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分光(吸光)光度計の原理

 分光吸光光度計(absorption spectrophotometer)は、単色光を作り出して、これを試料に照射し、透過した光の量を測定して、試料の、その波長における吸光度を求める

 吸光度が、試料中の吸光物質の濃度に比例するところから、定量分析の重要な道具として便利に用いられる。

 下図に、原理的な装置の構造を示す。

 図の上部は、分光器を主体とする光学系で、光源ランプの白色光をプリズムを使って分光し、単色光をスリットから取り出して、試料を透過させ、光電子増倍管で光の量を検出する

 図の下部に示す電気系によって、光量を精密に求める。

 用いる単色光は、測定対象物質がよく吸収し、他の共存物質による吸収の影響は無視できる波長を選ぶ。(この前提条件を満たすことが難しい場合も多いが、試料の作り方をいろいろくふうする。)

1. まず、光源(可視光領域は白熱電球、紫外域は重水素放電管など)、波長光量(スリット幅)、検出器の感度(負高圧を調節)、を適切に選んでセットする。

2. シャッターを閉じ、操作選択スイッチを「シャッター閉」にし、ヌルメーターの指示が中央(電位差=0)になるように、ゼロ点調節の可変抵抗器を調節する。
 この操作によって、検出器の暗電流による誤差を取り除く。

3. 対照試料(測定対象物質を取り除いた溶媒のみの試料)を光路に入れ、「対照」に切り換えてシャッターを開き、ヌルメーターの指示が中央になるように、100%調節の可変抵抗器を調節する。
 この操作によって、測定レンジが標準化される。

4. さて、測定試料を光路に入れ、「測定」に切り換えて、ヌルメーターがゼロを指すように測定ダイアルを動かし、指針の示す目盛りの位置をていねいに読み取って、吸光度を求める。

 このように、手間と神経を使う操作だが、吸光度から物質の濃度すなわち存在量を求める「吸光定量測定法」は、多くの場合に、天秤で秤量したり発色を見ながら滴定したりする他の定量分析法に比べて、はるかに容易に精度良く測定できるので、物質を取り扱う現場ではよく用いられる手段なのだ。

 このタイプの分光光度計は、1940年代にアメリカのベックマン社が製品化し、それまでの、光量を参照光の明るさと目視で比較して定める「比色計」や、電気メーターで光電流を測定する単純な光度計に比べて、測定精度がとてもよく、分光器の設計もよくできていて、世界中でひろく用いられるようになった。
 私が島津製作所に入社した1959年頃、社ではベックマン製品をそっくり真似した製品を作っていて、いくらかの部分的な改良は施したが、とりわけ上に説明した「ヌル・メソド」の測定精度の良い点に執着していて、そこを評価してくれる顧客も多く、主流製品の一つになっていた。

 「ヌル・メソド」は、メーターの針の振れを直読する「偏位法」に比べて、測定ダイヤルをスライドさせる操作が余分に加わるが、ポテンシオメーターの直線性はメーターの偏位精度よりもはるかに高い、またバランス状態では測定回路に負荷がかからない(電流が流れない)ので、特に高吸光度において誤差が小さく、広い定量範囲で安心して使える、というのが、ユーザーの歓迎するところであった。

 実際、特に大型メーターでは、指針の保持機構に摩擦によるヒステリシスがあったり、指針を変位させる永久磁石と電磁石との機械的精度が一様でなくて、目盛りを一台ごとに校正電流を流しながら手書きで刻んでいくという製造過程であったから、精度保証ははなはだ困難という状態だったのだ。

 だが、社会も進歩し、使う人が増えてくると、操作の簡単な装置が望まれてくる。競合各社はだんだんに「偏位法」の装置を発売してくる。わが社は、精度を重んじる根強い硬派の人々に支持され続けて、うかつに簡易な手段に走れない。ジレンマに陥って悩む事態がしばらく続いた。

 そこに出したデジタル化私案が、大きな期待を招いた。

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