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過払い金については、近時、重要な最高裁判例が次々と出ており、大きな傾向としては借主保護の動きにあると言えます。この現状について解説いたします。。
過払い金請求の現状〜大阪の弁護士が語る過払い金請求の実務(債務整理相談室)大阪弁護士会所属 木村雅史法律事務所〜交通事故、債務整理、過払い金請求、自己破産、個人再生、相続問題、企業倒産専門


目次

第1 取引履歴の開示について
第2 みなし弁済規定の適用について
第3 制限超過部分の充当関係に関して
 1 問題の所在
 2 判例
  (1) 基本判例〜ロプロ判決
  (2)基本契約がなく、取引中断期間がある場合に過払い金充当を認めた判決
  (3)3年間の取引中断期間があった場合に、新貸付への既発生過払い金の充当に否定的姿勢
   を示した判例
 3 まとめ
第4 過払い金請求権の消滅時効について
第5 過払い金返還請求に際して、利息も付して請求できるか
第6 現段階での過払い金請求方法 
 1 取引履歴の開示請求
 2 過払い金の推定計算等
 3 過払い金に対する利息請求
 4 取引期間中断の抗弁に対して
 5 過払い金請求訴訟の提起
 6 過払い金請求訴状例


第1 取引履歴の開示について
貸金業者が保有している取引履歴の開示は、過払い金を算出するための基礎となるものであり、重要なものです。しかし、貸金業者は、これを全部開示することに消極的でした。

平成17年7月19日最高裁第三小法廷判決(民集59巻6号1783頁)は、貸金業者は、保存している業務帳簿(保存期間を経過して保存しているものを含む。)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負い、この義務に違反して取引履歴の開示を拒絶したときは,債務者は、慰謝料を請求できるとした判決です。これによって過払い金の計算がかなり容易にできるようになりました。

(判決要旨)
「一般に,債務者は,債務内容を正確に把握できない場合には,弁済計画を立てることが困難となったり,過払い金があるのにその返還を請求できないばかりか,更に弁済を求められてこれに応ずることを余儀なくされるなど,大きな不利益を被る可能性があるのに対して,貸金業者が保存している業務帳簿に基づいて債務内容を開示することは容易であり,貸金業者に特段の負担は生じないことにかんがみると,貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り,貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として,信義則上,保存している業務帳簿(保存期間を経過して保存しているものを含む。)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負うものと解すべきである。そして,貸金業者がこの義務に違反して取引履歴の開示を拒絶したときは,その行為は,違法性を有し,不法行為を構成するものというべきである。」

(解説)
貸金業者が保有している取引履歴については、法律の規定で保存が義務づけられている期間(商法上の商業帳簿の保存期間10年、貸金業規制法の帳簿の保存期間3年)以上の期間の開示には消極的でしたが、保存義務期間に拘わらず、保有している取引履歴全部を開示すべき義務があると判断し、その義務に反して開示しなかった場合には、債務者は慰謝料の請求が出来るとした画期的な判例です。
この判決を受けて、平成18年12月に貸金業法の改正が行なわれ、債務者等から開示請求があった場合に、貸金業者はこれを拒めない旨の規定が設けられました(貸金業法19条の2)
しかし、大手の消費者金融業者は、全取引を開示するような傾向にありますが、過払い金の請求がなされることを恐れ、保存義務期間以前の分は破棄して保存していない、などと述べて開示してこない業者も少なからずいる点が依然として問題です。


第2 みなし弁済規定の適用について
貸金業者が、貸金業法17条、18条の規定に基づく書面(詳細を明記した契約書、弁済金の受領証等)を債務者に交付した時は、債務者は、同法43条1項又は3項によって、高利の金利を任意で支払ったこととみなされ、貸金業者には、いわゆるグレーゾーン金利を収受できる法的根拠が発生するとされてきました。しかし、平成18年1月13日最高裁第二小法廷判決(民集第60巻1号1頁)は、このようなみなし弁済規定を実質的に無効にする結論をもたらしました。

