MRI撮影装置の測定部 主要機構を示す。
静磁界コイル:測定野に均一な強い磁界を発生する。
大電流を流すコイルを、均一性を高めるために、4連
配置にする。超電導コイルの方が、高磁界、大視野、
高安定、高均一にできる。永久磁石は経済性がよい。
Z軸傾斜磁界コイル
Y軸傾斜磁界コイル
X軸傾斜磁界コイル
傾斜磁界とは、視野内において各軸方向に 磁界強度
が直線的に大きくなる磁界。磁界方向は
主軸に平行。
アンテナ・コイル:送受信兼用、または分ける。
視野内に共鳴周波数の高周波電磁界を発生させ、
共鳴した核が発する電磁界を検出する。
(電磁界: 変化の速い磁界は、電磁波の
性質が強くなり、電磁界と呼ぶ。) <次の図へ>

Z軸傾斜磁界コイル
Y軸傾斜磁界コイル
X軸傾斜磁界コイル
主磁界の中に置かれたX,Y,Zの傾斜コイルは、視野の内部に、各軸方向に 磁界強度が直線的に大きくなる磁界を発生する。その磁界方向は 主軸Zに平行に向かう。
(前図と同じく、上から見た図)
X傾斜磁界コイルの下半分(視野中央
水平断面より下側)を、真上から見た図。
(電流は+記号の断面から手前に出てくる)
コイルに電流を流すと、周囲に磁界が発生する。
X傾斜磁界コイルの下半分(視野中央
水平断面より下側)を、真上から見た図。
(電流は+記号の断面から手前に出てくる)
コイルに電流を流すと、周囲に磁界が発生して、
赤線で示すような 磁力線が張られる。
磁力線の強さは、電流からの距離の自乗に反比例するので、
視野内の磁界は、近距離にあるコイル線からの磁力が 主体になる。
視野内に合成された磁界を<次の図に>示す。
視野に、X軸傾斜磁界が発生する。
X軸傾斜磁界は、視野内において、X座標に比例した強度の
(磁界の方向は主軸方向を向いた)滑らかなな磁界である。
すなわち(理想的には)、各辺50cmほどの立方体である視野のどの部分においても、その点のX座標の値に比例した強度であり、Z方向を向いている。
コイルの形は原理的には図示したようなクラ形(馬の鞍(クラ))をしているが、そのままの形では誤差が大きくて画像がひずむので、実際には、すこしずつ形のずれたコイルを多重に重ねて、理想の磁界分布に近づけている。
<次の図へ>
Z傾斜磁界コイルの下半分(視野中央
水平断面より下側)を、真上から見た図。
Z軸傾斜コイルの一組に互い違いの方向に電流が流れると、視野空間には逆方向の磁界が重なり、コイル巻線に近い方が優勢になって、<次の図>のような傾斜磁界が発生する。
Z傾斜磁界コイルの下半分(視野中央
水平断面より下側)を真上から見た図。
Z軸傾斜磁界は、視野内においてZ軸の視野中央面から、
正側は、Z軸の方向を向き、面から離れるほど強く、
負側は、反対の方向を向いて、やはり面からの距離に比例して強い磁界である。
視野内に張られる静磁界は、常伝導電磁石では0.2T(テスラ)、超電導電磁石では0.5Tが代表的な値である。水素原子核の共鳴周波数は、0.5Tでは21.289MHz(メガヘルツ)になる。
傾斜磁界は 10 mT/m(ミリテスラ/メーター)くらいが実用的なので、視野 50cm角とすると、視野内の磁界強度と、その場合の共鳴周波数は図示の値になる。
ここに、励起高周波を浴びせると、<次の図へ>
<注>
テスラ【tesla】 記号 T
(テスラに因む) 磁束密度の単位。国際単位系の組立単位の一つで、固有の名称をもつ。一テスラは一ウェーバー毎平方メートルで、一万ガウスに等しい。
テスラ【Nikola
Tesla】
アメリカの電気工学者。電力輸送・無線通信に貢献。交流発電機・テスラ変圧器の創案者。(1857-1943)
静磁界にZ軸傾斜磁界を加えた状態にある被写体に、共鳴周波数の高周波電磁界を、アンテナ・コイルを通じて印加すると、磁界の強さが共鳴条件になっている部分の水素原子核が、励起されて共鳴し始める。
