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網走番外地 日 1965年 92分 |
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監督・脚色 石井輝男 |
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関連映画 高倉健 南原宏治 丹波哲郎 ・豚と軍艦 ・切腹 ・怪談 ・砂の器 ・魔界転生 嵐寛寿郎 ・十三人の刺客 田中邦衛 ・椿三十郎 ・肉弾 ・君よ憤怒の河を渉れ |
ヤクザ映画、特に様式化された(マンネリともいう)60年代の東映任侠映画にまるで関心のなかった僕であるが、これは一見してとても面白かった。もっともこれは通常の任侠映画とはかなり異なる設定であって、だからこそ面白かったといえるのだが。 話は簡単。若い極道・橘真一は2年半の懲役を受けて網走刑務所にやってくる。受刑者はみな一癖も二癖もある連中ばかりで、一本気な橘との間に色々なごたごたを起こす。あと半年で刑期満了という頃、母がガンを患っていると知った橘は、世話になっている保護司の妻木に保釈の申請を頼むがなかなか捗らない。そうこうするうちに、受刑者たちの集団脱獄の計画に巻き込まれ、凶悪な権田と手錠でつながれたまま逃げる羽目になる。一方自分の好意を踏みにじられ、妻も傷つけられたと思った妻木は執拗にその跡を追う。 この映画、もともとは二本立ての添え物として作られたそうだが、こちらの方が大ヒットして計18作のシリーズとなったという。続編については観たことないからわからないが、この正編はとにもかくにも映画としてよく出来ている。 まずお話が面白い。前半は脱獄の計画を中心にした様々な受刑者たちの群像劇、後半は手錠でつながれた権田と雪原を舞台にした西部劇もどきの逃走劇という構成が秀逸。特に前半は様々なドラマがあってにぎやかで、橘と古株の依田・権田組の反目、折に触れて描かれる橘の暗い生い立ち、母の病状を知って脱獄の誘惑に駆られる橘の心理、橘を更正させようと努力する妻木の献身、脱獄の計画とその実行など、非常にテンポよく語られていて飽きさせない。特に嵐寛寿郎演じる老人阿久田の正体がわかって一同が思わずひれ伏す一幕は、思わず膝を叩きたくなるうまさで、前半のハイライトになっている。後半の脱走劇はとてもシンプルだが、トロッコのチェイスと走ってくる機関車の車輪で鎖を切るエピソードを中心によくまとまっている。 そして、そうした面白いお話を見事に演出した石井輝男監督の手腕にも唸った。そのフィルモグラフィーに「徳川女刑罰史」とか「残酷・異常・虐待物語 元禄女系図」とか「ポルノ時代劇・忘八武士道」など、ろくでもないタイトルの映画が並んでいるので、ろくでもない監督かと思っていたらとんでもない!切れ味のよいハードボイルドなタッチを全編にわたって見せてくれる。橘の現在と過去の回想を繋ぐ場面転換のうまさ、阿久田が奪った鏡で出来たナイフの刃に怯えた受刑者たちの顔が映るシャープな画面、見渡す限り真っ白な広漠たる雪原のショットの効果的な挿入、トロッコのチェイスの迫力とスピード感、走ってくる汽車と橘・権田のアップのこれでもかというカットバック、どれも映画の醍醐味をたっぷりと味あわせてくれる演出ぶり。こんなうまい監督だとはちっとも知らなかった。橘と権田の殴り合いのリアルな描写と頭上を飛び交うカラスたちの描写のカットバックは、まるで人の世の争いの空しさを描いているようで、思わず唸ってしまった。 健さんはこの映画でスターダムにのし上がったようだが、それも当然といえるカッコよさ。むこうっ気が強く仁義に篤いためついついトラブルに巻き込まれてしまう不器用な人物像がこの映画で完成されており、荒削りでごつごつした演技がそうした個性とうまくマッチしている。敵対する組への殴りこみの場面における颯爽とした身のこなしはもちろん、看守を怒らせるために「下に〜下に〜」と叫んで大名行列宜しく行進していくところなど結構茶目っ気があるのもいい。 丹波哲郎はここでは何となく大根ぽく、ラストは呼吸が合わず何となく間が抜けているが、それでも存在感たっぷり。その顔立ちはもちろん目の輝きなど尋常ではなく、いつ観ても外国の俳優を思わせるスケールがある。田中邦衛は例によって例の如しだが、やはり得がたい個性の持ち主で、殺伐な内容にユーモアを与えている。嵐寛寿郎は戦前からの時代劇の大スターだが、ひたすら腰が低く物静かだが一旦襲われると迫力ある押し出しで受刑者たちを威圧してしまう鬼虎こと阿久田を演じて貫禄タップリ。こういう人がいるのだからやはり古い日本映画も観なければ損だ。権田役の南原宏治はよく知らないが、アクの強い面相と個性で健さんの仇役として十分な存在感を発揮している。それにしてもこのキャラクターの造形は見事なほど憎々しい。 音楽の使い方もうまかった。時折挿入される健さんの演歌調の歌は、歌詞が健さんの心情を反映していて効果的。また、後半の追跡劇ではジャズっぽい伴奏が流れフランスの犯罪映画を思わせるようなモダンな印象を与える。 映画のプロットは米映画「手錠のままの脱獄」を借用しており、B級規模で作られた映画であることは否めないが、非常にうまく作られた娯楽映画としてオススメ。昔はこういうプログラムピクチャーによいものが多かったんだなあ。 |