人の脳や脊髄には、脳脊髄液(髄液ともいいます)という液体が満たされています。その総量は100〜150ミリリットルといわれ、脳および脊髄を浸しながら絶えず循環しています。脳脊髄液は脳と脊髄を包み、骨と脳との間にあって滑剤のように作用し、また外からの機械的衝撃に対しては、クッションのように作用するなど、主として脳と脊髄を保護する役割を果たしています。ハ 脳神経症状以外の神経機能障害として、意識障害、無欲、小脳失調、歩行障害、パーキンソン症候群 痴呆(認知症)、記憶障害、上肢の傷み、しびれ、神経根症、直腸膀胱障害など ニ 内分泌障害として、乳汁分泌など ホ その他、嘔気嘔吐、頸部硬直、肩甲骨間痛、腰痛など (3)どのようにして診断されるか脳脊髄液減少症の治療は減少した脳脊髄液を増加させることです。これには保存的治療とブラッドパッチがあります。 イ 保存的治療 急性期はもとより慢性期でも一度は保存的治療を行うべきであるとされており、約2週間の安静臥床と十 分な水分摂取(補液または追加摂取1000〜2000mL/日)で症状の相当の改善が見られることがあります。 横になると重力による圧がとくに腰椎部にかかりにくく髄液の漏れが減少し自然にクモ膜の裂け目が修復 されると考えられています。 ロ 硬膜外自家血注入(ブラッドパッチ)保存的治療で症状の改善が得られない場合は硬膜外自家血注入が推奨されています。髄液が漏れている部 分の硬膜外腔に自分の血液を注入して漏れを修復する治療です。 治療後は約1週間の安静が望ましいとされ、同一部位への再治療は,3ヶ月以上の経過観察期間を設けるこ とが望ましいとされています。 これらの治療によって、3割程度は治癒し、3割〜4割は、症状のかなりの改善が見られるようです。 (5)交通事故で何が問題になるのか 脳脊髄液減少症は、従来、むち打ち症に過ぎないとして、とても軽く見られてきました。患者が訴えるだけで何ら他覚症状(画像その他検査によって客観的に症状が観察されること)がなく、場合によっては被害者の詐病ではないかと疑われたりして、交通事故被害者は辛い思いをしてきました。しかし、近年、画像検査機器の進歩によって、把握されるようになりました。これは本当にごく最近のことであり、2008年7月31日に、東京高裁によって、高裁レベルでは初めて、脳脊髄液減少症と交通事故の因果関係が認められるようになりました(損保会社側は上告を断念しています)。このように、最近になって解ってきた疾患ですので、きちんと診断できる医療機関もまだまだ少なく、単なるむち打ち症に過ぎないと診断されている交通事故被害者が多数に上ると思われます。特に、交通事故被害者は多くの場合、整形外科で診療を受けていると思われますが、この疾患は脳神経外科領域ですので、適切な診断の機会を逸している方が多数であると思われます。上記のような症状がある場合には、脳神経外科で、かつ、この疾患を専門とする医師にきちんと診て貰うことが大切です。 |
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