いま、この例では、1cm厚みに対応する周波数 21.289MHz
±2.13 kHz (傾斜磁界 0.1 mT/cm に対応)の範囲を一様に含んだ 図のような波形の高周波パルス(Sinc波)を印加すると、 被写体の
z=0 ±0.5cm のところの、1cm厚の断面が励起される。
<次の図へ>
Sinc波(シンク ハ): =sin(ft)/(ft)
この断層部分を切り出す巧妙な方法を「選択励起法」という。 MRIを実現させた重要な発明のひとつである。
共鳴条件に合致した部分(被写体中の1cm厚の断層)にある水素原子核が励起され、スピンがいっせいに回転する。
励起パルスを止めると、アンテナ・コイルには、今度は、回転しているスピンが放射する電磁波が信号を誘起し、しばらくの間(1秒たらず)信号が検出される。
この信号によって、被写体内の、水を含んだ組織を眺めることができるのだ。
信号の発信位置を知るために、次にXとYの傾斜磁界を加えて、信号を検知する。
X軸傾斜磁界を印加すると、励起され共鳴している断層内のスピンの回転速度(発信周波数)が変わる。
共鳴スピンの発信周波数は、磁界が強くなると高くなり、低くなると下がる。
共鳴断層にX軸傾斜磁界を加えると、共鳴中のスピンは、自身のX座標の値に比例して 周波数を変える。
アンテナ・コイルにはいろんな周波数の共鳴信号が混合して到達するから、この信号をフーリエ変換して周波数ごとに分ければ、共鳴スピンがどこにたくさんいるかを、X軸方向について知ることができる。
共鳴スピンが周波数を変えて位置を知らせているのは、ピアノのたくさんの弦が鳴り響くのを聴き分けるのに似ている。
共鳴しているスライスの、左寄りからは低い周波数、右寄りは高い周波数の共鳴波が発せられ、アンテナコイルに届く。
ただし、アンテナが左右を聴き分けるのではない。 アンテナはごちゃ混ぜで受信し、増幅・検波して低周波に変換した後、コンピューターの中でフーリエ変換して信号を分けるのだ。
(検波の話は「その3」で述べる。)
こうして、体内水素原子の位置は、Z、X座標については、共鳴断層を選択し、周波数の違いで識別することになった。
さて、残るY座標の位置判別をどうするか?
これには、測定を何度も繰り返し、都度、Y座標に比例して共鳴波の位相(波どうしのずれ)をずらす方法が考え出された。
Y座標値の大きな場所(横たわった人体の前側)から出る共鳴信号は、測定ごとに大きくずれるので、毎回、値が変わる。Yの小さな背中側から出る波は、毎回あまり変化しない。
いわば、リズムの違いでYの違いが表現される。Y座標の上の方から出る波は、測定ごとに小刻みな変化を示す(タタタタタタ...)。
下寄りの波は、大刻みな変化である(ターン、ターン、、)。
ていねいに波形で示せば、<次図>のようになる。
共鳴波の位相をずらすには、Y軸傾斜磁界を短時間加えて、共鳴周波数を一時的に変えて、また、戻す。この間にスピンは速く回るか遅く回るかして、戻った時には波の位相が前にか後ろにか、少しずれている。
測定ごとに、Y軸傾斜磁界を加える時間を 少しずつ大きくすると、位相のずれ量が測定ごとに大きくなる。
測定した波を、位相が一定の基準の波と掛け算して大きさを調べる「位相検波」で処理すると、その結果が、測定ごとに揺れ動く波になる。これをフーリエ変換すると、この揺れの周波数が、Y位置を示すことになる。
以上の例を左の図に示した。波をていねいに比較して理解してほしい。
次のページ <その2:パルス・シーケンス>
に、以上をとりまとめた実際の測定法を述べる。
あらまし MRIの元信号 「フーリエ変換」の効用 MRI画像 作成法-2 MRI画像 作成法-3 MRIの黎明期 もくじへ
§5.40代の私: 体の中を見る、MRIの開発