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評決 米 1982年 129分 |
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製作 リチャード・D・ザナック デヴィッド・ブラウン |
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関連映画 シドニー・ルメット ・セルピコ ポール・ニューマン ・ハスラー ・暴力脱獄 ジェームズ・メイソン ジャック・ウォーデン ・12人の怒れる男 ・天国から来たチャンピオン |
中学の頃に劇場で観て、あまりに地味な内容に正直面白くなかった。ただ、後年何度か観る機会を得る度に、自分の中でぐんぐん評価が上がってきた。これはお子様には到底理解できない、すこぶる大人の映画なのだ。 上司の不正の巻き添えを食って没落、酒びたりの生活を送っている弁護士フランク・ギャルビン。先輩弁護士ミッキーはそんな彼を見るに見かねて医療ミスで植物人間にされた患者の弁護の仕事を回してやる。最初は金になりそうと言うだけで引き受けたフランクだったが、被害にあった患者の姿を見て改心、病院側の示談を蹴ると欲得抜きで訴訟を起こす。すると、病院側は凄腕の弁護士を雇い重要証人を買収、裁判で勝てると思っていたフランクは逆境に追い詰められ、必死に証拠集めに奔走する・・・。 冒頭からフランクのダメっぷりが辛いくらい迫ってくる。見ず知らずの他人の葬儀に紛れ込んで仕事にありつこうとして追い出される場面や、依頼人に居もしない秘書の話をして体裁を取り繕ったり、本当にダメな男だ。ところが、証拠として被害者の写真を撮っているうちに忘れていた「正義」に目覚める。この場面での次第に浮き上がってくるポラロイド写真のショットと、仕事から義憤へと変わっていくニューマンの表情が絶品だ。しかし、だからといってすぐにフランクが立ち直って活躍する、といった単純な展開にはならない。勇み足で示談を蹴ったために、被害者を施設に入れるためのお金が欲しい家族にどつかれたりするし、切り札である証言者が雲隠れして途端に弱腰になったりする。おまけに敵側のスパイである女に引っかかったりするマヌケぶり。法廷では判事まで被告に肩入れして劣勢に立たされる。でも、主人公のこうした弱点がちゃんと描かれているのが却って共感を覚えるし、逆境の中でもがきながらも正義を勝ち取ろうとする、そして、そこに自身の人生のやり直しをかけるフランクの真摯な思いがひしひしと伝わってくる。これは人生の敗者が復権をかけてリターンマッチに挑む物語なのだ。その意味で「ロッキー」と共通の分母を持っている。 「ロッキー」が現代のお伽噺であるように、この映画も現代のお伽噺だと思う。それは結末に現われている。クライマックスで真実を知る看護士が話した原告に有利な証言が、判例から証拠として採用されなくなり、フランクは窮地に立たされる。しかし、彼は最後に陪審員に向ってスピーチをして彼らの正義に訴え、逆転勝利を勝ち取る。ところが、陪審員の評決はどう考えても証拠として採用されない看護士の証言を基に評決を下している。これについては「ご都合主義」とか「現実の裁判ではありえない」と言うむきもある。僕自身も甘い結末だと思う。だからこそ、僕はその点でお伽噺だと解釈している。現実の世界では教会の後ろ盾がある病院、世界的に有名な医師、法曹界でも凄腕で鳴らす弁護士、そうした巨大な権威の前に、三流弁護士のフランクや小市民である原告側は常に負け続ける。せめて映画の中だけでも正義が勝つという結末にしたい。ジョン・レノンは「平和を我らに」の中で「平和にチャンスを与えよ」と唄ったが、監督のシドニー・ルメットと脚本のデビッド・マメットはこの映画の中で「正義にチャンスを与えよ」と主張している。それはフランクのセリフの中にもはっきりと現われている。この結末は映画の作者の「祈り」なのだと思う。 「人生のリターンマッチ」と「正義の希求」という2つのテーマを、シドニー・ルメットは静かで落ち着いた手法で描いていく。クロースアップや短いカット割りを敢えて避け、比較的長いショットを多用したのもその現われだろう。また、ロケーションを生かした雰囲気の醸成もたくみで、冬枯れのボストンの寒々しい光景やフランクの事務所や自宅の荒んでうらぶらた様子など、フランクの心象を象徴的に表現している。影を強調した暗い画面も印象深く、どの場面も密度が高く味わい深い。終章でローラが掛ける電話にフランクが出ない場面は特に余韻が残る。この辺りが子供にはわからない大人の映画である所以だ。 また、先述の長いショットの多用との関連で、各俳優がそれぞれ見せ場を与えられ、充実した演技を披露している点も見逃せない。主演のニューマンはもちろん渾身の演技だが、ジェームズ・メイソンの機械のように正確で冷徹なコンキャノン、ジャック・ウォーデン演じるフランクを立ち直らせようとする人情家のミッキー、フランクをスパイしているうちに愛してしまうローラのシャーロット・ランプリング。この4人のアンサンブルは見事というほかなく、これら俳優が作り出す名場面がたくさんある。特にリンゼイ・クローズ演じる看護士が、コンキャノンの怒涛の反対尋問に責め立てられながらも、気丈に証言を述べてついに泣き出す場面は思わず胸が熱くなる。DVDのオーディオ・コメンタリーでは、この場面の撮影の際、その場にいた俳優すべてが拍手したそうだが、それも頷ける名演技だと思う。 内容といい表現といい、本当に渋い映画であるが、それゆえ深いコクのある映画。こうした映画は当時でもそうだったが、現代のハリウッドでは尚更作るのが難しいだろう。 |