューズ」の報道によると、抗日連合会の幹部らは民主、共和両党議員への政治献金者であり、このままではラントス委員長らに献金目的にのみ利用され、実際の行動では放置されるという懸念を表明した。そしてディン氏らは「選挙区の33%がアジア系住民であるラントス委員長が同氏らと意思疎通できないならば、もう新しい議員の選出の時期となるだろう」と告げた。ディン氏らはこの「脅し」をラントス委員長のカリフォルニア第12区の人口動態の数字と過去の投票結果で裏づけ、2008年の下院選挙では自分たち自身の候補をラントス委員長への対抗馬として立てることを示唆した。
 ディン氏は「ラントス事務所の私たちに対する最近の扱いにはまったく当惑している。すでに対抗候補として十分に資格のあるアジア系米人女性を含む数人を考慮している」と語ったという。(略)」

 

こうした脅しが、ラントス委員長に対して行なわれ、外交委員会での採決が推進されたと考えられる。米国議会は、中国が対日政策と東アジア戦略を実行するための工作の場になっているのである。

日本の政府、メディア、そして国民は、国際社会の厳しさと中国を中心とした半日勢力の活動の目的をよく理解して、対抗していかなければならない。

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むすび  日本の興亡のかかる課題として取り組もう

 

    河野談話を訂正し、新しい政府見解を発表すべし

 

アメリカ下院外交委員会の慰安婦問題に関する対日非難決議は、捏造や誇張の多い資料とその時々で内容の変わる元慰安婦の証言の誤りを見抜けない議員たちが、自国の所業を棚に上げて行った独善的な決議である。
 今後、下院に上程されるが、安倍首相及び今後の国家指導者は、事実を無視した決議に圧されて、公式な謝罪声明など出してはならない。逆に、これを機会に、わが国の名誉と誇りを損ねている河野談話を訂正し、事実調査と学術研究に基づく新たな政府見解を準備・発表すべきである。そして、わが国政府は、これまでの姿勢を改め、米国に事実を知らせ、同盟国の中にある誤解を解く努力を行うべきである。

 わが国は、この機会により一層積極的に事実を伝え、誤解を解くために政府・国民が一丸となって努力すべきである。
 仮に外交委員会で採決されても、下院本会議でも同様に裁決されるとは限らない。安倍首相及び麻生外相は、ここが正念場と思って腹を決め、首相の立場、外相の立場で、日本の言い分を堂々と主張すべきである。
 アメリカや中国・韓国の反応をおそれてはならない。真実を守るために戦う者だけが、誇りを持ち続けることができる。そして、誇りを保つ者だけが、自らの精神を発揚することができるのである。

 

●慰安婦・南京・靖国そして皇室へと対日攻撃は続く

 わが国へのいわれなき非難は、慰安婦問題に向けられているだけではない。本年(平成19年)、海外では、南京事件に関する映画が12本も製作されるという。いずれも「大虐殺」という誇張・捏造の宣伝のための映画である。背後には、中国共産党の反日宣伝工作と資金提供があると見られる。わが国の首相が、慰安婦問題で事実に反することを公式に認めて謝罪するならば、やがて「南京大虐殺」も認めざるを得なくなるだろう。
 慰安婦の「性奴隷化」や南京での「大虐殺」を青少年に教育することを強要されることになれば、日本人の誇りや自尊心は、徹底的に打ち砕かれる。それは、日本人が日本人としての精神を一層失い、日本が自壊・衰亡に進む道である。

 国際的な反日勢力は、次の攻撃の焦点を、靖国神社に合わせているようである。わが国では、中国・韓国の批判に呼応して、「A級戦犯」の合祀を問題にする意見がある。こうした日本国内の意見の相違を助長するごとく、靖国神社から韓国人英霊2万余柱の分祀を要求する動きが出ている。(註1)

