韓国GNHの旅
2010年10月3日から8日まで、5泊6日のナマケモノ倶楽部主催の韓国GNHの旅に参加しました。ナマケモノの旅はエクアドル、ブータンに続いて3回目です。また、韓国も2007年(APACT国際会議)、2009年(WALK9)に続いて3回目です。
当初は、「塩田へ行くならば韓国のうまい塩が手に入りそうだ」、「スローカフェめぐりも楽しそうだな」、「昨年食べたエゴマスープがまた食べられるぞ」といった程度ののりで参加を決めたのですが、ところがどうして感動に満ちた旅となりました。
新安スローシティはスモークフリー
まず初めは、新安郡チュンドの島巡りです。周りには韓国最大の太平塩田(約140万坪)が広がります。この塩田の大きさには目を見張ります。ひと月前に塩で有名な四国の伯方島へ行ったのですが、そこはもう自前の塩作りはしていません。メキシコから塩を輸入し、再調整して「伯方の塩」として売っているだけです。塩田跡もいまでは一部海老の養殖場と化していました。もう日本には太平塩田のような天日干しの塩田がなくなってしまったのはさびしい限りです。
さて、塩レストランで朝食後、電気自動車で展望台、博物館、アッケシソウ畑、塩作り体験場と回りました。展望台から見る塩田は圧巻です。また、ここの干潟はとても大きく、見渡す限りが干潟です。干潟は昼食をとっている間にみごとに海となり、干満の大きさが感じられました。
塩作り体験もしました。といっても結晶化が進んだ塩をみんなでいっせいに集めるだけですがあっという間に塩の山ができます。それをすぐに舐めて塩の味を確認しました。なかなか面白い体験でした。
この島で、塩田を生かしたスローな街づくりを推進しているソンさんからお話を伺いました。まだ40代という若き実業家です。とても意欲的な方でなんともいえない魅力があります。この島へ通ずる橋が今年の3月に開通したそうですが、近い将来には車を橋の手前で止め、徒歩、自転車、馬などで島の移動を行っていきたいということでした。スイスのツェルマットのようでいいですね。山のツェルマット、海のズンドですね。そういえば、中村さんは山からコーヒーを、海からは近いうちに塩を輸入すると言っていました。
またこのとき私たちにとってはとても魅力的な話を聞くことができました。新安は国際的な「スローシティ」に認定されているのですが、その条件としては、@人口が5万人以下であること、A自然生態の保護、B伝統文化の尊重、Cスローフードであること、D地域の特産品、工芸品の保護、E地域住民が中心となったまごころのこもったおもてなしの気持ち、F近くに大型ショッピングセンターがない、などがあるようですが、今回初めてその実態に触れ大変感動しました。なかでも「新安スローシティ」は「スモークフリー」をかかげているのです。レストランの壁には「チッタスロー」のかたつむりの大きな看板が掛けられていましたが、禁煙マークとともに「スモークフリー」のステッカーも貼られてありました。「チッタスロー」は1997年にイタリアから始まった運動ですが、韓国にはそんな地域が6か所もあるとのことでした。
私たちにとって、「スロー」と「タバコフリー」は切っても切れない関係があるのです。「スロー」の中には健康で生きたいという願いがあるはずですが、「スロー」な生き方をめざす人でもタバコに無関心無理解な人もいますし、それどころか反タバコには反発する人さえいます。また、反タバコ関係者の中にも「スロー」に無関心で「私はスローには興味がない。」という人もいます。どちらもそれなりの理由があるのでしょうが、私たちの目指すものはともにある社会です。
それが韓国の地で初めて出会ったのです。これは奇跡に近い出来事です。思い出すたびにその感動が甦ります。(実はブータンもタバコフリーの国ですがここでは触れません。)この「タバコフリー」を掲げているのは新安だけなのでしょうか。それとも「スローシティ」の選考基準に入っているのでしょうか。まだよくわかりませんが、是非とも日本でもこんな「スローシティ」が実現することを願ってやみません。
昼食は塩のレストランで頂きました。これがまたおいしかった。ソンさん提供による特別料理を味わうことができました。「スローシティ」の条件のひとつにおもてなしの心が大切であるとあるようですが感服、満腹となりました。
