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スティング 米 1973年 129分 |
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製作 トニー・ビル マイケル・S・フィリップス リチャード・D・ザナック ジュリア・フィリップス |
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関連映画 ジョージ・ロイ・ヒル ポール・ニューマン ・ハスラー ・暴力脱獄 ・明日に向って撃て! ・評決 ロバート・レッドフォード ・明日に向って撃て! ・コンドル ロバート・ショー ・ジョーズ チャールズ・ダーニング |
これは映画の見本、特に映画における話術の見本のような映画。そして、映画の歴史の中で最も洗練された、最も面白い映画のひとつだと思う。 この映画は何と言っても最後のどんでん返しが有名だけれど、それゆえ2度見ても面白くないという人がいるようだ。馬鹿言っちゃいけない。どんでん返しのある映画は2度見るとつまらない場合が多いのは確かだが、ほんとに見事などんでん返しのある映画はそこにいたるまでの話術が非常に良く出来ているのだ。2度目からはその話術を楽しんだり感心したりしながら観ることができる。そして、1度目には気がつかなかった伏線に気付いたりして、またもや驚いたり唸らされたりする。こういう映画こそ、何度も繰り返し観るべきなのだ。 もちろんそうした見事などんでん返しがある映画は少ない。僕の知る限り「悪魔のような女」と「情婦」くらいだろう(「テキサスの五人の仲間」も相当な映画のようだが、残念ながら未見)。どちらも映画史上に残る名画だが、この「スティング」も先の2本に負けない傑作だ。 見事な脚本は詐欺師の手法をフィールドワークで集めたアメリカの言語学者デヴィッド・W・モラーの著作「詐欺師入門―騙しの天才たち:その華麗なる手口」を基にしたデヴィッド・S・ウォードの書き下ろし。不況の爪あとが未だ残る1936年のシカゴ。3人組の詐欺師がある男から財布を摺るが、中には思いもよらぬ大金。その金がシカゴを牛耳るギャングの親玉ロネガンへの進上金と知った時にはもう手遅れ、仲間の一人は組織に殺されてしまう。若いフッカーは伝説的な詐欺師ゴンドルフの元に逃れ、仲間の弔い合戦の協力を頼む。最初は嫌がっていたゴンドルフだったが、相手がロネガンと知って一世一代の大博打を企てる・・・。 ここから先のお話はトリックにもかかわるので書けないが、まるでチェスか囲碁のような見事な頭脳戦が展開する。そして、その過程における演出のテンポのよさや話術の見事さといったらない!ニューヨークに向う列車内でのゴンドルフとロネガンの息詰まるポーカー対決、電信を利用したインチキノミ屋の仕掛けの面白さ、フッカーを追う謎の殺し屋の影、水面下で進行するFBIの計画、そしてラストの大勝負!実のところ、殺し屋どもが彼らの標的であるフッカーと親分を手引きするジョニー(確かそういう変名だった)を同一人物だと気付かないところが唯一の弱点だが、それ以外は完璧。しかも、途中からロネガンだけでなく観客をも騙す仕掛けが施され、ラストではあっと驚かされる。ミスディレクションに陥らず伏線をあちこちに張り巡らせて観客を自在に引きずり回す巧妙な話術にはホントに脱帽させられる。 しかし、この映画の見どころは二転三転するお話の面白さだけだはない。ゴンドルフとフッカーが血なまぐさい暴力沙汰ではなく頭脳プレーで相手を出し抜くというのが粋で、2人に協力する詐欺師たちの心意気も気持ちよく、彼らの連係プレーもお見事の一言につきる。この辺りにジョージ・ロイ・ヒルが描き続けた「男のロマンチシズム」が伺える。ここでのポール・ニューマンとロバート・レッドフォードは男のダンディズムの極北だ。30年代を再現した見事なセットや衣装、スコット・ジョプリンの軽快でコミカルな音楽もスマート。ロックウェルが描くサタデー・イヴニング・ポストの表紙を思わせるイラストを挿入するチャプター形式もイカす。ここでは、映画を構成する要素すべてが洗練されていてスマートなのだ。こんな映画は滅多にない。 この映画には特別感動するところも深いメッセージもないが、その代わり映画本来の面白さが一杯に詰まっている。観客を楽しませるというのは当然のようで非常に難しい命題だが、これほど観客を楽しませてあっと言わせ、観た後で痛快な気分にさせてくれる映画も稀有だと思う。娯楽映画の真髄のような映画。 |