県警対組織暴力
製作国・製作年度 日1975年
上映時間 100分
監督 深作欣二
脚本 笠原和夫
撮影 赤塚滋
美術 井川徳道
編集 堀池幸三
音楽 津島利章
出演 菅原文太 松方弘樹 梅宮辰夫 山城新伍 金子信雄 小松方正 池玲子 成田三樹夫 川谷拓三 室田日出男

深作欣二

恐喝こそわが人生

仁義なき戦い

魔界転生

忠臣蔵外伝 四谷怪談

菅原文太

・仁義なき戦い

太陽を盗んだ男

レビュー
 「県警対組織暴力」・・・。何か「ゴジラ対キングキドラ」とか「ガメラ対ギャオス」を思わせる題名だ。そこはかとない投げやり感が伝わってくる。要するにカッコ悪い題名なのだ。が、一見してこれは傑作だと思った。ちょっと、いやかなりショックを受けた。あの「仁義なき戦い」を凌駕するくらい凄い映画だ。

 オープニング。捜査二課の久能=文太が、これから殴りこみをかけようとしていた若いチンピラヤクザたちをどやしつけて整列させ、「銃砲刀不法所持!凶器準備集合!公務執行妨害!」などと罪を並べ立ててはビンタを食らわす。さらに一人から金とダンヒルのライターを巻き上げて「お前らみたいな雑魚をブタ箱に放り込んでみても税金の無駄遣いじゃ。やるだけやって死んでこい!その方が掃除が早いワイ!!」 などと言ってけしかける。ビビッたチンピラたちは慌てて車に乗って逃げてゆく。おい、逮捕しなくていいのか?!

 こんなダーティーハリーよりも本来の意味においてダーティーな刑事文太が、倉敷と広島を足して2で割ったような倉島を牛耳ろうとする大原組の若頭広谷=松方弘樹の検挙に命を賭ける・・・と思ったらべったり癒着してやんの。要するに悪徳警官やね。数年前に松方が敵対していたヤクザの親分を射殺して自首してきた時に、文太が茶漬けを食わせてやったら、松方がヤクザのくせに丁寧にその器を洗いよった。それを見て文太の男気に火がついた。で、そのまま見逃してやったことが職業を越えた友情の始まり。それ以来、文太は松方に取調べの情報をチンコロするなど色々便宜を取り計らってやり、松方は文太に自分のバーでただ酒飲ませたり金を渡したり、持ちつ持たれつで仲良くやっていく。「ワシはあん時から、広谷賢次の旗ァ掲げ持ったんでェ!男になれや!大原の二代目継いで男になれやぁ〜っ!」。これ、刑事がヤクザに言う言葉じゃないよね。

 で、大阪からやってきた成田三樹夫率いる川戸組がのさばってくると、早速文太が松方を援護射撃。川戸組の事務所を散々荒らしてチンピラ川谷拓三をしょっ引くと、相棒の山城新伍と一緒にボコるはひん剥くはもうやりたい放題、ボロボロの拓ヤンが川戸組の土地買収計画をゲロすると、そいつをチンコロして松方はまんまと計画を横取り。松方はその恩に報いるために情婦の池玲子をプレゼント。ますます警察とヤクザの結束は固まっていくのだった。

 ところが、それに待ったをかけたのが、県警から派遣されたエリート刑事海田=梅宮辰夫。登場人物のほとんどが「わい」「おどれ」という中にあって「僕」「君」と模範的な言葉使いをするこの君子のごとき刑事の登場で、ヤクザと癒着していた刑事たちはピンチ!「極道じゃ警察官じゃゆうて変わりゃあせんよ」と公言し、薬屋の女房と不倫してホテル代を松方におごってもらったりもしていた吉浦=佐野浅夫は、柔道4段の梅宮に仲間たちの前で散々背負い投げ食らわせられて、いじけたのか辞表を出してやめてしまうし、文太も知らないうちに梅宮が松方の事務所を手入れしたために、文太と松方の間も険悪になってしまう。さらにこの梅宮、大原組を集中攻撃してついに組長に解散宣言を出させる。あの「不良番長」の梅宮がこんなに偉くなるなんて!やったぜ、辰っちゃん!

