第0章 はじめに: 技術屋って何だ? 「モノ造りに夢中な人」  <もくじ>に戻る


 技術屋って言われてどんな仕事か判りますか。あなた    した。楽しくなりました。楽に長く生きられるようにな                                
の身辺のどのくらいの人が技術者でしょうか。でもまわ    りました。反面、戦争は激しく悲惨になり、環境の破壊                                
りに技術者の人がいても、その仕事は難しくて判りにく    は地球規模におよんで人類生存が脅かされるまでに至り                                
そうで、「私は技術屋だ」って言われてもぴんとこない    ました。そして、これらの脅威から逃れるのにも、技術                                
かも知れませんね。                    の貢献が期待されています。                                
                                    
 大学の工学部や工業高校、工業専門学校、今多いコン     この技術激変のなかで、私はほとんど一生を過ごして                                
ピュータ専門学校、などを卒業して、工学的専門知識を    きました。技術の開発、利用、実用化に取り組んで、と                                
もって仕事をする人。統計を調べると、年間の卒業生が    ても楽しく、張りに満ちた人生を、過ごすことができま                                
昨今で約13万人。これは同世代人口のざっと9%になり    した。                                
ます。卒業すれば、メーカーと分類される企業に入って、                                    
物やソフトなどの生産に携わっている人が主体ですが、     一方、技術への世間の期待を我が身に背負い込んで、                                
商社や流通業にも技術を売り物にしている人が大勢いま    重責を感じつつ、ささやかな貢献を喜び、無力を嘆き、                                
す。テレビ局でも技術部門は重要なパートです。       技術の発展を願い、商業的成功を期待し、また社会への                                
                             適切な寄与を計って過ごしても来ました。変化に富んだ                                
 技術屋さんは物を作る仕事に専念していて、自分の世    この期間を、その中で成長してきた私の視点からも捉え                                
界を一般の人に説明するとなると、広い範囲の技術の内    て、記録に留めておきたいと願ってもいます。                                
容やこれまでの経過、歴史を併せて説明しなきゃならな                                    
いし、仕事がら正確さを大事にするので話はくどくなり     私は今65才、人生のほぼ終点にいますが、技術屋人                                
長くなりがちですから、とかく口が重くなり、しゃべり    生の出発点はどこにあったかと回顧してみると、自分の                                
たがらない。文章を書いて人に読んでもらう機会も少な    中学生の時にあったように思います。その頃読んで感動                                
い。それで、技術屋の姿が、あまり外部に伝わらない傾    した二三の本の内容を、今はっきり思い浮かべることが                                
向があります。でももっと知ってもらいたいと思います    できます。                                
し、それが今は重要な時代であるとも考えます。                                    
                             その本が私の将来を直ちに決めたわけではなく、その                                
 私の父は技術屋のうちの機械屋でした。私はひところ    後も種々の路を模索し迷いましたが、私の関心を鋭く刺                                
迷いはしたものの電気屋になり、息子は技術者にはなり    激したのがそれらの書物です。                                
そうもないがと見ていたら、結局ぱりぱりの現代技術屋、                                    
すなわちデジタル・カメラのファームウェア屋です。三     この私の文章が、読者にそのように作用しないかなと                                
代でざっと80年間にわたります。技術屋人生の、挙動・   厚顔ながら願っています。中学生の人に、この本を読ん                                
哀歓を、技術の内容に重点を置きながらここに述べて、    でもらおうと思っているのです。それにしては難しい内                                
あまり知られないこの世界をかいま見ていただこうと思    容だと評されるかも知れません。しかし私のその時を思                                
います。                         い起こしてみると、難しい内容が良かったのです。                                
                                    
 この80年間に技術の内容は激変しました。すばらしく     すべての中学生に読んでもらえるとは思いません。関                                
発展し、分野が大きく拡がりました。人々の生活は、技    心がここにおよぶ人は多くはいないでしょう。でも、こ                                
術の発展によって、大きく変わりました。便利になりま   んな技術者の思考体系に共感してくれる人はいると確信

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します。そういう人にめぐりあえれば、お互いにとても    たときに、呆れて発する表現だと理解しています。そし
嬉しいことです。                     て、私はそういうオッチョコチョイである、と自身を認
                             識しています。さらに、変わったことをしなければ、モ
 65才の私が15才の私に巡り会って、君の将来はこ    ノは良くならない、当たり前の常識に従って設計してい
んなんだよ、でももっと良くしてくれてもいいんだよ、    たのでは、モノの価値はそれまでのものよりも高まらな
と言ってこの本を渡してやりたい、なんて夢想していま    い、と確信しています。
す。    
                              そう考えながら65年間を暮らし、モノを創り、してき
 ところで、「お前は、オッチョコチョイだ」と、私は    ました。あえて本書の題名としたしだいです。
特に子供の頃、また若い頃、そして近年にいたるも、よ     さて、ご一読いただければ光栄です。
く言われました。「ちょこちょこしていて考えの浅いこ    
と。軽薄。また、そういう人。」だそうです。悪く言う                     初記:00. 7. 1 
ことばです。                                        修正:00.11.24 
                                              加筆:01. 1.18
 一方、私はこの言葉を、「変わったことをしたがる人                     編集:01. 4.19 
間」が、好んで変わったことをして、身近の人が困惑し                     再編:03. 2.  3

                                                                                                                                                                    喜 利  元 貞

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