また、レストランに併設して「塩の洞窟ヒーリングセンター」があります。私たちは40分のコースを体験しました。中は青白い光に包まれ気温は20〜23度で塩の霊気で覆われていました。ベットに横たわるとしばらくして静かな眠りに着き、ときどき鼻からドヒャと空気が抜けます。これは初めての体験でした。近くからはいびきも聞こえました。きっとよい眠りについていたのでしょう。治療にも使っているとのことなので、またの機会にはぜひ継続的にやってみたいとおもいました。
エコビレッジはただいま増幅中
「スローシティ」の次は「エコビレッジ」の訪問です。このビレッジは、「野草手紙〜独房の小さな窓から」の著者であるファン=デグォンさんが運営しています。彼は1985年捏造された「欧米留学生スパイ団事件」により逮捕され、13年2カ月の長きにわたって投獄されていました。そのためか私より5歳も若いのに随分と年を重ねているように見えました。
彼の一文を“日本語版によせて”から紹介します。―「すべての生命は本質的に同じであり、どれほど下等に見えるものであってもこの宇宙にひとつしかない貴重な命」だということを、「無数に存在する生命は、互いにひとつにつながっている」ことを、感じ取ってくれたらと願う。―
「エコビレッジ」は街から離れた山の中の静かなところにありました。不便であることが大事であるとも言っていました。建物はすべて手づくりです。トレーラーハウスのようなものや土壁のオンドル小屋(ゲストハウス)などが建っていました。周りには畑があり自然農での野菜作りをしています。「わら一本の革命」の著者である福岡正信さんや「妙なる畑に立ちて」の著者である川口由一さんのことも知っていました。稲の栽培もしているのですが、草取りをしなかったところは全滅で、彼自身初めのころは稲の苗も雑草も分からず抜いてしまったと言っていました。私たちが福島で育てているエゴマも植わっていて嬉しかったのですが私たちのエゴマより小ぶりでした。どういう食べ方をしているのか聴くことができず心残りです。
森の中のちょっと開けた空間では音楽祭をしているということです。なんとこの森の中で急遽、中村隆一さんのリクエストに応える形で、旅の同行者である松谷冬太さんがアカペラで自作自演の“森の歌”を歌ってくれました。彼の声が森に吸い込まれるようでとても気持ちの良い時間が流れました。
なお、松谷さんは行く先々でギターを弾きながら歌を歌ってくれました。大いに交流に貢献していただきましたし、心をやすらかにもしていただきました。感謝です。
まだ、ゲストハウスがひとつしかないとか冬場は寒くて居られないとか問題があるようですが広い敷地があるので将来的にどんなものになるのか興味があるところです。ただし、ここは「タバコフリー」ではありませんでした。ゲストハウスやトイレには吸殻がたくさんあります。残念なことに、ここでは「エコ」と「タバコフリー」は一致しませんでした。
ユース・クリエイティビティ・サミットに参加
ソウルには不登校やフリースクールに通う若者の活動の場として行政が建てたハジャセンターという建物があります。そこで「ユース・クリエイティビティ・サミット」が開かれているというのでみんなで参加しました。昼間は3人の事例発表(医師になり患者とゆっくりと向き合う診療をしている人。ゲストハウスを経営している人=なんと初日に泊った宿がこの人が経営している宿「BEBOP HOUSE」でした。20数か所の仕事を経験し現在はアクセサリーを作っている人。)を聞き感動し、夜は青年たちのミニライブに耳を傾けました。
この事例発表の中で、「引きこもり」という日本語がたびたび出てきました。もうこれは国際語になっているのですね。これには驚きました。
そして夜の部で、小澤さんはスロー社の生い立ちの説明をし、締めくくりはラップ音楽で聴衆をあっと言わせました。軽快なリズムで日本語ながらも盛り上がり絶好調でした。憲法9条に触れるときは上着を脱ぎ「9条Tシャツ」でアピール、決まってましたね。こんどはこのラップに「タバコフリー」の台詞を入れてくれませんかね。例えば、「タバコなんてダサイのやめて、きれいな空気を楽しもう。ニコチン中毒さようなら。気分は爽快、飯うまい。・・・」。こんなのどうでしょうかね。
最後は松谷さんです。ここでも「森の歌」を披露。韓国語に若者たちも聞き入りました。
そういえば、小沢さんや松谷さんのときは子どもたちも身を乗り出すようにしていました。香港から来た子どもたちは、二人が話す日本語を通訳の人が韓国語に訳し、それを先生が英語に訳すのを熱心に聴いていました。きっと彼らの心にお二人の気持ちが届いたことでしょう。
KWEN(韓国女性環境ネットワーク)はナマケモノよりすごい!?