 国際的な反日勢力は、慰安婦・南京・靖国等の歴史認識の問題を取り上げて、日本人の誇りを打ち砕いて、日本を精神的に弱体化させようと企図している。その際、日本人がよく認識すべきは、対日攻撃の真の標的は、天皇の権威にあることである。
 慰安婦問題や南京事件に関して昭和天皇を断罪し、天皇の権威を貶め、靖国神社における天皇と英霊と国民の紐帯を断つ。天皇は、日本の国民統合の象徴であり、扇で言えば要のような存在である。要をはずせば扇はばらばらになるように、日本国民は統合力を失って解体する。
 国際的な反日勢力は、わが国の国家社会の特徴、日本文明の特質をとらえて、攻撃すべき的をしぼって、日本に情報戦・心理戦を挑んでいる。これに、反日的な日本人や、日本人に成りすました者が、国内で呼応して活動している。
 なかでも女性天皇の容認と皇統の女系継承への転換は、皇室の伝統を廃止して、皇室が衰滅することを直接ねらうものであり、日本の伝統を否定して、合理化・民主化・個人化等の西洋近代的価値を徹底することによって、日本の非日本化を進めるものである。

●慰安婦問題は、日本の興亡に関わる課題と心得よ

 対日攻撃は、日本自体の弱体化を図るだけでなく、国際社会における日本の名誉を損ない、同時に日本とアメリカの間に摩擦・対立を生ぜしめようとするものだろう。目的は日米同盟を解消し、アメリカをアジアから追い出して、共産中国がアジアで覇権を確立することである。この過程で、韓国・北朝鮮は、共産中国に呑み込まれ、大陸から半島にわたる中華文明圏が、わが国の目と鼻の先に出現する可能性が高い。
 この時は、同時にわが国の国内に、中国系・コリア系の住民が増え、影響力を強めていくものとなろう。

 この戦略に、わが国がなすすべなく不作為を続ければ、わが国は、国際社会で危地に陥ることは、明らかである。下手をすると、わが国自体も、中国に呑み込まれてしまうおそれがある。それは、日本のシナ化であり、共産化の道である。

 国際・国内の反日勢力の目的は、日本の弱体化、解体、滅亡である。そのために、慰安婦や南京、そして靖国を利用しているのである。慰安婦問題で敗れれば、次の攻防はより厳しくなると覚悟した方がよい。
 わが国の政府及び国民は、慰安婦問題の事実を明らかにし、世界に広がる誤解を解き、日本及び日本人の名誉を守ることに力を結集したい。慰安婦問題は、日本の興亡に関わる課題として、心して取り組まねばならない。
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(1)靖国神社については、拙稿「慰霊と靖国〜日本人を結ぶ絆」をご参照のこと。

http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08f.htm

 

関連掲示

    拙稿「旧日本軍の慰安婦問題〜対日非難決議案を阻止すべし

http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion12e.htm

 

参考資料

・秦郁彦著『慰安婦と戦場の性』(新潮選書)、『昭和史のなぞを追う』(文春文庫)

・藤岡信勝著『日米離反を仕掛ける中国の罠を打ち破れ』(月刊「正論」平成19年6月号)

・西岡力著『日韓「歴史問題」の真実 「朝鮮人強制連行」「慰安婦問題」を捏造したのは誰か』(PHP研究所)、『よくわかる慰安婦問題』(草思社)

    撃論ムック『情報戦「慰安婦・南京」の真実』(オークラ出版)

    「史実を世界に発信する会」のサイト

同会は、歴史認識の論争的な主題について、論文を厳選して英訳し世界に発信している。
http://hassin.sejp.net/
 慰安婦問題では、本文中に書いたホンダ議員への公開質問状、下院議員への手紙・資料のほか秦郁彦氏の論文「幻の「従軍慰安婦」を捏造した河野談話はこう直せ!」(雑誌「諸君!」平成19年5月号)等が英訳されて、同会のサイトにPDFとテキスト形式で掲載されている。(以下はテキスト版)
http://hassin.sejp.net/Hata-Ianfu_text.doc

 

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