| 木下伸市公演 せめぎあう漂泊の魂
津軽三味線ブームを引っ張る実力派が、ハンガリー出身のジプシー(ロマ族)・バイオリンの名手、ロビー・ラカトシュと念願の共演を果たした。二人で共作した新作アルバム「遭遇」を基にした全国ツアーの東京公演に訪れた。
共に漂泊から生まれた芸能で、即興性やサービス精神に富む面も共通している。だから、よくマッチするのだろうと予想されたが、本番は二人の音楽家の信頼に基づく熱いせめぎ合いが続き、予想以上に興奮に満ちた空間となった。
一部はまず木下が津軽民謡を弾き、ラカトシュは「剣の舞」などを披露。共演した二部は、三年前にテレビ番組で初めて一緒に弾いた東欧民謡「ホラ」でスタート。同じく民謡の「チターリのふもとで」を経て、それぞれが作曲したオリジナル曲を続けた。
印象に残ったのは、新作録音当日、その場で即興で共作したという「ICHIE」。木下が津軽三味線的な小気味いいフレーズを繰り出せば、ラカトシュはバイオリンならではの哀切の極みの音色で返す。火花散る応酬が興奮をさらに高める。
共演は必ずしも成功するとは限らない。顔合わせの妙にとどまる場合も多い。今回のように背景がきちんとあり、内容も伴うケースは珍しい。
時に弦を弓でたたき、指でつまびくラカトシュの多彩な演奏法が目を引いた。その自在さは、ロックはもちろん、クラシックまで取り込む幅広い活動を続けてきた木下にとっても、刺激になったのではないか。
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