〜富山城の割石技術〜
(8) 矢
@矢の復元

 矢穴に入れられるクサビは矢といい、矢穴痕の計測により、矢の形状と大きさがおおよそ復元できます。

 矢には、鉄製のものと木製のものがあり、大きめの矢は木製が多かったとみられます。

 富山城では、石垣解体調査の際、石を安定させるためのクサビ状の敷金(しきがね)が2点出土しました。1点は、先端が尖った完全な形のクサビで、築石の縁に挟めてあったことから、石の隙間に挟んでわずかなガタつきを止める役割を持っていました。もう1点は、錆によりボロボロとなっていたが、先端に面があり尖っていない角型のクサビでした。

 富山城に見られる矢穴の多くは、角や底が丸く仕上げられており、底面は幅2cm内外の平面となっています。このことから、富山城で使用された矢は角型のクサビ(角矢)であったと考えることができます。

 割られなかったために残った完全な矢穴の寸法から、富山城で使用された角矢は、先端の厚さ3cm(1寸)〜2cm(7分)、側角27.5°〜30°、幅6〜6.5cmであることがわかります。ここから推定される矢の長さは7〜10cm、頭部の厚さ5.5〜10cmとなります。

 2点出土したうちの角型の1点は、先端幅推定1.5cm、側角15°、幅8cmであり、上で計測した矢穴より大きな矢穴(鏡石裏面の矢穴ほどの大きさ)であれば、入れることのできる矢の大きさです。このことから出土した角型のクサビは、使い終わった角矢を転用したものである可能性が高いと考えられます。
(古川)
矢を転用した敷金