1. 施策や事業費をひとり歩きさせず、その効果を数値化して評価せよ
2. 最少の費用で最大の効果を上げる計画を
3. 社会の二極分化の中で県民大多数への増税の是非を検討せよ
私は、一般会計及び特別会計の決算に反対の立場で討論いたします。
多々申し上げたいことはございますが、平成15年度には地方税制研究会から本定例会に提案された税制措置の土台となった報告書が出され、また、昨年9月定例会に示された水源環境保全再生基本計画の一つの柱である生活系水質汚濁負荷軽減の施策の前提となる神奈川県生活排水処理施設整備構想の改訂が行われたところですので、きょうは、本定例会の審議に直結する水源環境保全・再生に関連する課題に絞って意見を述べさせていただきます。
もとより私も、水源の森林づくりを初めとする水源環境の保全・再生が県政の最重要な課題の一つであると考えています。再生可能な今のうちに取り組みを始めなければならない、大状況はそのとおりであるとしても、研究会報告では年平均1,079から1,159億円とされていた事業費が、昨年9月の素案で573億円、12月の計画案では当面538億円とされました。一体どこまでが、今、何としても手をつけなければならない事業なのか、新税を創設してまで措置しなければならない必要最小限の額は幾らなのか、大変理解に苦しまざるを得ない状況です。
まず、第1の問題は、数々の施策と事業費は示されていますが、その緊急性と効果のほどが明らかにされていない点です。
私は、決算委員会の質疑で、この計画の中心事業である水源の森確保、整備について、新税を投入して整備を早めることで水源涵養機能がどれほど向上するのか試算を求めました。その意図は、施策や事業費をひとり歩きさせず、その効果を数値化して総体的に評価をする必要があると考えるからです。
明らかになった水源涵養機能の向上分は、5%。緑のダムとして確保されるその水量は、年間715万トンでした。これは宮ケ瀬ダムの開発水量の65分の1、全県の水需要の200分の1に当たります。これをどう評価すべきでしょうか。現在でさえ使っていない水の料金を取られているにもかかわらず、全県の水需要のたかだか200分の1のために新たに100億円に近い規模の新税を認める県民がいるでしょうか。
水源涵養機能だけに着目をすれば、現在の知見の範囲では、事業の拡充ができなくても致命的な問題にはなり得ないのです。事業の効果については、今後、モニタリングの中で検証していくというわけですが、施策の緊急性と効果を客観的に評価をする基準を示すことなしに、新税の論議を決着させることがあってはならないと考えます。
土砂崩れで山肌があらわになった山を見たい人はいませんが、では、そういう事態を避けるために、荒廃が進み、森林の現況調査でDランクとされた全体の3%の森林を緊急に対策するには一体幾ら必要なのか。反対に、財源が必要十分であった場合にはどれだけの効果が上がるのか、モニタリングを踏まえて、その双方の客観的な指標を示して県民に判断をしてもらう。先に事業ありきではない、そういった道筋が必要と思います。
第2の問題は、最少の費用で最大の効果を上げる計画を検討してきたのかどうか、この点です。
この観点で、研究会報告と、知事が策定した基本計画案の生活排水対策を見ると、どちらもダム集水域の生活排水100%処理を目標とするにもかかわらず、新規財源想定額について、平成15年度に出された研究会報告では二つのケースを試算して、それぞれ2億5,000万円と5億5,000万円としているにもかかわらず、昨年の基本計画案では、公共下水道の整備促進と合併処理浄化槽の整備で計10億3,700万円と、倍以上に膨らんでいます。
なぜこうなったのか。それは、研究会報告がケースAで7,910世帯、ケースBで5,400世帯を合併処理浄化槽での排水処理としているのに対し、計画案では1,130世帯に縮小をし、その他の世帯をすべて公共下水道での処理としているからです。研究会報告では、新たな費用負担について施策の緊急性、特徴、効果、財源規模などの観点での事業の絞り込みを行うべきとされていたにもかかわらず、全く逆をやっているわけです。