(判決要旨)「債務者が,事実上にせよ強制を受けて利息の制限額を超える額の金銭の支払をした場合には,制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったものということはできず,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。本件期限の利益喪失特約は,法律上は,上記のように一部無効であって,制限超過部分の支払を怠ったとしても期限の利益を喪失することはないけれども,この特約の存在は,通常,債務者に対し,支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り,期限の利益を喪失し,残元本全額を直ちに一括して支払い,これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え,その結果,このような不利益を回避するために,制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになるものというべきである。したがって,本件期限の利益喪失特約の下で,債務者が,利息として,利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には,上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り,債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である。」

(解説)
貸金業者との契約書には、必ず、借入金の弁済を滞った場合は、残金、利息を一括で支払わなければならず、遅延損害金も発生するとする「期限の利益喪失条項」という条項が設けられています。
「元金又は利息の支払いを遅滞したときは催告の手続きを要せずして期限の利益を失い直ちに元利金を一時に支払います。」というような条項です。このような条項が設けられている限り、債務者は、利息制限法所定の利率を上回る利息であっても、それを支払わなければ、約定の残元利金及び遅延損害金を一括で支払わなければならないという過酷な状況に陥ると思い込むのが通常と言えますから、自由意思、すなわち任意で支払ったとは言えないことになります。そこで、最高裁は、期限の利益喪失条項がある場合には、特段の事情のない限り、いくら貸金業法18条に定める書面が交付されていたとしても、任意で支払ったとは言えず、貸金業者は制限超過利息を収受する根拠を失い、制限超過利息は元本の支払に充当されると判断したものです。最高裁は「特段の事情」があれば、任意で支払ったことになる余地があるとして、それを審理させるため、破棄自判にせず、原審に差し戻ししていますが、この「特段の事情」というのは、法律のことを熟知している人が高金利を自ら払ったような場合に限定され、実質的には殆どあり得ないことになるでしょう。


第3 制限超過部分の充当関係に関して
1 問題の所在
みなし弁済規定の適用がない場合、利息制限法に定める利率以上の金利については、元本に充当されることになり、これによって元本が消滅した後は、過払い金が発生することになりますが、同一の債務者が複数の口数の借入れを行なっていた場合、この過払い金は、別口の借入金に充当されることになるのでしょうか。
充当されないのなら、既発生の過払い金は、返還請求ができますが、一方で、別口の借入金には何ら影響は及ぼさないことになります。充当されるのなら、別口の借入金もどんどん元本が減っていくことになり、結果として、別口の借入金について生じる利息制限法所定の金利(借入元金10万円以上100万円未満で年18%で決して低いとは言えません)も低額に抑えることができ、トータルで見れば、債務者にとって有利な結論となります。

2 判例
(1) 基本判例〜ロプロ判決
平成15年7月18日最高裁第二小法廷判決(民集57巻7号895頁)は、いわゆる「ロプロ判決」と呼ばれている有名な判決です。

(判決要旨)「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けとその返済が繰り返される金銭消費貸借取引においては、借主は,借入れ総額の減少を望み,複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常と考えられることから,弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果当該借入金債務が完済され,これに対する弁済の指定が無意味となる場合には特段の事情のない限り,弁済当時存在する他の借入金債務に対する弁済を指定したものと推認することができる。」


(解説)
この最高裁判例によって、既発生過払い金の別口への債務に対する充当が基本的に認められました。

しかし、「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けとその返済が繰り返される金銭消費貸借取引においては」と限定を付しているため、基本契約が存在しないで、貸付口毎に契約書が作成されている場合には、既発生過払い金の別口への充当は認めないという貸金業者側の抗弁を招くことになりました。

また、「特段の事情のない限り,弁済当時存在する他の借入金債務に対する弁済を指定したものと推認することができる。」と判示していることから、「弁済当時存在しない債務に対しては充当はなされない」との貸金業者の主張を招くことになりました。
すなわち、複数の貸付口が並行してある場合ではなく、過払い金発生後、しばらくしてから再貸付をした場合には、既発生過払い金は新たな貸付に対しては充当されないという抗弁です。

