このページでは、ガンマ線カメラの中で、シンチレーター結晶に当たったガンマ線光子から発生した閃光が、そのうしろの検出器に捕らえられ、加重総和によって位置信号が算出されるしくみを、シミュレーション(疑似計算)の方法を使いながら説明する。
検出器である光電子増倍管は、アンガーの原型では7本、最近のものでは37本とか61本などがぎっしりと並べられて6角形の視野を形作っているが、しかしこれでは、像は検出器の本数くらいにしか分解できないと思える。ところが実際に画像にすると、縦横64×64画素(=4096画素)とか256×256画素(=65,536画素)に分割した細かい部分まで描出される画像が得られる。検出器の数よりはるかにたくさんの画素を持った画像が得られる。すなわち、検出器の間隙に届いたガンマ線や、同じ検出面の中の位置の違いも、区別されるのである。その仕組みを眺めてみよう。
画像の一例→ 
光電子増倍管( Photo-electron multiplier tube)は、光を電気信号に変換する真空管である。微弱な光でも内部の多段電極で増倍して大きな電気信号に、しかも高速に変換する。検出面は直径2〜5cmの円形で、面から後ろに長さ5〜10cmほどの円筒形をしている。シンチレーター円板の背後にぎっしりと並べておくと、ガンマ線の当たった場所から出た光は、近くの管には強く、遠くの管には弱くなって届き、それぞれの管から電気信号となって出てくる。閃光は瞬間だから、管の出力信号も瞬間的に電流が出てくる「パルス信号」となる。このたくさんの管から出てくる信号を、それぞれの加重総和増幅器に入れると、エネルギー信号、位置信号が出てくる。
加重総和増幅器には、↓下図のように、たくさんの入力端子のそれぞれに固有の加重係数が設定されていて、個々の入力信号はそれぞれの加重係数で乗算されたのち、すべての入力信号が総和されて出力信号となる。
←この図は、 閃光の発生位置に対応して生ずる加重総和増幅器の出力を、カメラの正面から見て示す。図をマウスで触ると、閃光の場所が変わればそれにつれて出力の大きさ(正負のある範囲で)が変わる状況を示す。閃光が覆う円内に発生した信号が、加重係数で増幅されて、その総和が出力信号になるからである。
エネルギー信号は、すべての管の信号を平等に総和したもので、閃光の明るさを表す。どの位置で閃光が出ても、同じ大きさの信号になる。もし、2倍、3倍の大きさの信号が出てくれば、そのときはたまたま2個、3個のガンマ線光子がほぼ同時に入射した場合なので、位置信号が狂ってくるから、そのときの信号は除外し、ほぼ同じ大きさの信号だけを集めるようにする。このために波高分析器(パルス信号の波高=ピーク高さが指定された範囲のものだけを通過させる)が後ろに設けてある。
位置信号は、光電子増倍管の位置に比例した大きさに加重してから総和し、さらにエネルギー信号で割り算しておくと、信号は、閃光を発した位置に比例した大きさになる。ここがアンガー氏の考案の巧妙な点なのだ。ある閃光の光は周囲に放散するので、間近の増倍管には強い光が届き、遠くの管には弱い光が届いて、それぞれの大きさの閃光信号が出るが、端の方の管ほど大きな信号に変換し、中央ではゼロ、反対側の管では逆のマイナス方向の信号に変換して、これらを合計すれば、位置信号は、閃光が一方ならばプラスで大きく、逆位置ではマイナスで大きく、中間ではその間の位置に比例した値になる。ただ、端の方では、その外側には管がないから信号が不足するが、エネルギー信号で位置信号を割り算することによって補正してやれば、位置信号の誤差は小さくなる。こうして得られた縦方向Xと横方向Yの位置信号をブラウン管の上下と左右の偏向電極に導いて、閃光の位置をブラウン管の画面上に光らせれば、シンチレーターの上に写ったガンマ線の像、すなわち心臓の中のトレーサーの形を、画面に描き出すことができる。
表計算による信号量算出シミュレーション
こんな回路で位置信号が出てくる原理を、パソコンの表計算ソフト(エクセルなど)を使って調べてみよう。
「入射光量は光点からの距離の自乗に反比例する」として、P位置の光電子増倍管の出力Valueは、
Value(x,p) = 1 / ( ( x - p ) ^2 + R ^2 ) (^2 は、自乗を示す。)
ここに 光点の位置 x: 0 〜 1
光電子増倍管の位置 p: 0 〜 1
増倍管とシンチレーターとの距離: R
と表わす。

上の説明図にしたがって計算表を作り、作動させると、図の右下のグラフのように、位置信号(赤色曲線)、エネルギー信号(青色曲線)が閃光の発生位置xに対応してどのような大きさになるかが特性曲線として示される。
シンチレーターと光電子増倍管との間の距離Rを変えると曲線の凸凹などが変わる。位置信号がほぼ直線になるためにはRが 0.07 付近が最適のようである。
(このような、実物の性質を計算式に置き換えて、動作特性を計算で模擬しながら推定する手法を「シミュレーション simulation 」という。実際にパソコンの表計算ソフトを使いながら、式の意味を考えて結果を追求すれば、よく分かる。)
実際のガンマカメラ
上の計算では、光電子増倍管は閃光を1点で検出するとしてカメラの出力信号の特性を調べてみたのだが、実際の管の検出面は円形でかなり大きく、広い範囲の光を捕捉する。また、閃光が検出面に届くまでには、反射や屈折や、支持物の影になる、など様々な影響が入る。そして、検出器の感度は管ごとにかなり違い、また検出面の中でもあまり一様ではない。
これらの効果は、エネルギー信号や位置信号の特性に、良くか悪くか影響を与えるので、実際のガンマカメラでは内部の構造にさまざまなくふうを施し、多種類の回路を組み合わせて、良好な特性を引き出すように努めている。また、一台ごとに、内部の多数の回路や機構を微細に調整して、直線性や均一性を修正し、許される誤差内に保つように生産しているが、これは手間のかかる作業である。近年は、ディジタル回路やコンピュータを組み込んで補正計算を自動的に行わせて、特性を大幅に向上させるとともに、調整作業を大幅に減らすことができるようになってきている。
内容紹介 テーマの紹介、各ページの紹介、図解の読み方を説明する。
ガンマ線心臓画像法 方法を図解して説明
心臓のしくみ 心臓が血液を送り出す仕組みを、2枚の画像を重ね動かして説明する。
ガンマ線カメラのしくみ ガンマ線を捉えて画像信号に変換する仕組みを図解する。
信号シミュレーション 画像信号に変換される仕組みを、シミュレーションにより説明する。
画像を扱うしくみ コンピューターが画像信号を画像に仕上げる仕組みを説明する。
画像ディスプレイのしくみ 画像がCRTディスプレイに表示される仕組みを図解する。
心臓拍動画像 コンピューターが仕上げた心臓の画像を動かして見せる。
この装置を開発した頃 このコンピューターを開発した頃の思い出。