交通事故相談室 〜大阪の弁護士による交通事故の解説。示談交渉、裁判、慰謝料請求、高次脳機能障害     脳脊髄液減少症
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脳脊髄液減少症は、交通事故による外傷によって発症する疾患です。ごく最近になって注目されるようになったもので、これまでむち打ち症とされてきた被害者の多くが、この疾患だと推定されています。
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(1)どのような疾患か
人の脳や脊髄には、脳脊髄液(髄液ともいいます)という液体が満たされています。その総量は100〜150ミリリットルといわれ、脳および脊髄を浸しながら絶えず循環しています。脳脊髄液は脳と脊髄を包み、骨と脳との間にあって滑剤のように作用し、また外からの機械的衝撃に対しては、クッションのように作用するなど、主として脳と脊髄を保護する役割を果たしています。
脳脊髄液減少症は、交通事故の外傷などによって、この脳脊髄液が持続的・断続的に漏れ出すことによって減少し、その結果、頭痛、頸部痛、めまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠など、さまざまな症状を示す疾患です。

(2)どのような症状があるのか
イ 脳脊髄液減少症の主症状は、頭痛、頸部痛、めまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠、易疲労感です。初期には起立性頭痛が特徴的です。起きていると頭痛が強く横になると治まる。ただし慢性期になると横になっても頭痛が治まらないことがしばしばです。頭痛の性質はさまざまで片頭痛タイプであったり緊張型頭痛であったり三叉神経痛様であったりします。多くの患者は頚部、肩、背部の筋肉が石のように硬くなっています。
ロ また、このような主症状のほかに、様々な症状が見られます。そのうち、脳神経症状と考えられて いるものとして、目のぼやけ、眼振、動眼神経麻痺(瞳孔散大、眼瞼下垂)、複視(物が二重に見え る)、光過敏(光がまぶしい)、視野障害、顔面痛、顔面しびれ、聴力低下、めまい、外転神経麻痺 顔面神経麻痺、耳鳴り、聴覚過敏など
 ハ 脳神経症状以外の神経機能障害として、意識障害、無欲、小脳失調、歩行障害、パーキンソン症候群
  痴呆(認知症)、記憶障害、上肢の傷み、しびれ、神経根症、直腸膀胱障害など
 ニ 内分泌障害として、乳汁分泌など
 ホ その他、嘔気嘔吐、頸部硬直、肩甲骨間痛、腰痛など

(3)どのようにして診断されるか
RI脳槽シンチグラム。
放射性医薬品を腰椎穿刺にてくも膜下腔に投入し、CTでは観察できない脳脊髄液の流れを画像によって判断することにより、診断する方法で、脳脊髄液減少症ではもっとも信頼性の高い画像診断法とされています。
また、頭部MRIによって、
  (1) 脳の下方偏位
    前頭部・頭頂部の硬膜下腔開大,硬膜下血腫,
    小脳扁桃下垂,脳幹扁平化,側脳室狭小化
  (2) 血液量増加
    びまん性硬膜肥厚,頭蓋内静脈拡張,脳下垂体腫大
の所見が得られることがありますが、慢性期においては、これら所見が見られないこともあるので、あくまでも参考とされています。この他、MRミエログラフィー(脊柱管に存在する脳脊髄液を立体的に表示させるための検査)なども参考として行われます。
画像検査以外の脳脊髄液減少症の検査方法としては、腰椎穿刺での髄液圧測定や、硬膜外生理食塩水注入試験(腰部硬膜外腔に生理食塩水を20〜40mL程度注入し、1時間以内に症状の改善を認めた場合には脳脊髄液減少症の可能性が高いと診断される)があります。

(4)治療方法はどのようなものか
 脳脊髄液減少症の治療は減少した脳脊髄液を増加させることです。これには保存的治療とブラッドパッチがあります。
 イ 保存的治療
 急性期はもとより慢性期でも一度は保存的治療を行うべきであるとされており、約2週間の安静臥床と十 分な水分摂取(補液または追加摂取1000〜2000mL/日)で症状の相当の改善が見られることがあります。 横になると重力による圧がとくに腰椎部にかかりにくく髄液の漏れが減少し自然にクモ膜の裂け目が修復 されると考えられています。
ロ 硬膜外自家血注入(ブラッドパッチ)
 保存的治療で症状の改善が得られない場合は硬膜外自家血注入が推奨されています。髄液が漏れている部 分の硬膜外腔に自分の血液を注入して漏れを修復する治療です。
 治療後は約1週間の安静が望ましいとされ、同一部位への再治療は,3ヶ月以上の経過観察期間を設けるこ とが望ましいとされています。

 これらの治療によって、3割程度は治癒し、3割〜4割は、症状のかなりの改善が見られるようです。

 (5)交通事故で何が問題になるのか
脳脊髄液減少症は、従来、むち打ち症に過ぎないとして、とても軽く見られてきました。患者が訴えるだけで何ら他覚症状(画像その他検査によって客観的に症状が観察されること)がなく、場合によっては被害者の詐病ではないかと疑われたりして、交通事故被害者は辛い思いをしてきました。しかし、近年、画像検査機器の進歩によって、把握されるようになりました。これは本当にごく最近のことであり、2008年7月31日に、東京高裁によって、高裁レベルでは初めて、脳脊髄液減少症と交通事故の因果関係が認められるようになりました(損保会社側は上告を断念しています)。このように、最近になって解ってきた疾患ですので、きちんと診断できる医療機関もまだまだ少なく、単なるむち打ち症に過ぎないと診断されている交通事故被害者が多数に上ると思われます。特に、交通事故被害者は多くの場合、整形外科で診療を受けていると思われますが、この疾患は脳神経外科領域ですので、適切な診断の機会を逸している方が多数であると思われます。上記のような症状がある場合には、脳神経外科で、かつ、この疾患を専門とする医師にきちんと診て貰うことが大切です。
脳脊髄液減少症は、極めてまれな疾患であるはずだとして、その認定拡大に否定的な研究者も根強くおり、未だ診断法や治療法が確立していないとして、ブラッドパッチ療法には保険適用はされていないのが現状です。また、上記のように東京高裁で、初めて自己と脳脊髄液減少症の因果関係を認める判決が出されましたが、これまで、裁判所の姿勢は消極的でした。調査事務所の行う後遺障害等級認定にも、まだまだハードルがあります。しかし、国は、平成19年から、この疾患を調査研究対象としていますので、今後は、被害者救済の方向性は進んでいくと予想されます。
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