(2)基本契約がなく、取引中断期間がある場合に過払い金充当を認めた判決
平成19年7月19日最高裁判所第一小法廷判決(民集第61巻5号2175頁)は、基本契約に基づかず頻繁な契約の借換による取引が何度も継続していたケースで、約3ヶ月の取引中断期間がある場合に、発生した過払い金が次の借入に充当されると判断した判例です。

(判決要旨)
「同様の方法で反復継続して行なわれていたものであり、同日(3ヵ月後の新たな契約)の貸付も、前回の返済から期間的に接着し、前後の貸付と同様の方法と貸付条件で行なわれたものであるというのであるから、本件各貸付けを一個の連続した貸付取引であるとした原審の認定判断は相当である。本件各貸付けのような一個の連続した貸付取引においては、当事者は、一つの貸付けを行う際に、切替え及び貸増しのための次の貸付けを行うことを想定しているのであり、複数の権利関係が発生するような事態が生ずることを望まないのが通常であることに照らしても、制限超過部分を元本に充当した結果、過払い金が発生していた場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解するのが合理的である」

(解説)
この判決によって、基本契約がない場合でも、同様の条件にて返済と貸付が繰り返され、いったん完済後、新たな貸付けの期間が3ヶ月空いたとしても、一個の連続した取引とみなされ、前に発生していた過払い金は、新たな貸付金の充当に回されることになりました。
しかし、3ヶ月以上の期間が生じた場合はどうなるのか、そして、「前後の貸付と同様の方法と貸付条件で行なわれたもの」ではない場合、例えば利率や極度額に変更が生じた場合にどうなるのか、という点については、依然として解釈が分かれる余地を残すことになりました。

(3)3年間の取引中断期間があった場合に、新貸付への既発生過払い金の充当に否定的姿勢を示した判例
平成20年1月18日最高裁判所第二小法廷判決(民集第62巻1号28頁)は、いわゆるリボルビング方式の取引で、一度完済後、約3年後に再度契約書を取り交わして取引を再開したケースです。以前の過払い金が新しい借入金に充当されるかが争われましたが、原則として充当されないという債務者保護からは一歩後退した判断が下されました。しかし、このような取引中断のケースで、充当を認める場合とはいかなる場合か、一定の基準が示されましたので、実務上、非常に重要な意義を有する判決と言えます。

(判決要旨)
「同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務の各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払い金が発生するに至ったが,過払い金が発生することとなった弁済がされた時点においては両者の間に他の債務が存在せず, その後に,両者の間で改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には,第1の基本契約に基づく取引により発生した過払い金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り,第1の基本契約に基づく取引に係る過払い金は,第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されないと解するのが相当である
 そして,第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間,第1の基本契約についての契約書の返還の有無, 借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無, 第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況,第2の基本契約が締結されるに至る経緯,第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には,上記合意が存在するものと解するのが相当である。」として、この事情についてさらに審理させるため、原審に差し戻しました。

(解説)
本判決は、基本契約が取り交わされていても、取引期間の中断が約3年間に及び、第2の貸付けの際に新たな基本契約を締結し、かつ利率や遅延損害金の取り決めに変動があった場合には、第1の取引で発生した過払い金は、原則として第2の取引に充当されないとした判決です。
そして、このように新たな基本契約が締結されたケースでも、特段の事情により、新たな取引が事実上連続した貸付取引であると評価することができる場合には、過払い金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するものと解すると判断しました。

