ゼロの焦点

日 1961年 95分

製作 保住一之助
監督 野村芳太郎
原作 松本清張
脚本 橋本忍 山田洋次
撮影 川又昂
美術 宇野耕司
音楽 芥川也寸志
出演 久我美子 高千穂ひづる 有馬稲子 南原宏治 西村晃 加藤嘉

関連映画

野村芳太郎

張込み

砂の器

有馬稲子

武士道残酷物語

南原宏治

網走番外地

西村晃

十三人の刺客

君よ憤怒の河を渉れ

 野村芳太郎は松本清張の小説をたくさん映画化しているが、これは「張込み」に続く第二弾。

 見合い結婚したばかりの夫憲一が任地の金沢で失踪。妻の禎子は金沢に赴いて夫の行方を捜すうち、彼女が知らなかった夫の秘密の生活がわかってくる・・・。

 長編小説である原作をうまくアレンジしていて、展開がとてもスピーディー。原作だと序盤で結婚までの話を詳しく書いているが、映画では憲一を金沢へ送り出すところからはじめており、それ以前の結婚式や新婚旅行等、序盤のエピソードが禎子の回想の形でテキパキと処理している。全編禎子のナラタージュで進行しているのもテンポを上げるのに効果的に作用。また、場面転換では左から右へ画面が消えて次ぎの場面が現われるワイプの技法が多用されて小気味よい。

 しかし、あまりに展開が早いので各場面の味わいが乏しいのが玉に瑕。しかも、後半はかなり唐突な展開になっていて拍子抜け。原作では禎子の推理がガッチリと描かれているので説得力があるが、映画はその部分を端折っているので推理というより妄想みたい。しかも、原作の神話のような美しくも悲しいラストの場面が、なんかしょぼい終わり方に変わってしまっているので残念。

 ただし、解決の部分には原作にはない場面が用意されていて、それがなかなか良かった。特に憲一と田沼久子の生活を描いた場面は情感に溢れていて素晴らしい。また、宗太郎が毒殺される場面は、西村晃が名演技で見応えがある。それに比べると久子と室田佐知子のやりとりはメロドラマ臭くて若干落ちるが、この部分が物語のテーマなので、多少くどいくらいがよいのかもしれない。

 役者さんはみんな良い。室田佐知子の高千穂ひづるはオーバーアクトだと指摘されているが、僕はむしろ熱演だと思った。西村晃と会う場面などヒリヒリするような緊迫感だった。禎子の久我美子は全然タイプじゃないが物語の語り部ということもあって、淡々とした演技が却って良かった。久子の有馬稲子も生活に疲れた感じと可愛らしさが共存していて味わい深い。なお、「網走番外地」で凶悪な権田権三を演じた南原宏治が憲一を演じており、二枚目風の風貌だったのにびっくりした。

 白黒ではあるが冬の金沢の景色を映像で見られるのは有り難い。特に厚い雲に覆われたどんよりした空の下、日本海の荒波が岸に押し寄せる光景は繰り返し出てくるが、荘厳な感じで作品の基調になっている。

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