県議会TOPICS >
知事提案も二転三転  迷走 水源環境税

05年9月議会で水源環境税が成立しました。
07年4月から38億円が県民税に上乗せされて徴収されます。

★★★ 水源環境保全 もちろん○ でも こんな新税には反対です ★★★
 
疑問1
首都圏の車公害を止めなければ水源環境は守れないのに
疑問2
目的は水源環境保全より公共事業
疑問3
個人県民税上乗せ=逆進性の増税
疑問4
受益者負担と言いながら 法人は非課税
疑問5
水源の森整備でかん養される水量は宮ヶ瀬ダムの1/65
疑問6
決算の不要額でまかなえるのに
討論
ムダなダム開発のツケはどうする  
討論
水源環境保全再生事業の効果を示して増税論議を 05年2月
討論
水源環境保全の財源は、県民への増税ではなく
三位一体改革で霞ヶ関から取りもどせ
05年7月
 
リンク
神奈川県のホームページ (神奈川県の水源環境の保全再生をめざして)


水源環境税導入までの経過
◆ そもそも水源環境税とは
荒れた人工林
● 水源の森林づくり事業

 県民の水がめであるダム上流部の森林は、林業の経営が難かしくなり荒廃が進んでいます。枝打ちや間伐を行わず放置された林は、地表まで光が入らず下草が枯れ、表土が流されて森林の保水力が失われてしまいます。(左写真)そこで前岡崎知事時代の97年から、県と所有者が協定を結んで山の手入れを行う「水源の森林づくり事業」が始まりました。

● 生活環境税制

 「水源の森林づくり事業」(05年予算19億円)は県営水道からの拠出金5億円と一般会計の資金で行われてきましたが、「地方税制等研究会」がもうけられ、生活に関わる環境課題への取り組みのための新たな税制が検討されてきました。

●水源環境税

 研究会では水道料金上乗せ方式などいくつかの案を提言しましたが、松沢知事は、その中から個人県民税の均等割、所得割に上乗せして徴収する「水源環境税」の案を採用して提案しました。

◆ 知事 VS 県議会
● 04年6月議会

総務企画常任委員会に、個人県民税均等割1000円、所得割0.07%上乗せの増税案が報告されたが、100億円の新たな財源をあてる施策の提案がなく「はじめに負担ありき」の批判が集中。

● 04年9月議会

20年間の事業計画を盛り込んだ「水源環境保全再生基本計画(素案)」が報告される。「大きな負担をする都市部の住民にも配慮を」という中田横浜市長などからの要望を受けて、都市部の「谷戸」の保全などにも新税が充てられることや山梨県内の森林や下水道整備に大きな費用が充てられることに批判が集中。

● 05年2月議会

新税額を104億円から78億円に減額して、県税条例の改正議案を正式提案。私は、1月に開かれた決算委員会から、質疑や討論の機会に以下のような批判を展開。与野党問わず議論百出、結局知事は県政史上初めて議案を撤回。

● 05年6月議会

さらに税額を41億円に減額した修正案が提案される。自民党、公明党、県政県民が継続審査を主張。民主は可決を求める。市民の党、共産党、NETは否決を求める。継続審査に。

● 05年6月議会

さらに税額を38億円に減額した修正案を可決。市民の党、共産党、NETは反対。

混迷 水源環境税

 林業不振で荒廃した森林を救うために提案されたはずの水源環境税でしたが、バナナのたたき売りのように税額は三度減額。銀行税、ホテル税、産廃税のように悪玉から取るのではなく、「全国一の規模で地方の課税自主権を実現した」と松沢知事は実績を強調しますが、水源環境税は、本当に森林のために、そして県民の暮らしにやくだつでしょうか?

首都圏の車公害を止めなければ水源環境は守れないのに
汚濁原因
水源地域の汚濁原因(窒素・りん等)の発生源調査

 アオコの発生などダム湖の水質汚染が課題になっています。その改善のために津久井町、相模湖町等の下水道建設に新税をあて整備ペースを2倍にアップする計画です。
  しかし、左グラフの自然系とは雨水などによって河川の源流域にもたらされる汚濁原因。最大の汚濁原因となっているのは自動車排ガスなど都市部の大気汚染であり、これをよくしない限り問題は解決しません。


  県の水源再生保全計画では水源地域の下水道建設に毎年10億円を補助して生活排水対策はとるのですが、それでは必要な対策の五分の一。その他には目立った対策はありません。あえて新税を県民負担でもうけるのに大気汚染や農薬など自然系の最大の汚濁原因に対しては全く無策なのが、現在の水源環境税と県の計画です。

目的は水源環境保全より公共事業
 ◆新税の4分の1は下水道建設費
下水建設費

 生活排水対策としては、人口密度の低い地域では公共下水道を整備するより、各戸に浄化槽をつくる合併処理浄化槽方式の方が、圧倒的に経済的です。しかも、ガレージ二台分の敷地があるならすぐに設置できる。 

