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明日に向って撃て! 米 1969年 112分 |
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製作 ジョン・フォアマン |
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関連映画 ジョージ・ロイ・ヒル ポール・ニューマン ・ハスラー ・暴力脱獄 ・スティング ・評決 ロバート・レッドフォード ・スティング ・コンドル キャサリン・ロス ・卒業 |
思い出の名画と呼ぶに相応しい、瑞々しさ一杯の西部劇、乃至は青春映画の傑作。オープニングからエンディングまで、どの場面も未だにキラキラと輝いている。 お話は至って簡単。西部でその名を轟かせた「壁の穴ギャング」の頭目ブッチ・キャシディと相棒のサンダンス・キッドが列車強盗を働くが、鉄道会社の社長が雇った凄腕の保安官チームに追われて命からがら逃げる。その後ブッチの提案で黄金がザクザクというボリビアへ行くが、実際のボリビアは貧乏な農業国。そこで強盗家業に精を出すが追っ手が再び現れて、二人は足を洗って鉱山の用心棒になる。しかし、強盗をやるほうがやはり割がいい。そして、ある日盗んだ馬の烙印から足がついた二人はボリビアの軍隊に包囲されて一斉射撃を浴びる。 この映画、公開当時はアメリカン・ニュー・シネマの一翼を担う映画として紹介された。確かに実在の犯罪者を主人公にした点は「俺たちに明日はない」を連想させるし、最後に印象的な最後を遂げるのも先の映画と同じ。また、従来の西部劇では見られなかった斬新な演出も、映画における新しい息吹を感じさせるものだった。しかし、この映画にはあからさまな体制への批判や、時代の閉塞感や悲壮感は感じられない。主人公たちは無法者で劇中ずっと追われ続けるけれど、どんな時にもユーモアを失わず軽やかに生きていく。この生き方が当時の若者を熱狂させ、この映画が作られた年に生まれた僕でさえ熱狂させる。ちなみに、個人的には洋画の中で一、二を争うくらい好きな映画。 映画のすべてが見どころといっても過言ではないが、何と言っても主役三人の魅力が抜群で、画面から漲っている。人を殺さぬ頭脳派のブッチとハンサムな早撃ちのサンダンス。この対照的な二人が道中ユーモラスな掛け合いを演じるのが愉快。峡谷に追い詰められて進退窮まった時に、ブッチが眼下の渓流に飛び込んで逃げようと言うとサンダンスが困った顔をして「俺は泳げないんだ!」と訴えるシーンや、軍隊に包囲されてもはやこれまでというところで、「オーストラリアなら黄金がザクザクだ」とブッチが嬉しそうに提案するシーンなど、正に名場面。ニューマンの人を食ったユーモラスな演技と、まだブレイク前のレッドフォードの初々しいハンサムぶりが素晴らしい。 この二人を同時に愛する女教師エッタも魅力的。一人の女を二人の男が共有するという関係性(この辺り、フランソワ・トリュフォーの傑作「突然、炎のごとく」を連想させる)も、キャサリン・ロスの清楚な魅力でいやらしい感じがまるでない。また、大抵のアクション映画では美人はお荷物でしかないが、このエッタが二人の逃避行に加わって一緒に強盗をしてまわるのも嬉しい。ボリビアへ行った後でエッタがスペイン語を話せない二人に「手を上げろ」とか「金を出せ」といった言葉を教える場面はケッサクである。 コンラッド・ホールの撮影は空気の質感や日の光の暖かさまで感じさせるほど鮮明で美しい。とりわけ前半の追跡劇ではロケが行われたコロラドとユタの国立公園の風物が素晴らしい効果をあげている。当時売れっ子だったバート・バカラックの音楽もそれまでの西部劇では考えられない斬新でコミカルな感じを出しているが、やはり何と言っても彼の功績は主題歌の「雨に濡れても」だろう。ブッチとエッタが自転車に乗って戯れる場面に流れるのだが、ただでさえ名曲なのにこの場面とシンクロすると何とも言えない甘く切ない感情を喚起させて素晴らしい。そして、監督のジョージ・ロイ・ヒル(僕が一番好きな映画監督)は彼らしいロマンチシズムやユーモアを交えながら二人の無法者の無軌道な青春を瑞々しく描き出している。自由奔放な展開やカメラワークも見事。 二十代で観た時は夢を追い求めて逃げ続ける二人に共感したが、三十代になるともはや正道につけず強盗を続けるしかない二人の哀れさが胸に滲みるようになった。四十代になって観たらどんな風に感じるのだろう。こんな風に観る度に様々な感慨を与えてくれる映画は滅多にない。僕にとって永遠の名作。 |