幌馬車

米 1950年 84分

製作・監督 ジョン・フォード
脚本 フランク・ニュージェント パトリック・フォード
音楽 リチャード・ヘイグマン
出演 ベン・ジョンソン ジョーン・ドルー ハリー・ケリー・Jr ウォード・ボンド アラン・モーブレイ ジェームズ・アーネス ジム・ソープ ジェーン・ダーウェル

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 馬を売りに町へやってきた2人のカウボーイが、町から追われて新天地を目指すモルモン教徒の道案内に雇われる。一行は道中いんちき薬売りやインディアンと出会い、強盗団に脅かされながらもそれを退治し、ついに新天地に辿りつく。

 物語はこれだけである。劇中には強烈なサスペンスや胸のすくアクションはほとんどない。筋書きから予想されるフロンティア・スピリットの謳歌もない。複雑な人間関係や劇的なドラマもない。あるのは荒野を横切っていく幌馬車の列だけである。だから、本来ならとても退屈な映画なのだが、不思議なことに退屈しない。

 僕はこの映画を一種のドキュメンタリーだと思っている。あるいは観光映画といってもいい。フォードは彼が愛してやまない西部の景色や風物をカメラに収め、それらを僕たちに紹介してくれる。僕たちはそれを観ながら西部というものを体験するのだ。一応主人公の恋愛や悪漢との対決、ユーモアなどの要素も盛ってはいるが、それは劇映画の体裁を保つための方便みたいなものだ。観ているこちらはひたすら西部の景観を眺めながらその雄大さ、ある種の美しさに感嘆するのみである。その意味でこの映画は西部を題材にした風景画ということもできる。

 そんなわけだから、技巧的な演出はほとんどない。例えば、カウボーイのベン・ジョンソンとモルモン教徒のリーダーであるウォード・ボンドが道案内の交渉をする場面では、二人が並んで柵に寄りかかって話しているのを、たまに牧師のカットを挟みながら延々と撮っている。ほとんど無造作といっていいくらいの演出だ。ベン・ジョンスンがインディアンに追われて馬で疾走する場面、強盗団をやっつけるガンファイトはさすがに水際立った鮮やかな描写だが、基本的には全編に渡っての気負いのない演出で描かれている。まるで枯淡の境地に達した画家の筆致のようだ。そこに味がある。

 わずか84分の小品ではあるけれど、フォードの西部に対する愛情が伝わってくる佳品。

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