暴力脱獄

米 1967年 128分

製作 ゴードン・キャロル
監督 スチュアート・ローゼンバーグ
原作 ドン・ピアース
脚本 ドン・ピアース フランク・ピアソン
撮影 コンラッド・L・ホール
音楽 ラロ・シフリン
出演 ポール・ニューマン ジョージ・ケネディ ルー・アントニオ ストローザー・マーティン J・D・キャノン ジョー・ヴァン・フリート ラルフ・ウェイト ルーク・アスキュー デニス・ホッパー ディーン・スタントン

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 ポール・ニューマンは「反逆児」の異名を持っているが、実際「傷だらけの栄光」や「ハスラー」「ハッド」など、周囲の人々や環境に対して反抗する孤独な男をよく演じていた。しかし、この映画「暴力脱獄」によって、その異名を決定的にしたのではないか。ここでニューマンが演じるルークの反抗は、単なる個人の状況を突き抜けて、体制に向けられている。その態度が当時のアメリカの気分と合致して、彼を60年代・70年代を象徴する俳優に押し上げたのだと思う。

 酔ってパーキングメーターを壊すというつまらぬ罪で刑務所へ送られた、かつての朝鮮戦争(?)の英雄ルークは、権威的なものにはとことん突っかかっていくという難儀だ性格から、屈強な牢名主ドラッグ他刑務所の連中に目をつけられる。しかし、ドラッグとボクシングをして徹底的にぶちのめされてもダウンしなかったり、時間内に50個の卵を食べられるかどうか賭けをしたり、看守の鼻を明かすためにがむしゃらに働いて舗装工事をあっという間に仕上げるなど、その反骨精神から次第にみんな魅了されていく。

 物語の前半はユーモラスな調子で展開する。特に卵の場面は馬鹿馬鹿しくも面白い見せ場で、よくもまあこんなエピソードを思いつくと感心させられる。女が道路の舗装工事をする囚人たちを挑発する場面も、ボインを車のウインドに押し付けて洗車するというアイデアがいかす。また、ルークがドラッグにボコボコにされても立ち上がる場面もグッと来るし、ルークが母と面会する場面も、演じるジョー・ヴァン・フリートの個性もあってベタベタしない乾いたタッチで好感が持てる。

 しかし、あともう少しで刑期を終えるというところでその母が死ぬ。所長はルークが葬儀に出るために脱走するのではないかと思い、何もしていないのに懲罰房に彼を押し込める。怒ったルークはその後執拗に脱獄を繰り返すようになる。このドラマが後半の物語を支える。前後三回に渡る脱獄のエピソードはそれぞれ目先を変えた面白さがあり、特に2回目の脱獄で犬を胡椒で撃退するアイデアが面白い。また、連れ戻されてから散々看守のいじめにあいついに挫折する場面は、その執拗な陰湿さが強い印象を残す。看守長の犬のようにこびへつらっていたルークが隙を見て車を奪って脱走する逆転劇も痛快。

 ところで、ルークには脱獄という考えは頭になかったのではないかと思う。ただ、母の死の際に何の咎もなく懲罰房に入れられたことが彼の反骨精神に火をつけ、執拗な脱獄に駆り立てたのだろう。そして、それは自由の希求ではなく、自分に対して理不尽な仕打ちをした所長への反抗なのだ。3度脱獄して悉く失敗に終わるが、もしかしたらわざと捕まったのかもしれない。そうでなければすぐ足がつくのにわざわざ雑誌に自由になった自分が女を侍られせている写真を載せるはずがない。

 面白いのはルークをキリストに見立てた場面がしばしば挿入されていること。卵の場面で50個食べ終えてグロッキーになったルークの姿はそのまま磔にされたキリストの姿を思わせるし、ラストの教会での神との対話も磔になったキリストが神に話しかける部分と合致する。ルークの悲劇は社会にうまく適合できないはぐれ者の悲劇であり、純粋に彼の性格が引き起こした特殊個別的なものではあるが、彼を受難者として描くことでそれが決して個人の悲劇に留まらないことを暗示しているように思われる。このような意図は反体制的な気分が横溢した60年代後半という時代を抜きにしては考えられないし、その意図を当時の観客が汲み取ったからこそアメリカにおいて伝説的な映画の一本となったのだろう。

 スチャート・ローゼンバーグの演出が若干重く感じられ、もう少しキレがあれば良かったと思うが、看守長のサングラスの使い方などうまいし、ルークが問答無用で射殺される場面の断裁的な処理も見事だ。ラロ・シフリンのギターを用いた素朴な伴奏も心に残る。もちろんルークを演じるニューマンは最高だ。すべてを暇つぶしと言ってのけるクールさと、その暇つぶしに命をかける熱さ、自分自身をいつももてあましているようなやるせなさ、権力への本能的な反逆心・・・まさに「男」の中の「漢」!これはニューマンの個性と演技が最大限に発揮された「漢」映画の傑作だと思う。

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