 早くて安くつく、合併処理浄化槽方式に対して、山奥まで下水道の100%整備を目標とすると巨額の費用がかかります。

  

 県の計画では、この水源地域の下水道整備の補助のために新税の四分の一がつぎ込まれます。ダム湖の水質を早く改善したいなら合併処理浄化槽方式なのに、二〇年もかかる下水道整備にあえてこだわるなど環境より公共事業が目的としかいえません。

個人県民税上乗せ=逆進性の増税
再配分

 水源環境税は、個人県民税の均等割(2000円)を300円増額し、所得割は、所得の700万円以下の部分だけを税率アップ。

 高額所得者は影響が少なく、教育費などにお金がかかる世代に一番大きな負担を求める仕組みです。

 消費税の導入、引き上げから、所得税の累進税率の緩和などで、年々税による所得の格差を是正する再配分効果は減少する一方です。

 今年からは定率減税廃止、政府税調は給与所得控除の大幅カットによるサラリーマン増税案を昨年打ち出しましたし、ポスト小泉は消費税UP必至。

 大増税時代が来ようとしている中で、「環境」という大義名分をつけられ、額は小さくても、こんな増税はNOです。

 世帯所得ごとの水源税の税額については県広報 (水源環境を保全・再生するための県税条例が、9月県議会で成立しました)をご覧下さい

 

受益者負担と言いながら 法人は非課税
水源税用途別

 ダムの建設など水源開発が第1ステージ。今後の環境保全は第2ステージ。第1ステージは水道料金という受益者負担でやってきたから、水源環境保全も県民の受益者負担で行う。だから県民税上乗せの受益者負担だ。

 松沢知事は、05年2月議会で、自ら78億円の新税案を撤回した後、6月議会からこんな論理を持ち出しました。過大なダム投資のために、今後長きにわたって、使わない水の料金を県民に払わせ続けることへの反省のかけらも見えない手前勝手な論理です。

 新税への大きな批判に理論武装したつもりのようでしたが、個人県民税に新税をかけるのに法人は負担なし。第1ステージでは法人が4割の負担をしているのに、なぜ第2ステージは負担を求めないのか。論理破綻もはなはだしい理屈です。

水源の森整備でかん養される水量は宮ヶ瀬ダムの1/65
一兆円の宮ヶ瀬ダム、水の半分は余ってる
開発水量

  建設費一兆円の宮ヶ瀬ダム。貯める水の半分は使われていませんが、借金の返済分は私たちの水道料金に上乗せされ、昨年も県営水道は料金を値上げしました。

 さらに、水源税で森を整備して「安定した水を確保」すると言いますが、その効果は左グラフのようにわずかなもの。ムダにムダを重ねる二重負担です。 

 水源環境保全のための施策の柱が、「水源の森林づくり」事業です。荒廃した私有林を手入れすれば、研究では水源かん養機能が5%向上するとされています。
新税投入でこれまでのペースを2倍にアップして目標の27000haの森林を整備するというのですが、それで涵養される水量は、半分は余っている宮ヶ瀬ダムの65分の1にすぎません。
 安定した給水のためにといいますが、このわずかの効果のためにあえて新税が必要でしょうか。荒廃のより進んだ箇所から優先して整備し、効果を検証することが先決です。

 
事業費が決算の不要額を下回るなら新税はいらない

◆ 修正案 38億円 < 58億円 県決算の不要額

 3度の修正で新税額は104億円から38億円に減額されました。 この額は決算で毎年計上される不要額(予算措置されたものの使い切れなくて余らせた額)より小さいものになりました。

 松沢知事がまず行うべきは、水源環境の劇的な変化を回避するための費用を当面既存の財源の中からつくり出すことに全力を挙げることであり、そうすれば当面増税の必要はなくなります。

 そして、財源の乏しくなった下水道事業などを続けるためではなく、森林の再生と水質の維持向上のために最小の費用で最大の効果を上げる計画となるようにさらに事業の再検討が必要です。

討論 06年6月議会
◆ 水源環境保全の財源は、県民への増税ではなく
   三位一体改革で霞ヶ関から取りもどせ 

 私は、定県第101号、神奈川県水源環境保全・再生基金条例外11件の議案と請願の所管委員会審査結果に反対の討論を行います。

  まず、継続審査とされた水源関係3議案についてですが、きのう朝のテレビの時事放談で田中秀征さんがこんなことを言っておられました。5票差で可決された郵政民営化法案について、「修正された法案は賛成派にとっても反対派にとっても物足りないものになってしまった。どちらからも高く評価されない。賛成の人の、とんがった意思もそいでしまった。」この秀征さんの論評は、私は今回再提案された水源税のことを言っているように聞こえました。

  議会の指摘を受けて、2月定例会で撤回された案から、水源の森林事業など既存財源で対応していた部分や県産木材の消費拡大など、水環境の保全と直接かかわらない事業を省いたこと、その結果、昨年9月に示された素案の104億円から最終案の78億円、そして今回の41億円と、新規財源の所要額が大きく減額されたことを一定評価する向きもあります。