処理人口1人当たりの整備にかかる事業費は、下水道が115万円に対して浄化槽が28万円、4倍以上費用がかかる下水道をあえてふやしています。これでは地方税制等研究会を設けて長期間検討してきた意味が全くありません。
これは、平成15年3月に見直しをされた生活排水処理施設整備構想の計画値をそのまま機械的に当てはめて積算することで、このような計画案になっているものです。逆に、合併処理浄化槽をふやすほど整備が早く行われるために、BOD、窒素、燐とも早期に負荷を減少させることが可能であることが研究会報告で示されています。
とすれば、合併処理浄化槽による処理世帯をふやすことで、費用が少なく早期に効果が期待できることは明らかなのに、新たな税制措置で下流域の住民に負担を求めるに当たって、最も適切な処理方法は何か、下水道整備にふさわしい区域はどこまでか、この平成15年度に行われた生活排水処理施設整備構想の見直しにおいて、ダム集水域3町と詰めた検討を行った経過は全く見られません。ここにも、先に事業ありきの姿勢が見てとれるわけです。
三つ目の問題は、いまだにデフレ経済から脱却する展望が持てない状況の中で、県民の大多数に増税を行うことの是非についてです。
均等割の5割アップと所得税の課税額700万円以下の部分に限って課税するという現在の提案では、夫婦共働きで生活に追いまくられながら賃貸住宅に住んでいる世帯と、邸宅にプールをつくって水を浪費している大金持ちが、超過課税は同額といったことが起こりますが、このようなことが県民の理解を得られるでしょうか。
昨年第1・四半期のGDPは3.2%アップであったにもかかわらず、雇用所得は2.4%のマイナスとなったことが端的に示しているように、今の政府による構造改革は、法人においても個人においてもごく一握りの勝ち組を生み出す一方で、大多数を一層苦しい経営、家計に追い込んでいるのが実態です。
所得の面で労働分配率が低下をしているところに、健康保険の本人負担アップ、所得税の課税最低限引き下げなど税金と社会保険の負担がますます重くなってきています。この10年で生活保護世帯が倍増するほど社会の二極分化、窮乏化が進んでいる一方、国の税制は、シャウプ勧告の直接税中心、総合累進課税という基本を掘り崩して、年々大衆増税、金持ち減税を進めて、税の所得再配分効果はかつての7分の1になってしまっています。
このような中で、均等割を50%アップといった人頭税方式の大衆増税は、絶対行うべきでないと考えます。現在提案されている新税の案は、研究会が求めた、「神奈川らしい税制」と言いつつ、実際上、税の理念において、今の政府がとっている路線と全く同じ道をあえて選択したものであると言わざるを得ないものです。
岡崎前知事は、その任期の最後に「自然から手痛いしっぺ返しを受けかねない。緩慢に見える環境変化が劇的なものとなる前に」とかながわ発「水源環境」シンポジウムアピールで述べられました。
松沢知事が今まず行うべきは、少なくともその劇的な変化を回避するための費用を、当面、既存の財源の中から県の事業や組織のさらなる見直しや節減でつくり出すことに全力を挙げることであり、モニタリングの結果を踏まえて事業の効果を明らかにしていくことであり、最小限の費用で最大の効果を上げるべく関係市町村と事業の再検討をさらに行うことであり、そして、県民に負担を求めるより、三位一体改革で国と戦うことなんです。長期にわたる水源環境保全の財源は、県民からではなく霞が関から取ってくるべきなんです。
これらのことに死に物狂いで取り組んだとだれの目にも明らかにならない限り、真の意味での参加型税制にはなり得ない。先に事業ありき、先に新税ありきの批判からいつまでも逃れられないだろうと思います。
決算を不認定としても、何ら知事と県当局を拘束することはできませんが、知事並びに議場の皆さんに、今、申し上げたことを今後の論議の参考にしていただけることをお願いをして、私の討論を終わります。