この判例は、充当を認める特段の事情として、以下の7つの基準を例示として示しています。

ア 第1の基本契約に基づく貸付及び弁済が反復継続して行われた期間の長さ(この期間が長ければ、既発生過払い金の充当が認められやすくなります。)
イ 最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間(この期間が短ければ、既発生過払い金の充当が認められやすくなります。)
ウ 第1の基本契約についての契約書の返還の有無(契約書が返還されていなければ、既発生過払い金の充当が認められやすくなります。)
エ 借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無(失効手続がとられてなければ、既発生過払い金の充当が認められやすくなります。)
オ 第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況(接触があった方が、既発生過払い金の充当が認められやすくなります。)
カ 第2の基本契約が締結されるに至る経緯(貸主からの勧誘があった方が既発生過払い金の充当が認められやすくなります。また、返済能力等の融資に際する再審査がなければ既発生過払い金の充当が認められやすくなります。)
キ 第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同(契約条件が同じであれば、既発生過払い金の充当が認められやすくなります。)

3 まとめ
以上より、現在の裁判所の考えは、
・一個の基本契約で貸付が繰り返された場合は、取引期間の中断があっても、既発生の過払い金の新たな貸付けへの充当を認める。
・基本契約がなく、取引期間に中断がある場合、もしくは基本契約があっても取引が中断され、その後新たな基本契約が作成された場合には、中断期間が3ヶ月程度であれば、一個の連続した取引として、既発生の過払い金の新たな貸付への充当を認めるが、3年に及ぶと、既発生過払い金の充当には否定的である。
・一個の連続した取引になるか否かの判断基準は、上記7つの基準が参考になる。

というものであると思います。


第4 過払い金請求権の消滅時効について
平成21年1月22日最高裁判所第一小法廷判決は、争いがあった過払い金の消滅時効期間について決着を付けた判例です。貸金業者側は、過払い金は、それぞれ発生したときから個別に進行すると主張して、過払い金返還請求権の消滅時効の主張を行ない、債務者側は、最終取引日まで進行せず、過払い金返還請求権の消滅時効は成立していないと主張してきました。

(判決要旨)
 「過払い金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払い金返還請求権の消滅時効は,過払い金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。」

この判決によって、少なくとも基本契約に基づく取引については、過払い金返還請求権の消滅時効の起算点は最終取引日であることになり、過去10年以内に最終取引がある場合には、 過払い金全額を請求できることになりました。
しかし注意を要するのは基本契約に基づく取引であるとすることです。この場合は、基本契約のある範囲内では、一連の取引と見ることができるため、最終取引日まで過払い金返還請求権の消滅時効は進行しないと考えることができます。また、前記第2で検討したところによれば、基本契約がない場合でも、頻繁に取引を繰り返し、取引中断期間が3ヶ月程度であれば、やはり一連の取引と見ることができるので、最終取引日まで過払い金返還請求権の消滅時効は進行しないでしょう。しかし、3年以上の取引中断期間がある場合(基本契約があっても作り直されている場合も含む)は、以前に発生した過払い金は、中断前の取引の最終日から過払い金返還請求権の消滅時効が進行することになり、それが10年以上前であれば、過払い金の請求ができない可能性が高くなりました。

第5 過払い金返還請求に際して、利息も付して請求できるか
過払い金の請求は、民法703条に定める不当利得返還請求権として行使するものです。ところで、民法704条では、この不当利得返還請求について、「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない」と規定しており、この「悪意の受益者」に貸金業者が該当するのなら、過払い金に少なくとも民法の定める年5%の利息を付けて請求できることになります。ここでいう「悪意」とは、不当利得になることを自ら解りながら、高利の利息を収受したことを指します。しかし、これまで、貸金業者は、貸金業法に定めるみなし弁済規定所定の書面を債務者に交付していた場合には、過払い金を収受できる法的根拠があると思っていたのですから、「悪意」ではなかったと主張することになります。
この点、平成19年7月17日最高裁判所第三小法廷判決は、「貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが、その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められないときは、当該貸金業者は、同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り、法律上の原因がないことを知りながら過払い金を取得した者、すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。」と判断し、みなし弁済規定に基づく書面を交付したことを立証しなかった貸金業者が、上記特段の事情も主張・立証しない場合には、悪意の受益者になって、過払い金に年5%の利息を付さねばならないことを示しました。

