・実際の登山に携行する地図としては,「登山地図」と「地形図」があります.
・「登山地図」を持って行く人は多いと思いますが,山で地形図を使っている人はあまり多くないようです.
・そこで先ず「登山地図」と「地形図」のそれぞれの特色を簡単に記します.
登山地図
・民間の地図出版会社が国土地理院の地形図を基に必要な事項を追加して登山向けに編集したもの.
・登山ルート・コースタイム・主なピークと標高・山荘・お花畑の位置・水場・テント場・危険な箇所など
が書かれているので,登山に必要な主な情報を素早く知ることができる.
・登山地図の発行会社としては,昭文社 ・日地出版 ・北海道地図社 ・山と渓谷社 などがある.
・縮尺は5万分の1のものが多いが,4万分の1などのものもある.
・新しくできた登山道や崩落などによりコースが変わった箇所なども,比較的早く改訂版に反映される.
・特に昭文社の地図は,耐水性にも優れた紙を使用している.
・登山地図の不得手なこと
一枚の地図に広い範囲を収めている(縮尺が小さい)ので,コース途中で地形を読み取り現在地を確認するのには不向き.
同じ1枚の紙だと,1/50000 地図は 1/25000 地形図の4倍の範囲が収まることになる(下の図参照).
地形図
・国土交通省国土地理院が発行している 2万5000分の1地図 や 5万分ノ1地図 のこと.
・2万5000分の1地形図では,細かな地形まで読み取れるので,山中で現在地を知るのに欠かせない.
・見慣れてくると,地形や山容がある程度立体的にイメージできるようになる.
・地形図の不得手なこと
登るコースによっては1枚の紙に収まりきっていないので,数枚をコピーして張り合わせるなど工夫が必要.
新しくできた登山道,コースが変わった箇所,廃道となったルートなどが,修正版に反映されるのに登山
地図より時間がかかるので,実際の登山に当っては登山コースの事前の情報収集が必要である.
(参考)1円玉の直径は2cm,テレホンカードの対角線の長さは10cm,地図でおよその距離を測る時便利.
どちらの地図を使うか
・警察庁生活安全局が調査発表した山岳遭難の概況によれば,遭難事故で一番多いのが「道迷い」で,約38%です.
(警察庁生活安全局地域課「平成18年中における山岳遭難の概況」より)
[滑落][転落]なども「道迷い」が原因となっているものもあるので,安全登山のためには「道迷い」
を防ぐことが大変重要となってきます.
・「登山地図」はある程度広い範囲の概念を把握したり,遠い山の山座同定をするのには向いていますが,
道の分岐点などで尾根や谷(沢)の地形などから現在地を確認し,「道迷い」を防ぐのには不向きです.
・安全登山のためには 地形図をメインに登山地図をサブ として使い,登山中は要所々々で「地形図」上
で現在地を確認しながら歩く習慣をつけるのがよいと思います.
地図の比較
・下に掲載した地図は,国土地理院の1/25,000 地形図の北アルプス槍ヶ岳付近です.
・1/25,000 地形図では,「坊主岩小屋から槍岳山荘に行く登山道は広い沢(槍沢)を北西方向に上って行き,
途中には殺生ヒュッテへの分岐があり,その先で道はジグザグとなり槍岳山荘直下では斜面も急になって
くる」というようなことがよく分かります.
また,進行方向左側には「がけ(岩)」マークがあり,「登山道はこのがけを避けて右側から回り込むように稜
線に出る」ということも分かります.もしガスなどで見通しが悪い時に眼前に「がけ」が現れたら,
「コースを西方向に外れているのでは?」と疑ってみることもできます.
・一方 1/50,000 登山地図ではそのような道や地形の変化までは読み取れません.
安全登山のためには,地形図をメインに使った方がよい理由はここにあります.
・2006年7月上旬に残雪の槍沢を上っていた登山者が,コースを誤り大喰岳方向に登り詰め滑落するという
遭難事故がありました.(
長野県警察・山岳情報より).
雨で見通しが悪かったとは言え(見通しが悪いからこそ),磁石で進行方向を確認していれば事故を防げたのではと残念
に思います.
下の地図は,「国土地理院発行の2万5千分の1地形図(槍ヶ岳・穂高岳)」を使用したものです.