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ワイルドバンチ 米 1969年 137分 |
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製作 フィル・フェルドマン |
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関連映画 サム・ペキンパー ウィリアム・ホールデン アーネスト・ボーグナイン ロバート・ライアン ・特攻大作戦 ウォーレン・オーツ ・昼下りの決斗 ベン・ジョンソン ・幌馬車 ・ゲッタウェイ |
西部劇に止めを刺した「最後の西部劇」といわれる映画。確かにその通りで、「駅馬車」や「荒野の決闘」、「赤い河」、「シェーン」、「ウィンチェスター銃73」、「荒野の七人」といった、ジャンルを代表する過去の名作とはあからさまに違う。女子供も平気で殺す、撃たれて血が噴き出す、善玉と悪玉の区別がない等々、今までにはありえないアンチ・ヒロイズムとリアリズムが充溢している。このあたりは「俺たちに明日はない」の影響を多分に受けているように思われるが、その一方で古きよき西部劇への愛惜も込められているように思われる。
お話は賞金稼ぎに追われたパイク率いるワイルドバンチの一味がメキシコに渡り、そこで政府軍のマパッチ将軍に雇われて米軍輸送列車から武器を強奪するが、仲間の一人でメキシコ人のエンジェルがパンチョ・ビリャの反政府軍に加担したためマパッチに捕らわれて凄惨なリンチの末に殺され、怒ったバンチ一味がマパッチの砦に乗り込み乱射乱撃の末に凄絶な最後を遂げるというもの。 とにかく凄いのが冒頭の銀行強奪の場面と、ラストのメキシコ政府軍への殴り込み。前者では行進してくる教会の信者を盾に取ったバンチたちと賞金稼ぎたちの間に銃撃戦が展開され、罪のない人間(女子供含む)がバンバン殺される。そんな中でも、一人だけ置いていかれてそうと気付かず、散々人質たちを脅して最後には楽しそうに撃ち殺すバンチの一味、ボー・ホプキンス演じるナチュラル・ボーン・キラーの薄気味悪さ、更に仕留めたバンチ一味の死体から金目のものを剥ぎ取ろうとして喧嘩を始める賞金稼ぎたちの浅ましさは強烈な印象を残す。後者では凄まじく細かいカット割とスローモーションで構成された血みどろ描写が白眉で、撃たれた人間が次々と血を吹き上げながら倒れていく「死のバレエ」は映画史上屈指の強烈な場面だ。 こうした殺しの描写が、それまでの西部劇を含むアクション映画を突き抜けて「ヴァイオレンス(暴力)映画」という新しい地平を切り開いたのは間違いないだろう。ただし、凄まじい暴力が見せ場ではあっても、ただそれだけの映画ではない。 この映画、意外なほど骨格のきちんとした3部構成になっていて、1部では銀行強奪の失敗によるパイク・ダッチ組とテクター・ライルのゴーチ兄弟組の反目、2部では米軍輸送列車の強奪の成功による先に2組の融和、3部ではエンジェル救出のために命を捨てるバンチたちの絆が描かれている。そして、そこから浮かび上がるのは、死線を潜り抜けた者たちの間だけに生まれる連帯感、アウトローたちの仁義だ。死を覚悟したバンチたちが売春宿で過ごした後でエンジェル救出のためにマパッチの砦に向う長尺の場面は、この映画の主題を表す名場面だと思う。ここでの登場人物たちのメンタリティは日本の仁侠映画に相通じるものがあり、アメリカ人よりも日本人の方が感動するのではないか。 ただし、この映画を評して「男の美学」などという言葉がしばしば使われるのはどうかと思う。前段では罪もない人々を容赦なく殺す場面があるわけで、そこには目を瞑って最後の場面だけを取り上げてそれはないだろう。むしろ子供たちがアリの大群の中にサソリを入れて殺し合いをさせて遊んでいるという象徴的なオープニングから、虫けらのような主人公たちにも意地と気概があるのだという解釈をしたい。 また、この映画では時代に取り残された男たちの悲哀、というテーマも盛られている。時代はすでに20世紀初頭で、車も走っているし、会話の中で飛行機についても言及されている。設定のミスらしいが現実にはもう少し後に登場する機関銃も出てくる(この機関銃がラストの場面の主役といっていい)。そんな時代にアウトローとして生きざるを得ない主人公たちは(形としては賞金稼ぎに追われてだが)動乱のメキシコへ渡り、そこで結局アウトローとして死んでいく。この点についてはパイクの元の相棒で、助命と引換えに賞金稼ぎを従えて一味を追うソーントンに色濃く表れている。メキシコ軍との戦いで全滅した一味を見て呆然とする姿は、自分も前時代の人間でありながら彼らのように死ぬべき時に死ねなかった悔恨が滲み出ている。その後にメキシコ革命軍に誘われてニヤリと笑う場面は、自己の死に場所を見つけた彼の喜びを表現したものだろう。 このソーントンの心境は、遅れてきた西部劇作家サム・ペキンパーのそれと重なり合うように思える。リアリズムによって古典的な西部劇のスタイルが成立しなくなった時代に登場したペキンパーが、自身の生きる場所としてヴァイオレンス映画を見出す、と考えると感動的だ。自己の心情を端的に表明したという意味では、この映画が作家ペキンパーの出発点といっていいだろう。 主人公パイクを演じたウィリアム・ホールデンは、常にハリウッドの王道を歩みながら、アンチハリウッド的なこうした映画に主演するというのが驚きだが、持ち前のタフさと実年齢を生かした渋い好演。他の役者は地味だがリアルに男臭い連中を揃えており、パイクの片腕ダッジに扮したアーネスト・ボーグナインをはじめ、テクターのベン・ジョンスン、ライルのウォーレン・オーツ、ソーントンのロバート・ライアンなど、女性客をまったく意識しないキャスティングが却って清々しい。特にロバート・ライアンが渋くていい味を出している。 |