ここで注意しなければならないのは、みなし弁済規定に基づく書面をきちんと交付していたことを貸金業者側が立証すれば、「悪意」ではなかったとされることです。しかし、現実には、この書面をきちんと交付している業者は殆どいないのが現実です。この書面は極めて厳格に解釈されており、一つでも要件を欠けば、みなし弁済規定の適用はないとされてきたからです。

では、貸金業者が、自分では、みなし弁済規定の適用を受けうる書面だと思っていたけれども、現実には要件が欠けるものだった場合はどうでしょうか。主観的には誤解に基づくものであり、「悪意」ではなかったともいえそうですが、この点についても最高裁判例があります。

平成19年7月13日、最高裁判所は、「償還表」を交付し、それをもって(契約書面と併せて一体のものとするなどして)貸金業者側としては貸金業法上のいわゆる17条書面又は18条書面として認識をしていたとの2つの事件について、償還表の交付では貸金業法17条、18条の書面交付義務を満たしているとの認識を有しているとは言えないとして悪意の受益者であることを認定しています。


第6 現段階での過払い金請求方法 
以上より、現段階での過払い金請求については、以下の通り対応すべきと考えます。

1 取引履歴の開示請求
商法上や貸金業規制法の保存期間以前の取引履歴を開示しない業者には、全取引期間を開示するよう求め、それに応じない場合は過払い金だけではなく慰謝料の請求も行なう旨通知して、開示を要求します。また、応じない業者には、行政監督庁に行政指導、処分を促す申告を行なうことも効果的です。

2 過払い金の推定計算等
それでも応じない場合は過払い金の推定計算を行なうか、開示した最初の時点での残高がゼロであるとして計算した上で、過払い金とともに慰謝料の支払を求めます。
過払い金の推定計算は、契約書やカード、その他の資料があるときは、それに基づき、それがない場合は記憶に基づいて、開示された期間の取引経緯を参照して毎月の借入額、返済額を推定して行ないます。
また、開示された最初の時点での残高がゼロとして計算するのも有効な方法です。この場合、業者は開示された取引履歴の最初の残高が有効に存在したとの主張をしてきますが、本当にその残高が存在したという立証責任は業者側にあります。確かに、履歴上、残高が載っているということは存在したという一つの根拠にはなりますが、その残高も、過去の過払い金によって充当処理され、ゼロになっている可能性が高いため、全取引を開示しない以上、ゼロとして裁判所に認定してもらうことが十分に可能であり、そのような下級審判例も多数あります。
推定計算と開示履歴当初の残高ゼロ計算の、いずれが有利かは、事案によって判断します。

3 過払い金に対する利息請求
過去に発生した過払い金に対しては、発生した時からの利息を過払い金に付して請求します。利率は年5%というのが、判例に従ったものになります。

4 取引期間中断の抗弁に対して
基本契約に基づかない取引、もしくは基づいていても新たな基本契約が作成されている場合で、3ヶ月以上の取引期間の中断がある場合には、業者側からその点の主張が行なわれますので、上記7つの基準をどの程度満たしているかを検討し、満たしているものについて主張し、一連の取引であったことを訴えて交渉します。

5 過払い金請求訴訟の提起
交渉がまとまった場合は、合意書を作成し、返還してもらいます(過払い金返還合意書書式はこちら)。このようにして交渉しても話し合いが難しければ、躊躇なく過払い金請求訴訟に踏み切ります。相手方が取引履歴を全部開示しない場合には、過払い金のみならず慰謝料及び弁護士費用も併せて請求します。最近は、みなし弁済が成立する余地が殆どないことがわかりながら超過利息を請求、収受したことを捉えて、不法行為として慰謝料を認める判例も出てきていますので、そのような場合は、当該慰謝料も付加することも可能です。

過払い金請求訴訟の裁判管轄ですが、債務者の住所を管轄する裁判所で提訴することが可能です。また、過払い金請求額が140万円未満の場合は簡易裁判所、超える場合は地方裁判所となります。

6 過払い金請求訴状例
過払い金請求の訴状例はこちらです。
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