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オリエント急行殺人事件 英 1974年 128分 |
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製作 ジョン・ブラボーン リチャード・グッドウィン |
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関連映画 シドニー・ルメット ・セルピコ ・評決 アルバート・フィニー マーティン・バルサム ・十二人の怒れる男 イングリッド・バーグマン ・白い恐怖 ジャクリーン・ビセット ・いつも2人で ・ブリット ショーン・コネリー ヴァネッサ・レッドグレーヴ |
「灰色の脳細胞」を持つベルギー人の探偵エルキュール・ポワロが活躍するアガサ・クリスティの有名な推理小説の映画化。この映画の成功をきっかけに「ナイル殺人事件」「クリスタル殺人事件」「地中海殺人事件」「ドーバー殺人事件」「死海殺人事件」と、立て続けにクリスティ原作のミステリーが映画化される。 初めて観た時には犯人のあまりの意外さにびっくりしたものだが、犯人を知った上で改めて観てみると映画としての魅力が抜群なことを実感。犯人探しのミステリーにも関わらず、繰り返し何度でも観たいと思わせる極上の映画で、個人的にはこんな風に感じる映画は珍しい。 その理由の第一は、何と言っても豪華な配役。容疑者役としてイングリッド・バーグマン、ローレン・バコール、ショーン・コネリー、マイケル・ヨーク、アンソニー・パーキンス、ウェンディ・ヒラー、レイチェル・ロバーツ、ジャクリーン・ビセット、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ジャン=ピエール・カッセル、そしてイギリス演劇界の重鎮ジョン・ギールグッドと、イギリスとアメリカ(それにフランス)、映画界と演劇界の俳優が一同に会して、ポワロ役のアルバート・フィニーを相手に演技合戦を繰り広げる。みんな個性を生かした素晴らしい出来だが、特にフィニーは凝ったメーキャップもバッチリ決まり、相手によってそれぞれ態度を変える変幻自在ぶりが凄い。マーティン・バルサムもやたらと「彼(彼女)が犯人だ!」を繰り返すポワロの介添え役でオリエント急行の重役ビアンキをユーモラスに演じているし、殺されるリチャード・ウィドマークも過去に凶悪な犯罪を犯した冷酷な男を重厚に演じていて見応えがある。 第二にシドニー・ルメットの演出。限定された空間でのディスカッションドラマのうまさは「十二人の怒れる男」や「未知への飛行」で証明済み。クロースアップの多用とシャープな構図、大勢の出演者を巧みにさばく手腕で、どの場面も緊張感たっぷり。広角レンズを用いたフラッシュバックの効果、ラストで描かれる殺害場面の照明効果も見事だ。ドラマの前提としておかれたアームストロング事件のドキュメンタリータッチの演出が禍々しく、一転して容疑者たちがオリエント急行に乗り込む場面はとても華やか。社会派作品だけでなくこうした娯楽作品にも手腕を発揮することを証明するかのようなルメットの演出ぶりである。 また、オリエント急行のイメージそのままに客室のセットも豪華だし、登場人物の衣装もまた豪華で、映画にゴージャスな雰囲気を与えている。その意味では音楽が最高に素晴らしい。田園風景の中を力強く走るSLの描写につけられたあの美しく華やかなワルツは映画音楽史上の名曲だろう。未だにテレビの紀行番組でSLが走っているとあの曲がかかるのだから、その影響力は計り知れない。オープニングに流れる曲も非常に劇的で格調高い名曲だろう。これらの曲がなかったら、この映画の魅力も半減していただろう。 脚本はクリスティの原作を忠実にトレースしたものと思われるが、2時間の上映時間にストーリーがコンパクトにまとめられていて、ポワロの推理も明快で分かりやすい。原作にあるのかどうかわからないが、役者たちの個性を生かしたうまいセリフが多い。アンソニー・パーキンスの「僕がマザコンだから結婚できないと言いたいのか?」には思わず笑ったが、これは「サイコ」を前提としたオリジナルのセリフだろう。面白いセリフのやり取りはローレン・バコールが絡むエピソードに多く、特に「奥さん20年前ならご招待したのにですって!20年前って言ったらあたし15歳よ!(そんな馬鹿な!)」や、「きっと犯人はラチェットさんに近づくためにあたしの部屋を通ったんでしょう」というセリフに対してウエンディ・ヒラーが「でしょうね。他の理由はまったく考えられません」とつっこむ場面には爆笑した。 この映画には印象に残る名場面が多々あるが、何と言っても一番の名場面は、オリエント急行が出発する場面だろう。カメラが後退しながら連なる客車を映して先頭のSLの斜め前で止まり、やがて正面のヘッドライトへクロースアップしていき、ライトに灯が灯ると共に汽笛と音楽が鳴り響き、各車両のドアが閉じられ、ゆっくりと走り出すところ。これからどんな物語がはじまるのだろうとワクワクさせる素晴らしい演出で、まさに映画を観る楽しさを集約したような高揚感溢れる見事な場面。映画全体もストーリーの面白さもあって最高のエンターテイメントに仕上がっており、僕はこの映画を「who done it?」映画の最高傑作だと思っている。とにもかくにもお気に入りの一本。 |