  しかしながら、ここで指摘しておかなくてはならないのは、この減額によって水源環境税として提案されてきた新税の根幹の理念が見事にすりかえられてしまったということです。

 一昨年10月の地方税制研究会の最終報告書は、税制措置を論じた第2章の冒頭でこう言っています。「水源環境を保全・再生するための税制措置は、生活環境税制の理念に基づき、みずからの生活環境や身の回りの自然環境について、県民がどのようなものを望むのかという県民の意思に基づいて構築されるべきである。」

 この考え方を基盤に、2月の提案までは、新税投入の基準を施策の新規性、拡充性、独自性に置いていました。全国で最も進んだ施策を実施する、だから、そのための費用負担を県民がみずから選択してほしいという問いかけであったはずです。知事の不用意なカンパ発言もこの文脈から出たものでした。

  しかし、今回突如として出てきたのが、水源開発─第1ステージ、保全・再生─第2ステージ、第1ステージを水道料金で賄ってきたのだから、これと密接不可分な第2ステージも受益者負担という、強引かつ、過大なダム投資のために、今後長きにわたって、使わない水の料金を県民に払わせ続けることへの反省のかけらも見えない手前勝手な論理でした。

 これは既存財源分や、効果が間接的な事業を省いた結果、必要な新規財源が決算の不用額より小さい41億円にとどまるならば、代表質問でも出ていたように、「それならば一般財源の中で努力できるではないか」という追及を逃れるために持ち出されたものであることは間違いありません。

  税制措置を施策の新規性・独自性で説明できなくなった、このことによって、県民がみずから望んだ環境のために負担を分かち合うという生活環境税制の理念は全く否定され、県民にこれだけ受益があるんだから払いなさいと義務を課す、およそお上意識そのままの全く魅力のない税制に成り下がっているのです。

 岡崎前知事の時代から5年かけて検討してきたものだと言いますが、今回の提案は、ここにおいて、これまでの検討とは全く別物になったと言わなければなりません。 しかも、受益者負担を掲げながら、給水量で75%ながら水道料金では59%にすぎない一般家庭にすべての負担を負わせ、法人への課税を行わないという決定的な論理破綻を犯しており、継続審査ではなく、きっぱり否決すべきものであります。

  私は2月定例会において、水源環境の保全・再生は県政の最重要な課題であり、優先して可能な限りの予算を注いで進めるべき事業であるとの前提のもとに、当時示されていた保全・再生基本計画が数々の施策と事業費は示されているものの、水源の森林整備による水源涵養機能の回復は宮ケ瀬ダムの65分の1、全県の水需要の200分の1にとどまるといった、その緊急性と効果のほどが明らかにされていない点、公共下水道は、合併処理浄化槽や榎本議員ご提案のコミュニティプラントより費用が数倍もかかる上に、窒素・燐のダム湖への汚濁負荷量は自然系を含めれば、整備ペースを速めない場合、現状の92%に対して、県内100%整備しても87%と、削減率はわずかな数字にすぎないなど、最少の費用で最大の効果を上げる計画となっていない点を指摘し、研究会報告にある「新たな費用負担については、施策の緊急性、特徴、効果、財源規模などの観点で事業の絞り込み等を行うべき」という提言をいま一度顧みるとともに、いまだデフレ経済から脱却する展望が持てない状況の中で、県民の大多数に増税を行うことの是非について再考を求めました。

  いま一度申し上げますが、松沢知事がまず行うべきは、懸念される水源環境の劇的な変化を回避するための費用を当面既存の財源の中から、事業や組織のさらなる見直しや節減でつくり出すことに全力を挙げることであり、その担保のために今回提案された大綱を県議会の議決にかけることであり、モニタリングの結果を踏まえて事業の効果を明らかにしていくことであり、最少の費用で最大の効果を上げるべく、事業の再検討をさらに行うことです。

 そして、県民に負担を求めるよりは、三位一体改革で国と闘うことです。長期にわたる水源環境保全の財源は県民からではなく、霞ケ関から取ってくるべきなのです。

 2月定例会で知事は、考えられるベストの案を提案したと強調されました。なぜベストの案を放棄するのでしょうか。ここは一たん引いて、先ほど申し上げたことに死に物狂いで取り組むべきです。そして、ベストの案をマニフェストの第1に掲げて知事選を戦って信任されたならば、マニフェストにお約束の県民投票で県民の意思を問う。そうすれば、そのとき県民は、モニタリングで検証された事業の効果と三位一体改革の行方や所得税・住民税の増税の成り行きをてんびんにかけて、新たな負担が必要かどうか判断するでしょう。

 県議会と、足して2で割る安易な妥協に走らず、真に参加型税制を実現するために、今回の案は撤回することを知事に強く求めておきたいと思います。

Copyright ©2006 木内ひろし事務所 All Rights Reserved.