 しかし、収まらないのは松方。経営していたラブホに篭城すると、連合赤軍ばりの徹底抗戦。新聞記者を呼んでわしらばかりいじめて偉い奴の犯罪はどうして見逃すのかと八つ当たり。梅宮の頼みで松方の説得に赴いた文太は松方の減刑を条件に降伏させる。ところが、土壇場で反骨の魂に火がついたか松方は梅宮を人質に取ると、「ワシャのーォ!おどれの旗なんかじゃあるかーい!ワシャ、ワシの旗ふっとるんド!!」と叫んで文太を挑発!文太、断腸の思いで松方を射殺する。

 ここまででも十分に面白すぎる脚本なのだが、この脚本の真骨頂はラストだ。この意外な結末があるが故に、この映画は傑作になっているといっても過言じゃない。というわけで、未見の人はここから先は読んじゃダメ!

 数年後、梅宮は天下りで日光石油の幹部に納まっている。これって成田三樹夫が土地買収に絡んでいた会社じゃなかったっけ?え〜っ、そんな〜?!あんたもワルだったの?!しかも、その後にヤクザとの癒着で田舎の派出所に左遷されていた文太、雨の夜に正体不明のトラックに跳ね飛ばされて死んでしまう!

 この映画、感情移入できる人物が一人もいない。確かに魅力はあるけれどみんな揃いも揃ってワルばかりだ。主役の文太からして「ピストルを持てる職業につきたい」なんて理由から刑事になってるし、「上は天皇から下は赤ん坊まで、終戦直後はみんな闇米を食っていた。誰もおのれの犯した罪を清算せずに生きている」なんて言って自分の行為を正当化している。馬鹿言ってんじゃないよ!そんな理屈をこねてたら今頃地球には誰も生きちゃいないよ!松方との友情や悪徳警官になった理由もしっかり描けているが、だからといってそれで文太に肩入れできるわけではない。

 そんなだから、暴力団壊滅に執念を燃やすいかにも清廉潔白で正義感に燃えた梅宮がやってきて、悪徳警官を一掃し暴力団組織を壊滅させるのを見ると、いやでも応援してしまうに決まってるじゃないか。ところが、実はこいつが一番ワルだった・・・観ている方は唖然として、居心地が悪くなる。そして、そのうちに怖くなってくる。この日本は上も下もワルい奴らに牛耳られているんじゃないかと(まあ、そうなんだが)。

 この観客の心理をうまい具合に誘導し、最後に背負い投げを喰らわせて、見終わった後で県警と暴力団の根の深い癒着を強く印象付けるという脚本が無茶苦茶凄いと僕は思う。また、小都市における警察とヤクザの癒着について語りながら、ラストでさらに大きな世界におけるそれを暗示させるというのもうまい。もちろん敵対する暴力団同士の抗争の図式や、ヤクザと癒着した刑事たちが追い詰められていく展開もよく出来ている。

 この優秀な脚本を得て、フカキンも凄い馬力の演出を見せるし、文太以下の役者もエネルギーをぶちまけている。拓ヤンをボコボコにする取調べ室の場面など本気でやってるとしか思えないし、松方が「どおお!どおお!」とか叫びながら池玲子をバックから犯す場面も本番やってるとしか思えない。乱闘があればカメラもその中に突っ込んでいくのはフカキン映画のお約束だ。地下鉄の階段で生首が転がるサービスまである。展開がスピーディーで内容が詰まっている上に、激しい場面が多いから見た後でどっと疲れる。だけど、上映時間はたった100分しかない。それなのにこの疲労感。とてつもないエネルギーの放出である。

 ヤクザにロマンを持っている人、あるいは闇米云々についての文太の言葉を実感できる人は共感できるかもしれないが、僕は巨悪はもとより小悪であるヤクザもみんな死んでしまえと思っている人間であり、更に闇市の頃には生きていないので全然共感できない。しかし、映画としては魅力抜群の一編であり、ヤクザ映画に留まらず日本映画の中でも傑作の部類だと思っている。とにかく一見の価値あり。

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