人は何かに夢中になれる時がある。恋愛、仕事、趣味と様々ではあるが、熱い想いを胸に脇目も振らず目的に向かって突っ走る姿は輝いている。だがなかなか想うようにいかないのも世の中で、立ち止まってしまうこともある。まあ、そんなことを繰り返している自分が好きだったりするのだが…。
「こんなにカッコいい津軽三味線をもっとたくさんの人に、もっと若い人に聴いてもらいたい」…そんな夢をずっと持ち続けている。僕の場合、10歳から津軽三味線にのめり込み、明けても暮れても津軽三味線のことしか頭に無かった。そんな少年時代、津軽三味線を弾いていることを恥ずかしくて誰にも言えなかったのだ。
洋楽器が浸透してしまった現代の日本では街中が洋楽で溢れ、大多数の人が和楽器の音を聞く機会など無くなった。ロックやポップスはもとより、CM音楽や映画音楽とその殆どが洋楽器で演奏されている。そんな時代に逆らうのではなく、今の日本人の感覚に合った新しい津軽三味線音楽を創らなければ何も変わらない。伝統を壊さなければ伝統の発展は無い。そんな想いをこのアルバムに凝縮した。だから津軽三味線ファンだけでなく、より多くの人にこのアルバムを聴いてもらいたい。今回のレコーディングにあたり改名もし、新しいキノシタシンイチと新しい津軽三味線音楽の誕生と自負している。このアルバムをきっかけに津軽三味線の新しい時代が来ることを願っている。
ところで音楽に癒しに効果があることはよく言われている事だが、どうやら本当のようだ。昔聴いた歌がラジオから流れてきた時、当時の思い出が鮮明に蘇って来るし、初めて聴く曲でも感動して涙が流れることもある。英語がわからない人でも、ビートルズやスティーヴィーワンダーの歌に感動した人はいったいどのくらいいただろう? 二十歳を過ぎてようやく洋楽を聴くようになった僕もその一人で、彼らの歌に何度涙したことか。勿論邦楽も例外ではない。和太鼓のリズムに躍動感を覚えたり、津軽三味線の力強さに勇気づけられたり、民謡の唄声に涙したりと音楽のパワーを感じずにはいられない。
近年若い邦楽演奏家が爆発的に増え、異ジャンルとのセッションも多方面で行われ益々活気が出てきた。邦楽は今まさに新しく生まれ変わろうとしている。
僕には洋楽も邦楽も関係ない。ジャンルもいらない。
ただただパッションを感じたい。