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§5.40代の私: 体の中を見る、MRIの開発
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MRIの 夜明けその2. 物理現象が診断を確かにする |
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| 大勢の物理学者がアイデアを投入 オクラ(野菜の)の断層写真が、NMR(核磁気共鳴)信号で描き出されて ネイチャー誌の表紙を飾ったのは、1973年である。 ごくシンプルな原理;核磁気共鳴信号の周波数は、場の磁界の強さに比例する、を使えば、共鳴する原子核の分布が画像化できると、米ニューヨーク州立大の ラウターバー*が考え出して、簡単な実験装置を作り、野菜や肉片などの断層画像を作成して報告した。 以後は、主に英国の多数の研究者が、寄ってたかっていろんなアイデアを試み合って、実用的な画像法が急速に成長した。王立科学協会のような公的機関が、いくつかの研究組織に、まとまった資金を提供して、開発研究が競争で進められたようだ。時には、ロンドンから学会帰りの汽車の中で、研究者らが議論を続けている内に、新しい画像化の方法が案出されることもあったらしい。 *2003年ノーベル賞医学生理学賞 |
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| NMR: Nuclear Magnetic Resonance (核 磁気 共鳴) |
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NMRによる分析技術 以後、分子の構造をNMRの精密な測定から推定する技術がさかんになり、そのための分析装置が進歩してきた。ここでは原子核の共鳴周波数が分子構造のなかでわずかにシフト(偏位)する量を求めるので、高い周波数、したがって高磁界が用いられる(数百MHz、十数テスラー、など)。 医学界では、1971年、ニューヨーク州立大のダマディアンが分析用NMR装置を使って、悪性腫瘍組織のNMR緩和時間が正常組織に比べて長くなることを見いだして関心が集まり、生体組織のなかの代謝機構の追求などにNMRを利用する研究がさかんになったりしてきた。 |
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すごい、国際シンポジウム ↓下は私のメモ。シンポジウムの直後、セイラムのホテルにまだいるうちに書いたもの。少々差し障りもあるが、史料としてそのまま掲げる。 |
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メモ(1981.10.4 喜利ノートより)
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討論がすごい。敬語のない世界だ。 これでは進歩は早いぞ。やってるものどうしが、こんなに意見交換をしていたら、智恵も出るだろう、アイデアは磨かれるだろう。思いついた案を討議に付したら、たちまち揉まれて成案になるだろう。隠しておいても、誰かが先にやったら値打ちはなくなる。実際に試して育てるのが一番だ。みんなそうしている。経験を積まなければ討論に加われない。
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私にも誰かが聞いてきた。お前はこの会合のどこに興味があるのか。医学への利用効果だ。何か見付けたか。Gray is gray, and white is white だ。そうだ、脳の灰白質 gray matter、白質 white matter はCTでは逆に出る。アーティファクトが無いのが良いなあ。spinal cord がきれいに見えるぞ。spinal cord てなんだ?(脊髄のこと) そこから先は言葉が出ない、まことに残念。 帰途、浜松医大の金子教授に随行して、UCSFグループの実験室を訪問させてもらった。 |
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私たちの挑戦 私たちはそれまで、コンピューター技術の応用研究に取り組んでいて、種々の画像処理の手法を確かめていた。フーリエ変換法を高速にこなすコンピューターを中心に、カメラやスキャナーを接続し、いろんなタイプの画像表示装置を製作して、物体の計測や超音波による血流速度の測定法などを開発していた。その数年前からCTのコンピューター関連部分の開発や生産に、私たちのシステム部は関与もしていた。 |
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![]() 常電導MRI装置 研究室 中央はコンピューターラック、 右端に大きな電磁石を納めたシールドルーム |
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| フーリエ変換法で驀進(ばくしん) それは正解だった。画像処理コンピューターがそのまま実験システムに活用できた。NMR分析装置を経験していたメンバーも、高周波回路に強い男も、いた。 数学の長けた人物は電磁石の最適磁界算出式を解き、狂った磁界の修正方法を確立してくれた。 フーリエ変換になじんだ私たちは、CTで実績のでていた投影・再構成法や焦点磁場法には目もくれず、フーリエ変換・画像再構成法の実現にいそしんだ。 それには、広い範囲で直線性の良い増幅器や、ゆらぎの無いきれいな波形を発生させる回路、正確な時を刻む制御回路、などが必要だ。アナログ回路とディジタル技術を組み合わせれば、それが可能になる。コンピューターのインターフェイス回路の設計でそんな技術を鍛えた猛者連が、すごい性能の回路を作ってくれた。 私は大学で高周波電子工学を専攻したし、趣味のラジオ、ハイファイ・セット自作で、回路技術には、けっこう詳しい。若い連中の専門技術にはかなわないが、弱点を見抜く鑑識眼は私の特技だ。それに修理経験も長年の蓄積がある。あるころ、画像が時々ひずむという現象が現れて、その原因がなかなか見つからない。私は小さな木槌を手に、装置の表裏あちこちを一日中叩き回って、とうとう電磁石の床下にある分流抵抗器に割れ目のあるのを発見した。鏡を床に置いて見付けた。こんな泥臭い追求は誰にもできるものではない。 |
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このマグネットは素晴らしい 納期はきちんと守られ、性能は優れていた。その後この社には、世界中から電磁石の注文が殺到し、ウッドさんは輸出振興の功績でナイトの爵位をもらったという。 広い邸宅に住んで、庭でバード・ウォッチングを楽しんでいると聞いた。 |
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テレビカメラから画像処理コンピューターに取り込み、2次元フーリエ変換して、周辺の低周波部分をカットした後、逆フーリエ変換して得る。 |
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1982年11月8日 撮影 |
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初の 脳腫瘍 描画 京都府立医大からも、脳外科・平川教授以下が数人の患者さんを撮影され、それが診断と手術の検討にたちまち役立って、MRIの威力が示された。 |
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脳幹部腫瘍 X線CT像 → まことに残念ながら、 手術中の腫瘍 ↓ |
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小脳を押さえて、小脳の前上方の腫瘍を取っているところ
(京都府立医大 平川 公義 教授のご好意による) |
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病巣の性質を推定できる
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| 医療の厳しさをかいま見る こうなればどんどん調べてみよう、動かせる患者さんを皆診てみようと、たちまち短期間に十数人の症例が蓄積され、われわれも医療の一端を担って感激していたが、悲惨な思いもしばしばした。ある感じのよい婦人は髄膜腫で、手術と聞いていたが、予後が悪くて亡くなられた、とか、若い女性が下半身不随で、その脊髄の異常を診ようと、手作りの木製ベッドに載ってもらって電磁石の開口に入れるのに皆で抱えて苦労したが、聞けば、出産を待っている間に、脳の腫瘍が脊髄に転移してマヒしてしまった、手術が手遅れになってしまった、とか。 |
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§5.40代の私: 体の中を見る、MRIの開発
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