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実技アンサンブル編

さーて,いよいよアンサンブル編です。ここではあなたがアンサンブルの調弦をする場合を想定して,ポイントをまとめます。基本は独奏の調弦と同じですが,アンサンブル特有の注意点がいくつかあります。独奏の場合はこちら→実技編(独奏)

普段の練習前の調弦

各人で予め調弦する

アンサンブルのメンバーは自分が弾くギターを予め自分で調弦しておきます。調弦が極端に狂っていると,アンサンブルの調弦に時間がかかりすぎるからです。

基準にするギターを決める

調整がよく,弦にもはずれがないギターを選びます。弦の伸びが安定していることも重要です。まずこのギターをしっかり調弦します。ギターだけのアンサンブルであれば,第5弦は通常440Hzに調弦しますが,ピアノ(通常442Hz)など予め調弦(調律)が決まっているものが入る時には,その楽器から基準の音をとります。その楽器が調律直後の状態を保っているか不明な場合が多いですし,たとえ調律直後であっても442.2Hzかもしれません。あるいは441.7Hzかもしれません。したがって,自分で調律できない楽器とのアンサンブルでは,その楽器にギターを合わせる必要があります。

基準ギターの調弦が終わったら,すべてのギターのすべての弦をこれにあわせて調弦します。第5弦だけ合わせて調弦は個別にすると,ギターによって微妙に音程が違うことが多いのです。開放弦の音程が異なっていると,アンサンブルとしての響きに少なからず影響を与えるので,必ず基準ギターと開放弦同士で合わせるようにします。5フレットと12フレットのハーモニクスは,必要に応じて使ってもかまいません。

パートごとに合わせる

ある程度の規模のアンサンブルにはパートマスター(リーダー)がいると思います。まずパートマスターのギターを基準ギターに合わせてもらいます。基準ギターを弾く人を決めて音を出してもらいます。アポヤンドで丁寧に音を出します。あまりタッチを深くしないほうがいいでしょう。深いタッチで弾くと弾いた直後の音程が変化しますし,基準ギターの調弦も狂いやすいからです。

調弦するギターは基準ギターの音にワンテンポ遅れて音を出します。余韻をよく聞きながら調弦ししてもらいます。あるいは,音を上げるか下げるかをあなたが指示します。基準ギターは5秒に1度音を出すくらいのペースでいいでしょう。速過ぎると合わせているひまがないですし,間延びすると効率が悪くなります。

音の合わせ方は独奏の場合と同じですが,開放弦同士であることと,同一弦・同一音程であることから,独奏の場合よりも合わせやすいと思います。音をよく聞きながら糸巻きを回して,うなりが消えるポイントをさがします。この場合も調弦する弦以外は消音しておくことが重要です。

パートマスターのギターを合わせ終わったら各パートに持ち帰ってもらい,パート内で同じ要領で調弦してもらいます。

全体で合わせる

全体での練習を始める前に全員に音を出してもらい,調弦をチェックします。第5弦→第4弦→第3弦→第2弦→第1弦→第6弦の順に,開放弦を1弦ずつ一斉に弾いてもらいます。調弦が悪いと,音がうなったり濁ったりします。その場合は,基準ギターに続けて1本づつ順番に音を出してもらい,音程がはずれているギターを探し出します。探し出したら基準ギターの余韻をよく聞きながら調弦してもらいます。あるいは,音を上げるか下げるかを指示します。このとき,調弦を待っているメンバーには,音をよく聞くことで耳を鍛えてもらいます。

コンサートでの調弦

調弦室は静かに

調弦は音を聞かないとはじまりませんから,調弦する部屋の中を静かにするのは重要です。ギターアンサンブルのコンサートでは,調弦室を設けるのが一般的です。楽屋を時間で区切って調弦室として使う場合もあります。音が聞こえるところで独奏の練習などをしていると,調弦もうまくいきません。お喋りも調弦に必要なもの以外は,最小限に抑えるようにします。アンサンブルの練習場所で調弦も行うような場合は,その時だけでも静かにしてもらいます。

調弦室と舞台との温度差,湿度差が小さいことが望ましいので,温度調整などができる場合は,舞台の環境にできるだけ近くなるようにします。残念ながら温度や湿度の差が大きいときは,調弦したあと,しばらく舞台の袖に置いておきます。そして演奏直前にその場でもう一度調弦を確認できるとベストです。

慣れている人が調弦し,他の人が運ぶ

コンサートの調弦では短時間で精度よく調弦する必要があります。そこで調弦に慣れている少数の人がお互いの音を聴きながら,すべてのギターを基準ギターに合わせて手早く調弦します。人の判断を仰がなくても自分の耳だけで調弦できる人が複数いればベストです。そうでなくとも,調弦に関して信頼できる人が一人いれば,あとはある程度慣れた人が数人いればなんとかなります。

このような状況では,調弦する人数よりもギターを運ぶ人数の方が重要です。調弦する人と同じ数だけ,運び役がいるとベストです。運び役の人は調弦が終わったギターを調弦係から受け取り,代わりに調弦が終わっていないギターを渡します。調弦が終わったギターは弦と糸巻きに触れないように注意しながら,所定の場所に置きます。ギター同士がぶつからないように気をつけて取り扱うので,運ぶ作業には思いのほか時間がかかります。調弦の効率を上げるためにも,調弦担当の人ができるだけ席を立たずにすむようにします。

ギターの置き方に注意する

よくギターを横向きに置いてあるのを見かけます。確かに表面板を上に向けて(仰向けで)置くのは,なんとなく「大丈夫かな」という気になりますし,横向きに置けばスペースも節約できます。しかし横向きに置くと糸巻きのツマミの部分が床に当たって,場合によっては糸巻きが回ってしまいます(写真右)。これではせっかくの調弦も台無しです。ギターは仰向けに置くか,ギタースタンドなどを使ってネックを上に立てて置きましょう。ネックの先のほうを足台にのせて横向きに置くという方法もありますが,重心の関係から後ろ側に倒れやすくなります。あまりお勧めできません。

コンサート中にも調弦を確認する

ひとまとまりのステージが終わった後には,必ず調弦を確認するようにします。舞台でライトを浴びながら数曲演奏すれば,調弦が狂うのが当たり前と思いましょう。進行表に調弦の時間を予め織り込んでおくことが重要です。

独奏者のギターは要注意

コンサートでは独奏・重奏ステージを設け,その間に合奏用の調弦をすることがよくあります。このとき,独奏や重奏から帰ってきたギターには注意しましょう。独奏・重奏では合奏の調弦と全く異なる調弦をすることがあるからです。よくあるのが第6弦をD((6)=D)にするというもの。合奏の調弦が(6)=Eの場合は,合わせたつもりが時間がたつと少し低くなってしまうことがあります。こういった場合は,第6弦をEよりも半音くらい高めのテンションにしてしばらく放置します。その後通常の調弦をすれば,第6弦が下がるのをある程度防止できます。言うまでもないと思いますが,独奏が(6)=Eで合奏が(6)=Dの場合はこれと逆ですね。

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