ソウルにあるKWENの事務所を訪ねました。 発足はナマケモノ倶楽部と同じ1999年です。20代、30代、50代、70代にそれぞれ代表がいるとのことです。KWENの専従の職員は10人以上、手伝っている人を含めると20人近くいるとのことでした。会員は1400人ほどで、男性は3割程度です。今回のツアー中は男の会員には会いませんでしたけど。
主な活動として、化学物質過敏症に対する取り組み、化粧品の成分表示を求める運動、マイボトル運動(直営店で販売)、スローファッション(流行を追わない、修理して使う)、アジアの女性に働く場を、など多彩です。なかでも面白かったのは、「夜は寝ましょう!キャンペーン」を行ったということ。これはみんなで夜のコンビニにパジャマ姿で押し掛けるというものです。韓国もいまは日本と同様に夜の世界がまぶしいようですね。
この話の中で韓国の女性の乳がん発生率は世界一だということを聞きました。この話を聞いて思い出しましたのは乳がんとタバコの関係です。韓国の男性の喫煙率は非常に高いですね。今年の発表では男性の喫煙率は42.3%とのことです。「WALK9」の時もそうでしたが、今回も街角ではたむろして喫煙している風景をたくさん見ました。つまり、女性たちは吸わなくてもあれでは家庭などでの受動喫煙がひどいことが想像できます。以前はニコチンの抗女性ホルモン作用によって発がん作用が弱められるといった研究もあったのですが、最近の研究では能動喫煙はもちろんのこと、受動喫煙でも乳がんのリスクは2.3倍になるとの報告もあるのです。(「タバコ病辞典」、「喫煙と健康」(厚労省報告書)を参照)そんなタバコについての認識があまりなかったのは残念でした。
また、KWENは直営のフェアトレードショップ「g:ru(グル)」も持っています。この店の周辺は下町風のぶらぶらしてみたくなるところでした。覗きたくなるようなお店やちょっと休憩をしたくなるようなカフェや食堂がいくつもありました。また、学校の周辺は「スモークフリー」となっていました。
今回の旅にはKWENのスタッフが2人同行してくれました。一人の方は日本語が話せます。8年間独学で勉強して話せるようになったといいます。「アンニョン ハセヨ」しか話さなかった私としては恥ずかしい限りです。彼女のおかげでいろいろと最近の事業を知ることもできました。もう一人の方は英語での対応ですが、各地の事情にも精通していてとても見事な対応をしてくれました。こんなに充実した内容となったのも彼女のおかげかもしれませんね。私たちはひそかに韓国のモモエちゃんと呼んでいました。
KWENの活動についての説明を受けた後、ツアー参加者とKWENのスタッフとの交流を行いました。松谷さんの「森の歌」を聞きながら小澤さんがスローコーヒー淹れてくれました。そして、記念写真。そういえば、今回は行く先々で記念写真を撮りましたね。これもまたいい記念です。
食はビビンバにあり
毎日1食は必ずビビンバを食べました。おわんの中に5〜6種類のおかずがのっていてそれをかき混ぜて食べるというものです。これがまた、食べる先々で少しずつ違うのです。味ものっているおかずも違います。共通しているのはご飯は白米と雑穀の混ざったものだということです。移動中の畑では、アワやキビなどが見られましたのでそれらがきっと入っていたのでしょう。雑穀を日常的に食べているとてもいいことですね。
二日目の昼食はオーガニックの食材、食べ残さない、洗剤は使わないという方針の下運営されている食堂でした。代金が払えない人はそれなりでいいとのことでした。食べ終わった後は、お湯と大根の一切れをもらい、それでおわんを丁寧に洗い、その汁は飲み干します。まるで山田洋次監督の映画「たそがれ清兵衛」に出てきた清兵衛さんのようでした。
韓国最後の昼食は女性が一人で切り盛りしている食堂でした。私たちは着くなり、「ビール」などとつぶやくものですから、お店のおばさんはすぐに飛び出しビールを買いに走ったようです。私たちはというと、その間絵表示のあるメニューを見て、ビビンバだ、うどんだ、焼きそばだと何種類か注文をとったのですが、おばさんは帰るなり「今日は私の特別のビビンバを食べるのよ」と有無を言わさず言ったのでした。これには一同唖然、「おう、そうだそうだ」ということになりました。これも私たち用の味付けでしょうか、とてもおいしかったです。次回行ったときは“うどん”もおいしそうだったのでうどんを食べさせてくださいね。このお店には何とも言えない不思議な魅力がありました。店内は雑然としていて食堂とは思えませんでしたが、でもおばさんの人気でしょうか、12時過ぎには外の2テーブルも含めてすぐに満席になっていました。
フェアートレードショップといい、今回食事をしたところ全てに女性のパワーがあふれていました。食事のときには必ずお通しのように吸う品お皿に盛られて出てきますが、気に入ったものはいくらでもお代わりができます。新安での夕食時、なすの炒め物が出てきたときには感動し、3度もお代わりをもらってしまいました。でもいやな顔ひとつせず出してくれた「夏木まり」に似たおかあさん、ありがとう。
さて、おしまいに少し要望があります。私たちにとっては、近くて遠い国だった韓国が行くたびに本当に近くて近い国になってきました。なんといっても沖縄よりも近いのですから。そこでナマケモノ倶楽部としては、これからも持続的に毎年1〜2回程度の韓国スローツアーを実施してください。日程があえば毎年行ってもいいですね。
また、KWENはすばらしい団体です。ぜひとも今後とも交流を図ってほしい団体です。できれば、相互の人的交流が行えれば素敵ですね。お互いのよいところを深めていければきっと未来につながる楽しいことが増えていくのではないでしょうか。
久しぶりにこのような楽しい旅を計画してくれたナマケモノ倶楽部の世話人の吉岡さん、事務局の馬場さんに感謝、また同行して私たちのお世話をしてくれたカンさん、イさんに感謝です。ありがとうございました。